ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
「そうだ! あのナドレの娘はどうなった!?」
勝利の安寧から数瞬呆けてしまった事を自省しつつ、俺は彼女と交戦している筈のビルゴを索敵した。
最後に会話を交わしたのは約20秒前。
初心者が使う素組みの機体ならそろそろトランザムの活動限界が来る頃だ!
ピピッ、という電子音声が周囲の残存機体の位置と名前を表示。
少女のガンダムナドレは幸いにも自壊前に決着をつけたらしく、俺は頼りない推進力になったゼロクアンタを何とか飛行させ、彼女の元へ合流。
しかしそこで思わず、絶句した。
『あっ、先輩さん! よかった……そっちも勝てたんですね』
こちらを確認すると無事を喜んで涙目になってくれる彼女だったが、そんな優しさとは裏腹に膝を衝いた状態で待機していたナドレは凄まじい状態だった。
女性を思わせる白く細いボディは焦げ目と泥にまみれ、その手足はフレームから歪んでいた。長い髪が特徴の頭部に設置されたV字アンテナも損失し、まさしく満身創痍という体だ。
そして、そんなナドレの近くにはボコボコにされた状態のビルゴが倒れていた。
『あ、ありえねぇ……あのガキ絶対頭おかしいよ……』
どうやら戦闘不能状態に陥るも爆散は免れたらしいが、通信から漏れる声は酷く怯えたものだった。
『あっ、先輩お疲れっした! いや~流石っスね痺れました! 自分、最後まで先輩が勝つって信じてましたよ☆』
そこへ彼女のリエさんと共にアキラが合流。
何とも白々しい態度が嘘臭いが、今そこはどうでも良い。
俺はナドレの娘に聞かれない様にアキラにだけ個別通信し、彼女とビルゴの戦いの顛末を尋ねた。
『あっ、それならミッション終了後に動画で録画映像が確認できまスよ。ってありゃ? いつの間にかミッションがクリア表示になってません?』
「あっ、ホントだ」
そもそもチュートリアルミッションの最中だという自体を忘れていた俺は、いつの間にか操作パネルに表示された【MISSIONCOMPLETE】の表示に気づき首を傾げた。
確か予定では、後3機のNPC機体を倒さねばならない筈だったが……。
まさか、あの3機の初心者狩りを倒すのが勝利条件??
状況が飲み込めず首を傾げていると、そこへ新たな敵機接近を告げるアラートが鳴る!
俺は咄嗟にゼロクアンタを上昇させるが次の瞬間、今しがたまで機体があった場所にヒートロッドが叩きつけられた。
そして巻き上がれた土煙の中から、荒れ狂うがガンダム――エピオンルベールが姿を現した。
その機体状況は俺のゼロクアンタ以上に酷く、動けるだけで奇跡と言える有様だったが、それを駆る少年ダイバーの気迫は尋常ではなかった。
『許さないぞ……よくも僕のエピオンを……“アオイ”が作ってくれたガンプラを……“人間ごとき”がああああああああああっ!!』
先程までとは別人の様に荒れ狂い、怒りのままがむしゃらにヒートロッドを振り回す少年ダイバー。俺は彼が自分に向けてくる感情が殺意と呼べるものであることを感じ、思わずおののいた。
『あああああああああっ!』
獣の様な咆哮を上げ迫るエピオンルベール。
損傷と怒りによって動きの精彩は欠け、回避は容易い。
しかし俺のゼロクアンタもまた粒子も装備も使い切り、まともに戦えない状態だ。
『あ~もうっ! ちょっと君、いい加減にするっスよ!!』
少年ダイバーの暴走を見かねたアキラが愛機の【ハイパーフリーダム】を上昇させ介入。
両腰に搭載した【クスィフィアスレール砲】を展開し、荒れ狂うエピオンをの両肩を打ち抜いた。
相変わらずいい腕をしている。普段はアホの癖に……。
『先輩が買った喧嘩だから控えてましたけど、NPC機にダイバーの機体が紛れ込んでるこのミッションの使用……キミ、GBNのシステムに直接手を加えてますね? 流石にSランクダイバーにして元有志メンバーとして見過ごせないっス。運営に引き渡させてもらいますよ』
無力化させたエピオンを前に砲身を展開させたまま、さながら刑事の様な物言いで少年ダイバーに詰め寄るアキラ。
そのすぐ横でエリさんが『アッくん超カッコイイ~~♡』とか言ってジャスティスをクネクネさせてるのが色々台無しだけど……。
『有志連合? 運営? ――フッ、なんだ。獲物はしっかり釣れてたんじゃないか……』
一方、無力化されたエピオンに乗る少年ダイバーはというと、先程までの鬼気迫る様子から一変し、底冷えする様な冷たい声は発していた。
しかしそれは、これから運営に引き渡されることに対する諦観でも、ましてや自らの行為を省みた末の後悔の類ではない。
寧ろ……仇敵と巡り合ったかの様な、冷たい歓喜の様に俺には思えた。
『言いたい事は運営に言うっスよ。とりあえずガンプラから降りて――』
『人間風情が僕に指図するな!!』
少年が観念したと認識したアキラがクスィフィアスレール砲を閉じた瞬間、エピオンルベールは体当たりでハイパーフリーダムを押しのけ、上空へ飛翔。
更に突然出現した転移ゲートの前へと移動し、踵を返して俺達の方を見た。
『英雄気取りの有志連合に世界の秩序を守ると言いながら、自分達の都合で“命”を切り捨てようとした運営! 自分達の事しか考えない傲慢なダイバー!! 僕はお前達の事を決して認めない! お前達を決して許さない! この世界は“僕達”のものだ!!!』
秘めた怒りを爆発させ、さながら宣戦布告とばかりに高らかに告げる少年ダイバー。
正直、彼が何を言っているのかはさっぱり分からないが、その言葉がゲームの演出などではない。正真正銘の本当の感情だという事は、伝わった。
『命に僕達って……まさかキミ【ELダイバー】っスか!? だとしたら何か誤解を……』
『誤解? 僕達の1番上の姉――サラ姉さんをバグとして消滅させようとしたのも誤解だって言うのか!? 姉さんを必死に守ろうとした“彼”を、世界の敵として排除しようとしたのも!! 覚えておけ、この世界で僕のする事を否定していい“人間”はただ2人――“アオイ”と“リク”だけだ!!』
少年ダイバーの正体を察したらしいアキラが、何とか宥めようとするが、彼は益々怒り狂って言い返し、そのままゲートに消えていった。
【ガンダムエピオンルベール】
謎の少年ELダイバーが操縦するガンダムエピオンの改修機。
基本的な装備や変形機構などは原型機であるエピオンと共通であり、MA形態への変形機構も健在。射撃兵装がない点も同様で武装はビームソードとヒートロッドのみ。
一方、外観に関しては黒と赤紫だった機体カラーを白と赤に変更。悪魔的な印象があった頭部や翼もヒロイックな物に変更し、地味に作り込みが高く。完成度とオリジナリティが極めて高い=高性能機に仕上がっている。
未完成とはいえダイチのゼロクアンタは、トランザムを使ってやっと互角に立ち回れるほどの性能を有しているが少年ELダイバーの経験不足と武装少なさから攻め手がやや単調なのが欠点。