ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
「おおっ……!」
受付でチュートリアルミッションを受注した俺は、鬱陶しいバカップル共と共にガンプラが待機する格納庫へと移動し、1/1スケールに巨大化した自身のガンプラ――ゼロクアンタを見上げた。
現実でもお台場などで1/1スケールのガンダムやユニコーンを見に行った事はあるが、自身が組み上げた機体がそのままリアルサイズになって目の前に立っているというのは、ガンダム好きならば誰しもが感動を禁じ得ない経験だ。
正直、これだけでもGBNを始めた甲斐があったと思う。
「これが先輩のクアンタッスか? なんつーか……随分とこざっぱりした機体ですね」
「ねー? 何か弱そう」
微妙にお茶を濁したコメントをする横でバカップルの片割れは遠慮のないコメントを送る。
あって間もない年長者、それも彼氏の先輩に対してこうも物怖じしないというのも逆に凄いな……。
まあ実際、彼女の感想ももっともだ。
何せこのゼロクアンタには最大の特徴である左肩のシールドが存在しないのだ。
塗装とスミ入れは勿論、筋掘りや面出しなどはしたが、頭部・胸部・脚部はそのままクアンタと同じ。
両肩は2つ買ったクアンタの右肩の物をつけ、背面にはエクシアからミキシングした太陽炉搭載機の特徴てあるコーン型スラスターを搭載している。
唯一のオリジナルとしてビームサーベルを収納した局所GNフィールド発生機の機構を兼ねた【GNガントレット】にしている。
ぱっと見の印象はクアンタというよりエクシアに近いだろう。
そこへ来て右手に持つ装備はAGE-1から流用したドッズライフルと来たものだからそりゃ傍目には貧相にも見えるし、クアンタの特徴を全て排している。
駄改造と言われても仕方ないが、これでも俺なりに拘った上でのカスタムだ。
「アキラは知ってるだろ? 俺はビット系の武器とかGNソードみたいな複合装備の扱いが不得手だって。――けど、どうしてもクアンタに乗りたかったんだ」
「先輩、刹那の機体が超好きッスもんね」
「ああ、向いてなくても乗って戦いたい。――使うガンプラの選択なんて、それで十分だろ?」
勿論、2千万人のプレイヤーの中には個人の嗜好を二の次にして『勝つ為の機体』を選択したプレイヤーもいるだろう。そうした選択を否定するつもりはないし、ストイックなスタイルは嫌いじゃない。
けど俺はあくまで遊ぶ為、仕事や冴えない独り身生活を忘れ、童心に帰る為にはじめたエンジョイ勢だ。使いたいガンプラで出来る領分で楽しむだけだ。
「まあ、つってもまだ未完成なのは確かなんだけどな。取り敢えず今日は手軽なミッションで操縦の勘を取り戻して、太陽炉1個引いた分、何を足すかじっくり試行錯誤するさ」
作った機体を動かしてその完成度を肌で感じ取り、作り変え続ける。
そうした試行錯誤もまた、ガンプラバトルの醍醐味だろう。
「――ニヒヒ、何かちょっと安心したッスよ。先輩のガンプラ観、オトナになっても相変わらずッスね。そのイイ感じに自分に酔ったドヤ顔マジぱねぇッス♪」
「だからお前は褒めるフリしてディスるのヤめろ。はっ倒すぞ?」
「フフ、嘘が吐けないのがアッくんの良いところだもんねぇ♪」
天然で人を煽るクソ後輩とそれを援護するサークラ姫……絶っっっ対コイツらのフォースには入らねぇ。寧ろ別のフォース作ってコイツらぶっ倒してやる!
・・・・・
「ダイバーダイチ。ゼロクアンタ、出る!」
さて、ところ変わってガンプラのコックピット内。
ガンダム作品を視聴したことがある男子なら誰もが1度は憧れる『カタパルト発進』をGPD以来5年ぶりに体感し、仮想世界の空を舞う。
『ア~っ君♡』
『り~っちゃん♡』
その背後にはアキラのフリーダム改修機である【ハイパーフリーダム】とリエさんが駆るジャスティスの改修機【エターナルジャスティス】が手を繋いで随伴する。
尚、相対速度を合わせて飛行しながら手をつなぐのは無駄に高等テクニックだったりする。
そういう意味でもイラっとする。
初乗りの俺のレクチャーをするという名目らしいが、どう見てもデートだ。
NPCより先に撃ち堕としたろか?
『あ~、操縦はどうっスか先輩~? なんか若干動きがピリついてますけど』
「問題ない。GPDより多少操作感覚が軽く感じるが、しばらく動かせば慣れると思う。後ピリついてるのは背中でイチャつくお前らがイラっとするからだ。自重しろ」
『ちょっ、僻まないでくださいよ~やだなーもう、これだから独り身は……』
内心ガンプラの動きを見ただけで俺の殺気を感じ取ったアキラのセンスに感心しつつ、俺はこいつらのフォースには死んでも入らないと難く心に誓った。
と、そこへ八つ当たりに丁度いい的……じゃない。
ミッションの標的であるNPCリーオーが3機編隊で現れた。
『一応簡単な回避と攻撃はしますけど、基本は殆ど的ッスから、機体の調子確かめるつもりで気楽にどうぞ』
「あいよ」
アキラに促されるまま、俺はまず右手に装備した【GNドッズライフル】を両手で構え、向かって右のリーオーを狙撃。
螺旋回転で貫通力を高めたビームが胸部を貫きリーオーは爆散。
成程、やっぱり通常のビームライフルとはひと味違うな。
世界観が違う=銃内部にGNコンデンサーを積んでない兼ね合いで連射性がいまひとつだが、これなら多少出力を下げてもNPCの機体なら余裕で撃ち落とせそうだ。
2機のリーオーに対し旋回して距離を取りつつ、ライフルへの粒子供給量を60%に落とし、背後を取ってビームを発射。問題なく胸部装甲を貫き撃墜に成功する。
「ラストッ!」
俺は左腕のGNガントレットからビームサーベルを取り出し光刃を抜刀。
両機の撃墜に伴いこちらに銃口を構えたリーオーの胴体を両断したところで第1フェースは終了した。
・・・・・
その後もミッションは滞りなく進み、リーオーよりも幾分空戦に優れたエアリーズの4機編隊を撃破。
的同然の敵とは言え、俺も大分昔の勘を取り戻し、仮想世界での操作にも慣れてきた。
「10機撃墜だから残り3機か。順当に行くと最後はビルゴあたりか……って、何だありゃ」
次の対戦相手を予想しながら飛行していたゼロクアンタのセンサーが『フリーバトル展開中、流れ弾注意!』と警告。移動を止め地上を見下ろすと、のどかな花畑が続く丘で、漆黒に塗装された3機のビルゴとどこか動きがぎこちない【ガンダムナドレ】が交戦していた。
『オラオラどうしたお嬢ちゃん! 先に喧嘩ふっかけてきたのはそっちだろ? 逃げ回ってないで戦えよ!』
『だから誤解なんです! 私ただ、ターゲットと間違えて……撃っちゃったのは謝りますから攻撃を止めてください!』
当事者同士の会話を聞くとどうやらナドレがビルゴを攻撃した事が原因でフリーバトルに発展したらしい。この手口は……。
『あちゃ~どうやらあのナドレの
『うわぁ、スッゴイ手の込んだことするんだねぇ~バカみたい』
アキラの的確な分析にリエさんが辛辣なコメントを返す。
身も蓋もない言い様だが、全面的に同感だ。
『アッ君、助けてあげよっか?』
『ソッスね……ってちょっ、先輩!?』
俺は機体を急降下させつつ、コントローラーを操作し【
「トランザムッ!!」
・・・・・
「撃っちゃったのは本当にごめんなさい!」
モニター越しで誤射したことを何度も謝りながら、私は3機のMS(名前はわからない!)から逃げ回っていた。
『謝って澄むなら運営はいらねえんだよお嬢ちゃん!』
『勉強だと思って大人しく討たれなっ!』
『へへっ、俺らのフォースに入るってんなら許してやらなくもないぜ?』
「ごめんなさい! 絶対に無理です!!」
『『『即答かよ!?』』』
自分にはもうフォースを組み予定の友達がいるからと丁重にお断りしたら、相手の人達は益々怒った。
うぅ、こっちが悪いから反撃もできないし、どうしよう……。
『ったく今日日のガキは末恐ろしいねぇ……いきなり背中から撃ったと思えば謝りゃなんでも許してもらえると思ってる。全く親の顔が見てみてえぜ』
「っ! 取り消してください! 悪い事をした私の事はなんていってもいいですけど、お父さんとお母さんの悪口は見過ごせません!!」
『おうおう、反論だけはいっちょまえだねぇ。そんじゃまあ、精々大好きなパパとママに慰めてもらいな!』
涙目になる私にそう言い捨てると黒い3機のMSは一斉にビームを撃ってきた。
悔しい……!
悪いのは自分だと分かるけど、一方的に攻撃されて、お父さんやお母さんのことまで悪く言われて、何にも出来ない自分が……!
『トランザムッ!!』
撃たれる事を覚悟して目を瞑った私の耳に、3人とは違う男の人の声が聞こえた。
そして次の瞬間、私のガンダムは『赤い何か』に捉われ、上空へと飛んだ。
『よく頑張ったな。後は俺に任せろ』
見上げるとそこには、全身を
作中に登場するゼロクアンタはプロローグ前の時系列なのでまだまだ未完成。
ダイチは本格的な改造の前にまず機体の操作性を確かめるために敢えて無駄を極力省いた機体にしました。
ツボイ・リエ
21歳。アキラと同じ大学の3年生で、彼と熱烈交際中。
ピンク色の髪をポニーテールにし、ガンダムSEEDのヒロインであるラクス・クライン風のダイバールックに身を包んでいるが、彼氏同様キャラが違い過ぎて似てない。
男同士で和気藹々としていた模型サークルをその美貌とあざとさで分解させたサークルクラッシャー。一応本人に悪気はないが、自分に非があるとは微塵も思っていない。
陽気(バカっぽい)なアキラの全てが大好きであり、彼の為なら何でもするが、ダイチはじめ、彼以外の男には欠片の配慮も見せない。
実家は貿易会社を経営しており、アキラは大学卒業後、無条件で就職が内定している。
男をトコトンダメにするタイプ。
使用ガンプラはアキラに合わせたジャスティスの改修機【エターナルジャスティス】。