ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
『それではこれを持って開会式を終了とし、ミドルクラスのバトルは予定通り1時間後の午前11時より開始とする。出場選手は試合開始10分前までに事前に指定した場所に集合する様に!』
クジョウさんのスピーチの後、再び進行役となった
出場選手の約半数にあたる250名にとって、この1時間という時間を如何に過ごすかは勝敗を左右するといっても過言ではないだろう。
ある者は開会式終了と同時に添付されたバトルフィールドのマップを広げて自身のガンプラにとって最適な戦場を検討し、またある者はシステムウィンドを展開して自身の機体の最終チェックを行っている。
また、ある者達は――
「つまりこの城をいち早く陣取って、時間いっぱい籠城する訳か……」
「けど開始時はそれぞれランダムに転送されるんだろ? 運要素が絡んでくるとなるとそれ一択ってのもな……」
「なあ、アンタ狙撃手だろ? 俺がグシオンリベイクでタンク役を引き受けるから組まねえか?」
「ガンダムフレームか。確かに頼もしいけど……最後に裏切られるたら俺詰みじゃん。パス」
と、言った様に顔見知り同士で即席フォースを組み、生存率の底上げをる為の戦略を練っている。
恐らく、敢えてこうした
「よし。ユナ、俺達もマップを確認してプラン練るぞ」
「ハイししょー!」
他のダイバー達に倣い、俺達もアイテムストレージからマップデータを展開し、バトルステージを確認。
250体のガンプラが暴れ回る事を想定されたステージは、中央に広がる荒野を取り囲む様に森林が広がり西部には水中型ガンプラが真価を発揮できる湖畔。南部には籠城戦を展開し易い西洋風の城(ガンプラサイズの大型のもの)。各地に狙撃に適した浮島が点在している。
「1番の激戦区になるのはやっぱり中央の荒野だな。多分開始10分でビームが飛び交う修羅場になる。ユナ、キミならどうする?」
「んー、私のブレイジングエクシアはあんまり飛び道具ないから、ビームを射線を取り難い森の中で戦った方が有利……ですかね?」
「うん。ちゃんと地形特性についても勉強してるな。エライぞ。けど密林は密林でサバイバルバトルである意味最大の力を発揮できるステルス型の温床になるからな。そういう搦手を駆使するタイプはある意味、砲撃型以上にユナにとって天敵になるからな。ついでにいうとサブマシンガンみたいな小型火器を携行して奇襲なんてパターンもある」
「うえぇ……森は森で危険がいっぱいなんですねぇ」
「ああ、けどユナが今言ったみたいに視界が開けた場所に比べると狙撃や『とりあえずぶっ放しとけ』的な雑な砲撃やダイバーの空間認識能力に依存したビット系の封じられるから悪くない」
『バトルは地形を利用せよ』
これは黎明期から言われ続けているガンプラバトルの格言の1つだ。
俺が尊敬するガンプラファイターの1人【イタリアの伊達男】の異名を持つ【リカルド・フェリーニ】も決して特殊機能がある訳でもないウイングガンダムの改修機【フェニーチェ】でプラフスキー粒子を応用した伝説の【ビルドストライク】や【ガンダムX魔王】なんかと互角に渡り合ったのもそうした“ファイター自身の対応力”が大きいだろう。
「うーん、こうして考えると、格闘型って結構不便なんですね……。やっぱりブレイジングエクシアもライフルとか持った方がいいんでしょうか?」
純格闘型にとっては避けられない“射程の問題”に直面し、自分のバトルスタイルに疑問を悩むユナ。俺は内心、それが“嬉しかった”。
今の自分やガンプラに不安や不足を感じ、思い悩む。
それは、彼女がダイバーとして『今より高みに行きたい』という想いの証なのだ。
「ユナが自分で考えてそうしたいなら、俺は反対しないよ。だけどその前に、1つ質問する。――ユナは、ライフルやバズーカなんかを持った状態で、或いは背中や腰に懸架した状態で今迄みたいに動けるか?」
「う、う~ん……むずかしいかも、です」
「そうだよな。装備や装甲を増やせば重くなる。重くなれば動きが鈍くなる。それを補う為にスラスターを増設すれば、燃費が悪くなる上、動きが更に大味になる。“足りないものをパーツで補う”って言うのは、それだけ“本来の強みを失う”って事なんだ。ユナは武器盛り盛りでスラスター便りの雑な機動しかできないブレイジングエクシアで戦いたいか?」
「た、戦いたくありません! ブレイジングエクシアは“ビュン!”って動いて“バシッ!”って攻撃を決める。そうじゃないと
「そうだよな? 勿論、ビルダーの適性や嗜好によってはそういうカスタムが合ってる場合もあるけど、俺個人としては“足したら引く”は改造の大原則だと思う」
これはダイバーの数だけ答えのあるテーマだが、『貴方にとって、ガンプラとはなんですか?』と問われれば、俺は『自分の魂を形にした戦う為の剣』と答える。
古来より、剣は単純な武器としてだけでなく儀式に用いられることもある神聖な武器であるが、その本質は大切な人や誇りなど、かけがえのなうものを守る為の牙や爪の代替品だ。即ち、研ぎ澄まさなければならない。
“リソース”という概念がある以上、1つの長所を持たせれば短所も1つ生まれ、短所のない剣を鍛え上げれば、長所もない剣になる。
強さと弱さは、正反対に見えて表裏一体なのだ。
「足したら引く、ですか……。けど、それだと弱点をそのままにして戦うってことになるませんか?」
「うん。勿論、問題点があると知りながら放置するのはアホだ。けどガンプラには1つだけ、どれだけ追加してもリソースに影響を及ぼさないパーツが存在するんだ。――俺達ファイターっていうパーツがな」
「私達が、ガンプラのパーツなんですか!?」
「そう。聞いた印象は悪いかもしれんが、人とガンプラが合わさってこそのガンプラバトルだからな」
尖った機体を作った者は自らの技量で強さを伸ばし、弱さを補う。
バランスの良いスタンダードな機体を作った者は、自身の技術によって強さを生み出す。
それが本当の人機一体であり、真の意味でガンプラを愛する事なんじゃないかと思う。
「つ、つまり飛び道具がないブレイジングエクシアの弱点は、私の頑張りで補えってことですかししょー?」
「その通り。勿論、ししょーとして『後は気合で乗り切れ』みたいな無責任なことを言って突き放す気はないから安心してくれ。時間はないが、こういう状況での格闘型の立ち回りについて教えるから、よく聞いてくれ」
「は、はい!」
それから俺はユナに10分程かけて、『不特定多数の敵と対峙した際の立ち回り』について教えた。
これらは所謂“小技”若しくは“小手先のテクニック”と言える代物であり、俺の様な才能に乏しいファイターが天才タイプとのポテンシャルを補う為に使う類の物である。
その為、本来なら経験の浅い内から多用すると成長を阻害する可能性もあるのだが、俺の見立てではユナは既にファイターとして基礎が出来つつあるし、あくまで持ち味の格闘センスを活かすエッセンスとして用いるなら問題ないだろう。
「かなり早口で説明したけど、分かったか?」
「勿論です! ししょーの教えは一語一句だって聞き逃しません!」
俺の質問に対しユナは力強く頷き、快活な返事をする。
この素直さはもまた、この
パチ、パチ、パチ!
その時、俺達の後ろから乾いた拍手が響いた。
「いやぁ、なかなかタメになる授業を聞かせて貰ったよ。大将」
「えっ?」「ふぇ?」
振り返るとそこには、ガンダム00に登場する【アリー・アル・サーシェス】と瓜二つの姿をしたダイバーがいた。
否、ダイバールックだけではない。声や何気ない仕草、粗野な立ち振る舞いの中に知性を感じさせる雰囲気など、かなり高いレベルでサーシェスを“演じて”いる。
つい最近、
「……どなたですか?」
原作のキャラクターがキャラクターだけに、俺は反射的にユナを自分の背後に隠す様な位置を取り、警戒しながら訪ねる。
よもや本物、などと荒唐無稽なことを考えているわけではないが、このダイバーからはそこはかとなく『信用してはならない』と感じさせる何かがあった。
「ああ、挨拶もなしにいきなり悪かったな? 俺はアンタたちと同じミドルクラスに参加する【ノハラ】。御覧の通りサーシェスかぶれ所謂一つの“ロールプレイ勢”って奴だ」
「……ミドルクラス? アンタが??」
本家サーシェスを踏襲した妙な馴れ馴れしさで自己紹介をするひろし……じゃなかったノハラだが、俺は直観的に彼が“嘘つき”だと判断した。
ガンプラや戦いを見た訳じゃないから断言しきれないが、この男、相当の実力者だ。
「ハハッ、まあランクなんざアテにならねえよな? あんなもん、大した実力がなくても時間をかけりゃ誰でもBには上がれるもんだし、そもそも“最初は全員Fから”なんだから、肩書に不相応な奴が居てもおかしくねえ。――例えば、アンタみたいなGPD復帰組みたいな奴とかな?」
「っ! ……初対面だと思ったのは俺の勘違いか?」
「いいや。ただヴァルガじゃアンタ、密かに噂になってるんだぜ? ヴァイス・ユニオンのアホ共を1人で蹴散らした謎の“シングルドライブのクアンタ使い”ってな。で、実物を見てピンときたって訳さ」
カマをかけられたって訳か……。
別にGPDプレイヤーであること自体は隠している訳じゃないが、口ぶりから察するにこのノハラとかいう中堅規模の会社で係長となやってそうな男も、ただのミドルランカーという訳ではないのだろう。
――なら俺も少し、カマをかけ返してみるか。
「そういうノハラさんは、“普段は”どういう姿をされてるんですか? 察するに相当の力を持ったフォースのエース、とお見受けするんですが?」
「……へぇ。やっぱり相当キレるなアンタ? いいね。そうでなくちゃ口説き甲斐がねえ。お察しの通り、俺は普段とは別のアカウントーー所謂“サブアカ”って奴でダイブしてる。その理由はまあ、言わなくてもわかるだろ?」
「……“確実に勝てる
「ハハハッ、そういうこった♪ まあ、実際に同じことを考えてる連中が俺の知る限り後10人位はいるんだけどな? ククク、運営がガバガバの規定設けたお陰で楽に稼げそうでありがてえぜ」
俺に計画を暴かれた事などさして気にもせず一笑するノハラ係長……違ったノハラ氏。
一方、話を聞いたユナは眉間に皺を寄せ、異議を申し立てた。
「それってズルっこじゃないです! 本当は強いのに弱いフリして参加するなんて、ヒキョーです!!」
実に若者らしい、曇りのない真っ直ぐな正義感を持ってノハラを非難する。
確かに、ユナの言い分は正論だ。
元来、経験や実力差からくる不公平を解消する為に設けたクラス制の意図をルールの抜け穴を利用してスルーし、利を貪る。
まさしくハイエナの所業だ。しかし――
「ハッ、そいつぁ言いがかりってもんだぜお嬢ちゃん? 俺はただ、いつもと違う
「っ!! あなたみたいな人とししょーを一緒にしないでください!!!」
自分に向けられた非難を軽くいなした上で、俺にその矛先を向けるノハラ。
屁理屈も甚だしい言い分だが、一応理屈が通っているだけに質が悪い。
ダイバーネームや声は『妻と2人の子供+犬を養う気の良い父親』風なのに、思想や言動は狡猾で“悪い大人”そのものだ。
「ううぅ……!」
「ユナ、唸るな唸るな。俺は別に気にしてないから。――それでノハラさん、時間もありませんし、そろそろ本題に入ってくれませんか?」
これ以上ユナの前にこの男を居させると、また襲い掛かりそうなので俺はノハラに目的の提示を促す。
こういう手合いは、何の意味もなく声をかけたりましてや他人に素性を明かしたりしない。
必ずなにがしかの目的があって然るべきだ。
「話の早い奴は嫌いじゃないぜ? なら本題から言わせてもらうが――どうだい兄ちゃん、俺らと一緒に“同盟”を組まねえか? 目標は、剣聖および有象無象のミドルランカーを皆殺し。俺とアンタ、それと特別にそこのお嬢ちゃんも含めた総勢13人でポイントを山分けするんだ。悪い話じゃないだろ?」
先日、数年ぶりに某嵐を呼ぶ5歳児アニメを観たのですが、相変わらず面白かったです(笑)
それで足の臭いお父さんの声、今の森川さんもイケボで良いと思うのですが、やはり個人的にはリアルタイムで見た藤原さんのイメージが強い。
亡くなられて1年以上経ちますが、本当に素晴らしい声優さんだったと思います。
作者はひろしもサーシェスもアイアンマンも大好きです!
【作中キャラに質問 Q、貴方にとってガンプラとは何ですか?】
ダイチ
『作り手の魂を形にした戦う為の剣。ダイバーは皆、それを振るう戦士であると同時に鍛冶師でもある。故に大切なのは武器と使い手の一体化。過剰な装備や機体能力への依存は邪道』
ユナ
『ししょーの指導とパーツで作ったブレイジングエクシアは私とししょーの愛の結晶です! とっても大事なパートナーで、一緒に強くなる娘みたいに思ってます♡』
クロミネ
『時間と手間をかけて作り上げたガンプラは言ってみりゃそいつの魂の具現化だ。だからこそ、そいつをぶっ壊すのは作り手の魂を踏みにじることと同義だ。だからこそ、面白ぇ!』
皆さんにとって、ガンプラとはなんでしょうか?