凡矢理高校の不良くん   作:icy tail

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第7話

勉強会があった翌日の休み時間。

橙は宮本に呼ばれて教室で小野寺を加えた3人で話をしていた。

 

「いやー、昨日は悪ぃな。結局なんもしてやれなくってよぉ」

 

「まあ昨日は色々とあったから仕方ないわよ。…それにしても小咲…いつまで落ち込んでるのよ」

 

「だって…やっぱり恋人のいる人にアタックなんて…」

 

「本当に煮え切らないわね。それじゃあ諦めるの?」

 

「うっ…」

 

宮本も小野寺のために動いてくれているのだが、如何せん押しが強い。

ほぼダメ出しのような状態だ。

 

「まーまー、宮本も落ち着けって」

 

「はぁ…本当にこの子は…ってあんたその鍵まだ持ってたの?」

 

「え?」

 

「…それとも今更、その10年前に約束した男の子でも探してみるつもり?」

 

「…」

 

話をしているときに、ふと宮本が指差したのは小野寺が昔から大事に持っている鍵だ。

橙はその鍵を見ながら考えを巡らせていた。

 

(…やっぱりなんか気になんだよなぁ。絶対に楽が持ってるペンダントと関係あると思うんだけどな…)

 

そんなことを考えているうちに宮本が次に起こす行動を思い付いたらしく、またまた強引に作戦へと移るようだった。

 

「ん?なんか決まったのか?」

 

「ええ。時藤君も来てくれる?」

 

「おう。もちろん行くぜ」

 

「ありがとう。そしたら、放課後に学校のプールに来てちょうだい」

 

「りょーかいした」

 

こうして話し合いは解散となった。

小野寺の意思とは別のところでまたもや強制イベントだ。

どうなるのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後。

橙は更衣室に着替えに来ていた。

 

「うーっす。楽と舞子も呼ばれたのか」

 

「おー、橙も呼ばれてたのか!」

 

「へーい!ダイちゃん!ってゆーかそろそろ集って呼んでくれよ~!」

 

「確かにそうだな。んじゃ集も楽も早く着替えちまおうぜ」

 

どうやら、橙の他に楽と舞子も呼ばれていたみたいだ。

挨拶もそこそこに着替え始める。

 

「ふぅ…ってなんだよ2人揃って」

 

「いや…橙ってなんかスポーツとかやってんのか?」

 

「オレも気になるな~」

 

「まぁ、格闘技とか色々だな」

 

「へぇ~。ならあの蹴りも頷けるな」

 

「ほーほー!格闘技がその肉体の秘訣でしたか!」

 

そんな話をしながら3人とも着替え終わりプールに向かった。

プールに着くと、まだ宮本だけしかいない。

 

「宮本ー。来たぞー」

 

「来たわね。それじゃ小咲が来たら…って、なんで舞子君がいるの」

 

「はぁ?集も呼んだんじゃねーの?」

 

「呼んでないわよ」

 

「でへへ!来ちゃーった!」

 

「帰れ」

 

どうやら、集はどこかから聞き付けて自主的に参戦してきたらしい。

宮本の辛辣な態度をものともせずにはしゃいでいる。

集の性格からして水着目当てだろう。

 

「まーいいじゃねぇか。変なことしたら俺が沈めるからよ」

 

「あら、それいいわね。お願いできるかしら…今すぐに」

 

嫌そうにしていた宮本は手の平を返したように言った。

橙は宮本の願いを聞き、集を担ぎ上げた。

 

「お任せあれ」

 

「あ、あれ?ちょっと!?まだなにも変なことしてないんですけどぉ!?」

 

「どうせするんだから先払いよ」

 

集は抜け出そうと暴れるが、橙はものともせず集をプールに向かって投げ飛ばした。

 

「すまんな集よ。わがままな姫さんの命令なんだわ。ってことで…そーらっ!」

 

「ああぁぁぁぁぁ!!?」

 

悲鳴をあげながら着水し大きく水飛沫が上がった。

宮本は少し晴れやかな顔をしている。

 

「これで良かったか?」

 

「ええ。スッキリしたわ」

 

「お前らは何をしてんだよ…」

 

水から浮かんできた集を眺めながら宮本と橙は握手を交わした。

悪者は成敗しなきゃいけないから仕方ないな。

楽は疲れたように肩を落としていた。

その後、千棘がやってきた。

 

「おーす。千棘も呼ばれたんだな」

 

「そうなのよ!なんでも私に助っ人を頼みたいらしいの!」

 

「へぇ…まぁ、壁飛び越えるくらいだもんな。運動神経いいんだな」

 

「まあね!…それにしても良い体してるわね~!クロードと良い勝負じゃないかしら?」

 

「クロードってのはあの時の…そりゃあ嬉しいねぇ」

 

「あれ?クロードのこと知ってるの?」

 

「まぁ…色々あってな」

 

橙はあの時、路地裏で対峙した男のことを思い出し嬉しそうに言った。

そんな話をしていると少し遅れて小野寺が到着した。

 

「る…る…るりちゃぁあん…!!な…なんで私が選手登録されてるの…!?私…カナヅチなのに…」

 

「おっ、きたきた」

 

「っ!!?」

 

「私じゃ戦力になんか…あ、あれ!?一条君!?」

 

楽も小野寺もお互いに誰が来るのかを聞かされていなかったようで、両方が同じような反応をしている。

それにしても…

 

(分かりやすいねぇ、2人とも)

 

色々と事情を知っている橙は呆れたように笑いながらそんなことを考えていた。

そんな時、宮本が今回の本題を語る。

 

「一条君。あなたにお願いしたいのは、明日の練習試合までに小咲を泳げるようにしてほしいの」

 

なんとも大胆な作戦だが、お互いにもう逃げることはできない。

 

(くくっ。強かだねぇ宮本さんよぉ)

 

(押してダメならもっと押せっていうでしょう?)

 

(そりゃあいいな。結構好きだぜ?そーゆうの)

 

何かアワアワしている楽と小野寺をよそに、橙と宮本は悪い笑みを浮かべながら小声で話をしていた。

案外、この2人は気が合うみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮本の作戦通り楽と小野寺はプールに入っている。

橙と千棘もインストラクターという名目で補助にまわっている。

集は…自由に動きまわっている。

 

「えー…というわけで…これから小野寺に泳ぎ方の指導をする一条と…」

 

「はい!インストラクターの桐崎千棘でございます!!」

 

「右に同じく、インストラクターの時藤橙でーす」

 

「よ…よろしくお願いしま~す…」

 

楽と小野寺は緊張した様子で、逆に千棘はワクワクしているようだ。

そこから練習を始める前に少し話をしてやっと始まる。

ちなみに、集は千棘にセクハラをしようとして橙に投げ飛ばされていた。

 

「…そしたらどーすっか?小野寺はからっきしなんだろ?」

 

「う、うん…」

 

「ふむ…先生どーする?」

 

「はっ!?せ、先生!?…とりあえず見本を見せるか…?」

 

「はーいはい!私がやる~!」

 

「んじゃ千棘頼んだ」

 

話し合いの結果、まずは見本を見せることになり千棘が見本をかってでた。

 

「りょーかい!じゃあ見ててね!」

 

「は…はい…!お願いします…!」

 

そして、飛び込んで泳いだのだが…

 

「わー!すごい…!」

 

「ハイレベルすぎて見本にならねぇ…」

 

「ぷっ!加減を知らねぇのかよ!」

 

どう考えても泳げない人に見せるような泳ぎ方ではない。

 

「小野寺さ~ん!見てた?できそう?」

 

「あ、あはは…」

 

「あんなのできるわけねぇだろ…」

 

「感覚派の千棘じゃ教えるのは無理そうだな」

 

意気揚々と戻ってきた千棘にその事を伝えたところ、プールサイドで体育座りをしてへこんでしまった。

 

「ありゃあダメだな。千棘の事は俺に任せて2人でやっててくれ」

 

「ええっ!?」

 

「マ、マジか…!」

 

橙はへこんだ千棘のご機嫌取りに向かうために一時離脱することに。

そのため、楽1人で教えることになる。

橙は嬉しいのかなんなのか良く分からない表情をしている楽に近寄り、小声で話しかけた。

 

(2人っきりにしてやるんだから頑張れよ)

 

(お、おうよ!感謝するぜ、橙!)

 

(おう。…あっ、それとよ…お前小野寺が持ってた鍵が気になってたみたいだけど、あれは多分女子更衣室の鍵かなんかだから下手なことはすんなよ?)

 

(うえっ!!?あっぶね!隙を見て確認しようとしてたわ!マジでサンキューな!)

 

作戦通りに進めつつ、フォローも忘れない。

流石のお手並みと言ったところか。

メインを達成した橙は千棘のもとへ向かった。

 

「おら。いつまでしょぼくれてんだ」

 

「う~。だってぇ…」

 

「しゃーねぇな。んなら勝負と行こうじゃねーか!」

 

「?」

 

「泳ぎで1回でも俺に勝てりゃ…なんでも1つ言うことを聞いてやる!」

 

「っ!!?き、聞いたわよ!!後でやっぱなしとかダメだからね!!」

 

「はっ!勝てればの話だかんな?」

 

「やってやろうじゃない!」

 

こうして、一方では何故か勝負が行われようとしていた。

まぁ、これも橙の掌の上の出来事なのだが…。

千棘は無茶なお願いはしないと確信した上での行動なので、もし負けてもデメリットはほとんどないのだ。

そして、数十分後…

 

「か、勝てない…」

 

「はっはっは!甘いぜ千棘!」

 

かれこれ10本以上25メートルを泳いでいるのだが、橙は息1つ乱していない。むしろ、どんどん元気になっているようにも見える。

皆は体育の授業等でなんとなく察してはいただろうが、橙は運動神経、体力ともに化け物のようだ。

そんなことをしていると、今まで楽と小野寺の方を眺めていた宮本が橙と千棘の方に来た。

 

「おー!宮本ー!」

 

「あなた達はなにしてるのよ」

 

「いや、実はなーーー」

 

宮本に状況を説明すると…

 

「私も参加しようかしら」

 

「別にいいぞ。んじゃ次で最後な」

 

「最後は勝つわよ!」

 

意外や意外、宮本も参加すると言ってきた。

何か考えがあるのか、はたまたただの気まぐれか…。

 

「むふふ!なんか面白いことになってるね~!ってことでオレっちが審判をしてしんぜよう!」

 

これまた、いつの間にか横にいた集が審判をかってでた。

 

「位置について~」

 

橙は今まで通りに、千棘は今日一番に気合いが入っている。

宮本は無表情だがやる気はある様子だ。

 

「レディ………ゴー!!!」

 

一斉にスタートを切り、全力で泳ぐ。

一番始めに壁をタッチしたのは…

 

「ふぅ……ブイ」

 

「だぁ~!宮本めっちゃ速ぇな!普通に負けたぞ!」

 

「さ、最下位…」

 

宮本だった。

流石、水泳部と言ったところと思いたいが、実際に橙に勝てる時点でめちゃくちゃ速い。

 

「しゃーねぇ…宮本、願いを聞こうか」

 

「そうね…まず1つ目は…」

 

「ちょい待て。いくつ言うつもりだよ」

 

「2つね」

 

「………分かった」

 

橙は負けたと言うことで、2つ聞くことにしたらしい。

宮本の1つ目の願いは…

 

「今から私の事は名前で呼んで」

 

「りょーかい……るり。これでいいか?」

 

「ええ。ありがとう、橙君」

 

名前で呼ぶこと。

意図は分からないが、千棘の様子を伺っていたのを考えると楽と千棘の関係を見抜くための一手なのかもしれない。

真相は本人にしか分からないが。

 

「むぅ…」

 

実際に千棘に効果はあるようで、頬を膨らませて2人を見ている。

 

(まぁ、多分宮本が思ってるのとは違うだろうがな)

 

「どうしたの?桐崎さん?まさか、一条君という彼氏がいるのに…」

 

「ずるい!!」

 

「は…?」

 

「ぷっ…!やっぱりなぁ」

 

思っていた反応と全く別の反応が返ってきて、るりは訳が分からないといった様子で千棘を見ている。

 

「それじゃあ私だけ仲間外れじゃない!」

 

「くくっ…んなら千棘も名前で呼べばいいんじゃねぇか?」

 

「うん!そうするわ!るりちゃんって呼んでもいい?」

 

「…え、ええ。私も千棘ちゃんって呼ぶわね」

 

「あんたもよ!だ、だ、橙!」

 

「うーい」

 

「なんだか良く分からなくなってきたわね…」

 

顔を赤くして橙の名前を呼ぶ千棘を見て、るりは頭を傾げた。

そして少し悩んだ末に2つ目の願い…

 

「2つ目はまだ取っておくわね」

 

「はぁ?んなのありかよ…」

 

まさかの持ち越しと言うことになった。

その後、時間ギリギリまで小野寺に教えるのを手伝ってこの日は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日の練習試合当日。

千棘達は受付を済まして一旦合流した。

 

「おーす。るりと小野寺も受付は済んだのか?」

 

「おはよう。橙君も来てくれたのね」

 

「おう。るりが負けるとは思わねぇけど応援してるからな」

 

「ええ、ありがとう」

 

そんな話をしていると、楽と小野寺が橙とるりの顔を交互に見ながら驚いたような顔をしている。

 

「お前らそんなに仲良かったか?」

 

「るりちゃんもしかして…」

 

「まぁ…昨日色々あってな」

 

「そうね」

 

「橙~!おはよ~!」

 

「おーす、千棘」

 

「「…」」

 

「だから色々とあったんだっての」

 

実際はただ名前呼びになっただけなのだが、奥手な2人からすると劇的な変化に見えるようだ。

そんなこんなでもうすぐ練習試合が始まった。

次のレースに千棘と小野寺が出る。

そして…

 

『よーい…スタート!!』

 

審判の合図で一斉に飛び込んだ。

プールサイドでは橙と楽とるりが3人で集まって観戦している。

 

「そーいや…わりー宮本。小野寺、1日じゃ完全に泳げるようには出来んかった」

 

「え…ああ…まぁ、大丈夫でしょ。あの子が溺れるような事さえなければ」

 

「るり…それフラグ」

 

「…でも小咲、昔から死ぬ程不器用だからなぁ」

 

「フラグの後押しをするな…っ!?」

 

冗談半分でそんなことを話していると、橙がプールの方に視線を向けた瞬間に走り出した。

 

「え…?」

 

「橙っ!!?」

 

『ねぇ…あ、あの子溺れてない?』

 

楽とるりは何が起こったのか理解するよりも早く、プールサイドで観戦していた他の学校の生徒の声が聞こえた。

そしてやっと、橙が助けに走ったのを理解したのだ。

一方、プールに飛び込んだ橙。

上がってきた橙が抱えていたのは千棘だった。

準備運動をせずに挑んだために、足をつって溺れてしまったようだ。

 

「ぶはっ!…おい!大丈夫か!千棘!」

 

「…ゲホッ!ゲホッ!だい…じょぶ」

 

「良かった…じゃねぇ!バカ野郎!心配したじゃねぇか!」

 

「ごめんなさい…」

 

助けたのが早かったお陰で少し水を飲んだだけで済んだようだが、橙に怒られて落ち込んでいる様子だ。

 

「はぁ…ま、無事で良かった。戻っからつかまっとけよ」

 

「うん!」

 

千棘を抱えてプールサイドに上がると、楽達が駆け寄ってきた。

楽は準備運動をしなかったことを千棘にグチグチ言っていたが、やっぱり心配していたようだ。

珍しく言い返してこない千棘にやりずらそうな顔をしていたが…。

まぁ、こんな事件があったものの、無事にプログラムは全て終わり練習試合は幕を閉じた。

 

 

 




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