ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
週明けという事もあり日頃より少し忙しい月曜日の午前勤務を終えた俺は、職場の先輩らと共に食堂で昼食摂っていた。
ユナが早起きして作ってくれた愛妻弁当ならぬ
今日のおかずは鳥そぼろと炒り卵、鮭フレークの3色ご飯を主役に昨日の夕飯に出た里芋の煮っころがしとアスパラとちくわのマヨネーズ和え、彩りにプチトマトという構成だ。
そして上蓋には[ししょーへ、お仕事お疲れ様です♡ 気を付けていますが夏場なので変な匂いや味がしたら食べないでくださいね?]と俺への労いや配慮に溢れていて涙が出てきそうになる。
仮に弁当が傷んでいても、ユナが作ってくれたものならば米1粒残さず食べて喜んで食中毒になる所存だが、自分が作った弁当で俺が入院したらユナが悲しむので言う通りにしよう。
「おっ、出たな弁当男子! 朝早いっていうのによくやるな~?」
「いや~ハハ、なんか最近、料理が趣味になっちゃって」
……それだけに、心苦しい。
こんなにも俺の事を考えてくれる愛弟子が作ってくれた弁当を俺は職場の人間に対し『自分で作りました』などと嘘を吐いているのだ。
けど、仕方ないだろう?
仮に目の前の先輩(中学生の娘さんがいる)に『実はこれ、仲良しのJCに作って貰ったんです』とか正直に話してみろ? 職場の人間関係に深刻な問題を生じ掛けない。
――本当に、本当にすまないユナ。
懺悔の気持ちを込め、弁当を食べ終えた後は[ごちそうさま! 今日の弁当も本当に美味かったよ。ユナはいいお嫁さんになる。ししょーが保証するぞ!]とメッセージを送った。
そしてその直後、膝から崩れかけ周囲の同僚を困惑させてしまった。
ぐうっ! ユナがどこぞの馬の骨の元に嫁ぐことを想像したら普通に死にかけた。
俺はもう、色んな意味で人として終わっているのかもしれない……。
分かっている。
今は俺の事を兄の様に慕ってくれているユナも、いつかきっとどこぞのイケメンと恋仲になり、やがて俺の元からいなくなってしまうであろう事は……。
あの弾ける様な笑顔も、日に日に可愛いから綺麗に変わっていく顔つきも、成長著しい身体も、いずれ……あああああああああっ! 何か色々想像した死にたくなってきた!!
大人として花嫁姿のあの娘を笑顔で見送り、その晩にゴウザブロウさんと『ユナの幸せな未来に乾杯』的なダンディなやり取りをしたいと思う反面、あの娘のハートを射止めた憎いアンチキショウをゴウザブロウさんとタックを組んでぶち殺したいと思わずにはいられないしょうもない俺がせめぎ合っている!
――うん、我ながら本っ当に気持ち悪いな!!
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
と1人で情緒不安定な人みたいにしていると、LINEに返事がきた。
[もぉおおお~~♡ ししょーったらもぉおお~~♡ 気が早いですよぉおお♡♡♡]
[美味しいごはん、用意して待ってますから早く帰ってきてくださいね♡]
――うん。まぁ、その何だ……機嫌が良さそうなので何よりだ!
・・・・・
夜間の仕事は原則としてその時間帯指定の荷物や郵便があるか次第で終わる時間にムラがあり、遅い場合だと家に着くのが9時近くになる事もあるが、幸いにも今日は7時には上がる事ができた。そして夜間当番の次の日は基本休みである。
以前ならこういう日は駅前の飲み屋に繰り出したり、数駅先にある映画館でレイトショーを観に行ったりもしたが、今の俺の足取りは揺らぐことなく自宅へ一直線だ。
何故かって? そこに弟子が居るからだ!
「ただいまー」
玄関を開けると、そこには当然の様に夕飯の支度をするユナの姿があった。
因みに今朝と同じ制服エプロンである。最高か。
「あっ、おかえりなさいししょー♡ 今日もお仕事お疲れ様です!」
俺の存在を確認すると同時に駆け寄ってきたユナは、仕事でくたびれた俺に冷たいおしぼりを持ってきてくれる。天使かな?
俺は『ありがとう』と礼を言っていい感じにひんやりしたそれで顔を拭いた。おっさん臭ぇ。
「(くんくん)えへへ♪」
そんな俺の前でユナは匂いを嗅ぎ、何故かちょっと恍惚そうな顔をした。
「あー、もしかしなくても、汗臭いか?」
何しろ気温もグッと高くなってきた季節だ。
俺の様な肉体労働者は嫌でも汗だくになってしまう。
「はい。あっ、でも私汗の匂いって結構好きですよ? だってししょーが1日、頑張ってお仕事した証じゃないですか♪」
意図したものではないにせよ不快な臭いを嗅がせてしまったと気にする俺にユナは偽りのない笑顔でそう言ってくれる。
何なのこの娘? 何でこんなにいい娘なの?
そしてそう言ってくれるユナの全身からは清潔で甘い香りが漂い、髪の毛はしっとりと濡れていた。
「もしかしてユナ、またウチの風呂使った?」
「あっ、はい。ごめんなさい毎日お先に……」
「いや、それは全然かまわないんだけどさ……」
言うまでもないが、単身者用の俺の部屋の風呂は必要最低限のサイズであり手狭だ。
なのに何故この娘はわざわざ毎回、俺の部屋に来てから風呂に入るのだろう?
俺としては帰ってすぐに湯に浸かれるのはありがたいのだが……。
「お夕飯の準備、まだ少しかかるのでその間にお風呂入っててくださいね。――その、よかったら、お背中とか、流しましょうか?」
「いや、大丈夫だから」
そして、入浴を促しつつ、こうして赤面しながら背中を流そうとするのも、もはや慣例化しつつある。恥ずかしいなら言わなきゃいいのに……。
・・・・・
何かと手狭な我が家の浴室には現在、俺が使う安物のリンスインシャンプーやボディウォッシュとは別に、ユナが使う女性用のシャンプーなどが置かれている。
どのボトルも俺が使っているものよりふた回りは小さいサイズなのに値段は2ランクくらいお高いときている。
よく『可愛い女の子からはいい匂いがする』などと言われるが、それはきっと持って生まれたものではなくこうしたグレードの高い高いシャンプーや化粧水などで日々身ぎれいにしようという努力によって保たれているのだろう。
綺麗に可愛く清潔に。
言葉にするのは簡単だが何しろ毎日のことだし、楽ではないだろう。
そう考えると世の男性陣は、女性に対してもっとリスペクトの精神を持つべきなのかもしれない。なんて考えつつ湯船に浸かる。
つい先程までユナが浸かっていた湯船に……って何を意識してるんだ俺は!? これじゃ変態じゃねえか!!
……いかん。これはちょっと……否、かなり由々しき事態だ。
何だか最近、ちょっとしたことでもあの娘に対し異性を意識してしまう様になりつつある。
出会った頃は本当に無邪気な子供や子犬などに向ける微笑ましい気持ちで思っていた『可愛い』も、最近はベクトルが変わりつつあるというか……。
実際、ユナは日を追うごとにどんどん綺麗になっている。
基本的には天真爛漫で言動や行動もまだまだ子供っぽいのに、不意に見せる大人びた仕草とかにドキッとさせられることも多い。
いい歳こいたおっさんがJKに対し大金叩いて迫る気持ちもほんの少し理解できなくもなくなってきた。……いや、少しでも理解しちゃった時点で終わりな気もするが。
幸い、というか当たり前の話ではあるが、まだ自制心が効かなくなるレベルではなく『ムラッときて押し倒す』という事態に陥る事はないのだが、半年後や1年後、今より更に色っぽくなるユナに対し理性を貫き通せるのかと問われると……正直、自信がない。
分かっている。
そんな感情を自覚した時点で、ユナをこの部屋に来させない様にすれば良いという事は。
ししょーと弟子。歳の離れたゲーム仲間。兄貴分と妹分。
そういう適切な距離を保ちつづければ、過ちを起こす可能性は0に出来るだろう。
しかし、出来ない。
それは『ユナが悲しむから』とか『出禁の理由を伝えれば軽蔑されるかもしれない』というのもあるが、1番大きいのは俺が今の生活を捨て難いと思っているからだ。
だからまだ大丈夫。もう少しだけと自分に言い聞かせてそれを言えないでいる。
――ああ、もう、本当に俺という奴は、最低だ。
・・・・・
「あっ、あがったんですねししょー。丁度ごはんが出来たところ……って湯上りなのにお顔の色が優れませんけど大丈夫ですか!?」
「ああ、うん、大丈夫……ちょっと懺悔というか、考え事してただけだから……」
円卓におかずを並べつつ俺の体調を案じてくれるユナに、大丈夫だと手を振る。
その天使の様な心遣いすら、今の俺の罪悪感を強める。
「そうですか? それじゃあいっぱい食べて元気になってくださいね!」
そう言ってごはんをよそってくれるユナ。
食卓には俺のリクエスト通り、豚肉と牛肉の冷しゃぶがシャキシャキのスライスオニオンの上に盛られ、副菜には夏野菜のサラダと、しじみの味噌汁がある。美味そうだ。
俺は朝と同様に手を合わせ『いただきます』と言い、早速メインに箸をつける。
「うん、やっぱり美味い」
「お粗末様です♡ ししょーってしゃぶしゃぶはポン酢とごまダレ両方使われるんですね? 私、酸っぱいのはちょっと苦手ですからごまダレ一択なんですよね。エヘヘ……」
「ああ、分かる分かる。俺も子供の頃はポン酢も酢の物も苦手だったよ。人って結構年齢で味覚の嗜好が変わるものだから、その内食べれるようになるさ」
「そういうものですか? ……ああ、そういえばおかーさんも私がお腹にいた時はそれまで嫌いだった酸っぱいものが大好きになったって言ってました」
「ああ、うん……それはちょっと、違うかな? ――それより今日はGBNにダイブしたんだっけ?」
「はい! ルイさんはマギーさんの所のフォースの人と予定があって居なかったんですけど、ミナちゃんやコジちゃんと一緒に採取ミッションやって、横取りしようとしてきた別のフォースの人達を返り討ちにしちゃいました♪ あっ、後聞いてくださいししょー! 実は今日の昼休み、カスミちゃんがですね――」
と、その日あった学校やGBNでの出来事を肴に食事をする時間はやはり最高に楽しい。
通勤時間の短縮と気楽な生活を求めて始めた1人暮らしではあるが、やはり団欒のひと時というものは心が和む。――今度、実家に顔を出そうかな?
「あっ、そういえば今度、【リゾートエリア】で大規模イベントがあるって告知がありましたよ! 何でも、エリア近海に居座る【デビルガンダムクラーケン】ていうのを討伐するミッションで、初攻略したフォースにはボーナスポイントが付くそうです」
「おおっ、マジか! それは是非チャレンジしたいな! ああでも、夏休みは学生フォースが普段以上に活発だから難しいか?」
夏休みが3日しかない俺は勿論、何をしているかは知らんがルイも一応、社会人らしいし、アマテラスがフルメンバーで活動できる時間は実はそんなに多くはない。
それも間もなく訪れる夏休みシーズンとなれば猶更だ。
だがそんな不利な状況か、ユナはにっこり笑顔のままだ。
「それが聞いてくださいよししょー! なんとそのイベント開始日、今度の“夏合宿”の2日目なんですよ! だから参加1番手、狙えちゃうんです!!」
「マジで!? それなら朝一で全員ダイブできるし、確かにチャンスだな!」
現実・GBN問わず幸運値の低さに定評のある俺にとっては極めて珍しい僥倖に俺もテンションが上がる。
因みに先述の合宿とは、元々日本有数のご令嬢であるミナが、自身の実家が経営するリゾートホテルに仲の良いアサヒ家とニシカワ家を紹介して楽しむ家族旅行だったところを、ユナの提案により俺やコジロー、ルイも加わってのフォースの結束やら何やらを深めようという趣旨で企画されたものだ。
ユナには言えないが正直、当初は気乗りしなかった。
だってコジローはともかく、リアルでフォースの
具体的にはミナに命を狙われたり、ルイにケツを狙われたり……。
しかし仮に俺が参加を辞退したら俺の可愛い愛弟子が泣く上に、俺の不在をいいことにあの変態令嬢がユナの貞操を狙う可能性が非常に高い。
――ああ、こりゃ世間で『バカと変態しかいない不健全フォース』って言われるわな。
しかし大規模イベントの話を聞き、俺のモチベーションも俄然上がってきた。
何故ならこういう注目度が高いイベントをクリアすれば、世間からのアマテラスに対する悪評・誤解を払しょくするまたとない機会だからだ。
今は押しも押されぬ人気を誇るかのビルドダイバーズも【ロータス・チャレンジ】という超高難易度なクリエイトミッションを攻略したことで世間からの評価を爆上げさせた前例もある。
「けどこの討伐ミッション、推奨人数は10人前後か……。旅行にはニシカワさんも来るからお願いしてみるか? 後、予定が合えばミズキさんも……ああでも、アヴァロンとの兼ね合いもあるか?」
「…………師匠? どうして助っ人の人選が女の人ばっかりなんですか?」
「えっ!? いや、偶々だから! あ、あとはそうだな~アキラたちにも声かけるか!」
俺が助っ人メンバーの人選を考えていると、アキナさん譲りの“ニッコリ激おこ”状態のユナが闘気でプレッシャーをかけてくる。怖い。
因みにユナは、今の様に怒っている時だけ俺の呼び方“ししょー”から“師匠”と微妙に滑舌が良くなるのだ。こうなると俺は、全力で弟子のご機嫌取りに注力しなければならない。
「ムー、ししょー! 明日のお買い物は水着だけじゃなく下着も買いに行きますからね! 上下セットで3着は選んでもらいます!!」
「わ、分かりました……」
そして機嫌を悪くした報復として、的確に俺の社会人生命を殺しに来るおねだりをしてくる。
普段は甲斐甲斐しくて欲のないいい子なのに、一度火が付くと中々えげつない我儘を言ってくる。――まあ、こういうところも可愛いのだけれども。
【ユナの現状】
・13歳。
・最近は早朝4時半に起きてお弁当の支度をし、5時半にはダイチの部屋に合い鍵で入り朝食の支度をして、7時に見送る。放課後はGBNなどで遊んだ後はダイチの部屋で夕飯を作って一緒に食べ、一緒に過ごした後、21時に家まで送ってもらうという実家よりダイチの部屋にいる時間の方が長い通い妻状態。隙あらばお泊りをねだる。
・ダイチから預かった買い物財布には“アカギユウナ”の名義でポイントカードが入っている。GBNもガンプラバトルも大好きだがししょーと部屋で過ごす時間も同じくらい好き。どのくらい好きかというと、『穴が開いてたので捨てておきました!』と言ってダイチの部屋から着古したYシャツやパンツ、果ては靴下をかっぱらい自宅に持ち帰るほど。自宅での寝間着はダイチのYシャツ。
・物語開始時はC以上D未満だった胸はその後順調に成長し、現在はEよりのDカップ。平静を装いつつ頻繁に胸をチラ見するししょーの視線が好き。意外と嫉妬深い性格で現時点では咎めはしないが、『エロ本を読むのは浮気の範疇』と考えるタイプ。ししょーには自分以外にエロい気持ちにならないで欲しい。