ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
どんなに楽しい時間にも、必ず終わりが訪れる。
最近の俺にとって、その時間とは午後10時(以前は9時だが、進級祝いという謎の理由で1時間延長された)前、ユナを自宅に送り届ける時間だ。
「ししょー、明日はお休みですけどまたいつもと同じ時間にお部屋にお邪魔していいですか?」
「そ、それは勿論かまわないけど……大丈夫なのかユナ? 期末試験が終わってからずっと毎日俺の部屋に来てるけど、その……無理に朝飯作りにこなくてもいいんだぞ?」
明日も当然の様に来るつもりでいた献身的過ぎる弟子。
俺にとってはありがたく嬉しいことこの上ないけど、だからと言って甘え切っていいわけでもない。
ユナからすれば『日頃のごしどーのお礼』ということらしいが、貰い過ぎだ。
俺がそう尋ねると、ユナはプクっと少しだけ頬を膨らませて(めっっっちゃ可愛い!)俺の服の裾を掴み、呟いた。
「……無理じゃ、ないもん」
ほんの少しの哀しさと寂しさ、そしてそれを『分かって欲しい』という気持ちを込めた言葉。
俺は卑怯な男だ。
こんな風に尋ねれば、ユナはきっと、こんな顔をすると分かった上で、まるで『俺は別にこなくてもいいと言った』と“逃げ道”を用意する為、この子の方にも責任があるとでも主張する為の姑息な言い回し。本当にロクなもんじゃない。
俺の中でこの娘の好意に甘えている罪悪感と、今の関係性に対する未練がせめぎ合う。
ここ最近何度も何度も考えて、未だ答えは出ない。
だから……。
「……明日は、サンドイッチとか食べたいかな。ツナマヨとか卵のやつ」
「っ! はい! 楽しみにしててくださいね♪」
せめて今このひと時だけでもユナの顔を笑顔にする為の言葉を選択する。
いや、これも結局は自分の為だ。ユナに笑っていて欲しいのも、ずっとこうした日々を続けていきたいというのも、全部自分の都合。
まったくもって、ロクな大人じゃない。
そうこうして数分歩く内、目的地である喫茶暁に到着。
店の前では魔王――じゃない。ユナの母親アキナさんが閉店作業を終え、にっこり笑顔で待ち構えていた。
「ただいまおかーさん!」
「こ、こんばんは……」
「アラアラ、おかえりなさいユナ。こんばんはダイチさん♪ 今日も門限前に娘を送ってくださりありがとうございます。――どうですか? 他人様が手塩にかけて育てた娘に通い妻生活をさせている気分は?」
いつも通り、最上級の美貌を最大限に引き立てる笑顔で俺の胸中を抉る言葉を向ける。
相変わらず勝てる気がしねえ……。
「か、通い妻とか言わんでください……。い、いたって普通の、師弟の交流です……」
「あらそう? 何だかここ最近、ツッコミのキレが鈍ってますけど、本当はもう否定しきれなくなってきたんじゃないですか? ウフフ♪ これはもう、私の事を“
「いやっ、そんな日は来ないですから!」
的確に俺の心理状態を分析した上で畳みかけてくる魔王アキナ様。
本当に見た目だけはユナがそのまま成長した様に瓜二つなのに、性格が違い過ぎる!
俺にできる事は精々、虚勢を張ったツッコミを返す位だ。
「おかーさん! 私ね、明日ししょーと水着お買い物して外でご飯食べるの!」
「アラ、それはよかったわね♪ まあ、こうして娘に甘えるばかりじゃなくデートに誘う甲斐性に免じて、これ以上イジめて遊ぶのは止めてあげましょう。――けど、これだけは覚えておいてくださいねダイチさん? 私、この子とあなたが気まずそうな顔で朝帰りする日を楽しみにしているんですから!」
「だから! アンタは! どうしてそう俺の社会人生命を絶ちたがるんですか!!? 後、お願いだから娘を大事にしてください!!」
「
「ウフフじゃねえよ!!」
ああ言えばこう言うとはまさにこの事だ。
何を言っても面白おかしく笑顔で返されてしまう!
まったくもって本当に、この人は俺にとって天敵だ。
見た目は本当にどストライクだから、どんな暴言や戯言を言われても嫌いになれないところがまた、実に厄介!!
・・・・・
ユナside
ししょーのお部屋から帰ってきた私は、いつも通りおかーさんと作戦会議を始めた。
明日はししょーのお仕事がお休みだから、お弁当の仕込みをしない分、少しだけ時間がある。
「おかーさんが言った通り、ししょー最近、何だかちょっと様子が少し変なんだよね。たまーに私のこと、戦ってる時みたいなギラギラした(カッコイイ♡)目付きで見たかと思ったら、何だか悪い事した時みたいな(抱きしめたい!)顔をして、でもでも! 普段はいつも通りすっごい優しいの!」
「うんうん、やっぱり門限を1時間伸ばして正解ね。ダイチさん、朝が早いからいつも12時までに寝るんでしょう? 朝から晩まで殆ど1日ユナが部屋にいるから、色々発散できなくなってるのよ。あと一押し!」
「発散って?」
「それは今度、ダイチさんから聞きなさい」
私がいつも通りその日ししょーと一緒にした会話や『何回くらいおっぱいの方に視線を向けたか』とかのほーこくをすると、おかーさんは嬉しそうな顔をして色々なアドバイスをしてくれる。――半分位は意味が分からないけど。
「いいユウナ? 貴方の武器はおかーさん譲りのその可愛い顔と将来性満点の発育! そして何より警戒心のないちょっとおバカさんなところなの」
「ヒドい! ししょーは『ユナは賢いな』って褒めてくれるのに!」
「だからおかーさん、具体的な所は敢えて教えません。これからもどんどんしたいようにダイチさんの傍で甘えて、あのヘタレが我慢できなくなるまで待ちなさい。いい? ギラついた目でガッと来たら、後はお任せ! そうすればユウナはす~~~っと、ダイチさんと一緒に居られるわよ?」
「ず、ず~~~っと……♡」
おバカさん発言に対しての抗議はスルーされたけど、そんなことどうでもよくなった。
ししょーとずーっと、一緒。
朝から晩までずっと一緒……。
今迄みたいにご飯を一緒にするだけじゃなくて、お着換えとかお風呂とか、寝る時も……。
それって……すごく、イイ!!
「おかーさん! 私、頑張る!!」
「ええ、頑張りなさい! (まあ、そうなるとミナトちゃんがダイチさんを殺しにくるかもしれないけど……)応援してるわよ!」
私が気合を入れて、おかーさんが激励してくれる。
そしてキッチンではおとーさんが頭を抱えながら『すまないダイチくん……本当に』って顔をしている。どうしてかな?
・・・・・
「フンフ~ン♪」
おかーさんとの作戦会議が終わった後、私は歯磨きとかを済ませてお部屋に戻り、お気に入りのパジャマ――ししょーのお部屋から『古くなっていたので捨てておきました』と言って拝借した赤いYシャツに袖を通した。
ああ、この使い古された着心地と沁み込んだししょーの匂い……すごく落ち着いて、でもちょっとだけ身体がウズウズする。
ああ、ししょぉ……♡
さっきさよならしたばかりだけど、早くまたお会いしたいです!
合い鍵でお部屋に入って、寝顔をいっぱいたんのーして、起こさないようほっぺやおでこに内緒で……ちゅー、とか……して……。ししょーの為にごはん作って、一緒に食べたいです♡
――ううん、本当の本当は、こうやって毎晩お別れせず、おはようからおやすみまで、ずっと一緒にいたいんです!
けどししょーは優しくて紳士さんだから(おかーさんはヘタレって言うけど絶対違う!)、私がお泊りしたいって言ってもそれだけは許してくれない。
私が、一人暮らしをしている年上の素敵お兄さん(※ユナ個人の主観です)の部屋にお泊りするふしだらな女の子だって思われない様にする為なんだろうけど……別にいいのに。
最近は、ししょーと一緒に家に帰るまでの道がちょっとだけ寂しい。
おとーさんとおかーさんの事も勿論大好きだけど、ししょーと離れる時は何だか、自分の一部が切り離された気持ちになる。
だから、その寂しい気持ちを埋める為に……いけない事だって分かっててもシャツとかパンツとか持って帰っちゃうの!
イケない女の子でごめんなさいししょー!!
いつか、本当にずっと一緒にいられる様になったら全部お返しして謝りますから、その時はイケないことをした悪い弟子をいっぱいいっぱい怒ってください!
普段の私には絶対向けてくれない。悪い人達に向ける様な、カッコイイ眼差しで睨んで、悪い子な私いっぱい叱ってほしいです♡
でもでも、ししょーだって悪いんですよ?
こんな悪い子な私にいっつも優しくして、私が哀しそうな顔をすると全力で笑顔にしてくれようとしてくれて!
偶に向けてくれるギラっとしたエッチな目もワイルドでカッコ良くて、困ってるあたふたしてる時の顔は可愛くて♡(※彼女は視力が良いですが、趣味嗜好がかなり特殊です)
そんな風にいっぱい甘やかして、色んな素敵なお顔を見せられたら、離れるのが嫌になっちゃうに決まってるじゃないですか!
それでもあんまり駄々をこねて嫌われたり困らせたりしたくないから、少しでもししょーの匂いが残ってるものが欲しくなっちゃうのもしょうがないじゃないですか!
私がこんなイケない子になっちゃったのも半分はししょーの所為、なんですよ?
だから、ししょーはこの先もず~~っと私の傍に居てくれなきゃダメなんです!
私がイケないことしないように、傍にいて見張って、悪いことしたら叱ってください!
私が作ったご飯はいっぱい食べて、私がお掃除や洗濯をしたお部屋で一緒にいてください。
現実でも、GBNでもすっと、す~~~~~っと一緒がいいんです!
これに番外編は終了です。
『バカと変態しかいないフォース』アマテラス――その異名に偽りなし!!
まだ本編に登場していない残り3人のメンバーもダイチとユナに負けず劣らずの変態なのでご安心を(笑)
次回からは本編再開。こちらでもこのおバカ師弟が久々に再会予定です。
2021年も拙作をよろしくお願いします!