ガンダムビルドダイバーズ REBOOT   作:キラメイオレンジ

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第32話 VS天昇騎士(ライザーナイト)

GBN内セントラルターミナル。現在の時刻は16時半を少し回ったところだ。

 

ニシカワさんの今日のシフトは17時上がりという事なので、俺は一足早くGBNにダイブしガンプラの点検やGBN内でのニュース、メールなどをチェックして時間を潰すことにした。

 

今日のトップニュースの見出しは[ヴァイス・ユニオン解体。有志連合が抱える闇]という先日の一件の顛末が語られる記事だったが、内容の一部にはクジョウさんを始めとした有志連合のフォースリーダーに対する批判的なニュアンスが見え隠れしている印象だ。

 

正直、読んでいていい気分はしない。

 

しかし一方で、これまで徹底して英雄視・神聖視され続けてきた有志連合に連なる者達が起こした今回の“不祥事”に対し、注目する者が多いのもまた確かだろう。

 

アキラやマギーさん、何よりクジョウさんが過剰なバッシングを受けないかどうか心配だ。

 

「あっ、メールも1件入ってる」

 

GBNニュースサイトをひと通りチェックした後、俺は数分前に1件の未読表示のメッセージに気づき、中身を閲覧。

 

送り主はちょうど一昨日の一件で連絡先を交換し合ったアヴァロンの新人ミズキさんだった。

 

[こんにちは。先日は本当にありがとうございました。ダイチさんに置かれましては、その後お変わりはないでしょうか?]

 

という年齢の割に固い印象を受ける文面に苦笑しつつ、俺は結構な長文であるミズキさんのメールの黙読を続けた。本題は、有り体に言えば遊びのお誘いだった。

 

[実は明日、フォースの皆さんと一緒に出来たばかりの新しいディメンションの散策に行くことになったのですが、もし都合がよろしい様でしたらご一緒しませんか? 隊長からの許可は得ています]

 

アヴァロンのメンバーと一緒に散策? ……おおおおっ、心惹かれるお誘いだな!

 

GBN黎明期から常にこの仮想世界の頂点に君臨し続ける最強フォースのガンプラを間近でじっくり見せてもらえるし、あわよくばフリーバトルの相手をしてくれるかもしれない。

 

しかし――

 

[誘ってくれてありがとう。けどゴメン! 明日は日曜日の当番で1日仕事なんだ。また別の機会に誘ってくれると嬉しい!]

 

折角の誘いを断る事に心苦しさを覚えつつ、メッセージを送信。

 

するとスグにミズキさんから返事が返ってきた。

 

[私の方も急なお誘いだったので気にしないでください。お仕事、頑張ってくださいね。またお誘いします。――何度でも]

 

くぅ~断った俺の心苦しさに気を遣ってくれるばかりか、仕事に対する労いの言葉まで添えてくれるとは。ええ()や。何だか久し振りに人としてまともな扱いを受けた気がする。

 

……うん、分かってる。JCから送られたメッセージに対しこんな風に癒されたりニヤニヤしちゃう自分が割とガチでキモいって事は。

 

けど、しょうがないじゃないか!

 

アキナさんとかニシカワ姉妹とかから、最近特にロクな扱い受けてないだから!

 

ずっと妹みたいに思ってたユキムラの本性とか知ったのも地味にショックだし!

 

俺は断じて、JC好きな変態なんじゃない。

 

ユナとかミズキさんとか、人として真っ当に扱ってくれる女の子が、偶々女子中学生なだけなんだよ! ――って、それはそれでヤベェな。

 

 

「システムウィンドを見ながら何を1人で百面相してるんですか?」

 

 

と、自分の現状に対して色々考えこんでいる俺に、聞き慣れた冷たい声が話しかける。

 

「あっ、ログインしたんですねニシカワさ…………ん?」

 

振り返りながら挨拶をするれだったが、改めて声の主の姿を目で捉えた瞬間、思考がフリーズしかけた。

 

何故なら、声をかけた女性の出で立ちは、俺の知る現実(リアル)のニシカワさんの容姿とかなりかけ離れていたからだ。

 

現実のニシカワさんは整った目鼻立ちをしているが化粧っ気はあまりなく、髪は肩にかかるかどうか位のストレートヘアで、よく似合うアンダーリムのメガネをかけたさっぱりとした印象の美人だ。

 

それに対し、目の前のニシカワさんと思しき女性の容姿は一言で言えば『艶やか』だ。

 

くっきりとした大きな瞳にそこはかとなく色気を感じさせる泣きホクロ、ウェーブのかかった赤い髪に、金色の瞳。少しだけ厚みのある唇――同じ“美女”でも180度趣が異なるタイプの美女だ。

 

しかし、何より最大の違いは寧ろ首から下のボディにあると言えるだろう。

 

およそダイエットなどという概念とは無縁の、どんな服でも着こなせるスレンダーなリアルニシカワさんに対し、目の前の艶やか美人は胸も尻も、これでもかという位バインバインなのだ。加えて、その豊かな実りを強調するような布面積が少なめの服装に身を包んでいる。

 

まさか人違い?

いや、間違いなく彼女はニシカワさんだ。

俺には分かる。この俺に対する汚物を見る様な冷たい眼差しは、間違いなく俺の良く知るニシカワさんだ!

 

「…………何か?」

 

ハッ、いかん!

 

あまりの衝撃に数秒間口を開けて黙り込んでいたら、ニシカワさんの機嫌があからさまに悪化した。 恐らくお色気全開のダイバールックをマジマジと見て気持ち悪いと思ったのだろう。俺はすかさず言い訳を口にした。

 

「あっ、す、すみません。あ、あんまり現実とキャラが違ってたのちょっとビックリしちゃって……」

 

「悪かったですね偽乳盛っててええええええええええええ!!!」

 

でえええええええ!?

全力で流そうとしたらまさかの逆ギレ!?

 

めんどくさい! やっぱりこの人、相当めんどくさい部類の女性(ヒト)だよ!!

 

両手で真っ赤になった顔を覆い、その場でしゃがみ込んで泣き崩れるニシカワさん。

 

えっ、何? もしかすると、自分でも恥ずかしかったとか?

じゃあなんでそんなお色気ムンムンのダイバールックにしたの!?

 

「ううっ! 私だって自分でも滑稽なのは分かっていたんです! けど、せめてゲームの中でくらい、夢を見たいじゃないですか! あなたにわかりますか!? 一族代々慎ましやかな家系に生まれ育ち、物心ついた時には既に諦めるしかなかった女の気持ちが! だからせめて……せめて……例え仮想世界の中での事だとしても大きく見せたかったんですよ!!」

 

まるでアリバイも証拠も完全に論破された探偵モノの犯人の様に項垂れ、自らの罪(?)を白状するニシカワさん。どんだけコンプレックス抱えてるんだ?

 

「いや、別に驚いたってだけで滑稽だとかは思ってません!? ただ、俺もユナも基本的に現実(リアル)に寄せたダイバールックなんで本当にちょっとだけ驚いただけで……」

 

そもそもの話、『現実とは違う自分になりたい』という理由はこの手のVRゲームをやる理由としては実に王道的なものだ。ケチをつける事自体、無粋の極みと言えるだろう。

 

実際、GBNに於いても№2フォース【第七機甲師団】のリーダーである【ロンメル大佐】やランキング第5位の【虎武龍】の【タイガーウルフ】さんなんてバリバリの獣人ルックなわけであるし。

 

ただ、反応を見るにニシカワさん自身、今の格好に対して肯定的ではなさそうというか……。どこか自己否定的な感情を抱いている様に見える。

 

『こういう自分になりたい』という前向きな変身願望ではなく、『今の自分が嫌いだから』という後ろ向きな現実逃避の為に、現実の自分と正反対のダイバールックにしている。

 

少なくとも俺にはそう思える。

 

それは多分、俺自身も少なからず自己否定感を持つ人間だからだろう。

 

そういう意味では俺とニシカワさんは存外、似た者同士なのかもしれない。

 

……本人にそう言ったらめちゃくちゃ怒りそうではあるが。

 

「…………そうですか。まあ、真正の少女性愛者であるアカギさんからすればこういう女性的な身体つきより現実の貧相な身体つきの私の方が性的に魅力なのかもしれませんが……汚らわしい」

 

「そこだけは全力で否定しますからね!! 俺は断じてロリコンじゃありません!!」

 

ぐああああ!

こっちが少し考え事をしていたらすぐにそれをロリコンに繋げる悪魔の論理(ロジック)! 言いがかりも甚だしい!!

 

アキラ(アホ)にはおっぱい星人と決めつけられたかと思えばニシカワさんからはツルペタ好きのロリコン扱い! どうして俺の周りには俺の性癖を極端な方向に決めつけたがる奴ばっかなんだ! 

 

確かに十代の頃は大きいのが正義だと思っていたけども!

 

「ニシカワさんは男を誤解してますよ……。そんな胸とか尻とか腋と太腿とか、ピンポイントな部分で人を好きになる偏った性癖の持ち主は稀です」

 

俺は努めて冷静に、ニシカワさんに一般的な男性が抱く愛とフェチズムの違いについて説いた。まあ、一般的な男性っていうか、あくまで俺の主観に基づく見解なのだが……。

 

「わ、私だってそれくらい分かってます! 人を人生経験の足らない小娘みたいに扱うのは止めてください!」

 

と、案の定俺の言葉に反発し、そっぽを向くニシカワさん。

 

どうやら、俺如きに見識の狭さを指摘されるのは不愉快だったらしい。

 

うーむ、俺なりにニシカワさんが抱える罪悪感の解消と、ひと目でゼロクアンタライザーの特性を見抜く洞察眼を持つ彼女なら良い練習相手になってくれると踏んでの提案だったが、やはり失敗だったかな?

 

――俺的にはニシカワさんみたいな人は割と好きなので、出来ればこれを機に多少は打ち解けたいとも思ったのだが……。

 

 

・・・・・

 

 

その後、微妙に険悪な空気を(ニシカワさんから一方的に)放ちながら、俺達は格納庫へ移動。ガンプラの最終チェックを行った上で適当なバトルフィールドへ行こうという手筈になった。

 

「少し待ってくれますか? バトルは久しぶりなので念入りにチェックを済ませたいので」

 

「あっ、了解です。――――それがニシカワさんのガンプラなんですね」

 

「ええ、――SDガンダムでガッカリしましたか?」

 

システムウィンドに視線を固定したまま、ニシカワさんは棘のある物言いで尋ねてくるが、俺は『とんでもない!』と首を横に振る。

 

この機体を間近で見て『SDだからガッカリ』なんてする人間は、ハッキリ言って目が節穴だ。

 

「SDの00(ダブルオー)ライザーをベースに騎士(ナイト)ガンダム風のカスタマイズとか、滅茶苦茶カッコイイじゃないですか! 凄く好みです!! 名前は何て言うんですか?」

 

現実の騎士甲冑を想起させる重厚なメタリックカラーで塗装された白銀の3頭身騎士の雄姿に俺は感嘆の意を隠せない。

 

シルエットは原型機(00ライザー)から乖離していないのにオリジナリティに溢れている。

 

素体へのリスペクトと独自の世界観、それを再現できる確かな技術がなければ作れないガンプラだ。

 

「あ、ありがとうございます……。名前は天昇騎士(ライザーナイト)ダブルオー、です」

 

興奮気味に尋ねた俺に対し、ニシカワさんは戸惑いながらも、少し嬉しそうな笑みを見せて応えてくれた。

 

これは楽しいバトルが期待できそうだ!

 




次回はニシカワさんとの戦闘回。

天昇騎士の設定については次回という事で!
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