凡矢理高校の不良くん   作:icy tail

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第13話

バスで色々あったが、ようやく目的地に到着した。

橙は上手いこと千棘と鶫のご機嫌を取り、2人はいつも通りに戻ったようだ。

バスを降りて早々に、班ごとに飯盒炊飯でカレーを作って食べることに…

 

「鶫!千棘を見張っててくれ!」

 

「わ、分かった!」

 

「るりは小野寺を頼む!」

 

「任せてちょうだい」

 

ここでは、橙が上手く立ち回り、犠牲者を出さずにすんだ。

食事を終えた後、またバスで本日泊まる旅館に移動した。

 

「へぇ。良いとこじゃねーか」

 

「おお~!ここが今日オレ達の泊まる部屋か~!」

 

「思ったより広いね~」

 

旅館着いてからは班ごとに割り当てられた部屋にそれぞれ向かう。

橙達も自分達の部屋に到着した。

 

「いやー、ふすまごしとはいえ女子と同じ部屋で寝られるなんて…オレこの学校入ってホントよかったよ…!!」

 

「…正直な奴だな」

 

集の言った通り、ふすまで仕切っているだけで男女同室だ。

心の声を隠そうともしない集にきつく当たるのはもちろんるりで…

 

「えっ…舞子君がこの部屋で寝れるはずないじゃない」

 

「あれ!!?オレは部屋で寝れないの!?」

 

「はっはっは。それは冗談として…集、変なことしたらベランダに吊るすからな」

 

「それも冗談なんだよね!?ダイちゃん!?」

 

そこに加勢した橙の宣告に震え上がる集。

まぁ、橙がいるから大胆なことはできないだろう。

そんなこんなで荷物を置いた橙達は自由時間がまだあるためにトランプをすることになった。

 

「普通にやってもつまんねぇし負けた奴は罰ゲームってのはどーよ?」

 

「…罰ゲーム?」

 

「そう!負けた人は自分のスリーサイズ…」

 

「…橙君。お願い」

 

「はいよ」

 

最下位の人に罰ゲームを与えると言うことで、集が欲望のままに戯言を抜かすと…るりが橙に合図を送る。

返事をした橙は集の頭を片手で掴み締め上げた。

 

「いだだだだだ!!?ちょっ!ダイちゃん!う、浮いてるっ!し、死んじゃう~!!!」

 

「よーし。もう一度チャンスをやろうではないか」

 

「は、初コイのエピソード…」

 

「るり」

 

橙は集を持ち上げたままるりの方に視線を向ける。

るりは少し考えた後に了承した。

罰ゲームの内容が決まった途端にいままで静観していた千棘達から声が漏れ、一斉に顔が赤くなり焦りだした。

 

「…初コイの……………それでいいわ」

 

「「「「えっ…」」」」

 

「んじゃ、始めっか。種目はババ抜きで」

 

のんきにトランプを用意している橙と、楽しそうに4人を眺めている集以外の羞恥とプライドをかけた戦いが幕を開けた。(注・ただのババ抜きです)

 

「では、ゲームスタート!」

 

集の掛け声で始まったババ抜き。

初めのうちはみんな順調に減ってゆき、手元には4、5枚といったところだ。

このゲームを進めていって分かったことは…

 

(千棘と小野寺がくそ弱ぇ…)

 

ポーカーフェイスができない2人は、ジョーカーが手元にくる度に思いっきり表情に出て丸分かりだ。

そして、その2人に挟まれている楽も…

 

(また小野寺のジョーカーをわざと引いたな………決めた)

 

千棘の逆隣に座っていた橙はある作戦を思いつき実行に移す。

ゲームが進み続々とあがる人が出てきた。

 

「あっがりー!」

 

「私も」

 

「あ、あがりだ!…ふぅ」

 

集とるりと鶫があがり、残りは4人に…

ここからが本番だ。

まずは隣の千棘を上手くあがらせる。

 

「ほれ、どーぞ」

 

「え、ええ……っ!やった~!!!」

 

千棘の嬉しそうな声が響いて残り3人。

 

(楽には悪ぃが…抜けてもらうぜ)

 

「……よし!あがり!」

 

「ふぅ…これで俺と小野寺の一騎討ちだな」

 

「そ、そうだね…!」

 

楽もあがって後は、橙と小野寺の2人になった。

作戦は最終段階へ…

その頃、外野では。

 

「ダイちゃんが残るとは思わなかったな~」

 

「…そうね」

 

(そういうこと…ふふっ、橙君も抜け目ないわね)

 

橙の思惑に気づいたるりが、集の話に相槌を打ちながら橙と小野寺の方を見つめていた。

そして…

 

「引くぞ……ふむ、コッチだな」

 

「ああっ…!」

 

「あがりだ」

 

「ううっ…ま、負けました…」

 

これにて決着。

まぁ、橙が何をしたかったかと言うと、小野寺と楽の背中を押す一貫としてこの罰ゲームを利用した。

なぜ楽じゃなかったのか…それは楽よりも小野寺の方がここぞと言うときにかましてくれると思ったからだ。

実際に小野寺がどういったエピソードを語るかは分からないが、楽が感づけば上々だろう。

と言うことで…

 

「そんじゃ、罰ゲームだな」

 

「そうね。小咲、キリキリ吐きなさい」

 

「る、るりちゃん!?」

 

橙の思惑を察したるりは、橙に加勢し背中を押している。

今のメンバーで一番興味を示しているのは、もちろん楽だ。

そわそわしながら祈るような顔で見守っている。

そして…

 

「…わ、私の、初コイは……じゅ、10年前…」

 

「それはなしよ、小咲。相手の名前すら覚えてないんでしょ?」

 

「そ、そう…だけど…」

 

あからさまに逃げようとした小野寺をるりが捕まえる。

小野寺は楽の方をチラチラと見ながら一度大きく深呼吸をした。

 

(おっ、いい顔してんじゃねーか。言うぞこりゃ)

 

橙の思った通り、小野寺は決心した顔で口を開く。

 

「私の初コイは…中学校の時で…今も変わってない…」

 

真剣な雰囲気を察知した他のメンバーも黙って聞く姿勢をとっている。

 

「その人は…自分に何かあっても、当たり前のように相手のことを心配するようなお人好しで、困っている人がいたら自分がどんなに急いでいても寄り添って一緒に悩んでくれる優しい人…です」

 

(小咲…頑張って…)

 

(楽は幸せ者だな)

 

ここまで一息で言いきった小野寺は、震えながら腕をあげていく…

どうやら、この場でカミングアウトするつもりのようだ。

 

「その人は………」

 

そして後もう少しと言うところで、部屋のドアが勢いよく開いた。

 

「コラァーーー!何時だと思ってんだ!集合時間とっくに過ぎてるぞ!」

 

「うおっ!?やっべ!」

 

「かぁーっ!いいところで!」

 

遊びに集中しすぎでいたらしく、集合時間を過ぎてしまっていたみたいだ。

先生が怒りながら注意しにきた。

皆が慌てて部屋を出ていく中、残ったのはるりと小野寺。

 

「小咲…よく頑張ったわね」

 

「…うん」

 

るりは座り込んだままの小野寺に近寄り抱き寄せて頭を撫でる。

今回ばかりは、るりも小野寺の勇気を認めているようだ。

一方で、橙は楽と集と一緒に部屋を出て歩いていた。

 

「…なぁ」

 

「どうした?楽?」

 

楽は思い詰めた様子でくちをひらく。

ようやく気づいたかと橙が安堵していると…

 

「いや…さっき小野寺が言ってたのってさ…」

 

(やっと気づいたか)

 

「…橙のことかと思ったんだけど、中学一緒じゃないもんなあ…誰なんだろってさ…」

 

深刻そうに予想の斜め上のことを言った。

あまりの鈍さに、橙はため息を吐き、集は吹き出した。

 

「ぷっ…!」

 

「はぁ…このニブチンは」

 

「だ、橙!?集もなんで笑ってんだよ…!」

 

2人の恋路はまだまだ長そうだ。

 

 




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