ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
年内はこれがラスト投稿ですね。
少し早いですが、皆さん良いお年を!!
カオリside
ユーロエリア内に点在する
私、ニシカワ・カオリは最近妹の友人であるユウナちゃんをつけ狙う変質者のアカギさんと模擬戦形式(勝敗によるポイントの移動はなし。決着後もセントラルエリアへの所謂『死に戻り』なし)のバトルを行っていた。
これは先日、私の父が勘違いにより(少なくともその場に限って)無罪だったアカギさんを殴ってしまった事に対するお詫びという形で彼から提案されたものだが、私の方からしてもこの変態のファイターとしての実力やバトルに対する姿勢を通してその人柄の一端を垣間見る良い機会でもあった。
ビルダーとしてのアカギさんの実力は、先日その制作する姿や実際に出来上がった00クアンタの改造機を見て把握した。
基本的な工作技術は1流と呼べる域(超1流ではないが)で、カスタマイズに関しても実戦経験や自分の得手不得手をしっかり理解した上で短所を補い、長所を引き延ばす堅実なセッティングになっている。
直接そうだと聞いた事はないが、年齢やGBN歴の短さからして私と同じGPD世代。それも相当
そして今現在、直接剣を合わせる事で分かったアカギさんのファイターとしての実力は――“決して弱くないが、突き抜けた強さはない”という評価だ。
射撃は正確で速く、格闘に関しても経験で研鑽された確かな技術を持っている。
軽量で扱い易い機体特性も合わさり、中近距離の対MS戦闘に於いて隙のない速さと、それを活かすテクニックもある。
加えて引くべき時は引く潔さと、攻め時には多少のリスクを省みず飛び込む勇猛さを併せ持っている。
伊達にユウナちゃんの師匠役を買って出てはいないというべきだろう。
制作・戦闘技術共に基本に忠実で、戦いにおける駆け引きも心得ており、実に指導者向きの戦闘スタイルと言える。
しかし一方でそれら全ての要素を併せて上で尚、GBN上位ランカーには見落としするのは確かだ。無難、手堅い――そんな言葉がしっくりくるだろう。
総合的な実力はランクで言うと“Bランク上位~Aランク下位”といったところだろうか?
数年前にAランカーになった私からすれば、決して手の抜けない相手ではあるが、勝てない相手でもない。少なくともこの人より強いダイバーとは、これまで何度も戦ってきたし、勝った事もある。
――なのに、何故か押し切れない!
――それにこの人、すごく戦い辛い!
ここまでの戦いで、私の天昇騎士の光刃は何度もあの人のクアンタの装甲を斬り裂いていた筈なのに、その必殺の斬撃が全て紙一重のタイミングで回避されてしまう。
いや、違う。
回避されているというよりは、“私がその様に動かされている”のだ。
俄かには信じ難い。
しかし実際、
射撃や斬撃のタイミング、視線や重心の移動などで相手の癖や攻撃パターンを把握し、動きを先読みする。という技術は、Aランク以上の上位ランカーならば出来ても珍しくない。
しかしこの人は、そうした先読みの更に1つ先――相手の動きに自分の動きの要素を加えて『自分が加えた動きで相手の動きを間接的に操作する』というものだ。
これは、単純な技術の高さや経験値だけでは(勿論、それらも必須だが)出来るものじゃない。
極限の緊張感を強いられる戦闘の中で常に彼我の動きを俯瞰する観察眼と胆力。何よりも戦いというある意味で究極的な『エゴのぶつけ合い』の中で相手の事を理解しようとする精神性には、極端な言い方をすればある種の悟りの境地の様な精神性が求められる。
私は1人だけ、この人と同じ戦い方をするファイターを知っている。
――そう、私がこの世で最も尊敬し、愛している偉大なガンプラファイター、レッド様だ。
――つまり、アカギさんは……。
「アカギさん、貴方……今までさんざんレッド様の事を悪く言っていた癖に戦い方はモロパクリじゃないですか!! なんていう厚顔無恥! 自分が二番煎じなことを知られたくないからレッド様を否定していたんですね!? 最低です!!」
『おおう、そういう解釈できたか! ありがたいけどちょっと複雑!』
通信機越しに私が糾弾すると、アカギさんは安堵と困惑が混ざったような何とも言えない表情で意味不明なことを口走る。
相変わらず意味不明な言動を口走る人だ。まあ、ロリコンの思考なんて理解したくもないが。
とにかくこれで、私には絶対に負けられない理由が出来た。
私はこの、偉大なレッド様の存在を否定しながら技術だけパクる卑劣なロリコンを倒し、言ってやらなければならない『貴方なんてレッド様の足元にも及ばない。ただの上っ面だけ模倣した劣化コピーの下位互換です!!』と。
――レッド様、どうか私に力を貸してください!
・・・・・
ダイチside
ゾワッ!
な、何か今、悪寒を覚えたぞ!?
まだまだ寒い時期だし、風邪でも引いたかな……?
いや、それよりも今は戦いだ。
俺のスタイルが
正体がバレないのは本当にありがたいが、何だか騙している様な気になって心苦しい。
どんどん明後日の方向に迷走していく彼女の思い込みの激しさを見ると、色々心配になる。
……いや、今は一旦、頭を切り替えよう。
余計な雑念に思考を割きながら勝てる相手じゃない。
『あなたが私の動きを読んで誘導するなら、その予測を超える速さで押し切るまでです!』
俺への怒りと
小柄なSDの体躯でどこまでも果敢に攻め込んでいくその様は、まるで砲弾のようだ。
ここまでの戦いで俺は1つ、ニシカワさん自身も気づいていない真実に気づいた。
それは彼女が技術的な面で既に、
恐らく、何度となく俺のGPD動画を視聴してそれを教本代わりに戦い方を学んだのだろう。
彼女は、その生真面目な性格と思い込み激しさから度重なる鍛錬を重ねる内に、無自覚の内に1つ上の領域に足を踏み入れていたのだ。
そして俺と同様、生来のセンスではなく思考と研鑽で力を伸ばすニシカワさんの性格と俺が遺した戦闘スタイルは殊の外に相性が良かったのだろう。
今のニシカワさんは、正しく“レッドの上位互換”と呼べる存在になりつつあった。
彼女の思い込みの激しさは最大の欠点であると同時に、最強の武器なのだろう。
益々、ファイターとして彼女に対する好感度が上がってしまった。
そして、そんな彼女の強さと戦闘スタイルは、俺にとっても僥倖だった。
何故なら“昔の自分の上位互換”ほど、技術を磨く
彼女を超える事はそれ即ち、嘗ての自分を超える事に繋がるのだ。
そういう意味ではニシカワさんは俺にとって、“都合の良い女性”という事なのかもしれない。
……いや、愛人とかじゃないからねユナ?
現にこうして中近距離での白兵戦に興じる中で、俺は自分の中で長いこと眠っていた感覚が叩き起こされる様な感覚を覚えつつあった。
高まっていく。技術が、精神が。
久しく忘れていた自分の前にある“成長の扉”が開いていくのが実感できる。
GPDを引退して5年。
年齢的にも才能的にも、とうの昔に伸びしろなどなくなっていたと思っていたが、どうやら俺にも少しだけ、成長の余地って奴が残っていたらしい。
その事実が、たまらなく嬉しい!
そしてそれが分かったとなれば、尚の事、勝利をもぎ取りたい。
もっと先へ、もっと高みへ。
俺が嘗てレッドと呼ばれていた頃よりも、強く――!!
『覚悟!』
天昇騎士が勝負を決めようと斬り込んでくる。
俺は意を決し、先へ進む為に――限界に挑んだ!
「トランザム――――モーメント!」
ニシカワさんが懐に飛び込んできた瞬間、俺は回避運動をしながらトランザムを起動。
回避運動中の急激な出力の3倍化でGがかかり、一瞬でも気を抜けばバランスを崩し自滅してしまう……!
――円だ! 動きに押しかかるGに逆らわず、円を描く機動を意識して遠心力を利用しろ!!
紅の弧を描く機動で天昇騎士の背後をとったゼロクアンタは、そのまま降りかかるGを斬撃に乗せ、背後からGNセイバーで小さな騎士を両断した。
「ハァ、ハァ、ハァ……出来た……!」
先日のビルゴ3兄弟との戦いでは狙いがズレ、実戦レベルの運用は当分先の事だと思っていた俺のオリジナル戦術【トランザムモーメント】が、辛うじてという状況だが、使えた!
俺は……俺は、壁を1つ、乗り換えたんだ!!
「おおおおおおおおおっ!!」
自らの成長を、その成果としての勝利を掴み取った俺はその喜びに咆哮をあげた。
「う、うう……負けた……ごめんなさいレッド様、貴方の名誉を、誇りを……守れませんでした……」
一方、撃墜されガンプラが消失し姿を露にしたニシカワさんは手と膝を地に衝け、敗北に打ちひしがれ涙を流していた。
いや、謝らなくていいよ頼むから!
ていうか自分を倒した相手に謝らないで!!
俺は慌ててゼロクアンタから降りてニシカワさんの元へと駆け寄る。
落ち込む敗者に勝者があれこれ言葉をかけるなど不躾だとは思うが、こんな状態を放ってもおけない。
「あ、あのニシカワさん、その……今日はありがとうございました……」
「………………もう1回、です……」
「……えっ?」
「ですから! もう1回戦お願いしますって言ったんです!! 1度勝った位で自分が私やレッド様より上に立ったなんて思わないでください!! まだお時間は大丈夫ですよね!? 今日はとことん付き合ってもらいますよ!!!」
と、思ったらマジでいらん世話だったみたいだ。
艶やかさ全開のダイバールックに不釣り合いなメラメラと火のついた瞳で流していた涙すら蒸発させ、ニシカワさんは再選を申し込んできた。
普段は控えめで生真面目なのに、バトルに於いては全力。
例え心底軽蔑しているロリコンが相手の模擬戦でも、全力で勝ちに拘り負けを悔しがるその姿勢は、彼女が真の意味でガンプラファイターである何よりの証と言えるだろう。
「えっ、あっ……はい、ニシカワさんが良いなら……是非」
そのギャップに驚きつつも俺は喜んで再戦の申し出を受けた。
その後、俺達はガンダムベースの閉店時間である20時ギリギリまで、模擬戦に興じた。
・・・・・
「大丈夫ですかニシカワさん? ほら、しっかり。家までもうすぐですから」
「うぅ……ご迷惑を、おかけ……します」
時間は20時10分を過ぎたところ。
俺は現在、久し振りのダイブに加え、模擬戦を連続した反動でグロッキーな状態になっているニシカワさんを見かね、彼女の鞄を持ち、自宅まで送り届ける途中であった。
GBNは当然、肉体の負担など殆どない(長時間プレイで腰を痛める人はいるらしいが)。
しかしその優れた五感フィードバック機能で現実さながらの世界を動き回れば当然、脳にはそれなりの負担が掛かってくる。
特に、今回の様な白兵戦は一瞬でも気を抜けば終わるので集中力と緊張感が尋常ではなく、戦闘中や戦闘直後は大量に分泌された脳内麻薬で元気だが、その効果が切れればこのようにぐったりしてしまう。
俺が中学の頃からジョギングと筋トレを習慣にしているのも(単純にそれが好きというのもあるが)日常的に肉体に負荷をかける事で、疲労時おけるパフォーマンスの低下を防ぐのが目的だったりする。
ニシカワさんの場合、そこに加えて朝から夕方まで仕事をしていたのもあるし、くたびれて当然と言えるだろう。
因みに余談ではあるが、俺とニシカワさんはあの後6回、計7戦ほど戦い、最終的には5勝2敗。俺が勝ち越した形となったが、後半は彼女のスタミナ切れで勝ちを拾わせてもらったところがあるので、もし彼女が万全の態勢で臨んでいたら勝率は下がっていただろう。
「……今日はすみませんでした。お詫びのつもりで始めたバトルだったのに熱くなってしまった挙句、こんな……」
「いえ、俺の方こそ今日は本当にありがとうございました。来週の大会に向けて物凄く色々成果を得られましたし、何より――楽しかったです」
介抱されている状態に心苦しさを感じ俯くニシカワさんに対し、俺は忌憚のない気持ちを告げた。
戦闘訓練という目的は最良の形で果たせたし、何より久し振りの強敵との決闘形式の戦闘は本当に楽しかった。
今の俺には清々しい疲労と充足感で満ちていた。
「っ! ……それは、よかった、です。……その、私も今日は……久し振りに思い切りバトルできて、楽しかった……です」
そして、そんな俺の言葉に対し、ニシカワさんは視線を逸らしながら、共感の意を示してくれた。そして――
「アカギさん。実を言うと私、今日の模擬戦の内容次第ではあなたとユウナちゃんの師弟関係の解消を迫ろうと思っていたんです。大した実力もないのに経験と知識を笠に女子中学生を手籠めにするなんて、認められませんから。――けど、今日の戦いを通じて分かりました。あなたは少なくとも、ガンプラビルダーとして、そしてファイターとして、人に物を教えるに足る実力と姿勢を持っている事を。――人として気持ち悪いロリコンだと思いますが!」
「あっ、そこはブレないんですね……」
と、俺は苦笑するが、俺は内心嬉しくなった。
相も変わらずロリコン扱いされ、さりげに気持ち悪いとまで言われはしたが、それでも俺の戦いを見てガンプラバトルに関してだけは認めてくれたというのは、大きな進歩だ。
「当然です。これからもあなたがもし、ユウナちゃんにいかがわしい事をしそうになったら容赦なく通報しますからあしからず。――ただ、あの娘の師匠としては、今後口出ししない事を約束します」
「いや、俺があの娘にいかがわしいまねをする事は絶っっ対ないですからね?」
「どうだか……。ああ、送ってもらうのはここで結構です。父やカスミに見られるとまた変な誤解をされるので。――ありがとう、ございました」
「こちらこそ、それじゃあおやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
相変わらずつれない態度と言うか、俺を見る目は厳しいが、それでも向けられる眼差しの冷たさは少しだけ温かみが宿った気がする。
俺は満足感を胸に帰路に就くのだった。
ダイチはニシカワさんという自分に近い戦闘スタイルを持ち、自分よりも技術的に優れた相手と戦う事で、1つ上のレベルへ到達しました。
昔読んだ格闘漫画に『自分より少しだけ格上の相手と戦うのが最も手っ取り早く強くなる方法』という格言がありましたが、まあにそれ。
そしてダイチはなんだかんだ言ってニシカワさんの人柄が好き。
というかここ最近仲良くなった女性の中では何気に1番異性として意識している。かも?(ユナとミズキは中学生、アキナさんは人妻だし色々怖い。但し見た目の好みで言うなら圧倒的にアキナさんがどストライク)。
【ダイチとニシカワさんの模擬戦結果(2戦目以降)】
第2戦:勝者ダイチ
・ニシカワ、トランザムモーメント封じとして開始と同時にトランザムを起動しトランザム同士の戦闘を敢行。しかし燃費重視のゼロクアンタの方が長くトランザムを維持できた為、粒子切れ直後にあっさり敗北。
第3戦:勝者ニシカワ
・ダイチ、トランザムモーメントを使いこなす為に再度試すも失敗。自滅を衝かれ敗北。
第4戦:勝者ニシカワ
・それまでの戦闘で徐々にダイチの動きや癖を掴んできたニシカワ、彼の誘導戦術を逆手に取ったフェイントを成功させ勝利。
第5戦:勝者ダイチ
・お互いに戦闘スタイルを理解しあった段階での正面対決。技術とフェイントの応酬で7戦中最も時間を要した。激闘の末、紙一重でダイチが競り勝つ。
第6戦:勝者ダイチ
・この段階でニシカワさんの疲労が蓄積され始め、操作ミスにより自滅。
第7戦:勝者ダイチ
・残り時間的に最後と踏まえた上での戦い。是が非でも勝ちたいニシカワ、2戦目と同じ初手トランザムで一気に勝負を決めようとする。凄まじい猛攻でゼロクアンタライザーを後一歩の所まで追い込むも、焦りから最後の一手を読まれ返し技を受け敗北。
ダイチの見立てでは、もしニシカワさんが万全の状態なら結果は4勝3敗か3勝4敗。総じて互角という分析(単純な操縦技術はややニシカワさん、駆け引きや小技はダイチに分がある。