凡矢理高校の不良くん   作:icy tail

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第2話

教室の前で橙と千棘は待機してよばれるのを待っている。

 

「中が騒がしいな。そろそろか」

 

「そうね!緊張してきたー!」

 

橙は冷静に、千棘は緊張すると言いながらも楽しそうな顔をしている。

そして…

 

「入って桐崎さん、時藤くん」

 

「「はい」」

 

声がかかり、2人並んで教室にはいった。

ざわめきを受けながらも、教壇の横に立ち正面に向き直り、千棘から自己紹介を始めた。

 

「初めまして!アメリカから転校してきた桐崎千棘です。母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが、日本語はこの通りバッチリなので、みなさん気さくに接してくださいね!」

 

そして、最後に笑顔をばらまいて終わりだ。

練習をしてきたのか、お手本のような自己紹介だったし、最後の笑顔で男子のほとんどが堕ちた。

教室中でかわいいだったり美人だったり色々な褒め言葉が飛び交っている。

普通であればこの後に自己紹介など地獄でしかないが、橙は全く気にしてない。

 

「んじゃ、次は時藤くんね」

 

言われて一歩前に出る。

千棘の時とは違う意味で好奇の視線を向けられているようだ。

 

「〇〇高校から転校してきました時藤橙です。趣味はアニメ鑑賞と読書。特技はスポーツ全般です。あー、あと見た目はこんなんですが普通の安全な人間なんで仲良くしてやってください。よろしくお願いします」

 

無難に自己紹介を終えた橙。

千棘程ではないがざわざわしている。

橙がふと教室を見渡すと楽を発見したようで、手を上げて応えている。

だが、どうやら楽の様子がおかしい。

視線は千棘に向いていて驚いた顔をしている。

そして次の瞬間…

 

「あーーーーー!」

 

急に立ち上がり千棘を指差して叫んだ。

千棘も気づいたようで口を開こうとしたが…

 

「あなたさっきの…」

 

「さっきの空飛ぶ女!!」

 

「はい?何よ空飛ぶ女って!」

 

「さっき校庭でオレと橙に向かって飛んできたじゃねえか!」

 

「ちょ…あ、あれは遅刻しそうだったから壁を飛び越えようとしただけで…」

 

「はぁ!?普通そんな発想になんねえよ!橙がいなかったらどうなってたことか!」

 

こんな感じで、だんだんとエスカレートしていき喧嘩が始まりそうになっていた。

まぁ、橙が黙っているわけもなく止めにはいる。

 

「おい。楽も千棘もそこまでだ」

 

「橙!?いや、でもよ…」

 

「時藤!だってこいつが…」

 

「でももだってもねぇよ。楽は俺が庇ったからケガもねぇし、千棘はさっきちゃんと謝ってくれたから問題ねぇ。これでまだ何か揉めることあんのか?」

 

「「うっ…」」

 

橙に論破された2人はなにも言えないようで終わりが見えた。

 

「うし。ほれ、楽は座れ。千棘は横に来い」

 

「あ、ああ」

 

「う、うん」

 

これで解決したと思っていると、何故か拍手が起こった。

どうやら、橙の手腕に向けての拍手のようだ。

 

「ははっ。あんがとなぁ」

 

少し嬉しそうに無邪気に笑ってお礼を言った橙。

今ので女子の何人かが堕ちたのは余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自己紹介が終わり、指定された席に着く。

席は橙と楽で千棘を挟むような席順になった。

 

「何かと縁があるな。よろしくな千棘、楽」

 

「ええ!同じ転校生だし心強いわ!」

 

「ああ!何か分かんないことあったら頼ってくれ!」

 

楽と千棘はまだ先程の事を少し引きずっているようで、少しいがみ合っているみたいだ。

お遊びみたいなものだから橙はスルーしているようである。

休み時間になると橙と千棘はクラスの人達に囲まれて質問責めにあう。

まぁ転校生の通例の様なものだろう。

ある程度おさまった頃、数人の生徒が寄ってきた。

 

「どーもどーも!転校生のお二人さん!」

 

「やっと話せるよー」

 

「そうね。私は宮本るり。こっちが小野寺小咲で、あの胡散臭そうなのが…えーっと、なんだっけ?」

 

「ちょっと!ちょっと!それはひどいんじゃないの~?俺は舞子集だよ~ん!よろしくぅ!」

 

やけに元気なのが舞子集。

なんかポワポワしてる美人さんが小野寺小咲。

舞子に辛辣な態度をとっている背が低い眼鏡っ娘が宮本るりだ。

 

「おう。舞子に小野寺に宮本な。よろしく。俺の事は好きに呼んでくれ」

 

「みんなよろしくー!」

 

橙と千棘は挨拶を返し、少し話をしていると唐突に舞子が口を開いた。

 

「ダイちゃんと桐崎さんは仲良さげだけど…もしかして付き合ってたりー?」

 

「なっ!?つ、付き合ってないわよ!///」

 

「まぁ付き合ってないぞ。出会って初日だしな。でも出会いに運命的なものを感じたのは確かだな」

 

「ちょっ!時藤!?」

 

橙は面白がって言っているのだが、実際に運命的な出会いを体験した千棘からしたら気が気でない。

 

「あー。あの空から桐崎さんが降ってきたって言うやつね」

 

「あれ本当なんだね。私びっくりしちゃったよー」

 

そうして他愛もない話をしていると急に楽が大きな声を上げた。

 

「あーーーーーーー!!?無い!!オレのペンダントが無い!!」

 

「どうした、楽?」

 

「ぺ、ペンダントが無くなった!」

 

どうやら楽が大事にしていたペンダントが無くなってしまったようだ。

思い当たる節は…

 

「ペンダント?…もしかしてあん時か?」

 

「あん時?…はっ!」

 

朝の一件。

楽も思い当たったようで千棘に非難の視線を向ける。

 

「な、なによ…?」

 

「…こんの疫病神がぁぁぁぁ!!」

 

「やくっ…!?ちょっとあんたねぇ!!」

 

自己紹介の時の続きが始まるかと思われたが、橙がまたしても間に入った。

 

「おい、楽。今のは言い過ぎだ」

 

「だってよぉ…」

 

「おめぇは女相手に謝れねぇようなダセぇ男なのか?」

 

「っ!き、桐崎!今のは言い過ぎだった!ごめん!」

 

橙がそう言うと、楽ははっとなり千棘に頭を下げた。

橙はその光景を頷きながら見ている。

こう言う男らしい所は非常に好感がもてるようで、素直に頭を下げた楽を暖かい目で見ている。

 

「別にいいわよ。私も悪いわけだし…」

 

「まぁ、とりあえず放課後にでも探してみようぜ」

 

「そうだな」

 

「そうね。私も手伝うわ」

 

こうして話がまとまった頃、先生が教室に顔だけだして用件を伝えにきた。

 

「そうだ。ひとつ言い忘れてたよ一条」

 

「へ?」

 

「桐崎と時藤に学校の事色々教えてやって欲しいからさ2人をお前と同じ飼育係にしたからよろしく!」

 

「ええっ!?」

 

そんなこんなで初日の授業は終わり、放課後。

橙と楽と千棘は飼育小屋の前にきていた。

 

「こりゃあすげぇな…」

 

「何よこの生き物の数は…」

 

「仕方ないだろ。ケガとかしてたんだから」

 

目の前にはたくさんの檻があり、犬や猫から蛇やイグアナのような動物までいる。

もはや、小さい動物園だ。

 

「うだうだ言ってても仕方ないわね。さっさと終わらせてペンダントとやらを探しましょ」

 

そう言って千棘はバケツいっぱいに汲んだ水を量も気にせずに花壇にぶっかけた。

 

「何してんだーーー!!?」

 

楽の絶叫が響く。

そして次は楽が動物にエサをやるのだが…

 

「えーっと…にわとりのエサの適量は…」

 

「細かぁぁぁ!!?」

 

本で調べで、秤でいちいち計ってエサをあげている。

千棘の絶叫が響く。

 

(こりゃだめだな)

 

さすがに見ていられなくなり、橙が動く。

 

「はぁ…お前ら。見てられん」

 

「「うぐっ…」」

 

「まずは、千棘」

 

「は、はい!」

 

「えーっと…まぁ、分かりやすく人間に例えるぞ?さっき千棘がやってたのは、喉乾いたーって言ったら顔面に口に入りきらない量の水を無理矢理ぶちまけられてるようなもんだ」

 

「た、確かに…。すいません…」

 

千棘はがっくしと肩を落とす。

続いては楽。

 

「次、楽」

 

「は、はいっ!」

 

「お前がやってたのは、毎日同じ量の飯しか目の前に出されないようなもんだぞ。本人は満足しているのかすら分からないのに」

 

「うっ…確かに」

 

楽も同じように肩を落とした。

まぁ、問題はここからだ。

 

「んじゃ、改善するぞ。まずは水やりな。水やりは、まぁ…結構浸るまであげてもいいが、満遍なく行き渡るようにしろ」

 

「イエッサー!」

 

千棘は敬礼をしてジョウロをもって水道に向かった。

 

「エサやりは、本じゃなくてコイツらそれぞれの適量を俺達が探してやらなきゃだめだ。あげすぎもだめだし、あげなさすぎもだめだ。難しいがある程度時間をかけてやってくしかねぇな」

 

「了解!」

 

楽は力強く頷き、本を閉じてエサの入った袋をもってそれぞれの檻に突撃していった。

その後、係の仕事を終えてペンダント探しをして1日目は終わった。

結局、楽のペンダントは今日は見つからなかったようだ。

 

 

 




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