凡矢理高校の不良くん   作:icy tail

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第17話

橙とるりの2人は買い物を終えて、千棘の家に到着。

その後、数分で全員が集まり鶫が外まで出迎えてくれた。

 

「こりゃすげーな。楽ん家よりデケーぞ」

 

「ホント…千棘ちゃんの親って何やってる人なんだろ…」

 

鶫以外の面々は目の前の豪邸を見上げながら声を漏らしている。

少しの間外で話をしていると、千棘が出てきた。

サプライズと言うことで千棘は橙達が来るのを知らないため、驚いた表情を浮かべている。

 

「おーす、千棘!誕生日おめでとさん!」

 

「あ、ありがと……じゃなくてっ!な、何で皆が…」

 

明らかに動揺している千棘。

実際はギャングの娘と言うことを隠しておきたいだけなのだが、鶫は気にした様子もなく言った。

 

「本日はお嬢のお誕生日と言うことで、恐れながら私、お嬢に内緒で皆さんをご招待させて頂いたのです」

 

「うぐっ…」

 

(ど、どうしよう…まだウチがギャングだって皆に言ってない…)

 

千棘は後ろを向いて頭をかかえている。

ここは楽に任せたいところだが、楽は千棘が何に悩んでいるのか理解していない様子のため橙が動くことに。

 

(千棘、ぜってぇ大丈夫だから言っちまえよ)

 

(で、でもぉ…)

 

(あのなぁ…楽がヤクザの息子って知ってて仲良くしてる奴らだぜ?拒絶なんてされねーって)

 

(…そ、そうよね!大丈夫よね!)

 

橙から言わせれば今さら何を心配してるのかと言った感じみたいだが、やはり当の本人は結構抵抗があるらしい。

取り敢えず、橙の説得で決心がついたようだ。

 

「おーい!皆ちょっといいか?」

 

早速、橙が皆を呼び、千棘のまわりに集まった。

そして、千棘が意を決したように言うと…

 

「千棘ちゃん?どうしたの?」

 

「あ、あの…じ、実は私のウチ、ギャングなのっ!」

 

聞いた小野寺達は聞きなれない単語に首を傾げている。

 

「……ギャング…?」

 

そんな中、楽はやっと気がついたようだ。

 

「…あっ、そーゆう……ってか、お前そんなこと気にしてたのかよ」

 

「う、うるさいわね!仕方ないでしょ!」

 

「…ったく……あー、まぁ簡単に言えば日本で言うところのヤクザと同じだと思ってくれりゃいい」

 

結局、楽が軽く説明をした。

すると…

 

「やっぱりお嬢様だったんだ」

 

「すごいね~!一条君と同じなんだ~!」

 

「…へ?」

 

どうやら本気で拒絶されるかもしれないと思っていたらしく、小野寺達の反応に呆けている千棘。

 

「な?大丈夫だろ?」

 

「う、うん!ありがと!」

 

安心したのか、緊張がほどけて笑顔が戻っている。

そうして家に通してもらうことに…

 

「…さぁ、こちらが本日のパーティー会場になってますので」

 

鶫を先頭に扉を開けると、ギャングの構成員の強面の男達がクラッカーを鳴らしながら出迎えてくれた。

 

『ハッピーバースデーお嬢~~~~!!!』

 

『お誕生日おめでとうございま~~~~す!!』

 

千棘はクラッカーのやけにキラキラしたゴミを頭に被りながら、恥ずかしさやらなんやらで白目を剥いている。

 

(なんか…平和だなぁ)

 

橙はバカ騒ぎするギャングの連中を眺めながらこんなことを思っていた。

そして、中に入るとクロードがこちらに気づいて寄ってきた。

 

「これはこれはお嬢のご学友の皆さんもいらしてくださったのですか。ようこそ、歓迎致します」

 

「あ、はい!本日はお招き頂きどうも…!」

 

全員が挨拶を済ませると、橙は別で1人クロードの元へ向かった。

 

「クロードさん、ご無沙汰してます」

 

「時藤君、よく来てくれた。あの時以来か」

 

「ええ。それにしても…皆さん良い方達ですね。千棘を本当に大切にしているのが伝わってきます」

 

「ふっ…そう言ってくれると嬉しいよ。お嬢も友人に恵まれたようでなによりだ」

 

「はい。良い奴らばっかですから。…それじゃそろそろ戻ります」

 

「ああ。楽しんでいってくれ」

 

こんな話をして橙は千棘達の方に戻った。

橙が戻ると、プレゼントを渡し始めている。

どうやら、楽以外は渡し終わったようだ。

 

「はい、どいたどいた。彼氏さんは最後なー。集、おさえといてくれ」

 

「ほ~い!」

 

「いやっ!ちょっ…橙の後とか絶対嫌なんだけど!?」

 

集に連行されていく楽を横目に橙は千棘に歩み寄る。

 

「千棘、改めて誕生日おめでとう。これ、プレゼントな」

 

「ありがとう!本当に嬉しいわ!」

 

橙からプレゼントを受け取った千棘は胸に抱いて本当に嬉しそうにしている。

 

「橙、開けていい?」

 

「おう」

 

開けると、少し大きめのフォトフレームが出てきた。

特殊な型で、真ん中に1枚とそれを囲むように小さい写真が4枚入れられるようになっている。

 

「わっ!フォトフレーム!かわいい!」

 

「だろ?それな、真ん中は皆で撮ったやつにして、他のは好きな写真いれるのがいいと思うんだよ。例えば、小野寺とるりとのスリーショットとかな。ちなみに、カメラマンも呼んでっからよ」

 

「ふっふっふ!オレの出番だぜぃ!」

 

橙はある程度見越した上で集にカメラを持ってくるように言っておいたのだ。

まぁ、そのお陰で呼ばれていなかった集も参加できたのだが。

 

「さすが橙君ね。こう言うのはセンスが問われるもの」

 

「うわ~!千棘ちゃん嬉しそう!」

 

「良かったですね!お嬢!」

 

一連の流れを見ていたるり達も絶賛している。

 

「ありがとう!橙!一生大切にするわ!」

 

「おう。どういたしまして」

 

さらには、まわりのギャングの連中も感化され、さらに盛り上がっている。

 

『やるじゃねーか!あんちゃん!』

 

『こりゃあ俺たちも負けてられねーぜ!』

 

パーティー的には最高の状態だが、この状況で1人だけ絶望している人物が…

 

「な、なにからなにまで…ハードルがどんどんあがっていく…」

 

もちろん楽だ。

しかも、橙の次に渡すつもりがどんどん後に回されて、本当のトリになりつつある。

その間も、プレゼント渡しは続き…なぜか演歌のCDとバナナを大量に貰ったり、クロードが高級車を用意したが乗れないからと拒否されて撃沈したりと色々とあった。

そしてやっと楽の番。

 

「渡しずれぇ…」

 

楽は顔をひきつらせながら、立ち尽くしている。

控えめに言ってかわいそうだ。

 

「ほれ、行ってこい」

 

「お、おう」

 

橙に背中を押されて千棘の前に立ち、プレゼントを差し出す。

 

「…おめでとさん、ハニー」

 

「…ありが…と…」

 

そうして、覚悟を決めた楽が千棘に渡したプレゼントは、赤いリボンをしたゴリラのキーホルダーだった。

案の定、クロード達に詰め寄られて今にも発砲されそうだったが、意外や意外、千棘が嬉しそうに笑ったことによって無事におさまったのであった。

 

 

 

 




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