凡矢理高校の不良くん   作:icy tail

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第11話

買い物に行く事になった橙と鶫は一度帰って着替えてから集合することになった。

待ち合わせ場所に着いた橙は…

 

「あん?人だかり…へぇ」

 

待ち合わせ場所に人だかりを見つけた。

よく見てみると、その中心には私服に着替えた鶫の姿がある。

鶫は恥ずかしそうにしながらうつむいているようだ。

これ以上待たせるわけにはいかないため、橙は少し足早に向かった。

 

「おーす!鶫!」

 

「だ、橙…な、なんだかさっきから妙にジロジロ見られている気がするんだが…」

 

「ははっ!んなもん鶫が可愛いから目を引いてるだけだろ」

 

「なぁっ…!///」

 

「まぁ照れんなって。ちゃんとエスコートすっから行こーぜ」

 

「ひゃあっ!?///だ、橙…手っ…!///」

 

「せっかくのデートなんだから楽しもーぜ!」

 

「デっ!?こ、これは買い出し…」

 

「細かいことは気にすんなっての。ほれ、行くぞ!」

 

終始テンションの高い橙に腕を引かれて2人は移動を始めた。

これも橙の気遣いで、明らかに緊張して回りの視線に敏感になっている鶫の意識を別のところに向けるための行動だったりする。

取り敢えず2人は大型のペットショップに歩いてむかうことに。

 

「なぁ、鶫。その服は自分で選んだのか?」

 

「いや、お嬢がな…」

 

道中、何気ない話をしながら歩いている。

鶫は千棘に無理やり服を着させられたらしく若干不満そうだ。

 

「くくっ。せっかくだから女の子らしい服着ろってか?」

 

「よく分かったな…はぁ、こんな格好…」

 

「私には似合わない…か?」

 

「ああ…」

 

鶫は自分の容姿が優れていることを理解していないようで、オシャレなどにも悲観的だ。

別に無理やり分からせるつもりもないが、橙はいつも通りに思ったことをそのまま口にだしている。

 

「ふーん。まぁ、俺は似合ってると思うぞ?鶫の自己評価は置いといて俺の意見だ」

 

「へっ?///…そ、そうか…ありが…とう///」

 

こう言われると否定するわけにもいかず、鶫は顔を赤くしながら小さい声でお礼を言った。

まだ、恋と言う感情を理解していない鶫は、妙に早い心臓の鼓動や顔が熱くなる感覚に頭を悩ませている。

 

「おう。ま、行こーぜ」

 

「ま、待て!先に行くな…!」

 

2人はこの後も途切れることなく話ながらペットショップに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペットショップに到着した2人。

取り敢えず店内を回ることに…

 

「すげーな!この店!珍しい動物めっちゃいるぞ!」

 

「いやにはしゃいでいるな…。動物が好きなのか?」

 

「もちろん!可愛いじゃねーか!」

 

「ふふっ…子供みたいな所もあるのだな」

 

「俺だってまだ高校生のガキだっての!」

 

「そうだったな。まあ、見て回るか」

 

「ああ!…鶫!あっちにフクロウいるぞ!行こう!」

 

「そんなに慌てなくても逃げないと思うぞ?」

 

橙の無防備な一面を目にした鶫。初めの緊張はどこへやら、顔には笑顔が浮かんでいる。

そうして1通り回り終わった2人は目的の品を購入した。

 

「うし!…鶫?」

 

「彼女さんならあちらに…」

 

「ん?ああ、すんません」

 

会計を済ませた橙が店を出ようと振り替えると、鶫の姿がない。

辺りを見回していると、会計をしてくれた店員さんが犬のコーナーを指差した。

そこでは、ショーケースに張り付いている鶫。

橙は近づいて声をかける。

 

「鶫、行くぞー。ほれ」

 

「了解した…ん?」

 

「ヒール慣れてねぇだろ?手ぇ貸すぜ」

 

「あ、ああ!す…すまないな!///」

 

鶫は女の子扱いに顔を赤くしながらも、手を取り立ち上がった。

そうして2人は店を出て帰路に着く。

しばらく歩いていると…

 

「…ん?鶫、ヒール脱いで足見してみろ」

 

橙が何か違和感を感じて鶫に足を見せるように言う。

鶫は一瞬驚いた顔になり弱々しく呟いた。

 

「…っ!橙には隠し事はできなさそうだな」

 

「ちょっと歩き方が変だったからよ。ほれ、見せろ」

 

「あ、ああ。……つぅっ…!」

 

違和感の正体は靴擦れによるもので、結構な時間我慢していたのか赤くなってしまっている。

鶫は隠したままやり過ごそうと思っていたらしく、橙も気づくのが遅れてしまったようだ。

 

「あちゃー。靴擦れか…悪ぃな、もっと早くに気づいてやれなくて」

 

「謝らないでくれ…私も隠していたのだからな」

 

「そうか…んじゃ、乗れ」

 

橙の中でこのまま歩かせる選択肢は消えた。

橙は当然のように片ひざをつきおんぶの体制をとった。

それを見た鶫は不思議そうな顔で数秒見つめた後に、橙の意図に気がつき顔を真っ赤にしている。

鶫も痛みより、恥ずかしさの方が大きいのは確定しているために必死だ。

 

「へ…?い、いやいやいや!自分で歩ける!」

 

「…ふーん。そんなこと言って良いのかな?」

 

「な、なにがだ…?」

 

「大人しくおぶさるか…強制的にお姫様抱っこか。選ぶと良い」

 

もうこの時点で橙の思惑から逃れることができないのは決まっていたようだ。

鶫は慌てながら言うが、もう諦めるしかないだろう。

 

「なぁっ!!?///お、おひっ!!?///ひ、卑怯だぞ!橙!」

 

「ふっふっふ…その足で俺から逃げられるのかなぁ?」

 

橙は悪い笑みを浮かべながら言う。

鶫は諦めたようで恥ずかしそうにしながら了承した。

 

「くうっ……お、お願い…します…///」

 

「ははっ!それでいい!…ほれ」

 

「ううっ…こんな…!///」

 

結局、橙に背負われた鶫。

なんだかんだ言いながら嬉しそうだ。

 

「なぁ…鶫」

 

「…なんだ?お、重いか…?」

 

そんな鶫を知ってか知らずか、橙は急に真剣なトーンになり鶫に背中越しに声をかける。

そして…

 

「いや、お前さ……胸でかくね?」

 

「っ!!!///い、今すぐ降ろせー!!!」

 

まさかのセクハラ発言に鶫は涙目になりながら暴れだすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩きながら話をしていると、話題は千棘と鶫の子供の頃の話になった。

 

「鶫と千棘って子供の頃から一緒なのか?」

 

「…そうだな。10年程前になるな」

 

「へぇ。千棘は昔から今みたいな感じでお転婆だったのか?」

 

「ふふっ…ああ。どうやらお嬢は初コイをしていたらしくてな、1人で屋敷を抜け出してその男の子に会いに行っていたよ」

 

千棘は昔から活発で皆を困らせてたのが容易に想像できる。

加えて、10年前に初コイの男の子がいたらしい。

 

「初コイ…ねぇ」

 

「そ、その…だ、橙の初コイはいつなのだ?」

 

橙が少し考えていると、鶫が口を開いた。

おぶっているから橙には見えていないが少し顔が赤い。

 

「俺の?えーっと……まだだな」

 

「そうか…。橙のような男に好きになってもらえる人はさぞ幸せなのだろうな……っ!?///わ、私は何を…」

 

安心したような不思議な感覚に襲われる鶫。

少し考えた後に鶫が言葉をこぼした。

どうやら、無意識のうちに思っていたことを口にだしてしまったようで、顔を真っ赤にして口を押さえている。

それが、おんぶされている状態で橙に聞こえないはずもない。

 

「ははっ!嬉しいこと言ってくれるじゃねーか!」

 

(おぶってて良かったぜ…多分顔赤ぇわ今)

 

「ううっ…///」

 

やはり橙も年頃の男なようで、鶫が自然と発した言葉に少しドキッとしたようだ。

そんな橙に、気がつくことなく、鶫は顔を赤くして唸っている。

 

「んじゃあ、鶫はどうなんだ?」

 

「わ、私は……ないよ。今までも…これからも」

 

次いで、自然な流れで橙が聞くと、一瞬戸惑ったような雰囲気から一変して静かに、どこか自分に言い聞かせるように言った。

橙は黙って鶫の話を聞いている。

 

「…」

 

「お嬢に仕えることが私の使命であり、お嬢の幸せが私の幸せだからな……私には必要のないものだ」

 

どこか悲しげに感じた橙は自分の考えをまっすぐ鶫にぶつけることに。

 

「…そうか。鶫が本心でそう思うんなら俺が口出しする権利は無ぇな………けどよ、千棘の幸せを考えるんなら、鶫…お前も幸せにならなきゃいけねーんじゃねぇか?」

 

「それはどういう…」

 

「千棘はよ…自分だけが幸せならそれでいいなんて、薄情なやつじゃねぇだろ。きっと、お前も一緒に幸せにならないと千棘は心から笑えねぇさ」

 

「っ!」

 

橙は説得どうこうは関係なく、本心で言っている。

 

「それによ、俺も鶫が幸せになってくれたほうが嬉しいぜ?」

 

「良いのだろうか…裏の世界で生きてきた私のような汚れた人間が、人並みの幸せを願っても…」

 

鶫は今までの自分の生き方、生きてきた環境を考えて幸せとは無縁の人生だと決めつけていたのだろう。

だが、橙はそんなこと知らないし、知るつもりもない。

橙にとっては今の鶫が全てなのだから。

 

「んなもん良いに決まってんだろ」

 

「だが、私は……っ!?だ、橙!?」

 

橙はいまだに納得できずにいる鶫の手を優しく握り言い聞かせるように言った。

 

「良いんだよ、鶫。もし、どうしても自分を許せねぇってんなら、俺が許す。世界中のどこの誰がなんと言おうと、俺だけはお前を許して、お前の幸せを願ってやる」

 

「…っ!……やはり卑怯だ…橙は」

 

胸が温かくなるような不思議な感覚。

鶫は今だけは考えることをやめて橙の背中に体を預けた。

 

「ははっ!卑怯で結構!ほれ、ちゃんと捕まっとけよ?」

 

「ああ。…ありがとう、橙」

 

「おう」

 

鶫が自分の初コイに気がつくのはそう遠くないのかもしれない。

 

 




鶫が素直すぎるかな…?
変じゃないか心配だ…


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