ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
ひょっとするとこれが今年ラストかも
「
「え、ええ、『天界の神竜から無限の魔力を与える
「おおおっ! カッコイイですね!! ニシカワさん、ラノベ作家とか目指せるんじゃないですか!?」
「や、やめてくださいそういう茶化しは! そ、それにレッド様ならいざ知らず、あなたに褒められても別に、嬉しくなんか……」
率直な感想を言ったつもりだったが茶化していると捉えらえてしまった。
これも日頃の信頼の有無という奴だろう。
しかし実際、俺はお世辞でも何でもなくニシカワさんの作った天昇騎士がとてもカッコイイと思ったのだ。
それは単純な造形の完成度の高さに留まらず、個人的にツボにハマったというか、デザインが好みの琴線に触れた事が大きい。
恐らく本人に言ったらまた嫌な顔をされるだろうが、俺とニシカワさんは多分“カッコいいの嗜好”が似通っているのではないかと思う。
「コホン、それより点検が済んだのなら早く出撃して用をすませましょう。私はあくまで、貴方に昨晩の償いをする為にログインしているわけですから。……言っておきますけど、バトルでは接待プレイはしませんよ?」
「勿論です。というか、改良の為の戦闘データを取るのが目的ですから、寧ろボコボコにしてくる勢いできてくれる方が嬉しいです」
貸しはあってもバトルは全力というファイターとしては当たり前な理念に対し、俺は当初の目的も踏まえた上で解答する。
仮にこれが機体の調整という目的のない純粋なバトルだとしても、手を抜いたり抜かれたりするのは好きじゃない。
実力差に応じて予めハンデを付けるのは良い。
公正である為にある種の制約、縛りプレイをする事も否定はしない。
しかし相手を下に見た舐めプや、戦いとは関係のない私情で手心を加える様な真似は相手に対して失礼だし、ガンプラに対して不誠実だ。
「――フッ、後悔しても知りませんよ?」
ニシカワさんもそんな俺の心積もりを理解してくれているらしく、それまで見せた事のない不敵な、戦いを楽しむ者の眼を見せてくれた。
――俺が今まで見てきたニシカワさんの表情の中で、最も素敵だと感じた表情だ。
「ダイチ。ゼロクアンタライザー、発進する!」
「ウェス(ニシカワ・カオリのダイバーネーム)。天昇騎士ダブルオー、発進します」
各々ガンプラに搭乗した俺達はお約束の発進シーンと共に、セントラルエリアから飛び立った。
・・・・・
北欧をモチーフにした風光明媚な【ユーロエリア】。
どこかファンタジー寄りな空気を感じさせるこのディメンションには、大小合わせて20個程のドーム型バトルゾーンの【
ニシカワさんの勧めで俺達はその中でも比較的小さな闘技場に降り、1対1の乱入ナシの【模擬戦モード】を選択。
互いに30m程距離を取って、武器を構える。
『純粋に機体の具合を確かめたいのなら余計な障害物や地形特性のないここが丁度いいでしょう。何か不都合などはありますか?』
「いえ、色々気を遣ってもらってありがとうございます」
こちらの目的に合わせて何かと気を遣ってくれるニシカワさんの心配りに感謝しつつ、俺はゼロクアンタを操作し、左腰に懸架していたGNセイバーを抜き構える。
相対する
さて、ここからは気遣いも現実での遺恨も関係ない。
尋常な勝負の時だ!
『いきます――――!!』
先に打って出たのは天昇騎士を駆るニシカワさんだった。
小柄故に軽量=俊敏なSDガンダムの特性を活かした突撃に対し、俺はGNドッズライフルを連射して応戦するが、螺旋回転する数発の粒子ビームは全て避けられ、あっという間に距離を詰め、斬りかかってくる。速い!
俺はゼロクアンタライザーの剣を持つ右手を構えて防御の姿勢を取りつつ、スラスターを前方に噴射し、後方へと移動。
これだけの機動性を持ち、尚且つその大きさ故に捉え難いSD騎士系を相手に剣戟戦を挑むのは分が悪いと判断したのだ。
真っ向から剣を振り下ろす天昇騎士に対し、後方への回避。
本来ならそれで、騎士の斬撃は空を斬る筈だった。しかし――
『光よ!』
「っ!」
天昇騎士が掲げた刃を振り下ろす瞬間、その聖剣の刀身にビームの光が宿り刃を形成。
一瞬で間合いが伸びた光刃に対し、俺は咄嗟にライザーウィングを稼働させ前方にGNフィールドを展開して防ぐ。
結果、辛うじて損傷は免れこそしたが、ハッキリ言ってそれはこちらの運が良かったからだ。
普通に考えれば7割の可能性で、俺は今の一太刀で切り伏せられていた事だろう。
『――――今のを防がれるとは思いませんでした』
一方、ニシカワさんはニシカワさんで今の斬撃を防がれるとは思っていなかったらしく、冷静な声音の中に不機嫌さが感じられた。
そしてそんな彼女が操る小さな騎士の手に握られた聖剣の刀身には、依然としてビームの刃が灯っていた。
「……その剣、ビーム発振機構はそのまま残してたんですね? 危うく真っ二つでしたよ」
そう、実体剣の斬撃として回避を図った瞬間に一気に伸びたビーム刃による間合いの延長。
それはライフルモードやビームサーベルモードも内蔵したGNソードⅡのギミックを応用した隠し刃。リーチが最大の課題となる近接型のSDガンダムにとって、これ以上えげつない機体などそうはいまい。
「ファンタジー風の装飾ですっかり見逃しちゃいましたよ。……えげつないギミック仕込んでますね」
『この聖剣GNカリバーは両肩の太陽石から魔法力を取り込むことで、その刃に光を宿す。――という設定なので!』
俺の皮肉交じりに称賛に対し、独自の世界観に基づく設定を語りながら天昇騎士は再び斬り込んでくる。
俺は咄嗟にゼロクアンタライザーの両翼を可動させ、GNサブマシンガンによる牽制射撃を放つ。
しかし天昇騎士ダブルオーは持ち前の機動性と小ささでその殆どを回避し、当たった数発の粒子弾もメタリック塗装による装甲値の上昇で意に介さず、距離を詰め攻め込んでくる。
懐に入ってきたSDガンダムとの格闘戦ほど厄介なものはない。
しかもこの騎士は、ビーム刃というギミックを駆使することでSD最大の弱点であるリーチの短さを克服している。
こちらの攻撃は当て辛く、相手側の間合いは同等。
しかも堅牢な装甲は多少半端な攻撃が当たった位では身じろぎもしない。
一見して見栄え重視のカスタムである、ビーム刃やメタリック塗装なども単体で見ればそこまで厄介なギミックではない。
しかしそれら1つ1つの要素を絶妙なバランスで組み合わせる事で、一振りの強靭な剣に仕上げている。
どうやらニシカワさんは、当初俺が見込んでいたよりずっと強いダイバーだったようだ。
「いいガンプラですね! 強さとカッコ良さがいい塩梅で合わさってる!」
俺はGNセイバーを振るいながらニシカワさんに称賛の言葉を投げる。
一瞬でも気を抜けばたちまち撃墜される肉薄した状況だが、それでも称えずにはいられなかった。
『当然です! これは私がレッド様のガンプラを徹底的に研究して作り上げたガンプラなんですから! ――そう、言うなれば“私とレッド様の愛の結晶”なんですから!!』
「はいぃいいい!?」
ズシャアアアアアアア――――!!
しかし、そんな俺の称賛に対し返ってきた言葉があまりにもぶっ飛んでいた為、俺は思わず操作の手元を大きく狂わせ、ゼロクアンタを派手に転倒させてしまった。
一瞬、脳裏にアキナさん張りのニッコリ笑顔で殺意を放ったユナが『ししょー? 隠し子ってどういう事ですか?』と問いただす姿が浮かんだ。
――待ってくれ! 違うんだユナ!! って、何浮気が発覚した夫みたいな気持ちになってるんだ俺は!?
『ちょっ、何ですかそのイタい女にドン引きみたいな反応は!? わ、私だってバカな事を言ってる自覚はありますけど、仕方ないじゃないですか! ――あの人の事、本当に愛してるんですから!!』
一方、爆弾発言をかましたニシカワさんは、俺のずっこけリアクションを目の当たりにし、羞恥心にかられていた。
……アレ? ていうか今俺、愛の告白された??
クソ、やっぱりどういう感情で向き合えばいいか分からねえ!
「……い、一途なのは良いことなのかもしれませんけど、流石に会ったこともない男に愛してるはないんじゃない、ですか?」
『~~~~~っ! 関係のない変態が、私の想いにケチをつけないでください!! 早く機体を起こしてください!! 八つ裂きにしてあげます!』
俺がやんわり『レッドへの想い』を嗜めると、ニシカワさんは発言への羞恥心も合わさり烈火の如く怒り狂った。
これは所謂、愛が愛を重すぎると言って理解を拒み、憎しみに変わった状況なのだろうか?
……うん、多分違うな。
俺は頭と胃に痛みを覚えるが、同時に1つ腑に落ちた事もあった。
それは格納庫で初めて天昇騎士を見た時に感じた『好みの琴線に触れた感覚』の正体だ。
もし、彼女の言う様にあの
そして納得すると同時に眩暈を覚えた。
どうしてだ?
どうして俺の周りにいる女性ダイバーは、自分が作ったガンプラを子供みたいに扱うんだ!?
いや、それだけならまだいい。
それもまた1つのガンプラの愛し方なんだろう。
けど頼むから人を父親役にしないでくれ!
なんでユナもニシカワさんも、俺の知らない所で俺をパパにしたがるんだ!!?
何か色々怖いよ!!
衝撃!
ダイチ隠し子発覚!!(爆)
【
・ニシカワ・カオリことダイバーウェスが製作・登場するSD版
・両肩のシールドにはコーン型太陽炉に代わり『天の竜より授けられた持ち主に無限の魔力を授ける太陽石』という独自の設定で翠色の宝玉が埋め込まれている。この両肩のバインダーは原型機同様の可動し、シールド裏面の銃口からはGNサブマシンガンならぬ魔力弾を放つ機構と、GNフィールドならぬ魔力障壁を展開する機能が搭載されている。
・手持ちの武器はGNソードⅡをベースに西洋剣風の装飾を施した聖剣GNカリバー。改造によりライフルモードへの変形機構はオミットされたが、ビームサーベル発振機構は健在の為、『光の剣』と称し、刀身の長さを最大で実体剣の3倍まで延長可能。
・一見すると剣による近接戦闘を主体とするスタンダードな騎士ガンダムだが、SDの素早さにメタリックカラーの防御底上げ、ビーム刃による間合い拡張が合わさり相手からすると非常に『倒し辛い』機体に仕上がっている。
・また、SDとはいえれっきとした太陽炉搭載機ベースである為、当然トランザムシステムも使用可能。その際は、遠距離火力の不足を補う『切札』を使用する事ができる。
・カオリ曰く、その設計思想にはレッド=高校時代のダイチのガンプラ観を徹底研究して作ったらしく、『もしレッド様がSDガンダムを使用するとしたら?』という発想の元、数年かけて作り上げた本人曰く『私とレッド様の愛の結晶』。