ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
結局、あの後データを洗いなおしても少年ELダイバーやビルゴに乗っていたブサイク3兄弟のアカウント特定につながる手掛かりは見い出せず、俺とユナは知っている限りの情報をマギーさんに伝えた上で解放と相成った。
因みにバカップル共はマギーさんと一緒に加盟している【有志連合】という上位ランカーフォースによる自警組織(?)による話し合いがあるとの事で残った。
全く、軽い気持ちで始めたのに何だかエラい事に巻き込まれて現実世界以上に肩が凝った気分だ。
加えて俺は、マギーさんから少しばかり悩むお願いをされたのだ。
・・・・・
「ダイくん、最後にちょっといいかしら?」
それは時を戻す事約30分ほど前、ユナを先に帰し、念の為アキラとリエさんに護衛を言い渡したマギーさんは単身帰ろうとした俺を呼び止めたのだ。
何かやだなーこういう空気、職場で班長に面倒事を押し付けられる時に似ている。
「巻き込んだ貴方にこんなお願いするのも気が引けるのだけど……良かったら暫くの間、ユナちゃんと行動を共にしてくれない?」
「えっ?」
何となく嫌な予感がして身構えていた俺だったが、マギーさんから出された要請は全く予想だにしないものであった。
「アラ、意外そうな顔ね?」
「いや、てっきり
「イヤだわ~いくら腕利きだからって今日入ってきたばかりの人にそんな事頼まないわよぉ。――寧ろ、貴方やユナちゃんには今日の事なんか早く忘れて普通にこの世界を楽しんでほしいっていうのが私の本心よ。――けど、少し心配な事もあるのよねぇ」
人間が出来たお姉系ダイバーのマギーさんが俺達の健全なプレイを願いつつ抱く懸念、それにはやはり先の一件に関わるものだった。
「相手が本当にELダイバーなのかも定かではないけど、少なくとも貴方達2人はGBN内で何か良からぬことを企てている存在に目をつけられてしまったわ。貴方はともかく、ガンプラの制作も操作も未熟なあの娘が逆恨みで付け狙われないか心配なのよ」
「……俺にユナの護衛をさせつつ、最低限身を守れる力がつくまで指導してやれってことですか?」
「ええ、頼まれてくれないかしら?」
得体の知れない連中に目をつけられた(かもしれない)少女の護衛。
何だかハードボイルド小説とか刑事モノなんかにありそうな展開だなぁと内心思いつつ、俺はしばし思案した。
確かにユナがまたああいった連中に絡まれるのは見過ごせない気持ちはある。
マギーさんの様な出来た人から頼られるのも悪い気はしない。
しかし――
「いい歳した大人が女子中学生に対して『一緒にGBNやろうぜ!』って誘うのは、正直敷居が高いですね……」
ゲーム内とはいえ何しろこんなご時世だ。
まるでそんな趣味などなくても周囲からロリコンだのペド野郎だのと蔑まれる可能性は低くないだろう。
しかも俺の場合、リアルに寄せた所為でゴツい見た目だし。
いっそダイバールックを少年にするという手もなくはないが、『女子中学生と仲良くする為に若作りした』とか、それはそれで何か益々いかがわしい……。
「ん~、それはちょっと考えすぎじゃないかしら? 私もGBN始めたばかりの初心者の子に声かけてレクチャーとかするけど、別段周りから変な目で見られないわよ?」
「それはマギーさんが周りから信頼されてる上、親しみやすいお姉キャラだからですよ」
先天的な高いコミュ力と、強烈ではあるが相手にある種の安心感を与えるお姉キャラは、存外周囲からの信用を獲得しやすい。創作物やこういったゲームの世界でのお約束の1つだ。
俺も陰キャという程ではないが、コミュニケーション能力は取り立てて高い訳でもない。
「大体の話、ユナだって危ないからって今日会ったばかりの10歳以上年上の男何かと行動なんかしたくないでしょ? 守ってあげるつもりであの娘を不快にさせちゃ、本末転倒だ」
「あら! つまりユナちゃん本人がOKなら、貴方も引き受けてくれるって事?」
「まぁ、彼女がいいなら……」
要請に対し、俺なりの意見を唱えた上で否定的な意見を出して断ろうとするが、ユナがいいならという条件を出した途端マギーさんは『言質とった!』という顔でどこかへメッセージを出していた。
状況から言って送り先は多分――
「ユナちゃんと30分後にセントラルターミナルで待ち合わせたわ! ダメ元でいいから、取り敢えず提案してね♪」
やっぱりな!
こういう行動力の速さと相手に不快感を与えない強引さもまたコミュ力おばけの特権なのだろう。しかし――
「俺から誘うんですか? マギーさんの仲介とか一切なしで?」
「モチのロンよ! 女の子口説くのに人の手を借りるなんて大の大人がする事じゃないでしょ! ファイト♡」
いやいやいや!
大の男が未成年を口説くの自体が問題なのでは!?
ていうかそもそも口説くわけじゃねえし!!
うぅ、何だか気が重いなぁ……。
さっきあんなに真っ直ぐな目で慕ってくれた娘に『俺と組まねえ?』とかナンパと勘違いされかねない事言うなんて。
『はぁ? ちょっと、マジありえないんですけど……キモ』
とかドン引きされたらどうしよう!
などと悶々とした気持ちで指定されたセントラルエリアの一角にある噴水前に約束の15分前に到着した俺は、脳内で何度も『ゴミを見る目で蔑むユナ』をシュミレートし、本番に向けて心の準備を整えていた。
「――と、そう言えばまだあの娘の戦闘動画チェックしてなかったな」
何回か脳内のユナに『キモっ』と罵倒され、大分心が弱った俺はふと、後で観ようと思っていた彼女の駆るナドレの動画を思い出し、システムウィンドを展開。
息抜きがてらに再生してみた。
動画はアキラのフリーダム目線で再生され、場面はトランザムを起動したナドレがビルゴに突撃した所からだ。
あの荒々しく損傷した機体、一体どの様な戦い方をしたのか?
その答えは俺の想像をはるかに超えていた。
『クソ! 何だあの動き……本当に素人なのか!?』
『凄い! このトランザムっていう技、やっぱりすごい……! 私が思った通りに、ガンプラが動く!!』
そこに映し出されていたのは、俺の『接近戦で戦え』という助言を愚直に実行し、ビルゴが放つビーム砲撃を避けながら接近するナドレの姿だった。
恐るべきは、敵の砲撃を完全に見切り、紙一重最小限の動きで回避する驚異的な反射神経と、機体操作がピーキーになるトランザム状態で、極めて緻密な操縦が出来ている点だ。
動画内の音声から察するに、恐らく彼女にとってはトランザムを使った状態の素組みナドレで初めて『自身の動きに追従するレベル』になったのだろう。
まるでニュータイプとして覚醒するにつれ、ガンダムの追従性が耐えられなくなったアムロの様ではないか!
俺の様なGPD経験がある訳でもないのにこの動き、ファイターとしての素質だけならトップクラスの逸材ではなかろうか!?
動画の続きではその後彼女は接近したビルゴを相手に『ガンダムパンチ!』『ガンダムキック!!』などと潔過ぎるネーミングで格闘戦をしかけ、機体が限界に達する寸前でビルゴを戦闘不能に至らしめた。
恐らく、現実で何らかの格闘技を習っているのだろう。
驚異的な反応速度に加え、手足の動かし方にも洗練したものを感じた。
『すげぇ……!』
俺は先程までの鬱々とした気持ちを忘れ、心の昂ぶりを実感した。
もし、彼女が自身の適性に合ったガンプラを選択し、その動きに追従できる完成度に仕上げて乗ったら、一体どこまで戦えるのだろうか?
この高い潜在能力を正しく導ける指導者の下で経験を積んだら、どのくらい化けるのだろうか?
少なくとも、俺の様なファイターとしては伸びしろの過ぎたダイバーでは及びもつかない領域に行ける可能性を秘めている。
何時だって人の心を真に沸かせるのは、人の持つ可能性だ。
成長したあの娘の姿が見てみたい。
最高のガンプラを駆り並み居る強豪を蹴散らして、その頂点に君臨する姿を夢想するだけで、心が躍る!
「ヤバいなこりゃ……」
俺の中で、これから来るユナに対する提案に対するモチベーションが著しく変化した。
あくまでマギーさんへの義理立てで渋々、断られる前提だったコンビの誘いが本気になってしまった。
キモいと罵倒されたって構わない!
変態扱いも甘んじて受け入れよう!!
俺は彼女を、ユナを――誰よりも強い、最強のガンプラファイターにしたい!!
「あのっ! お待たせしてすみませんでした!!」
と、決意をした直後の待ち合わせ5分前、ちょうどユナが到着した。
振り返った先には、先程までの少女冒険者風のダイバールックとは違い、顔や体形こそそのままだが、ガンプラに乗るには少々似つかわしくないセミフォーマルなドレス姿のユナがいた。
「えっと、その恰好は?」
「え、ええと実はマギーさんから『今日のお詫びよ♡』って貰った格好で……へ、変ですか?」
「い、いや、可愛いとは思うけど……」
不安そうな表情のユナにどもり気味でフォローを入れる俺は、傍から見るとかなりキモいだろう。
しかし戦う事を想定したアクティブな装いから、ザ・女の子という格好に着替えたギャップは存外に大きい。マギーさんのコーディネイトセンスの高さも、それに助成している。
何より夕日を背に現れた彼女の表情や雰囲気は、どことなく先程より大人びて見えたのだ。
「そ、それより悪いな突然呼び出して! リ、リアルだとボチボチ夕方だけど、門限とか大丈夫か?」
「は、はい、じゅ、18時位までなら……、わ、私も実は、ダイチさんに話したかったことがあるので……ちょうどよかったです……」
「そ、そっか……何なら先にそっちの話聞こうか?」
「い、いえいえ! ダイチさんから先に!!」
クッ、何だこの甘酸っぱそうでそうじゃないやり取りは!?
俺は女子中学生を相手に何をドギマギしてる!?
これじゃあガチのロリコンじゃねえええか!!
OK。一旦落ち着けアカギ・ダイチ。
お前の好みはタイプはどんなだ? ――社会に出て、落ち着いた雰囲気をもつ大人のレディだろ? ナースとかCAとか、職業モノのAVが大好きな健全な成人男性だろ!?
雰囲気に流されるな。
潤んだ瞳に惑わされるな。
抱きしめたい衝動に負けるな!
大人としてあるべき自制心で平静を取り戻した俺は、ユナに伝えた。
「ユナ、しばらくの間でいいんだが、俺と一緒に行動しないか?」
「――っ!!」
ユナは手で口元を抑え、まさしく驚愕! といった表情で一歩下がる。
アレ、なにそのリアクション?
気持ち悪かった? 年甲斐もなく若い子口説くおっさんが、想定以上にキモかった!?
ゴメン! 後で死ぬから許して!!
「いや、その! 違うんだ! いや、違くないけど!! なんていうかその――さっき君の戦闘動画を見たんだけど凄い才能を感じて感動して! けど君は、ガンプラもガンダムもそんなに詳しい方じゃないだろ? 俺は君ほど才能はないが、一応知識と経験はそれなりにある。だから俺の持ってるノウハウを使って、君は君の才能を伸ばして欲しいんだ! 勿論、嫌だったら断っていいから!」
クソ、全部下心のない本心の筈なのに、何だかとっても言い訳臭くていかがわしい!
運営は! どうか運営に通報するのだけは勘弁してください!
JC口説いた末に1日でアカウント抹消とか、人として終わり過ぎている!!
「――ダイチさんっ!!」
そんな動揺する俺に対し、ユナは突然抱き着いてきた!
えっ、何これどういう状況!?
俺なんで涙目のJCに抱き着かれてるの!?
ていうか何この女の子特有のいい匂い!? スゲーなGBNの感覚フィードバック!
「私っ! 私も実はっ! ダイチさんに一緒にゲームして欲しいってお願いしようと思ってたんです!! ダイチさんのガンプラのトランザム、凄く強くて、熱くて! 私もっ、あんな風にガンプラを動かしたいです!!」
ホワイ!?
まさかの両想い?
って違う! ユナ自身も俺と同じことを望んでいた?
マジで!? 何かの罰ゲームじゃなくて!?
「えっと……俺の方から誘っといて聞くのもアレなんだけど、いいのか? 俺みたいな得体の知れないおっさんなんかと」
「ダイチさんはオッサンなんかじゃないし得体の知れなくなんかないです! 何もわからずに攻撃された私を助けてくれました! 私に戦い方を教えてくれました! 何より、ガンプラが持ってる可能性を教えてくれました! 私、もっともっとダイチさんから色々学んでガンプラ上手くなりたいです!!」
ぐっ、眩しい!
何だこの曇りのない真っ直ぐな向上心と、心の輝きは――!
変にドギマギしていた自分が恥ずかしい!
「――よし、ならいっちょ2人で最強を目指すか! 改めて、よろしくなユナ!」
「はい!! 不束者ですが、どうぞ末永くよろしくお願いしますししょー♡」
ん?
何か言い方と言うかニュアンスがちょっと変だった気がするが、まあいいか。
こうして俺とユナは、当面の間行動を共にする事になった。
後にGBNでその悪名を轟かせる変態フォース【アマテラス】。
その根幹を成す出会いであった。
【マギー】
本作に於いて登場した原作キャラ1号。ご存じGBN内でも屈指の人格者であるお姉系ダイバー。作中に於いては最近頻発する『クリエイトミッションを悪用した新手の初心者狩り』を摘発する為にアキラらと操作する中でダイチと知り合い、『悪意あるELダイバー』に纏わる事件に携わる事になる。
アキラとは彼が持ち前のウザさで他のダイバーとトラブルになったのを仲裁したのをきっかけに出会い、それ以来度々問題事を起こす彼のフォローをする羽目になるちょっと気の毒な人。反面、実力だけはあるアキラはちょくちょくこき使っている。