ガンダムビルドダイバーズ REBOOT   作:キラメイオレンジ

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第39話 ユナVSミズキ③

 

「ドラグーンガンダムゼロ――まさかGBNなんて最新技術の結晶でお目にかかる事になるなんてな……」

 

バードモードで闘技場に姿を現し、今はMS(モビルスーツ)形態で立つミズキさんのガンプラ――ドラグーンガンダムゼロを見上げながら、俺は感嘆の言葉を漏らす。

 

知る人ぞ知る。などと言ったら語弊があるが、メディアミックスもされていない20世紀の漫画作品【プラモウォーズ】に登場した改造ガンプラが、最新のVR技術によって生み出された仮想世界に於いて等身大スケールで存在しているというのは、何とも衝撃的な後継だ。

 

まして、それを作り操縦するダイバーが女子中学生というのだから一層インパクトがある。

 

「あっ、ダイチさんもしかしてご存じなんですか? プラモウォーズ」

 

「ああ、うん。俺も世代じゃないんだけど友達に歳の離れた兄貴がいて、単行本読んだことがあるから――面白いよねプラモウォーズ。俺的には【ガンプラ甲子園】も結構好きだったけど。バトル物じゃないけど、出来たガンプラをグルメバトルみたいなノリで品評し合う奴」

 

「ああ、アレ私も好きです! 昔のホビー漫画ってノリが独特ですけど、面白いですよね。私、父がそういう古い漫画を大切に保管してて、読む機会が多くて。この機体もベース機はHGACで結構オリジナルパーツも使ってるんですけど、作品のを再現してみたかったんです。どう、でしょうか?」

 

「――うん。個人的には、スゲェカッコイイと思うよ。単純にベース機を最新キットに変えたってだけじゃなくて、細かい部分をブラッシュアップされてるから、元が漫画作品の模倣でもちゃんと“ミズキさんのガンプラ”に昇化されてる」

 

「あ、ありがとうございます。――ダイチさんにそう言って貰えて、とても嬉しいです」

 

俺の意見を聞いたミズキさんは僅かに頬を赤らめ、気恥ずかしそうに顔を逸らす。

 

その大人びた雰囲気やスタイル、偶に見せる怖い表情や発言が強烈だけど、こういう時に不意に見せる表情はやはり少女のそれだ。――普段とのギャップがあって、可愛い。

 

「ムゥウ~~! ししょー!! 弟子がこれから戦う相手のガンプラをあんまり褒めないでください!! 一体どっちの味方ですか!?」

 

一方、そんな俺の反応に不満を感じたユナはまた俺の腕にしがみつき不満を漏らす。

 

「いや、いいガンプラに敵も味方もないだろ? というか、お互い技術向上を目的にした模擬戦なんだから、相手へのリスペクトは大切だぞユナ?」

 

だが俺はそんなユナに対し、苦言を呈した。

これから戦う相手に対して闘志をたぎらせるのは良い。

しかしだからといって相手の全てを憎み、否定して叩き潰す様な戦い方は俺が理想とするガンプラバトルではない。

 

不意に脳裏に駆け巡るのは、己の強さの証明と相手を踏みにじる愉悦の為だけに戦いに興じた高校時代の因縁の相手――クロカワの顔だった。

 

……アイツも、このGBN内にいるのだろうか?

当時の実力からすればSランクに居てもおかしくないが。

 

ともあれ、ユナには間違ってもアイツの様にはなって欲しくない。

だからこそ、こういう考え方は早いうちにきっちり教えとかないとな。

 

「素晴らしい思想ですね。流石はダイチさん♡」

「うぅうう~~! ししょーのそういうところ、好きだけど今は嫌いです!」

 

しかし今は、ミズキさんに対する敵意が他の感情を上回ってしまうのだろう。

俺の言葉を素直の意味を理解しつつ、受け入れあれないという感じだ。

 

尚、ユナとは逆にミズキさんは共感の意を示してくれた。

声音がなんだかねっとりしてるけど……。

 

「それにしても、ユナさんはまだGBNを始めてひと月未満だと聞いてましたけど、かなり完成度の高いガンプラを使われるんですね? 仕上げも丁寧だし、シャイニングガンダム参考にしたパーツの出来も素晴らしいです」

 

「えっ!? そ、それほどでも……まあ、ありますけど、エヘヘ♡ そ、そういうミズキさんのガンプラもよく見ると強そうですよね!」

 

――アレ? 頑なに敵意剥き出しかと思ったら自分のガンプラ褒められた途端あっさり堕ちたぞ⁉ どんだけチョロいんだ俺の弟子は! 悪い虫がつかないか心配!!

 

「ありがとうございます。けど本当に良い機体ですね。製作もダイチさんから指導を受けたんですか?」

 

「ええ~、やっぱり分かっちゃいますかぁ? ウフフ、仰る通り、このブレイジングエクシアはししょーのご指導と愛情が詰まったノートを読みながら、ししょーの用意してくれたパーツを組み込んで作って、名前もししょーにつけてもらったんですよ♡ 私とししょーの愛の結晶なんです!」

 

「――――ああ、道理で完成度が高い筈ですね。要するに1から10までダイチさんに依存した補助輪付きの自転車みたいなものですか。フフ、本当にお子様ですね」

 

「なっ……!」

 

って、今度はミズキさんの方から喧嘩吹っ掛けた?

 

表情は品の良い微笑みを浮かべているのに、よく見るとこめかみのあたりにうっすら青筋が立って見える。何故に!?

 

「そ、そうやってまた子供扱いして! ミズキさんこそ、私がししょーにいっぱい優しくしてもらってるのをひがんで、子供じゃないですか!」

 

「いえ、別にひがんでませんよ? ――ただ、偶々私より少しだけ出会うのが早かっただけのお子様が、まるでダイチさんを自分の物みたいに振舞うのは少しだけ……不愉快ですね」

 

「っ! …………分かりました。もう、四の五の言い争うのはおしまいです。後はガンプラで語り合いましょう」

 

「フッ、その気構えだけは褒めてあげますよ」

 

メラメラと灼熱の太陽の様に闘志を燃やすユナと、全てを凍てつかす絶対零度の戦意を発するミズキさん。

 

なんで君らは、出会って間もない同士なのにそんなにお互いの事を憎み合えるんだ?

一体何が、君たちの闘争心を駆り立てるの!?

 

最早『互いの技術向上を目的とした爽やかな模擬戦』などという当初の意図は完全に消息不明になり、まさに一触即発の空気が包み込む。

 

俺は試合の邪魔にならない様にゼロクアンタを待機状態にし、速やかに会場の観客席に移動――しようとするが、その前に1つ、ミズキさんに頼みごとをした。

 

「なあミズキさん。悪いけどキミのドラグーンガンダムゼロの情報、予めユナに話してもいいかな? 前にも話したけど、この娘は現状、00(ダブルオー)ぐらいしかガンダム作品知識がなくて、ウィングゼロの事もマルスドラグーンの事も知らないんだ。ガンプラバトルの経験差を加味しても、それ位のハンデは妥当だと思うんだ」

 

「し、ししょー!?」

 

それは、バトルにおけるハンディキャップの交渉だ。

実際にミズキさんのバトルを見た事は殆どないが、アヴァロンへの加入が認められる実力と眼前のガンプラの出来を見れば、ある程度は力量も察せる。

 

十中八九、現状彼女はユナよりも強い。

少なくとも純粋な経験値とガンダム作品に対する知識量の違いが明白なのは間違いない。

 

「ユナ、不満に感じるかもしれないけど、力量差に応じてハンデをつけるのは悪い事じゃないんだ。――どうかなミズキさん?」

 

「そうですね。……確かに私も初心者を一方的に痛めつける様な勝ち方は不本意ですし、それで構いませんよ。フフ、ダイチさんって本当に細やかな気配りが出来るんですね? 私、益々憧れてしまいます」

 

「いや、この位は普通だって、という訳でユナ。これからミズキさんのガンプラについて説明するからよく聞いて――」

 

「必要ありません!!」

 

ミズキさんの許諾を得て、俺はドラグーンガンダムゼロの特性を説明しようとするが当のユナが、それを拒んだ。

 

「いや、さっきも説明したろ? ハンデを貰う事は別に悪い事じゃ――」

 

「必要ないって言ってますししょー! 私、ししょーに甘えてばっかりな赤ちゃんじゃありませんから! なんですかさっきっからミズキさんばっかり褒めて! ししょーは……ししょーは私のししょーなんですから、あんまり他の女の子に目移りしないでください!!」

 

「ちょっ、おい!」

 

そう言い残して俺の制止も聞かず闘技場の中心へと走り去ってしまうユナ。

 

耳持たないという状態で、システムウィンドから連絡を取ろうとしても出てくれない。

 

どうやら俺は、完全にあの娘を怒らせてしまったみたいだ。

 

考えてみたらそうだよな?

 

中学生って年頃は人生の中で最も自意識が強く出て、“大人”と“子供”の境界で悩む年頃だ。

 

にも拘わらず、俺は公正な試合をと言って当人が望んでないハンデを勝手に提案し、それを強要させようとした。

 

ユナの言う通り、あの子自身の事を子ども扱いして矜持を傷つけてしまった。

もっと上手い言い回しはあったはずなのに完全にししょー失格だ。

 

「……ごめんミズキさん」

 

そして、折角ハンデを承諾してくれたのに無碍にしてしまったミズキさんにも、申し訳ない事をしてしまったという思いが強くなる。

 

「いえ、元はと言えば私も少し、ユナさんをからかい過ぎました。私の方がお姉さんなのに……子供ですよね私も」

 

「いや、俺の言い方が悪かっただけだから……」

 

「フフ、ダイチさんって本当に(やさ)しいですよね? 誰かが昏い顔をしていれば、それが初対面の女の子でもチャンプでも、相手を選ばず思いやってくれる。目の前で誰かが傷つけられていたら、誰にだって立ち向かう。本当に素敵な人だと思います。ただ――」

 

「えっ――」

 

互いにユナを怒らせた非は自分にあると謝り合う中、ミズキさんは不意に艶やかな笑みを浮かべ、俺の首に手を絡めた。ちょっ!? 胸が! 吐息が!

 

「気を付けてくださいね? 女の子ってダイチさんが思っているよりずっとズルい生き物ですから。――あんまり慈しくし過ぎると、色々大事なものを奪われちゃいますよ?」

 

「い、色々って?」

 

腹のあたりに胸を押し当てられながら、引き寄せた耳元に甘い声音で囁くミズキさん。

本当にこの娘は、外見も仕草もいちいとエロいな!

 

「フフ、それはちょっと女の子の口から言いにくいですね♪ ――とにかく、気を付けてくださいね?」

 

「き、気を付けるよ……」

 

ミズキさんの警告を心に留めながら、俺ははやる心臓の鼓動を感じつつ観客席へと戻る。

 

全く以て、最近の女子中学生というのは恐ろしい。

 

今ですらこれだけの色香を放つミズキさんが、10年後、否、5年後どうなるのか?

 

楽しみな様な、恐ろしい様な……。

 

 

・・・・・

 

 

さて、度々心を乱される事態に見舞われたが、今はバトルに集中だ。

 

俺は闘技場の中心から共に50mほど距離を置き待機する2人のガンプラ――ユナのブレイジングエクシアとミズキさんのドラグーンガンダムゼロを交互に確認した。

 

こうして俯瞰して両者のガンプラを比較すると、成り行きで始まった戦いとはいえ、中々に魅力的な対戦カードだ。

 

何しろ、両者のガンプラは共に決定打のある銃火器を廃した“近接格闘型”という括りでみれば同じだが、その機体セッティングは真逆と呼べる代物だからだ。

 

まずブレイジングエクシアは、ファイターであるユナの持つ格闘技術(スキル)と天性の反応速度を活かす為に余分な携行武器を廃し、ビームサーベルによる剣戟戦や徒手空拳を主軸にした格闘家や侍の様な敏捷性を重視したスタイルだ。

 

それ対し、ミズキさんのドラグーンガンダムゼロは、HGACのウィングゼロにマルスドラグーンの角兜パーツを分割したアーマーを肩と胸に追加。

 

背部のウィングパーツにはドラグーンガンダムの翼を、腰部には尻尾を搭載。

 

両足の側面には折り畳まれた状態だが、“奥の手”に必要なパーツが搭載されている。

 

右手には主武装としてマルスドラグーンの竜を象ったハルバード。左腕にはウイングゼロのシールドをベースに【シェンロンガンダム】のドラゴンファングと竜の爪を象ったオリジナルパーツを搭載したシールドが装備されている。

 

原型機に於いては最大火力を誇るメイン火器【ツインバスターライフル】こそオミットされているが、マルスドラグーンのパーツにより高出力化・重装甲化されつつ、可動域は健在。

 

元が大小8基のバーニアにより桁外れの推進力を誇るウイングゼロがベースの為、多少の重量増加はものともせず、高いレベルで向上したパワーと装甲と合わさり、近接での殴り合いの強さは、恐らくガンダムフレームと同等以上に渡り合えるレベルに仕上がっているだろう。

 

言うなればこちらは甲冑に身を包んだ騎士と言ったところだ。

 

単純な格闘性能と機敏さではユナに、正面からの力比べではドラグーンガンダムゼロにそれぞれ分があり、ガンプラを見比べただけでは一概に優劣は付けられない。

 

また、両機体共にそれぞれ“切り札”と呼べる機能を搭載している為、それを使用するタイミング次第で土壇場の逆転も十分にあり得るだろう。

 

その点を含め、勝負の明暗を分けるのはファイターであるユナとミズキさんの技量次第というのが現時点での俺の分析だ。

 

「ダイチさん、試合開始の合図を頼めますか?」

「私達は準備万端なので、いつでもどんとこいです!」

 

既にガンプラに搭乗した2人からスピーカー越しに試合開始の合図と促す声が聞こえる。

 

「了解だ。それじゃあガンプラバトル、レディ…………ゴー!!」

 

その要請に従い、俺はシステムウィンドの通信機能越しに勝負の開始を宣言した。

 

次の刹那、100m近い距離を取っていた2機のガンプラは一気にスラスターを吹かして正面に向かい突進し、正面からぶつかり合った。




【ドラグーンガンダムゼロのパーツ構成】

・古い漫画作品に登場した改造機でイメージし難いかたもいると思うので、分量で説明します。
・因みにネットで【ドラグーンガンダムゼロ】と検索すれば改造作例が出てくるのでもし私の文章でイメージできなかったらそちらを見てください(苦笑)。

本体:HGACのウイングガンダムゼロ。ツインバスターライフルはオミット。

胸部:マルスドラグーンの額にあるV字の角を装着。

両肩:マルスドラグーンの兜を分割し、羽の様な装飾(一部のパーツをカット)。

腰:マルスドラグーンの尻尾パーツを装着。

背面:ウイングゼロの翼の間に挟み込む形でマルスドラグーンの翼を接着。

両脚部:側面に折り畳み式の竜の後脚部(3本爪)のオリジナルパーツを装着。

左腕:ウイングガンダムゼロのシールドの内側にシェンロンガンダムのドラゴンハングを内蔵。有事の際はアームが伸びて竜頭が飛び出す。バードモード時にツインバスターライフルを接続する部分に竜の前脚型アームのオリジナルアームを装着。

武装:マルスドラグーンのハルバード。サブウェポンとしてウイングゼロのビームサーベルやマシンキャノンも使用可能。

機体設定に関しては次回にて!
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