凡矢理高校の不良くん   作:icy tail

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第8話

水泳部の練習試合の翌日。

放課後、教室には橙とるりと小野寺の3人がいる。

 

「よぉ。今日はどうしたんだ?」

 

「千棘ちゃんから話を聞いたのよ」

 

「ん?あー、恋人のフリのことか?」

 

「…やっぱり知ってたのね」

 

「ええっ!?し、知ってたの?」

 

どうやら、ついさっきに千棘から恋人のフリのことを聞いたらしく緊急会議を開いたらしい。

るりははじめから怪しいと思っていたのだろうが、小野寺は鈍すぎて橙が知っていたことすらも全く予想もしていなかったみたいだ。

 

「当たり前だろ。もし、あの2人が本当に付き合ってたら俺は小野寺の事は応援しねーよ」

 

「まあいいわ。それで、話って言うのは…」

 

「負い目がなくなった小野寺が、いかにして楽にアタックするか。ってとこだろ?」

 

「ふふっ。話が早くて助かるわ」

 

「ちょっ!ま、待ってよ!そんな話聞いて…」

 

当の本人を置いて、話を進める2人に小野寺は慌てながら止めにはいる。

すると間髪いれずに、るりが小野寺に核心をつくような質問を投げた。

橙へのアイコンタクトもセットで。

 

「ふーん。なら小咲はせっかくのチャンスなのに、一条君が誰かに取られてもいいんだ?」

 

(援護お願いね)

 

(言われなくても)

 

「普通に考えても楽って優良物件だからなぁ…顔も悪くねぇし、料理も出来る、男らしいところもある。楽のことを好きなやつがいてもおかしくねぇもんな」

 

「…た、確かに。ど、どどどうしよう!?るりちゃん!?」

 

橙の話を聞いて、明らかに動揺する小野寺。

効果は的面のようだ。

 

「やっぱり…告白するしかないわよ」

 

「俺も賛成」

 

取り敢えずぶっこんだが、ここから小野寺を上手く説得するのが今回の会議の要点だ。

そう思っていたのだが…

 

「…そう、だね」

 

「小咲…?」

 

小野寺は少しの沈黙のあと言った。

慌てて否定をするかと思っていたるりは、小野寺の決意のこもった声を聞いて少し驚いた表情になって小野寺の顔をみている。

 

「私…思いを告げることは半分諦めてた。それに…もうこんな苦しくて寂しい気持ちになるのは嫌だから…!」

 

るりと橙が無言で見つめる中で、小野寺は続ける。

普段は一歩引いている所がある印象を受ける小野寺だが、強い女の子だ。

るりも初めて見る1面だったから驚いているのだろう。

 

「がんばるよ。るりちゃん、時藤くん。私…この気持ち伝えてみる…!!」

 

こうして、大きな一歩を踏み出した小野寺。

るりと橙はここまできたら大人しく見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小野寺が大きな決断をした後、少し教室で話をしている。

そして、もう帰ろうかという話になった所で楽がたまたま教室にやってきた。

 

「あれ?橙?…と小野寺、宮本。お前ら今帰るとこ?」

 

「一条君…!」

 

なんというタイミングの良さ。

 

(橙君!離脱!)

 

(お任せあれ)

 

橙とるりは一瞬にしてアイコンタクトを取り、離脱することに。

 

「ああっ!もうこんな時間じゃねぇか!るり、行くぞ!」

 

「ホントだー。そう言うことで急用があるからすぐ帰らなきゃバイビー」

 

るりの棒読みでぐだぐだになったが脱出成功だ。

残された2人は変な空気になったが、頑張って欲しいものだ。

教室から脱出をした橙とるりは、ゆっくり歩きながら校門の方へ向かっていた。

 

「…む。うーん…」

 

「そわそわしてどーした?」

 

「…小咲上手くやれるかしら?」

 

「ははっ。本当に小野寺が大切なんだな」

 

「…ええ。親友だもの」

 

「そうか。なんかるりって小野寺のお母さんみたいだよな。世話の焼き方が」

 

「あなたも人のこと言えないわよ。お父さん」

 

「くくっ、それもそうだな」

 

2人は校門の近くの壁に背中を預けて話ながら小野寺を待っているようだ。

何てない話をしていると、急にるりが話を切り出した。

 

「橙君は千棘ちゃんのことどう思ってるの?」

 

「ん?千棘?そーだな…」

 

るりの中では、千棘と楽が付き合っていないと言うことが分かってからずっと気になっていたのだろう。

千棘の矢印が向いている方向を。

そして、橙自身がそれをどう思っているのかを。

実際、橙は小野寺や楽のように鈍感ではない。

千棘から向けられているのが好意の1種であることは気がついている。

それが異性としてのモノかは別としてだ。

さらに、るり自身も自分の中に生まれつつある知らぬ感情の正体を探りたいと言う気持ちもあるのだろう。

ここまで異性と気が合うこと自体初めてなので戸惑っている部分もあるのかもしれない。

 

「まぁ…ダチとして好きだぞ」

 

「異性としては…?」

 

「うーん…今はそう言うのはないな。魅力的な女の子だとは思うけどよ」

 

「…そう。まあ、千棘ちゃんは綺麗だしスタイルもいいしね。男子は放っておかないでしょうね」

 

転校してまだあまり時間もたっていない状況だ、仕方がないことだろう。

だが、るりはこの答えを聞いて少しホッとした。

それに加えて少し胸がチクッと痛んだ。

何故か少し嫌な気持ちになり、嫌味のような事を口走ってしまう。

だが橙は…

 

「なーに私は関係ないみたいな顔してんだ?るりも十分綺麗だぞ?」

 

嫌味とは全く受け取らず、思った事を口にする。

 

「…セクハラ」

 

「はぁ!?そりゃねーぜ!」

 

るりの物言いに橙は抗議するように言った。

だが、るりは橙に背を向けてこれ以上話を聞き入れない姿勢を取っている。

流石の橙もこれが赤くなった顔を隠すためだとは気がつかなかったようだ。

この2人の間でも何か動き出そうとしている…のかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橙とるりが待つこと、20分。

ようやく小野寺がやってきた。

 

「…どうだった?」

 

「…ごめん。るりちゃん、時藤くん。やっぱり言えなかった…」

 

「そう……このヘタレ!」

 

「ううっ…」

 

「ははっ!辛辣だなぁ!めちゃくちゃ心配してたくせによぉ?」

 

結果はある程度予想はついていたのだろう。

辛辣な物言いだったが、橙は横から補足をした。

それを聞いた小野寺は少し嬉しそうにるりを見ているが、るりは橙を睨んでいる。

 

「橙君、後で覚えときなさいよ…」

 

「おー、こわっ」

 

「…はぁ。でも、小咲にしては良くやったんじゃない?」

 

「るりちゃん…」

 

「そーだな。今回は駄目だったけどよ…小野寺が諦めない限りいくらでも手は貸すから、また頑張ろうぜ」

 

「時藤くん…」

 

「仕方ないから私も付き合うわよ」

 

「…っ!うん!私頑張るよ!」

 

そうして、失敗に終わったものの少し前に進めた小野寺。

加えて、この3人のグループの仲も良くなったようでなによりだ。

3人はそれぞれ帰路に着いた。

 

 

 




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