ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
その後、どうにかこうにニシカワさんの誤解を解いた俺は何とか通報を免れる事を出来た。
最近はガンプラバトルを通じて一定の信用をえつつあったので完全に油断していた。
――どうして俺はただ普通にゲームをしてるだけで、こんな逮捕と紙一重の緊張感と隣り合わせの生活を送らなきゃならないんだ!?
「まったく……師弟仲がよろしいのは結構ですけど、少しは世間体を気にした行動をとってください! ユウナちゃんも、あんまり無闇に男の人に抱き着いたりベタベタしちゃダメよ? もう中学生なんだから!」
「お、お騒がせしました……」
「はーい……」
内心で多少、反論したくなる気持ちもあったがグッと抑え、平身低頭謝罪に徹する。
ニシカワさんとて何も好きで怒っている訳じゃない。
あくまで彼女の根本にあるのは『いたいけな少女=ユウナの身の安全を守る』という正義感なのだから!
――まあ、出来たらいたいけな成人男性の社会的地位にも多少、気を配って欲しいのだが……。
「ハァ、――ところで、明日に向けての調整はうまくいったんですか?」
「あ、ああ。まあ、4日しか準備期間がなかったから万全とまではいきませんでしたけど、出来る限りの事はしてあげたつもりです。――フフ、まあこう言っちゃなんですけど、格闘技限定で言えば中堅ランカーにも引けを取らないですよ? 俺のユナは」
ひと通り叱り終わり気が済んだニシカワさんは、ここ数日何かと気にかけてくれていたユナの仕上がり具合について尋ねてきたので、俺はドヤ顔で答えた。
まあ、多少身内びいきが入ってるかもしれないが?
この僅かな期間で対人戦の基礎的な動きはほぼ完全に習得したし、コスい手ばかり使う俺と何度も模擬戦をしたことで対応力もかなりついたと思う。
流石にまだメンタル面による動きの好不調の差が激しかったり、フェイントや駆け引きのテクニックは教えられなかったが、そこまでやるベテランはミドルランカーでは少数派だろうし、問題はないだろう。
「フフ、まあ才能は勿論ですけど、やっぱり吸収力が違うんですよね? そこら辺は流石伸び盛りの中学生と言うか……本当に将来が楽しみな
「……な、なんか気持ち悪い」
「何でですか!?」
俺が誇らしげにユナの成長ぶりを語っていると、何故かニシカワさんは眉間にしわを寄せて口元を抑え、まるで道端のゲロを発見した様な目を向ける。
「あっ、すみませんつい本音が……。その、仰ってることの意図は理解してるんですけど、女子中学生の素晴らしさを嬉々として語るアカギさんの顔がどうしても生理的に受け付けなくて……ごめんなさい」
「謝る体で更に傷つけるの止めてくれませんか!?」
いつもの様な誤解の類ではなく、ただ純粋に態度や顔をディスられれば、いくらハートフルボッコな状況に耐性がある俺でも凹む。
『生理的に受け付けない』は男が女に言われて傷つく台詞ワースト3に入るんだぞ?
ていうか今あなたが気持ち悪いって言ったのレッドだからねこんちくしょう!
「ししょーししょー!」
と、未だ嘗てないほど凹まされた俺に、今度は服の裾を引っ張りながらユナが声をかけてきた。……どういうわけか、笑顔で。
「心配しなくても大丈夫ですよ! 例え世界中の女の人がししょーのこと気持ち悪いって言っても、私だけはす~~っとお傍にいますから♡」
「それはどうもありがとう! けどししょーの事を想うならちょっと反論してくれない!?」
寧ろこういう時こそ普段よく言ってくれるノリで『ししょーの事を悪く言う人は例えカオリお姉ちゃんでも許しません!』とか言って欲しかったんだけど!?
一体俺が女性に嫌われる事で、君になんの得があるっていうのさ!
「いや、あの……流石に今にはすみませんでした。ごめんなさい。――時には本当の事を言われる方が傷つくこともありますよね……」
「だから謝る体で追い打ちかけないで!」
・・・・・
その後、俺とユナはガンダムベースを後にし、同じ商店街内にある老舗のとんかつ屋に来ていた。
「今から部屋に戻って飯作ると9時過ぎちゃうから、今日はここで食べよう。カツを食ってバトルに勝つ! ってな」
「い、いいんですか? ここ美味しいですけどちょっとお高い店ですよ?」
「あっ、やっぱりユナも来たことあるんだ? ってそりゃ地元だもんな。俺はまだ2回だけだけど」
「あっ、はい。年に2,3回くらい来てますかね? ウチのお店と同じで商店街が出来た頃からお店がある同士で、おじいちゃんとも仲良かったみたいです」
「ああ、なるほどな。――そういえばユナのおじーちゃんおばあちゃんってまだ存命なんだよな?」
「えっと、おとーさんの方はおかーさんと出会う前に亡くられたんですけど、おかーさんの方のおじーちゃんとおばーちゃんは、隣町でおじさんと2号店を経営してるんですよね。――し、ししょーのご両親は?」
「ん、こっから電車30分位の町で弟と暮らしてるよ。親父はどっかの会社の社員食堂で働いて、お袋は専業主婦。あと来年高3の弟がいる」
「あっ、弟さんいらっしゃるんですね? ……そ、その……い、いつかご挨拶とか……伺いにいかないといけませんよね? やっぱり」
「はっ!? いや、いいよ別に! ていうかご挨拶ってなんだご挨拶って!?」
「だ、だって! こんなに素敵なししょーを育ててくれた人達ですもん! お世話になった身としては感謝と、末永くよろしくお願いしますってお
「いいよそんなの! ていうかそんな大層な親じゃないから!」
「そんな言い方はいけませんよ!」
「あああああっ! 正論なだけに反論しづらい!!」
マズい!
そもそもなんで俺の家族に会いたがっているのかがよく分からんが、これはマズい!
ただでさえ、我が家では現在、28歳の女教師と真剣交際してる次男坊の問題でゴタつき気味だと言うのに、そこに来て23歳の長男が12歳の女の子を連れて挨拶に行ったら、
「ま、まあその話は追々な? そ、それより早く店に入ろう。もう8時過ぎだぞ!」
門限が迫っているのを口実に取り敢えずの所は話題を逸らし店に入る。
その場しのぎでしかないが、仕方ない。……何か、どんどん追い詰められていってるな俺。
「へいらっしゃい! ――って、久し振りじゃねえかユウちゃん? ってオイオイ、今日は彼氏連れかい?」
「ええ~~♡ 彼氏だなんて違いますよ~おじさ~ん♪ そんなのよりもっともっと大事なししょーです♡」
「ハハッ、そうかいそうかい! まあ座んなよ。いつも通り特盛りカツ丼でいいかい?」
「えっ、あ……や、やだなーおじさん! わ、わたしそんなにタベレメセンヨー」
顔なじみらしい店主さんと談笑していたユナだったが、メニューを問われた途端急に片言の言葉遣いになった。……もしかして、遠慮してる?
「好物があるなら遠慮なんかしなくていいんだぞユナ? とんかつ好きなんだろ?」
「えっ、で、でも特盛りカツ丼ってちょっとお高めだし……その……女の子がガツガツ食べたら変、じゃないですか?」
やっぱり俺の財布に気を遣ってたのか。それに加えて思春期特有の周囲の視線に対する自意識もあったわけだな? ――まあ、お年頃の女の子だから仕方ないのかもしれんが。
「店長さん、特盛カツ丼2つ、あと豚汁もつけてください。ユナ、ししょー命令だ。残さず食べなさい」
「ししょー!?」
自分を主張をスルーされ驚くユナ。俺はそんね彼女のおでこを指先でちょん、と押した。軽めのおしおきである。「あうぅ……」と頭を抑える姿が超可愛い!
「育ち盛りの中学生が遠慮なんかするんじゃない。それにこれは今日までのスパルタ模擬戦を頑張ったご褒美でもあるんだから、堂々と食べなさい」
「で、でもでも! 最近はししょーのおウチでお夕飯食べる時の食費も全部ししょー持ちじゃないですか? 私……ししょーには教わる立場なのに……本当なら、お月謝とか払わないといけないのに……」
「お月謝って……そんな大した事は教えてないし、前にも言ったけど俺がしたくてしてるんだぞ? それに、いくら安月給だからって可愛い弟子に飯奢るくらいの甲斐性はあるさ」
「…………ししょーは、大食いの女の子って嫌いじゃないですか?」
「寧ろ結構好きだぞ? ニコニコ笑顔で美味しそうに食べるユナ、可愛いと思ってる」
「か、かかか可愛いでしゅ!? わ、分かりました! 食べます! モリモリ食べます!!
寧ろおかわりしちゃいますね! だからいっぱい私のこと、見ててください!」
「ああ、うん。……けどアレだぞ? 無理に食べ過ぎなくてもいいんだからな?」
しまった。気を遣わせるのを止めさせようとするあまり少し太っ腹アピールをし過ぎたか。
ぶっちゃけ確かに、先月からここ、ゼロクアンタの制作やらもあって些か浪費がかさんでいるのはまあ、確かだったりする。
無論、あくまで月々の生活費や積立て預金などを差し引いた上での小遣いの範疇でのひっ迫ではあるのだが、久々のガンプラバトル復帰に浮かれて財布の紐が緩んでいたのは確かだ。
今後もユナが俺の部屋に通い妻……じゃない。通い詰める日々が続くのを考慮するなら、少しばかり金の使い方を考え直さんといかんかもしれん。
……具体的には月々の貯金を減らして生活費を増やすか?
しかしこのご時世、先々の事を考えると無駄遣いはできない。
修理費がかかるGPDに比べれば可愛いものだが、ガンプラバトルは金がかかる趣味だ。
勿論そこでケチるわけにもいかないし、健康面から考えてスポーツジム通いは止めたくないから会費を削ると言うのもなし。――となると後は、エロ方面か。
男の1人暮らしに於いては必需品であるエロ本、エロDVD、エロゲ―の三種の神器。
無論、俺も少なからず所持しており、ユナには『絶対不可侵!』と言明したベッドの下やクローゼットの中に隠している。
えっ、隠し方に芸がない? 余計なお世話だ!
だがいくらそれらのグッズやベッド脇のクズかごに詰まった丸まったティッシュの処理に気を遣っていても、部屋に存在し続ける以上、いずれ綻びが出る可能性はある。
純真無垢な思春期の乙女であるユナにそれらを目撃されるという事態は回避しなければならないというのも含め、いっそ今度の平日の休み、まとめてブック●フで売り払ってしまうのも悪くないかもしれん。
取り敢えずは本やDVDなど形があるエログッズを処分し、今後はPCによるダウンロードをメインコンテンツとしてエロスを楽しめばよい。部屋も広くなるし。
……ああ~でも俺、本なんかは紙媒体で楽しみたい派なんだよなぁ!
電子媒体が嫌だって訳じゃないが、本はエロか否かに関わらず紙で楽しみたい、悩ましい所だ!
「どうかされましたかししょー? 何だか凄い真剣に悩んでましたけど?」
「あっ、いや、何でもないから! さっ、座って待ってよう!」
先程から注文をしたきり席にも座らず腕を組んで悩んでいた俺に対し、ユナが小首をかしげて尋ねた。
いかんいかん、可愛い弟子の目の前でエログッズをどう処分するか考えるなど、人として間違っている!
「はいよ! メガ盛りカツ丼と豚汁セット2つお待ち!」
それから程なく、通常の1.5倍はありそうなデカい丼とお椀が2つずつ運ばれる。
蓋を開けるとこれまた分厚いロースかつが2枚も入った肉体労働者ご用達という感じのカツ丼が姿を現した。美味そうだが、重そうだ……
「わあああああああ~~~! やっぱり美味しそう♡ それじゃあししょー、いただきます!」
「おう。たくさん食べてすくすく育て」
「はーい♡」
そんな予想以上のボリュームに戦慄する師を他所に、常連であるユナは自分の顔ほどある大きさの丼を持ち上げてもぐもぐ食べる。
げに恐るべきは食べ盛りの食欲!
そして頬をリスみたいに膨らませながら満面の幸せそうに満面の笑みを浮かべるユナ、やっぱり超可愛い!! 思わず養ってあげたくなる!
「美味いか?」
「はい! とっても美味しいです♡ えへへ♪ 目の前にししょーがいると美味しさも3割増しです♪」
嬉しい事を言ってくれる。
と、そんな俺達の姿を見て、店主のおじさんは何だか感慨深げな顔をする。
「うんうん、ちょっと前までちっこかったユナちゃんも、もう男を連れてくる歳になったか~。おい、婿殿、その子を泣かしたら、衣に包んでカラっと揚げるから覚悟しとけよ?」
「泣かせるつもりはありませんけど、婿じゃありませんから。俺はこの子の只のししょーです」
「おうおうおう、こりゃまた懐かしいなオイ! 14年前にアキちゃんが連れてきたゴウちゃんも同じ様な事言ってたぜ? 『自分はアキナお嬢さんの、センセーですから……』ってな? ――でもって13年前にはユウナちゃんが生まれた」
「やめてくれません!? 子供のいる前でそういう話! ていうか仮に子供の頃から知ってる女の子がこんな二十歳過ぎた男と一緒にいたら少しは警戒してください!」
ニシカワさんみたいにこっちの話を聞きもせず問答無用で通報しようとするのも困るが、この人はこの人で物分かりが良すぎだろ! ていうか俺とユナはそういうんじゃない!
すると店主さんは『あん? 何言ってんだコイツ』という顔で頸を傾げた。
「警戒するも何も、年上の婿を連れてくるのはアサヒ家の娘の伝統だろ? 俺は
「えっ? ちょっと待ってください? ご主人、失礼ですけどお歳は……50代半ばくらいですよね? ユナのおばあちゃんをちゃん付けって――」
「あん? そりゃ10歳も下ならちゃん付けでいいだろ? 俺ぁ今年55で、ユウナちゃんのばあちゃん45歳。歳食ったけど、今でもなかなかのベッピンだぞ?」
「45っ!? えっ、てことは…………アキナさんを16、7歳で生んだってことですか!?」
逆算して判明したアサヒ家の恐るべき秘密に俺は驚愕する。ていうかユナのばあちゃん俺の母親より歳下なの!?
「ああ、知らなかったのか? ユウナちゃん家は40年くらいこの商店街で店を営んでるけど、代々娘さんは十代で男捕まえて婿にするんだ。別にそういう“しきたり”があるって訳じゃねえんだけど、何でか娘ばっかり生まれて、お年頃になると『もうこの人しかいない!』って情熱で相手を雁字搦めにしてなぁ。――――因みに歴代の婿は、大体揃ってちょっと幸薄そうな面してる」
「ちょっ、なんで俺の顔みて感慨にふけるんですか!? ていうか誰の顔が幸薄そうだ!」
先程から伝説を後世に伝えんとする語り部の様な口調でアサヒ家のとんでも武勇伝を語る店主さん。この人も完全に俺が新世代のアサヒ家の婿だと認識してるよ!
「ふむふむ……ガタイの良さはゴウちゃんそっくりだが、ボヤっとした顔つきユウジさん――ユウナちゃんのじいちゃんに似てるな? あの人はヒョロっとしてて普段は頼りねえけど、いざという時は身を捨てて他人を庇える中々のイイ男でな~。いやいやユウちゃん、なかなかイイ男捕まえたじゃねえか?」
「えへへへ♪ 自慢のししょーです♡」
「褒めてくれるのは嬉しいですけど、俺は別にユナの彼氏でも未来の旦那でもありませんからね!? ていうか、アキナさんやユナのお祖母ちゃんがそうだからって、孫も同じ道辿るとは限らないですから!」
「はいはいはいはい、昔のゴウちゃんもユウジさんもそう言って力一杯否定してたよ。けどアサヒ家の女からは逃げられないの。おとなしく諦めとけって」
「人をライオンにロックオンされたシマウマみたいに扱うの止めてくれません!?」
「おっ、うまいこと言うね~兄ちゃん! 実際、ゴウちゃんを見るアキちゃんの目とかまさにそうだったぜ? 首回りから覗く逞しい腕とか首筋みてよく涎垂らしてたっけ……まあ、今もだけど」
「聞きたくない聞きたくない聞きたくない!」
最早怪談話にしか聞こえないアサヒ家のエピソードの続きを拒み、俺は耳を塞いだ。
違うから!
ユナはそういう性的な目で俺を見たりなんかしてないから!!
大体この人の理屈は極端な見方をすれば『犯罪者の子供は犯罪者になる』っていう偏見と同じじゃないか!
血筋だけで人の運命が決まるなら【
そうとも、例えそれが親子数代に渡って続く伝統(?)だとしても、いつかは断ち切れるものだ。
だから俺は認めない。諦めない。絶対にユナと健全な師弟関係を維持し続けてやる!!
(ああ、よく分からないけど燃えてるししょーカッコイイ……♡)
な、何か急に寒気が!?
・アサヒ家は代々長女が婿を迎える家庭(因みにアキナさんには弟=ユナの叔父が1人います)。別に家訓とかで決まってる訳でも何でもありませんが、大体みんな12~15歳位に『この
・女性陣は性格こそ違いがあれど大体みんなド肉食。エロ本すら浮気と認定するレベルに嫉妬深い。その割に所謂“子沢山”でないのは“子供でも嫉妬の対象に入る”から(親子のスキンシップでも口にキスは許さない。一緒にお風呂は幼稚園まで)。一見人当たりは良いが、実も喧嘩っ早い。
・婿に選ばれる男達は共通点として年上(5~12歳差)。ガタイが良い人間もいれば線が細いタイプなど体格や容姿はまちまちだが全員が誠実で人が良く、どこか幸薄く押しに弱い。
・因みに出産周期が早い為、ユナから見て曾々祖母(78歳)まで存命。ユナ曰く『お年玉いっぱい貰えます♪』