ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
皆さんもお体には気を付けてくださいね!
よく、『夏のプールは芋洗い』なんていうが、実際我が身で体験すると実に言い得て妙だと思い知らされた。
涼と刺激を求めてはしゃぐ子供たちとその保護者、ひと夏のアバンチュールを求める若い男女、様々な思惑の下で集まった多くの
「まわるーまわるー♪ キャハハ! たのしーねおにーちゃん♡」
「そうだねー」
日曜朝に放映されてる女児向けアニメのイラストが描かれた浮き輪でプカプカ浮かび楽しそうにはしゃぐゆーなちゃんに相槌を打つ。
心から楽しそうなチビッ子の笑顔には癒されるが一方、高校1年生の夏、俺は一体何をやってる? 何でこうなった? と疑問も浮かんだ。
というかこの子は、会って間もない見ず知らずのデカブツ高校生になんでこんなに懐いてるの?
「しっかりエスコートしなよ~クマゴリラ~! もしゆーなちゃんをまた迷子にしたら眼球デコピンすっからなー?」
プールを何周かしてスタート地点に戻ったところで、ゆーなちゃんのご両親とパラソル付きの丸テーブルで焼きそばをすするアマツカ先輩からおっかない脅しを受けた。
ていうかクマゴリラのあだ名、完全に定着させる気だなちくしょうめ!
しかし――
俺は『横暴すぎるぞ!』という不満の念を視線で送る……体を装いつつ、視線を先輩はゆーなちゃんのママさんに向けた。
2人共、日頃首肩に負担をかけているであろうご立派な双丘様をテーブルに乗せて談笑している。
赤と白のビキニから零れんばかりの美少女JKと美人人妻のFカップ(目算)。最高過ぎて、いけないと分かっていても目が離せない。
因みにそんなとびきり人目――というか男の目を釘付けにする存在が2人もいればナンパ目的の男共が灯に群がる虫の様に寄ってきそうだが、同席する屈強な肉体を誇るゆーなちゃんパパが放つ圧で寄せ付けないでいる。
「わああっ! スッゴイ胸板に二の腕~♡ ちょっと触ってもいいですか~?」
が、すると今度はゆーなちゃんパパ目当てのお姉様方がアプローチを駆けてきた。
一般的に筋肉は若い女性から好かれないらしいが、何しろアメリカのアクションスターばりの仕上がり具合のマッチョが海パン1つで寡黙な雰囲気を出していれば、そりゃあ女性から性的な目を向かられるだろう――うらやましい!
「アラアラ、妻の居る前で旦那様をナンパとか、節操のないメス猫さんですね~? 3秒以内に失せないとプールの底に沈めちゃいますよ?」
「「し、失礼しました~~!」」
そして、そんなゆーなちゃんパパ目当ての逆ナンに対してはゆーなちゃんママが笑顔で滅茶苦茶ドスの聞いた言葉と圧を発して追いしている。
というかゆーなちゃんママ、死ぬ程おっかねえ!
「もうっ! ゴウさんもああいう手合いはしっかり拒んでくれなきゃ困りますよ!? 大体なんですか。あんな如何にも体目当ての軽そうなメス猫さん達にちょっと触られただけで顔を真っ赤にして黙って! ――分かってますよね?
「(ガクガクブルブル)」
ここからじゃよく聞こえないがママさんに耳元で囁かれ、顔を青くして震えるパパさん。
見た目は犯罪の香りが漂う美女と野獣カップルなのに、どうやら力関係は完全にママさんが上らしい。――実におっかない。が、ちょっと羨ましいとも思ったりする俺はちょっと性癖がアレなのだろうか?
「むー……がぶっ!」
「痛っ! ちょっ、ゆーなちゃん!?」
そうして俺がおっぱ……じゃない。先輩達の様子を眺めていると右手に痛みが走った。視線を向けるとゆーなちゃんが俺の腕を噛みつき、不機嫌そうな顔で睨んでいた。
「メッ!」
どうやら遊んでいる最中によそ見をしたのが気に障ったらしい。
しかしこの子の言い分も尤もだ。
仮にも子供と水場で遊んでいるのだから片時も目を離すなど言語道断。無責任も甚だしい。
「ゆーなちゃんゴメン。おにーさんが悪かった。――もう2度とキミから視線を離さないから。キミだけをずっと、見続けるから!」
「…………(ポッ)♡」
俺は身体を鎮めてゆーなちゃんと視線を合わせて、自らの愚行に対し謝意を示した。
「な、なんかちょっと顔赤いけど大丈夫か? もしかして風邪とか――「ぎゅー!」ってゆーなちゃん!?」
水に浸かっている筈なのに茹でたタコみたいに顔を真っ赤にしたゆーなちゃんの体調を案じ一旦プールから出ようとするが、そんな俺の身体にゆーなちゃんがコアラみたいにしがみついてきた。
「またさっきみたいにぎゅーってして! そしたらゆるしてあげる!」
「お、おおそっか……じゃあ、ぎゅーっと、痛くない?」
「んー♡」
ゆーなちゃんのリクエストに従い、俺は彼女の身体を持ち上げて抱っこする形で抱きしめる。どうやらこの子は“抱きしめてもらってる感じ”が好きらしいので少し力を込めて、だけど当然痛くしてはいかないから力加減がちょっと難しい。
「ゆーなちゃんは抱っこが大好きなんだな? パパによくしてもらってる?」
「うん♪ ……でも、おにーちゃんの抱っこはおとーさんとちょっと違うね? おとーさんのぎゅーはあったくて落ち着くけど、おにーちゃんのぎゅーは……何だかドキドキしゅる……」
「ハハッ、パパと比べると頼りないから落っこちちゃうかもって心配になる? 大丈夫だよ。離さないから」
「うん。……ぜったいに、はなしちゃメッ、だよ?」
そうして俺達はしばらくぎゅーっとし合い、ゆーなちゃんの機嫌がよくなった所で今度はウォータースライダーに乗ったりした。
何だか当初の予定とは大分違ってしまったが、こうして無邪気な子供と一緒に遊ぶのは心が和んで楽しい。来てよかったな……。
・・・・・
ソウside
大会も終わってしまいする事もなかった暇つぶし兼、おちょくり甲斐のあるアホな後輩を弄り倒す為にプールに遊びに来た私は、迷子の女の子とそのご両親と仲良くなり、一緒に遊ぶことにした。
物凄い美人で若いお母さんと、その血筋を色濃く受け継いだ将来有望そんな超可愛い娘さんに、ドズル・ザビも真っ青な屈強な肉体を誇るお父さん。中々味付けの濃い一家だ。
「ええっ!? アキナさんってまだ二十歳なんですか!? わ、若いママさんだなーとは思いましたけど……」
「ウフフ、やっぱり珍しいかしら? 14歳の時にゴウさん押し倒して、15歳でママになっちゃいました♪」
「えっ、押し倒した? “押し倒された”じゃなくて??」
聞き間違いかと思って私が尋ね返すと、アキナさんはうっとりとした顔でご主人との馴れ初めを語り始めた。
「ウフフ、この人にそんな度胸はありませんって♪ 中1の時に新宿で悪い男に絡まれていたのを助けてくれて私の方が一目惚れしてそのままお店をやってるウチの従業員としてお持ち帰りしたんですけど、も~うガッチガチの堅物さんで、私がお風呂上りにタオル1枚でウロウロしたり、夜中に下着姿で抱き着いても全然手を出さないで『風邪ひきますよ』って上着をかけてくるんですよ? まあ、確かに当時は中2で色気はなかったかもしれませんけど……」
「(プルプルプル)」
「あ、あのアキナさん? 何だか旦那さん、物凄く青い顔で震えてますけど話続けて大丈夫ですか? 何だかトラウマ掘り起こされて怯えてるみたいですよ?」
「照れてるだけですよ♪ だから私、アプローチの仕方を変えてみたんですよ。元プロ格闘家のゴウさんに『護身術教えてくださいセンセー♡』って、フフ、我ながら妙案でしょう?」
「(ブワッ!)」
「あ、あの奥さん奥さん! 旦那さん手で顔を覆って泣いてますよ? まだその話続けますか?」
「きっとあまりに懐かしい思い出に感極まっちゃったんですよ♪」
ああ、ダメだこの人、自分の惚気話を人に話すのが楽しくてしょうがないって顔してる。
ていうか、羞恥心に身悶えてる旦那さんの姿を見て愉しんでる。真性のドSだわ。
「フフ、ゴウさんってばとっても真剣に教えてくれたんですよ。2人っきりで♡ それで私は『センセーにお礼です♡』って言ってご飯作ったりお風呂で背中流したり。可愛い生徒の感謝を無碍にも出来ないから断れなくって♪ ――そうして理性を口の中で飴を転がすみたいにすこーしずつ溶かしていって……ウフフ、中2の春に寝込みを襲っちゃいました♪」
「お、襲っちゃんんですか……」
「はい♡ センセー直伝の護身術で体の自由を奪って♪ ――ウフフ、自ら教えた技で教え子に(押し)倒されるなんて、何だか少年漫画みたいですよね?」
「(しくしくしく……)」
「あの……センセーガチで泣いてますよ? もしかしてさっき逆ナンされたこと怒ってません? もう許してあげたらどうですか?」
『生まれてきてすみません。女子中学生に手を出してごめんなさい』という表情で涙を流すゆーなちゃんのパパさん。
親切で助けた女の子にロックオンされ、武術の手解きまでした挙句に襲われてデキ婚かぁ。
にしても『師弟関係を口実に距離を詰める』って発想に中学生で至るところが恐ろしいというか、えげつないというか……。
真面目で理性の強い年上男を堕とすには確かに効果的そうだけど……。
「ウフフ、ごめんなさいね。青春真っ盛りの高校生に生々しい話しちゃって♪ けどオバさん、偶にこうして主人との馴れ初めを人に話して、恥ずかしがるゴウさんの顔をみるのが止められなくって……♡」
「す、素敵なご趣味ですね……」
天然だよ! 超天然モノのサディストだよこの人!!
そりゃ私も生真面目気取って根っこはおっぱい星人で童貞臭さ全開のアカギからかって楽しむから気持ちは多少わかるけど、桁が違うよこの人! 絶対敵に回しちゃいけない魔女だわ!
しかしアレだなー……。
若き日の思い出(いや、今も若いけど……)を語りうっとりするアキナさんを他所に私は視線を現在、
今は無邪気で天使みたいなあの美幼女も、十年後とかにはお母さんみたいにロックオンした男をどんな手を使っても奈落の底に堕とす魔性の美少女になっちゃうんだろうか?
……よかったねアカギ? 出会ったのが今で。
もしゆーなちゃんパパみたいに、出会うの時期が思春期以降だったら、アンタみたいなチョロ助、絶対に逃げられないよ?
しかし先生と生徒、かぁ……。
「――お2人みたいな関係じゃ全然ないんですけど、ある意味私もアカギも近い間柄なんですよねぇ……いや、アイツと私がどうこうなるなんて、絶対あり得ませんけど?」
「そうなの!? 詳しく教えて!」
何となくご夫婦の話を聞き、自身とあの幼女に抱き着かれてニヤニヤしてるクマゴリラの関係性について呟くと、アキナさんは目を爛々と輝かせながら顔を近づけた。
一体この人は、どれだけ“師匠と弟子”の関係にロマンを感じてるの!?
「えっと……ほら、さっきもちょっと話しましたけど、私とアイツってGPDっていう自分で作ったガンプラ……プラモデルのロボットを戦わせるゲームをやってるじゃないですか? 私一応、部内じゃ1番作るのは巧いから、アカギを含めて新入生にビルディングの技術を仕込む係だったんですよ」
まあ、逆にバトルの操縦技術は部で最弱だから、こっち方面でしか貢献できないんですけどね。……などと心の中で補足した。
「わかった! その新入生の中でダイチくんが飛びぬけて優秀だったのね?」
「いえ、寧ろ新入生の中じゃ1番の落ちこぼれでしたね。とにかく要領悪くて鈍くさくって、ついでにあの通り無駄にデカいから部室を圧迫してたからぶっちゃけ邪魔だな~とか思ってましたね最初は」
基本的に1年の中じゃだれよりも真面目で熱心ではあったけど、その情熱が空回っていて、おまけに体育系のメンタリティだから先輩や顧問に雑用を頼まれ易く、部員全員のパシリみたいな奴だった。
……まあぶっちゃけ、入部した時点で製作や塗装に関しての技術は習得済みだったが、とかくガンプラのカスタムに関しては『武装やギミックを盛り込み過ぎて操作性やら燃費の悪い機体を作りがち』って悪癖があったりして、中々の劣等生であった。
しかし――
「――けどアイツ、根性だけはアホみたいにあったんですよねぇ」
GPDに於ける最大の短所(敢えてそこに美学を見出す奴もいるが)。
言うまでもなくそれは『ガンプラが壊れる』という点だ。
時間と情熱、ついでに学生の心許ない懐を消費して作り上げたガンプラが、たった1度の練習でも場合によっては修復不能になるなんて事もザラで、実際このゲーム仕様に耐えられなくて毎年部では意気揚々と入部した新人が1カ月と待たずに退部するというのはウチの学校に限らず全国の模型部に於いては伝統行事だ。
因みにただでさえ部員数の少ない弱小部である陽成の今年の新入部員は5人。
その内、夏の大会まで残った部員はアカギを含め2人だった。
そして皮肉にも、なまじガンプラの作成技術に優れた者ほどリタイア率が高い傾向があったりする。
結局の所、プラモ作りというのは『ガンプラが好き』という気持ち次第だ。
手塩にかけて作ったガンプラへの愛着が強ければ強いほど、破壊された際のショックは大きいし、それが何度も繰り返されれば『ガンプラは好きだけど、バトルは嫌い』『GPDってマジでクソゲー』なんて考えに至るのはある意味自然と言えるだろう。
そして当然、センスのない奴ほど負ける機会が多い=修復を経験する機会が多く、アカギは毎日の様にガンプラを破壊され続けた。しかし決して泣き言も、GPDや容赦のない先輩への呪詛も吐かず、何度も修復しては果敢に挑んできた。
しかも財源に関しては実家の定食屋の手伝い(バイトではなく家の手伝いという体でなんと時給は250円!)をしながらだ。そして何度も何度も修復を作業をしていれば、制作技術も操作技術も嫌でも上達する。
そうして愚直なまでのトライアル&エラーとスクラップ&ビルドを繰り返す内、いつの間にかあのバカは、部のエースと呼べる実力を身に付け、部員の誰もが一目置く存在になっていた。
アカギ・ダイチはビルディングの才能のもバトルセンスも平凡以下だったが、根性だけは全国級だったのだ。
「ホント笑っちゃいますよね? フツーあんだけ才能の無さを見せつけられたら誰だって『向いてない』って諦めるのに、あのバカ『昔から俺は、頑張る事しか能がありませんから』ってへこたれないんですよ。でもって、そんな1年生に尊敬されたら私達だって“万年2回戦止まりの弱小校”のままでいられないじゃないですか? 部全体が『目指せ全国』なんて空気になって、今年なんかいきなり都大会ベスト8ですよ」
「呆れた風に言ってる割に、ちょっと自慢げじゃないソウちゃん?」
「アハハ、男連中のアホみたいなノリがウケただけですよ」
アカギが入ってからというもの、それまで身内同士でまったりムードであった部活が一気に暑苦しくなった。
おかげで相手校の機体の分析とか、マネージャー的な立ち位置だった私の仕事の増えて大変だった。全部あのバカのおかげ……いや、所為だ。
「うーん、お話だけ聞くと、ダイチくんってとっても素敵な子だと思うけれど、ソウちゃん的にはナシなの?」
「ナシですね。そもそも身体はエロいけど顔は落第ですし、困ってる人がいりゃ誰から構わず手を差し伸べるのもカレシとしちゃマイナス。この間なんて、相手校の主将に気を遣って不利な状況で戦って負けたんですよ? 後、1番ダメなのは卑屈なトコですね。とにかく自己評価が低いからどれだけボロカスにディスられてもヘラヘラしてるんですよ! その癖、身内がバカにされるとキレるし、意味わかりません……」
本音を言えば、一緒に居て楽しい奴だとは思う。
からかう度に派手にリアクションするし、真面目な割にノリがいいから無茶ぶりにも文句を言いながら付き合ってくれる。
何より、他の人間が幸せそうだと自分の事の様に笑うし、誰かの不幸を知ると自分の事の様に哀しみを分かち合おうとする。
本当に、心底いい奴だとは思う。好きか嫌いかと言われれば好きだ。
けど、だからこそ……偶にふと思ってしまう。アイツは本当の所、心から誰も愛せないんじゃないか? 例え本当に好きな相手じゃなくても、求められれば拒まず受け入れてしまうのでは? と不安にさせられる。
私は……アイツとは逆で、自分が1番大切なイヤな奴だから、自分に心底惚れてくれる奴じゃなきゃ、嫌なんだ。
どうしたって愛するより、愛されたいって思ってしまう。
「そっか……ごめんなさいね会って間もないのに色々踏み込んだ話聞いちゃって。――けどそっかぁ~ならダイチくんにはユウナのお婿さんになって貰おうかしら?」
「アハハ、あんなんで良けりゃリボン着けて差し上げますよ♪ おーい! 良かったね~アカギ? アンタ10年したらカノジョできるよ♪」
なんて冗談めいたやり取りをして、この話は終わった。
・・・・・・
ダイチside
「今日は本当にありがとうございました♪ おにーさんたちに遊んでもらってユウナったらとっても楽しそうでしたよ?」
「いえ、こちらこそ今日は楽しかったです」
17時近くまで一緒に遊んでいた俺達はアサヒさん一家が車を停めている駐車場で別れの挨拶を交わす、因みに1日はしゃいでいたユウナちゃんは現在、お父さんの背中で気持ちよさそうに眠っていた。
「スー……スー……」
「ウフフ、この子ってばきっと起きたら大騒ぎでしょうね。ダイチおにーさんが居なくなって? 動物園でもクマさんとゴリラさんを持ち帰れなくて大泣きでしたから」
「ああ、結局最後まで動物と同カテゴリーなんですね……」
「ボフォ……!」
俺の後ろでお腹を抑え必死に笑いを堪える先輩。もういっそ笑い死ねばいいのに……。
「ウフフ♪ それじゃあこれでダイチ君、ソウちゃん“また、会いましょうね”♪」
と、最後にそう言い残し、アキナさんたちは車で去って行った。
また会いましょう、か。
「何だか不思議な人ですよねアキナさんって? すごい美人ですけどそこが知れないって言うか。連絡先とかも交換してないのに、あの人に『また』って言われると、何だから本当にバッタリ再会しそうな気がします」
「ああ、なんか分かるわソレ。――ニヒヒ、でもそれってチャンスじゃない? 10年後とかにゆーなちゃんと再会できたらアカギ、アンタ初恋のお兄さんとしてワンチャンあっかもよ~?」
「終始クマゴリラ扱いでしたけどね? ていうか普通、覚えてませんって5歳の頃の話なんて」
「さーて、それはどうだか……。さっ、私達も晩御飯食べに行こ! 今日はアンタの奢りで寿司ね?」
「何でですか!?」
「何でってそりゃ……美幼女相手にデレデレしてたことに対する口止め料? 後、どうせ今晩、私の水着姿想像してオカズにするでしょ? その出演料ってことで」
「デレデレしてないし、オカズにもしませんよ! 先輩の中で俺はどんなイメージなんですか!?」
「えっ? ロリコンのおっぱい星人だけど? 所謂1つのロリ巨乳好き?」
「なんだその救い難い性癖は!? 混ぜるな危険!」
年端もいかない少女に欲情しつつ、母性の象徴である豊かな双丘も求めるとか、性癖の歪み過ぎる! いや、確かにロマンは感じるけれども!!
「まぁまぁ、どっちみち私のおっぱいチラチラ見てたのは確かなんだしさ。ああ、それともアンタの家の店でご飯にする?
「なっ……! クッ! …………せ、せめて回る方の店で、手を打ってもらえませんか?」
「オッケー♪」
こうして俺、アカギ・ダイチの高校1年生の夏、財布の中身は早過ぎる冬を迎えるのだった。
JC時代のアキナ『センセー♪ 私に護身術、教えてください♡』
現代のユナ『ししょー♪ 絶対チャンピオンになりますからね♡』
受け継がれる遺伝子の業……!
因みに余談ですが、アキナさんは中学生の頃から基本、計算づくで行動するタイプで、直観と本能で行動するユナとは真逆だったりします。だけどとる行動は一緒!