ガンダムビルドダイバーズ REBOOT   作:キラメイオレンジ

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前回のあとがきで今週の投稿は難しいと書きましたが若干余裕があったので投稿。多分今週はコレ1本だと思いますが


第47話 ログイン不可!?

俺、アカギ・ダイチは昔から寝覚めの良いタイプだった。

 

1度眠りにつくと睡眠が深いが、寝る前に『この時間に起きるぞ』と決めると大体その10分位前に目を覚まし、間もなく起動するアラームを解除するタイプであり。覚醒後は割とすぐに行動できるタイプであまり寝ぼけたりもしない。

 

が、流石に今朝目が覚めてトイレに向かおうと扉を開けた瞬間は、自身がまだ夢現なのではと疑ってしまった。

 

「あっ、おはようございますししょー♪ もうスグ朝ご飯の支度が終わりますから、お着換えして待っててくださいね♡」

 

何故なら、華の独身生活を満喫している筈の俺の部屋の台所でエプロン姿の美少女が朝食の支度をしているのだ。それも、まるで当然の様に。天使の様な可憐さで。

 

「えっ……ユナ? えっ、なんで?? えっ???」

 

余りにも理解不能な事態に語彙力が死に、思考回路がショート寸前に陥りかける。

 

するとユナはそんな俺の表情から何を想っているのか察したのか、申し訳なさそうな顔で頭を下げた。

 

「えっと、ごめんなさいししょー、実は今日、楽しみ過ぎてあんまり眠れなくて……朝凄く早く起きちゃったから、ししょーに朝ご飯とお昼のお弁当を用意しようと思って、朝早くに合い鍵で中に入っちゃいました。――――ダメ、ですか?」

 

クッ、芸術的な角度の上目遣い! こんな表情をされて怒れる男が一体どれだけ存在するか? ユナは今日も可愛いな! きっと明日も可愛いぞ……!

 

「いや、まあ、確かに驚いたけど、別に怒ってはないよ? 俺の為にご飯作ってくれたんだろ? ありがとう。嬉しいよ。――それからおはようユナ」

 

「~~♡♡♡ もぉう! ししょーってば偶にガツンって怒ってもいいんですよ? でもありがとうございます! へたっぴなりに一生懸命作りましたから、たくさん食べてくださいね♪」

 

「あっ、ああ……それじゃあ俺はトイレに……っておおおおおっ!」

 

エプロン姿で身体をクネクネさせるユナと会話する中、俺は自らの失態に気づき慌ててトイレに飛び込んだ。

 

その……なんだ?

健康な男性が稀に起きる生理現象で俺の股間がその……テントを設営していたのだ。

 

その現象そのものは生理現象なので仕方ないが、問題は『女子中学生の前で股間を膨らませた状態でさわやかに挨拶をした絵面のヤバさ』だ。変態にもほどがあるわ!!

 

さ、幸いな事にユナが俺の股間の変調に気づいていなかったから事なきを得たが、もし気付かれたら『朝っぱらからエプロン姿のJCに欲情したド変態野郎』と思われるのは避けられない。師弟関係には致命的な亀裂が生じ、下手をすればユナが悲鳴を上げ、ポリスメンが襲来! 

 

ビルドダイバーズREBOOT・完! キラメイオレンジの次回作にご期待ください。

 

になりかねない!

 

危なかった……。しかしこれは考えようによっては由々しき事態だぞ?

 

もしユナが今後も俺の部屋に来て朝食を作るようになったら、俺は今後も絶対に女子中学生に見せてはいけない痴態を晒す危険があるという事だ。

 

今はまだ寒いから厚手の布団を被っているから良いが、夏場に薄手の掛布団になり、尚且つ寝相でそれをどかした状態で寝ていたとしたら? 更にその状態をユナに見られたりしたら……。

 

『ししょーのエッチ! 変態!! 今まで私のこと、そんな目で見てたんですか!? 最低です! 信じてたのに!! 大っ嫌い!!!』

 

あっ、ヤバい。今一瞬ガチで死にたくなった。

万が一にもユナに嫌われたりした俺、生きてく自信ないわ……。

 

実際、寝起き男子のテント設営は欲情とは関係ない純然たる生理現象であるのだが、それでも男性の男性たる所以が臨戦態勢に入っている状態は、まかり間違っても年頃の少女に見せる訳にはいかない。トラウマになったりしたら大変だし。

 

そうなると心苦しいがユナには今後、朝の出入りも禁止に――いや、そうなると『どうしてですか?』って聞かれる可能性がある!

 

そもそも、俺の為に早起きして朝食を作ってくれる甲斐甲斐しい愛弟子の好意を無碍になどできない!

 

ああクソ! どうすりゃいいんだ俺は!?

 

思わぬところで判明した今の生活のリスクに頭を抱えつつ俺は一先ず用を足し、着替えと洗面を済ませた。

 

……何故か今朝は顔がやたらとベタベタするのは何故だろう?

それに首筋にできた痕……虫刺されか? あっ、鼻毛飛び出てる。

 

 

・・・・・

 

 

「簡単なものですけど、どうぞ召し上がってください♪」

「いやいや、スゲー美味そうだぞ? それじゃあいただきます!」

 

こうして朝のゴタゴタを経て6時半。俺達はユナが作ってくれた朝食をいただいた。

今朝の献立は『喫茶店の朝ご飯』という趣だ。

 

バターをたっぷり塗った厚切りのトーストにスクランブルエッグと2本のウィンナー。レタスとカットしたトマト。そして喫茶暁自慢のブレンドコーヒー。

 

「本当はこのスクランブルエッグ、もっとトロトロにしたかったんですけど、未熟でごめんなさい」

 

「いやいや、12歳でこれだけ出来れば十分だって! それにお弁当と並行して作ってくれたんだろ? 十分すぎるよ」

 

ユナはまだ自分の家事スキルに自信がないみたいだが、俺からすれば100点以外の点数などあり得ない最高の朝食だ。そう評すると、ユナはちょっと複雑そうな顔をした。

 

「む~、ししょーはガンプラバトルの時は結構厳しいのに、それ以外だと弟子に甘々じゃありませんか? ……あんまり甘やかしちゃ成長の妨げになっちゃいますよ?」

 

「そ、そうかな? まあ、バトルだとどうしても熱くなっちゃうからな……。けど、美味しいのは本当だよ? 一生懸命作ってくれた事が伝わる。あったかいごはんだ」

 

「ま、またそうやって笑顔で褒める……」

 

嬉しさと不満が半々と言った複雑な顔で蚊を逸らすユナ。初めて見る表情だが当然可愛い。

 

「ししょーは確か、日曜日の午前中はいつもトレーニングやお部屋のお掃除をされるんですよね?」

 

「ああ、けど今日は朝から出かけるし、次の非番にでもするよ。今日みたいなイベントのある日はガンダムベースはいつもより1時間早く開店するらしいから、少しのんびりした後、8時位に部屋を出るか?」

 

「はーい♪ ……あっ! し、ししょー! その前に一旦おウチにもどっていいですか? ニチアサの録画忘れちゃいました!」

 

食後のコーヒーを口にしつつ今日の予定を離していると、ユナは好きな番組の録画予約を失念していた事に気づいた。

 

因みにニチアサとは日曜日の朝に放送される【プリキュア】【ライダー】【戦隊】の子供に大人気の番組が集中して放送される時間帯の事だ。

 

「何だったら俺の部屋のHDに録画しといてもいいぞ?」

 

「ほ、本当ですか? ありがとうございます! えっと……子供っぽいですかね? 私、もう中学生なのに子供番組なんて観て……」

 

「いや全然? ライダーと戦隊は俺も高校生くらいまで毎年見てたよ? プリキュアはスルーしてたけど。今やってるのは両方とも肌に合わなくて未視聴だけど」

 

玩具やDVDを購入する程のガチ勢ではないが、俺は結構特撮も好きだったりする。

 

ライダー、戦隊、ウルトラマンなんてさビッグ3は言うに及ばず、牙狼みたいな深夜作品や単発作品に関してもそこそこの知識はあった。

 

ただ子供の頃は『どんな作品でも全部好き!』だったが、大人になるとあれこれ好みが出てくると言うか、合う作品と合わない作品が出来るものだ。

 

今年は偶々ライダーも戦隊も好みに合わなかっただけで、番組が変われば取り敢えず数話は見るというのが俺のスタンスだ。

 

「そうなんですか? 私もプリキュアも好きですけど、ライダーと戦隊の方が好きなんですよね! 因みにししょーは、どんなライダーと戦隊がお好きなんですか?」

 

「あー……取り分け好きなのは所謂“平成1期”って分類される奴だな。クウガとか龍騎とか(ブレイド)とか特に好き。戦隊は――」

 

何ていつもとは毛色の違う『好きな特撮は?』トークでしばしユナと会話に華を咲かせた。

 

俺と彼女では年代差を考えて好みがかなり別れるかと思ったが、思いの外ツボが合うらしく、盛り上がってしまった。

 

それこそガンダム作品にも言える事だが、こういう世代を跨いで愛される人気シリーズは時にジェネレーションギャップも乗り越える魅力があって凄いと思う。

 

――因みにユナは、戦隊ではロボ同士が合体する『スーパー合体回』が特に好きらしい。

 

物凄い気持ちわかるわソレ!

 

 

・・・・・

 

 

そうして楽しい朝のひと時の後、俺とユナは8時丁度に部屋を出た。

 

通常は10時開店であるガンダムベースも、GBN内で大きなイベントがある今日みたいな日は1時間早い9時に開店するらしい。

 

だが昨晩ニシカワさんに『こういう日はGBN利用者も非常に多いので早めに来てください』と忠告されたので1時間ほど早く店の前で待つことにした。

 

これだけ早く待機していればGBN筺体の確保は確実だろう。

 

――などとタカをくくった自分を呪った。

 

『ええー、本日GBNのプレイゾーンをご利用予定のお客様にお伝えします! 本日は既に利用可能筺体の空きがございません! 繰り返しお伝えします――』

 

「はああああああっ!?」

「私達もうGBNできないんですか!?」

 

俺達が来た段階で既にガンダムベースの前には数十mの長蛇の列ができており、尚且つGBN利用筺体は全て埋まっているという惨状であった。

 

「遅すぎますよアカギさん、こういう大規模イベントに参加されるなら遅くても5時には店の前で並んでもらわないと……」

 

「5時!? ……完っ全に甘く見てた……やっぱりすごい人気なんですねGBNって……」

 

世界中で大人気という事は理解していたが、それでも普段は日曜日でも割と問題なく席を確保できていただけに完全に油断していた。

 

途方に暮れる俺達を発見してきてくれたニシカワさんも苦言を呈しながら今日はどこか同情的な視線を向ける。

 

「確かに今日の込み具合は少し異常事態ですね……。やっぱり各フォースの隊長やエースが一堂に介してぶつかるエキスパートクラスを観戦したい人が多いらしくて……」

 

「つまり大半は観戦希望者(ギャラリー)って事ですか……」

 

「ええ、一応『大会出場者以外の人は極力ご遠慮ください』ってこちらからも呼び掛けてはいるんですけど、店側としてはあくまで要請以上の事も出来ませんから……」

 

観客の為に出場選手がログインできない。

 

ある意味じゃ本末転倒とも言える現象が起きているが、かといって『選手の為に観戦目的の人はログインしないでください』というのもそれはそれで不公平を生む。

 

結局の所、選手の立場でありながら席を確保できなかった俺が悪いのだ。

 

「ししょー、私達、試合でれなんですか……?」

 

ユナが俺の服の裾を掴み、不安そうに尋ねる。

クッ! 俺の見通しが甘かったばっかりに、この娘にこんな表情(カオ)を指せてしまった。情けない! 不甲斐ない!

 

「心配するなユナ! 最悪、キミの分だけでも絶対席をキープするからな!」

 

俺自身の失態で俺だけが大会に出場できなくなるのは仕方ない。

だが、そんな俺の見通しの甘さに巻き込んで可愛い愛弟子のデビュー戦を台無しにするなど、師として絶対にしてはならない!

 

しかしどうする?

 

他のガンダムベースやGBN筺体のある模型店をネットで検索して駆け込む?

――いや、この店の様子を見る限り絶望的だ。

 

いっそ店で販売してる家庭用の機器を2人分ここで買う?

――正直経済的にダメージがデカいが……ええい、この際仕方ない!

 

俺は意を決し、クレジットカードを手にニシカワさんに家庭用機器の販売を請おうとする。

 

まだ開店前ではあるが家に戻って接続作業を考えると悠長に開店時間を待っている訳にもいかない。ここは常連ということに免じて……!

 

「……ハァ、仕方ない人ですね。大丈夫ですよアカギさん、ココに行けばログインできます」

 

――と、頼もうとした矢先、ニシカワさんは溜息をしながら俺にメモ用紙を渡してきた。

 

そこにはここから電車で1本移動した駅の最寄りにある『ガンプラBAR』の住所が書かれていた。

 

「こういう事態も想定して、知人でGBN筺体を置いてあるお店のマスターに頼んでおいたんです。本当は普段、日中は営業されてないんですけど、今回だけ特別ですよ?」

 

「ニ、ニシカワさん……!」

 

眼鏡をキラーン! と輝かせて、人生で1度は言ってみたい『こんなこともあろうかと』的な台詞を口にするニシカワさん! ヤダ、何このイケメン風女性店員さん! ちょっとキュンときちゃった!

 

「か、勘違いしないでくださいよ? 別にアカギさんの為に頼んだわけじゃありませんから。あ、あくまでユウナちゃんの為です」

 

こ、今度はツンデレだと!?

 

頼り甲斐のあるデキる女性っぷりを披露した直後でそんな古典的なキャラ……クッ、個人的にツボだ……! 俺の中で元々かなり高めだったニシカワさんに対する好感度が更にはね上がる!

 

「ありがとうございますニシカワさん! このお礼はいずれ必ず!」

 

これ以上にない助け舟を出してくれたニシカワさんに力一杯頭を下げ、俺は感謝の言葉を告げる。

 

もう本当、今の俺にはこの人が絶望的な戦場に颯爽と現れた後期主役ガンダムみたいに輝いて見えた。フリーダムとか、ダブルオーライザーとかみたいな!

 

「し、しー! こんな往来でそんなに大声で言わないでください! 他のログインできないお客さんに聞かれたらマズいですから! そ、それ開会式までもうあまり時間もありませんから急いでください!」

 

「あっ、そ、そうですね! それじゃあ、行ってきます! ユナ、急ごう!」

「は、はいししょー!」

 

恐縮するニシカワさんに促され、俺とユナは駅に向かって走った。

 

 

・・・・・

 

 

時間は午前8時20分。

俺とユナは電車に揺られながら隣の駅へと向かっていた。

 

「いや~一時はどうなるかと思ったけど、本当に良かったなユナ。ニシカワさんには今度改めてなんかお礼をしないとな!」

 

「そ、そうですね……むぅ」

 

九死に一生を得た様な心境で浮かれる俺だったが、ユナのテンションは心なしか低い。

というか、ちょっと俺を責める様な視線を感じる。

 

「……ししょーって、カオリお姉ちゃんのこと、結構好きですよね?」

 

「はっ!? いや、まあ確かに好ましい人柄だと思うけど……」

 

何と言うか、藪から棒的な質問を投げかけられ、ちょっと対応に困る。

 

というか最近、ユナは俺が少しでも他の女性と話したり褒めたりするとすぐに頬を膨らませて不機嫌になるのは何故だろう? これも何かと情緒不安定なお年頃故か?

 

「け、けどカオリお姉ちゃんにはずっと片思いしている人がいるみたいですから、そういう目で見るのはダメですからね!? カオリお姉ちゃんは“レッド様”って言う人の事が好きなんですよ!」

 

「ブゥウウウウウ!」

 

などと考えていたら、ユナの口から忌まわしき昔の自分(アホ)の名前が出てきやがった! この世で1番存在を知られたくないかった愛弟子の口から、こっぱずかじい過去の異名が!

 

「ユ、ユナ? ど、どこでその名を聞いたんだ……?」

 

「えっ? カスミちゃんからですけど、カオリお姉ちゃん、中学の頃にGPD……でしたっけ? 昔のガンプラバトルの大会に出場してた選手の人にずーっと片思いしてて、時間さえあればずっとその人の試合動画見てるって話してました」

 

「へ、へー……そうなんだぁ……」

 

「あっ、もしかしてししょー、カオリお姉ちゃんが好きなレッド様の事、ご存じなんですか? ししょーも同じGPDプレイヤーだったんですもんね! 戦ったこととかあるんですか?」

 

いや、戦うも何も俺なんだよユナ。――まあ、毎回毎回苦しめられているって意味じゃ戦ってるって言えなくもないけどな?

 

「あ、あー、直接会った事はないけど、俺達世代だと少~しだけ有名だったんだよ。俺と同じ00(ダブルオー)系の機体の使い手らしいよ? うん、詳しくは全然知らないんだけどね? ホントにマジで! 所詮地区予選大会止まりだし! 中2病なおりきってないアホだったし!」

 

「……珍しいですね。ししょーってあんまり、他人(ひと)の事を悪く言わないのに?」

 

い、いかん! 日頃の自虐癖が災いして墓穴を掘ったか!?

ユナは基本的に無垢で素直だが、一方で野生動物並に勘が鋭い所があるからな……。

 

と、ここで俺達の乗る電車は丁度目的の駅に到着した。――好機!

 

「ホ、ホラ! 降りるぞユナ! もう30分ちょいしか時間ないし急がないと!」

 

「えっ……ひゃ!」

 

俺は怪訝な視線を向けるユナを手を繋ぎ、少し強引に降車を促す。

実際、初めて訪れる場所だし、時間的に余裕もない。

そう、他の事を考えている暇などない

 

時に逆境は、別の逆境を回避する有効な手段になるのだ。

 

「わわっ! ししょーの手! ししょーからこんな強引に……エヘヘ♡」

 

ブルっ!

 

な、なんか今寒気が!?

目の前の窮地を脱したいが為に、別の奈落の扉を開いてしまった様な、そんな気がした。

 

 

・・・・・・

 

 

土地勘がない場所とは言え、俺の本職は配達員。

メモに書かれた簡単な地図と番地の情報さえあれば、目的の場所に最短で行くのは容易い。

 

しかし俺は今、別の問題に直面していた。

 

目的のバーへと続く道に並ぶのは仕事明けのサラリーマンが立ち寄る居酒屋やこじゃれたバー、スナック、キャバクラ、ホストクラブにソープ、果ては大人のおもちゃ屋etc...

 

ココ、思いっ切り歓楽街じゃねえええか!!

 

「ししょーししょー! 凄いです! なんかお城みたいな建物ありますよ! HOTEL……って旅行でお泊りするところですよね? ここって観光地なんでしょうか?」

 

「だああああっ! 指差すな! 興味を示すなユナ! そこはまだ、キミが興味を持っちゃいけないお城だから!」

 

RPGなどに登場するファンタジーな外観のラブホテルを指差し、目を輝かせるユナ。

 

そうだよね! ラブホってなんでか無駄にお城風だったり無駄にファンシーな見た目だから施設の意図を知らない子供は興味示すよな! 俺もそうだったよ!

 

ちくしょう、この手の施設の設計者には1度文句を言ってやりたい!

 

一体世のお父さんお母さんがどれだけ『パパーママー、僕もあのお城に入ってみたい!』なんて無邪気な発言に対するリアクションに困っていると思うんだ!?

 

「あ、あのなユナ? アレはユナが知ってるホテルとはちょっと違うって言うか、大人が遊ぶゆ、遊園地みたいなものみたいな……」

 

「そうなんですか? あっ、でも制服の女の子がお父さんっぽい人が入ろうとしてますよ!」

 

何とかユナのラブホ(お城)に対する興味を逸らそうとするが、そんな俺の気苦労を踏みにじる様に、ホテルの入り口からバーコード頭の太った中年と如何にも遊んでそうな茶髪の女子高生が周囲の視線を気にした様子で入ろうとしている!

 

違うぞユナ! それお父さんっていうか“活動中のパパ”だから!

 

ていうか何やってんだバーコード親父! 警察に突き出したろか!?

 

俺は余計なお世話と思いつつ正義感から彼らの前に向かい、行為に及ぶ前にストップを掛ける。

 

するとバーコード親父は俺と、次いでユナに視線を向け『アンタだって同じ穴のムジナだろ?』という視線を向ける。

 

俺はおっさんの胸倉を掴んだ。

 

「あの子がそんなまねをする様に見えるか? 俺のかわいい弟子をそんな穢れた目で見るんじゃねえ!! その未練がましく残したバーコード(最後の希望)むしり取るぞ!?」

 

俺の恫喝にバーコード親父は泣いて立ち去り、残されたJK女子は舌打ち。『どうしてくれんの? それともアンタが代わりに相手する? そっちの子と一緒に』なんて馬鹿なこと言ったから軽くチョップして『もっと自分を大切にしなさい!!』と怒鳴った。昭和の親父か俺は!?

 

 

「……ユナ、今見た事とこのお城の事は大人になるまで忘れなさい」

「?? なんでですかししょー?」

「なんでもクソもありません! ししょー命令です!!」

 

色々と心に余裕がなくなってきた俺は未だラブホ(お城)に興味津々のユナの手を強引に引きこの場から離れようとする。

 

どうでもいいが休日早朝の鎮まった歓楽街で強引に女子中学生の手を引っ張る男って絵面がヤバいよな? 傍から見れば俺もあのバーコード親父と同類ってことか……泣きたい!

 

「(ポー)♡」

 

一方、そんな横暴なししょーの振舞いに対するユナのリアクションは大人しい。

というか、何だかちょっと嬉しそうって言うか、恍惚に浸っている。

 

何でもない様な事で怒ったかと思えば、今みたいに普通なら感じ悪いと思うが態度に対し好意的な反応を占める。

 

――本当に、年頃の女の子って何を考えているのか分からねえな!




自分は仕事柄、夜間の歓楽街に配達に行くことがあるのですが夜の町は社会の闇でいっぱいです。最近は緊急事態宣言で大人しいですが(苦笑)

ユナは無自覚にMっ気があるので、ダイチに強引な態度をとられると寧ろ興奮したりします(笑)

【本作におけるGBN事情】
(※)あくまで本作独自解釈です。

・ガンプラをスキャンするという他のVRゲームには独自のシステムを実装している仕様上、GBNをプレイする為には専用の機器が必要。その為一般的なネットカフェなどではあまり普及していない(あっても精々席は1つか2つ)。

・ユーザーの内で最も多いのは近くにあるガンダムベースないし模型店やゲームセンターに置かれた筺体でプレイする事。因みにプレイ料金は1時間で400円程。3時間で1000円などのパック料金を実施してる店もある。

・その仕様上、模型店が閉店しゲームセンターでも未成年の退店が推奨される20時を境にログイン数はグッと減る。金銭的に余裕のある家庭の子や社会人は家庭用のコントローラーやダイバーゴーグルなどのセットを購入し時間に縛られずプレイできるが高価な為、購入者は少数派。また、持っていてもビルダー同士の交流を目的とし、ガンダムベースに通うダイバーも少なからずいる。

また、近年では酒場や喫茶店などにGBN筺体を置いた所謂コンセプトカフェ、バーなども増えつつあり、今回ダイチとユナが向かっているのもそうした“ガンプラBAR”の1つである。こちらはガンプラの販売や工作スペースがない場合が多く飲み物の値段なども高めの為、未成年の利用者が殆どいない。その分、落ち着いた雰囲気の中で大人のダイバー同士の交流が望める(ガンダムベースは中高生が多く、居辛いと思う大人ダイバーも割といる)。
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