凡矢理高校の不良くん   作:icy tail

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第6話

調理実習があった日の翌日。

千棘は皆と仲良くなれたようで休み時間に色んな人と話しているのを見かけた。

そして、放課後。

係の仕事を楽と千棘に任せて屋上に来ていた。

 

「…あの2人。ほんといつも一緒にいるのね」

 

「だよな。本当に良くやるよなぁ」

 

「…うん。いいよね…ラブラブで…」

 

「いいわけないでしょ。あんたはどうするのよ」

 

「そうだぞ、小野寺。楽にアタックしてこい」

 

「ええ!?」

 

「そうよ。そうしなさい…って言うか…時藤君はいつからいたの?」

 

「ん?最初から?」

 

「わわっ!?と、時藤君!?気づかなかった…」

 

そして、何故か小野寺と宮本と一緒にいた。

 

「あなたもあの2人と同じ係よね?なんでここにいるの?」

 

「あの2人に世話の仕方を教えたのは俺だからよ。俺がいない時でもちゃんとできてるかをここで監視してんのさ。んで、監視してたら小野寺と宮本が来て俺に気づかずに話を始めたって訳だ」

 

「そう…。この際、時藤君も聞いてちょうだい」

 

宮本は小野寺が楽のことを好きだと言うことを知っているのを理解したのか話に加える方向でいくみたいだ。

 

「構わんぞ。ってことで小野寺、行ってこい」

 

「む、無理だよ~!」

 

「まあ、冗談はさておき…気持ちは伝えねぇのか?」

 

「…だ、だって…一条君は彼女がいるんだよ…?」

 

「んなもん理由にならねえっての。結局自分の気持ち次第だ」

 

「そうよ、小咲。相手に好きな人がいるからってアタックしちゃいけない決まりなんてないんだよ?」

 

「…それは…そうだけど…」

 

やはり小野寺は迷っているようで、いまいち煮えきらない様子だ。

そこで…

 

「…ふむ。宮本、ちょっといいか?」

 

「どうかしたの?」

 

橙は小野寺から少し離れたところに宮本を呼び、作戦会議を開いた。

 

「あの様子じゃあ、ただ背中を押して行ってこーいってだけじゃ意味ないよな?」

 

「まあ…そうね」

 

「そこでだ……………ってのはどうだ?」

 

「それいいわね。お願いできる?」

 

「おうよ!まーた楽しくなりそうだ!」

 

「…時藤君はなんで小咲の応援をしてくれるの?桐崎さんと仲良いわよね」

 

「ん?まぁ、友達思いの誰かさんに感化されたってところかね」

 

「…そう言うことにしとくわ」

 

宮本は納得していなさそうだが取り敢えず諦めたようだ。

そうして、会議は終えた2人は即座に行動を起こす。

 

「んじゃ着いてこーい!」

 

「小咲、行くわよ。チャンスぐらいは作ってあげるから」

 

「え…!?ちょっ…!待って何する気…」

 

橙を先頭に自分のクラスに向かう。

そして…

 

「到着!宮本、作戦通りでいくぜ?」

 

「ええ」

 

「も、もう何がなんだか…」

 

混乱する小野寺をよそに橙は教室の扉を開いた。

 

「楽~!」

 

「ん?どうした、橙?」

 

「今日、楽ん家で勉強会しよーぜ!」

 

「俺ん家?別にいいぞ」

 

楽からの了承を得た橙は教室の外で待っている2人に声をかける。

まぁ橙だけなんて言ってないからな。

 

「マジ?やったぜ!いいってよ…宮本、小野寺!」

 

「……はい?」

 

「良かったじゃない、小咲」

 

「ええっ!?る、るりちゃん!?」

 

「言質はとったぜ、楽!」

 

「は……はぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

そんなこんなで、強制的に勉強会が開催されることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

楽の家…集英組の玄関には先程のメンバープラス、千棘と舞子がいる。

集英組の面々は楽の友達が来たと言うことで超歓迎ムードだ。

強面の男達が笑顔で迎えてくれている。

 

「お待ちしてやしたぜ坊っちゃぁ~ん!!」

 

「…ああ。茶ァ頼む…」

 

「了解しやしたァ!!」

 

楽の一声で全員が動き出す。

橙は指示を出している竜の元へと挨拶に向かった。

 

「竜さん。ご無沙汰してます」

 

「おー!今日はゆっくりしていってくれや!」

 

「はい。あと、自己紹介が遅くなりました。時藤橙です。改めてよろしくお願いします」

 

「おう!橙な!ま、上がってくれ!」

 

「それでは、お邪魔します」

 

そうして、橙は少し遅れて楽の部屋に向かい全員が集まったのを確認して勉強会が始まった。

少し時間がたった頃、小野寺が口を開いた。

どうやら分からないところを宮本に聞くつもりらしい。

 

「ねぇるりちゃん。ここ解ける?」

 

「んー?………ねぇ一条君。ここ、小咲に教えてあげて欲しいんだけど」

 

「えっ!!?」

 

「るっ…!!るるる、るりちゃ…」

 

「いいから行け」

 

すると、機転をきかせたと言うか…強制的にと言うか宮本が小野寺を楽の元へと向かわせた。

橙は取り敢えず宮本に向かって親指を立てる。

 

(グッジョブ!宮本!)

 

(小咲は押しに弱いから楽勝よ)

 

そんなことをしていると、楽と小野寺が解こうとしている問題に千棘が横から目を通している。

なんとなく、割り込みそうに思えた橙は行動を起こした。

 

「千棘ー」

 

「なにー、時藤?」

 

「英語得意だろ?教えてくれよ」

 

「いいわよ!任せてちょうだい!」

 

実際はそこまで困っていないのだが、取り敢えず千棘を呼ぶことに成功した。

千棘は橙に頼られたのが嬉しかったのか鼻歌交じりに寄ってくる。

その後も勉強会は続いたが、勉強だけで終わるわけもなく次第に話し声が増えてきた。

そんな時、ふと千棘が口を開く。

 

「ねーねー小野寺さん!小野寺さんは好きな人とかいないの?」

 

「「っ!!?」」

 

(天然ってこえー)

 

大袈裟に反応したのが2人。

言わずもがな小野寺と楽だ。

 

「な…お前いきなり何聞いてんだよ…」

 

「何って…ただのガールズトークじゃない」

 

「わ…私は今はそういう人は…」

 

小野寺のこの言葉で楽は元気を取り戻したようだ。

小野寺に好きな人がいないと分かったのが嬉しかったらしい。

そんな楽をよそに千棘は小野寺に便乗するように続けた。

 

「…そっかー。私もまだそういう人いなくてさー。早く素敵な恋とかしてみたいんだよねー」

 

(このアホは…。自分達の設定忘れてやがんな)

 

千棘は素で恋人のフリのことを忘れて話しているようだ。

そういう人はいないと言いながらも、視線はチラチラと橙に向いている。

だが、今はそんなことを気にしている暇もない。

その場にいる全員の時間が停止しているなか、やっと気づいた千棘が誤魔化しにかかる。

 

「っ!!!!ジョ…ジョーク~!!ジョークです今のォ…!!」

 

「こ…こらひどいぞハニー!!僕という人がありながら…!!」

 

慌てて乗ってきた楽もこれまた酷い。

2人揃って誤魔化すのが下手すぎる。

 

「はぁ…だめだこりゃ」

 

(あーぁ。小野寺はまだしも宮本は勘づいたろーな)

 

現に宮本は怪しげな視線を2人に向けている。

小野寺は何がなんだか分からないといった様子だ。

舞子はニヤニヤしながら成り行きを見守っていたが、唐突に口を開く。

 

「なぁなぁ桐崎さん!オレもちょっち聞いていい?」

 

「へ?」

 

「お前らってぶっちゃけどこまでいってんの?」

 

舞子の質問に千棘と楽は思いっきり吹き出しさらに動揺が加速していく。

 

「なぁっ!?ど…どどどど…どこまでとおっしゃると…?」

 

「それはもちろんキ…むぐっ?」

 

「お前ちょっとこっち来い…!!」

 

これ以上はさすがにまずいと思ったのか、楽が舞子を連れて物理的に離脱していった。

やっと嵐が去ったが、場の空気は悪い。

橙はいまだに顔を赤くしている千棘を見てため息をはいていた。

 

(自業自得だから助け船はださなかったが…あの2人は本当に隠すつもりあんのかねぇ)

 

数分後、楽と舞子が戻ってきて勉強会は再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勉強会を再開して数十分がたった頃。

 

「…なぁ。あの2人、やけに遅くねぇか?」

 

「2人でなにしてるんでしょ~かねぇ?」

 

「あんたは黙ってろ。まぁ…でも確かにそうね。もう20分はたってる」

 

「探しに行く…?」

 

今、部屋にいるのは千棘と楽を除いた4人。

2人は竜に呼ばれて蔵?に何かを取りに行っている…らしい。

 

「いや、俺が竜さんに聞いてくるわ」

 

橙はそう言って立ち上がり1人で部屋を出た。

取り敢えず、組の人を探して歩いていると声が聞こえた。

 

「ん?話を…」

 

「坊っちゃんと嬢ちゃんを蔵に閉じ込めて急接近作戦は成功だ!あとはあの2人次第だぜ!」

 

「いやー!仕事したわ~!」

 

話を聞こうと近寄ろうとしたところで不穏なワードが耳にはいり足を止めて耳を澄ます。

 

「はぁ…先に助けに行くか」

 

(これが楽の言ってた行きすぎたお節介か…)

 

橙は今度は組の人に見つからないように蔵を目指す。

近くにあった窓から庭に出て裏に回る。

 

「確か裏って言ってたよな………おっ!あれか!」

 

蔵を発見した橙は回りに誰もいないことを確認して近づいた。

見上げると、上の方に窓のようなものがある。

 

「ふむ。開け方が分からん…扉をぶっ壊すのはさすがにまずいか…んならコッチだな」

 

そうして橙は蔵の横にはえている木を登り、窓に飛び移って行った。

その頃中では…

 

「お前…怖いのか…?」

 

「わ、悪い!?昔から苦手なのよ…こうゆう暗くて狭い場所」

 

閉じ込められた2人は座り込んでいた。

楽は平気そうだが、千棘がよろしくない。

どうやら暗くて狭い場所が苦手なようで涙目になって少し震えている。

楽もさすがに心配なのかからかうことなく対応している。

 

「そ、そうか…」

 

「アンタなんかとこんなところに閉じ込められても何も起きないってのよ…!」

 

「失礼なやつだな!?」

 

その後も話をしながら怖さを紛らわしてはいたが、結構限界が近いのか千棘が弱々しく呟いた。

 

「ううっ…時藤…助けてよぉ…」

 

ほんの小さな希望にすがるために、橙の名前を呼んだ。

その時…

 

「よぉ。呼んだかよ、お嬢さん」

 

「えっ…?」

 

求めていた声が上の方から聞こえた。

半ば放心状態で上を見上げると窓の所に橙が立っている。

降りてきた橙は座り込んで泣いている千棘の頭を優しく撫でながら言った。

 

「二度ある事は三度あるってか?ま、助けに来たぜ…千棘」

 

橙に触れてもらったことにより、今起こっていることが現実だと分かったのか感極まって千棘は橙に抱きついた。

 

「…ううっ…ぐすっ…時藤~!!!」

 

「おっと!おーよしよし…んな泣くなっての。綺麗な顔が台無しだぜ?」

 

橙は千棘を受け止めて、頭を撫でながら慰めにかかる。

数分後、泣き止んだ千棘を確認してやっと空気と化していた楽の出番がやってきた。

 

「…ってことで、楽も無事だなー?」

 

「扱い酷すぎだろぉぉぉ!!!」

 

「うるさいわよ!時藤のお陰でやっと慣れてきたんだからビックリさせないでよ!」

 

「わ、悪ぃ…じゃねぇぇぇ!!!お前もだこのヤロー!俺との態度の違いすぎだろ!」

 

少しキャラ崩壊気味だが…まぁ正当な叫びだわな。

本当に空気だったもん。

まぁ、今は言い合いをしている暇はない。

早く脱出することが先決だろう。

 

「まーまー。2人とも落ち着けって。取り敢えずここを出ちまおうぜ」

 

「…はぁ。ま、そうだな。つってもどうやってここを出るか…」

 

どう脱出するか頭を悩ませている楽だが、橙はもう思い浮かんでいるみたいだ。

後は、家主の楽に許可をもらうだけ。

 

「それなんだが…楽よ、この扉ぶっ壊れても問題ねぇか?」

 

「ん?まぁ、大丈夫なんじゃねーか?」

 

「りょーかい。んじゃお前らちっと下がってろ」

 

言質をとった橙は2人を下がらせて扉の前に立った。

楽は今更ながら橙のやろうとしていることに気がついたようだ。

 

「はーい!」

 

「おまっ!?まさか…」

 

「ふっ…オラァッ!!!」

 

楽は慌てて止めようとしたが、もう遅く、橙の蹴りで扉が吹き飛んだ。

 

「ふぅ~。脱出成功だな」

 

「そ、そう…だな」

 

「やった~!外だ~!」

 

これにより無事に救出が成功した。

楽が肩を落としていたのはまぁ、仕方がないだろう。

自業自得なわけだからな。

さらに、集英組の若頭が高校生に説教されるという珍事件も起こっていたらしいが、そこは割愛しよう。

 

 

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