ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
今回は他の作家さんとの初コラボとしてミストラル0さんの作品【ビルドダイバーズ:Finder】の主人公【グレイ】が登場します。
スマホのアラームで目を覚ました午前7時。
私は軽く伸びをして覚醒を促し、カーテンを開けて陽の光を浴びる。
まだまだ朝晩の空気は冷たいけど、日ごとに存在感を増していく太陽の温もりは暖かく、庭の梅も見頃を迎えている。春の訪れは近い。
着替えを済ませた私は朝食を摂る為にリビングへ、既に床暖房の聴いた室内では既に朝食を済ませた父がコーヒーを片手に難しい資料に目を通していた。
検事と言う仕事に就いている父は、常に厳格な表情で眉間に皺をよせ、休日も裁判の準備などで家で仕事をしている事が多い。
知性と理性に溢れ、仕事に矜持を持つ父を私は誇りに思う反面、娘としては働きづめの状態が少し心配になる。それは母も同じらしく『日曜くらいゆっくりしたらどうですか?』と私の分のオムレツをテーブルに置きながら苦言を呈する。
「この間から取り組んでいる案件、難しいんですかお父様? 確か、社会人男性が未成年の少女と保護者の許可なく生活していた事件、ですよね」
「ん? ああ、どうにも最近、この手の案件が多くてな。男女間の問題は、主観的な供述が多くて判断が難しいんだ。――まあ、ミズキには少し早い話かな? ハハハ」
――ムッ。
私は父の子ども扱いする一言が、少し憤りを覚えた。
忙しい中でも家族を決して蔑ろにしない良い父なのは分かっているつもりだけれど、私だっていつまでもお子様じゃない。
――ほんの少し、意地悪をしたくなった。
「――お父様、実は私、気になっている男性ができました」
「ブフォ!」
「まぁ!」
穏やかな笑顔から一変しコーヒーを吹き出す父と、好奇心をにじませる母。
その驚いた様子に、私の中で先程な憤りが霧散した。
「ゲホッ、ゲホッ! な、なんだいきなり……あ、あれだろう? ゲームの中で一緒に遊ぶ友人の事を言っているんだろう? い、いちいちそんなこと報告しなくてもよろしい!」
「ええ、まあ、そういう男性の友人は勿論いますが、私が言っているのは気になる男性――“異性として”気になっている殿方いるという意味ですよ? 私ももうすぐ中学3年生です。そういう相手がいても、不思議じゃありませんよね?」
「ど、どういう奴なんだそいつは! そ、そもそもゲーム内で出会った相手など……!」
「アラ? このVR隆盛の時代にそういう意見は些か時代遅れだと思いますよお父様? 確かに私はその方と現実でお会いした事もありませんし、どんな容姿をされているかはわかりませんけど、だからこそより人柄を知る事が出来るのではありませんか? ――とっても素敵な男性ですよ? 誠実で、真っ直ぐで、いざという時は凛々しいのですけど、可愛らしいところもあって……フフ、少しだけ歳の差があるんですけどね?」
「と、歳の差だと!? まさかミズキお前、成人男性と交際しているんじゃないだろうな!?」
ああっ、娘がどこぞの男に誑かされていると思い込んで狼狽えるお父様、可愛い……♡
ダイチさんを懸想する様になって自覚したことだけど、私はどうやら、大人の男性が狼狽える姿に魅力を感じる性癖があるみたいだ。フフフフフ♡
「誤解しないでくださいねお父様? 今のところは私が一方的に想いを寄せているだけですから。――その
仮にお父様が認めない中で私とダイチさんが逢瀬を交わしたら、或いは確かに法的な処罰の対象になるのかもしれない(程度によるのだけれど)。
しかし現状は私の片思いであり、日本国憲法に於いても『思想・精神の自由はいかなる場合に於いても侵されるものではない』と保証されている。
つまり、私が成人男性であるダイチさんを想おうと自由。
現実でダイチさんとお会いして、嫌がる彼をベッドの上で拘束してその上に跨り、『フフ、口では拒んでいる癖に、“ココ”はしっかり反応しちゃっているんですね?』と頭の中で妄想するのも自由なんです♪ フフ、昨晩は捗ってしまいました♡
「あっ、そろそろ時間ですね。それではお父様お母様、私今日はゲーム内で約束があるので、失礼しますね」
「あっ、待ちなさいミズキ! 一体相手の男はどんな奴なんだ!?」
朝食を摂り終えた私は狼狽える父に背を向け自室に戻り、GBNの家庭用筺体とダイバーギアを起動させる。
今日は観戦がメインなのでガンプラはスキャンせずにログインし、アヴァロンのフォースネストでキョウヤ隊長や副官のエミリアさん、カルナ先輩らと合流し、会場へと向かう予定だ。
・・・・・
――おい、あそこ見ろよ! アヴァロンだ!
――エキスパートクラスの大本命様の到着か。
――キャア♪ 私のキョウヤ様、今日も素敵♡
――いや、アンタ会話した事もないでしょ? 妄想は声に出すの止めなよ……。
――エミリアさん、相変わらキリっとしてて美しいな……。
――俺は断然聖女ちゃんかな? やっぱスゲェよおのおっぱい。
ー―お前、そればっかだな。
会場に着くや否や、私達を待ち受けていたのは無遠慮な視線の集中砲火だった。
羨望と畏敬、嫉妬や好奇、敵意――いくつもの感情が囁き声と共に無色透明の矢となって刺さる。
経験したことのない者からすれば或いは羨ましいと思うかもしれないが、見ず知らずの人達からあることないこと囁かれるのは落ち着かない。
特に男性が自分の胸に向けられる視線と言うのは、有り体にいって少し気持ち悪い――ダイチさんにならいくらでも観て欲しいけれど♡
「ミズキ、大丈夫ですか?」
そんな心乱された私を同性として気を遣ってくれるエミリアさん。
同じ副官と言う立場にありながら『俺だけ話題にされてない……』と少し傷ついているカルナ先輩とはエラい違いだ。
「大丈夫です。ありがとうございます。やっぱり凄いんですねアヴァロンって」
「なーに言ってんの? この中で隊長の次に注目されてんのはミズキだろ? 最近、巷じゃファンが急増してるみたいじゃない。【アヴァロンの聖女】ってさ?」
「…………皮肉にしか聞こえませんよ」
悪い人ではないけれど、少し軽いノリが苦手なカルナ先輩に茶化され、私は視線を下げる。
アヴァロンの聖女。
あのダイチさんと初めて出会ったヴァルガでの一件以来、私は密かにそう呼ばれるようになった。
曰く、『偽りの
事実、元ヴァイス・ユニオンのメンバーや彼らに迷惑を被った者の一部からは『厚顔無恥な薄汚いアバズレ』などと揶揄する輩もいる。まあ、聖女などより余程私に相応しいかもしれない。
そして、そう呼ばれる様になった経緯として、あのヴァルガの一件は『私の密告により駆け付けたキョウヤ隊長の粛正により終結した』という事になっている。
そう、表向きヴァイス・ユニオンを立ち向かい、私の心に勇気と正義を取りも出させてくれたダイチさんは、公式の記録としてあの時、あの場に居なかった事として処理されているのだ。
これはあの後、【アダムの林檎】でダイチさんが『俺みたいなどこの馬の骨とも分からないFランクが関わったなんて広まったら反有志連合とかいう連中に付け入る隙を与えます。あくまでクジョウさんやミズキさんたち“身内”がけじめをつけた。そう喧伝した方が収まりが良いと思います』と発案したからだ。
つまり私という“偽りの聖女”は、ダイチさんが自身の功績に対する称賛や尊敬を破棄した代わりに作られた呼び名なのだ。
ダイチさんという人は、究極的に利他的な人だ。
ご自身では『保守的な小心者』『とっくに伸びしろの過ぎた凡人』なんて卑下するけれど、その実力はアヴァロンでも通用するレベルだし、何より闘争を根幹とするこの世界にあって、戦う相手に対する敬意を忘れず、友愛や正義を貴ぶ高潔な精神性を持っている。
……後、そこはかとなくかもしでるマゾっ気が個人的に魅力的だと思う。
ベッドに拘束して初心で高潔なあの人の理性を口の中に入れた飴の様に溶かすところを想像すると……ゾクゾクする♡
『ダ、ダメだミズキさん……! こ、こんなこといけないよ……あっ♡』
『フフ、そんな事を言ってさっきっからずっとされるがままじゃないですか? 大丈夫ですよ? 全部忘れて、存分に堕ちてください♡ もし社会的に破滅しても、私が一生養いますから……』
フフ、ウフフフフフ♡
――おっといけない。朝からこんなふしだらな妄想に浸るなんてはしたない。
(エミリアさんエミリアさん、なんか例の一件以来ミズキって偶にとんでもなく邪悪な顔する時があるけど、大丈夫ですかね?)
(い、色々あるんじゃないかしら? 多感な年頃だし……)
好きな人との“理想的な未来”を空想する私を見て、カルナさんとエミリアさんが心配そうにチラチラと見てくる。本当に自重が必要みたいだ。
その後、知人に挨拶回りをする隊長の後ろに着き、様々な有名フォースのリーダーと対面した。
第七機甲師団のロンメル大佐に、先日の一件でもお世話になったアダムの林檎のマギーさん。虎武龍のタイガー・ウルフさんや、【シームルグ】のシャフリヤールさん。
そして、今や伝説のフォースと呼ばれるようになったビルドダイバーズの面々。
いずれGBN内に於いて知らぬ者のいないとされる有名人ばかりであり、当人たちは気安く声をかけてくれたが、正直相対するだけで軽い疲労感が溜まった。
それは単純に私が緊張しているというのも勿論あるが、隊長を含め上位ランクフォースのリーダーやエース級の人と言うのは、他のダイバーにない“圧”を感じるのだ。
このGBNという意識と数値の世界で、数多の戦いを潜り抜け多くの経験を蓄積してきたダイバー個人が積み上げてきた情報量の圧。――漫画などでよく使われる気の様なものだろうか?
「ミズキ、少し顔色が悪い様だけど、大丈夫かい?」
「あっ、はい……心配かけてすみません」
いくつかのフォースを回る内に段々と口数が減ってきた私の変調に気づいた隊長が身を案じてくれる。私は心苦しく思いつつも、許可を貰い、一旦別行動をとって休むことにした。
アヴァロンの制服だと人目を引いてしまうので、衣装を昔使っていたシンプルな物に変え、自動販売機で仮想紅茶を購入し、隣接するベンチに腰を掛けた。
眼前に広がる広場では、老若男女、様々なダイバーが談笑したり、記念撮影をしたりしている。私はそんな喉かな光景をしばらく眺めていると、カメラを持った1人の男性ダイバーが近づき、声をかけてきた。
「やあ。君、アヴァロンの聖女のミズキさんだよね? 少し話をさせてもらっていいかな?」
自分で言うのも図々しいと思うけど、ダイバーとしての私は、それなりに男性から声を掛けられる。そして役その9割はナンパ目的であり、そのほぼ全員が私の顔ではなく胸を凝視する失礼な方たちばかりだが、割と頻繁に声を掛けられる。
聖女などという分不相応な通り名がついてからは、ますます顕著になった。
しかし眼前にカメラを持った男性からは、そうした手合いが持つ下心が見られず、キチンと私の目を見て、気さくだが馴れ馴れしさを感じさせない距離感で声をかけてきた。
異性に対しても余計な雑念を抱かず、適切な距離感で接する落ち着いた雰囲気。恐らくは成人男性、それも人より深い経験を積んだであろうことは容易に想像できた。
「どうちらさまですか?」
――だが、それ以上に制服を着替えた私を一目で“アヴァロンの聖女”と言い当てた事に対する警戒心が態度を硬化させた。
青年は『ああ、ゴメン』と簡単に詫びながら、ダイバーとしての個人データを提示した。
ダイバーネーム:グレイ
ダイバーランク:C
フォース:無所属
「俺はグレイ。GBNでフリーのカメラマンをしてるんだ」
「カメラマン? ……最近調子に乗った“裏切り聖女”の黒いお腹でも探りに来たんですか?」
情報を開示し、友好的に接してくれるグレイさんに対し、私はあくまで懐疑的な態度で接する。
悪い人ではない、などと直感的に人の善悪を測りきれる程、私は人生経験が豊かではない。
寧ろ、初心者狩りやタクトさんの件で、他人を信用するのに時間を要する猜疑心の強い女になったという自覚がある。我ながら、嫌な成長だ。
そんな私に対し、グレイさんは少し困った顔をしながら、接し方を苦慮している様子だ。
私はそんな彼に対し、核心を突く質問をした。
「カメラマン、というのは要するに情報屋の暗喩か何かですか?」
「えっ、違う違う! どちらかというと情報は売る方じゃなくて買う方かな? GBN内で噂になってる若手とか、今日みたいな大きなイベントを取材したり、後偶にフォースから依頼されてPR動画の撮影をしたり。好奇心はある方だけど、それをメシの種にしたり、面白おかしく捻じ曲げたりはしないよ」
「つまり、言葉通りカメラマン、だと?」
私の事を疎ましく思うヴァイス・ユニオンの元・構成員や反有志連合を掲げる手合いが差し向けた輩かと警戒するがグレイさんはそれを否定。
証拠とばかりに実際に仕事で撮影した中堅フォースのPR動画などを見せた。
私は『失礼しました』と謝罪した後、改めてグレイさんの話に耳を傾けた。
「取材と言うのは、件のヴァイス・ユニオン解体についてですか?」
「うん。――正確に言えば公表された顛末に存在しない。ヴァルガでヴァイス・ユニオンの十数体のガンプラを相手に大立ち回りをした“シングルドライブのクアンタ”についてかな」
「(っ!) ……………なんのお話ですか?」
グレイさんの口から出た特徴的なデチューンが目立つダイチさんの機体が浮かび、私は咄嗟にしらばっくれた。
「やっぱり、噂は本当みたいだね?」
しかし所詮は人生経験の浅い女子中学生が取り繕った俄仕込みポーカーフェイス。
深い人生経験を感じさせるグレイさんにはあっさり看破され、どころか不確定情報だったらしいゼロクアンタの存在に確信を持たせてしまった。
すみませんダイチさん……!
「そんなに警戒しなくても、暴き出して公表しないから安心して。当人達が真相の発表を望んでいるなら兎も角、暴露する様な真似をするつもりはないよ。あれこれ調べるのは、俺はあくまで、個人的に興味だから」
動揺する私に対し、グレイさんは私に対し安心感と信用を得ようと紳士的に接する。
実際の所、彼が自らの承認欲求を満たす為に他人の不利益を省みず情報を巻き散らす手合いである可能性は大いにあった。
しかし、余計な言葉で脚色せずシンプルに『そんなつもりはない』と言い切った彼の言葉には不思議と説得力があった。
なので私は、ダイチさんという個人の情報を伏せつつ、あの日ヴァルガであったことの真実をグレイさんに打ち明けた。
私が嬲られる初心者狩りの姿に心を痛めつつタクトさんを停められなかった不甲斐なさ。
そんな私に代わり、本当の正義を示してくれたゼロクアンタの雄姿。
そして、立ち尽くす事しかできなかった弱い私に勇気を与えてくれたダイチさんの言葉。
胸の奥に秘めた宝箱の中身を披露する様に、私は実名を伏せつつ、ダイチさんが如何に高潔で素晴らしいダイバーだったかを話した。
“カシャ”
そうしてひとしきり話を終えた直後、グレイさんは首にぶら下げていたカメラのシャッターを切り、私の顔を撮影した。
「ああ、いきなりごめん。けどミズキさん、今凄くいい顔してたから。さっきまでは何だか、胸に何かがつっかかったみたいな昏い顔をしていたけど、今はとても穏やかで幸せそうに見える。――もしかして、そのクアンタのダイバーの事、好きなんじゃない?」
「なっ……! 違っ……いえ、そうです……ね。恋慕してます」
秘めた想いを暴かれ咄嗟に否定しようとしたが、私は敢えてそれを止め肯定した。
苦し紛れに取り繕っても、この人生景観豊かなカメラマンさんを誤魔化せないのは既に理解していたし、『ダイチさんを男性として愛している』という気持ちに何ら恥じる要素がないからだ。
「話を聞かせてくれてありがとう。それじゃあ、俺は他に取材することあるからこの辺で、あっ、これはお礼がわりに」
「あっ、ありがとうございます」
他に所用があるらしいグレイさんは、最後に撮った私のフォトデータを転送してその場を去って行った。
それから私はしばし、貰ったフォトを眺めた。
ダイチさんの活躍を騙る私のフォト――自覚していなかったが、その顔はとても穏やかで、頬は僅かに赤く染まっていた。
自分で言うのも変な話だが正しく“恋する乙女の顔”だった。
直後、カルナさんから有視界通信の着信が入る。
「あっ、ミズキ大丈夫? ぼちぼち開会式が始まるけど、これそうか?」
「あっ、はい。大丈夫です。――休んだら楽になりましたから。すぐに合流します」
体調の気遣ってくれるカルナさんに対して、私はそう返した。
実際、偽りの聖女として向けられる羨望の視線や上位ランカーとの対面で蓄積した疲労感は完全になくなり、今はまるでお風呂上がりの様な清々しい気持ちだ。
――多分、私は無自覚の内に、あの日の出来事を胸に秘め、聖女など称賛され続ける事に罪悪感を募らせていたのだろう。
例えそれが全てを円満に修める方便だとしても、他でもないダイチさん自身が望んだ事だとしても、本来称賛されるべき彼が陰に潜み、咎めを受けるべき自分がその称賛を受ける事に心苦しさを覚えていたのだ。
だけど今、グレイさんにその事を打ち明けた事で、ある意味で懺悔を済ませた様な気持ちに慣れた。
無論、自分がヴァイス・ユニオンとして行ってきた所業やダイチさんに対する感謝を忘れるつもりはない。だけど、ほんの少しだけ、肩の力を抜いて前を向いてあるけど様になれた気がした。
他人様の作品のキャラを使うって難しい……(汗)
ちゃんと書けたかな?
失礼がなかったかなって不安になってしまいます(汗)
改めてミストラル0さん、ありがとうございました!
最後に割とどうでもよい作品情報:ヒロイン共の性癖編。
ユナ
『ししょーに好みの女の子に調教されて、最終的に襲ってししょーの物になりたい』
ミズキ
『ダイチさんを拘束して押し倒して、私なしでは生きていけない身体にしたい』
クロミネ
『お互いに壊れるまでぶつかり合い、壊し合いたい』
ダイチ
『普通に健全な恋がしたい!!!』