第1話
あれから2年の月日が経った。自分は一体どうすればいいんだろう?あの人たちは…別に心配してないか、あれからまともに話をしてないし。
だけど自分は…このままでいいのかな?
「真くん、そろそろ休憩していよ」
「あっはい、わかりました。ですけど、キャベツがなくなったので裏から取ってきたら一旦休憩しますね」
考え事をしていたけど、おばちゃんの言葉に反応し思考を現実に戻す。
自分、十六夜 真(いざよい しん)はある理由から家を離れ今居住しているアパート近くのバイト先である此処、[ふらわー]で働いていた。
年齢でいえば自分は高校に行っている筈の歳なんだけど、自分は行っていない。理由としては少し家の人と問題を起こして家出同然に家を出ていったからだ。
あれから通っていた中学にも通わず卒業式にも出ず受験勉強もほっぽって最終的に今の状況になったので仕方ないと言えば仕方ない、自分の自業自得だ。
そんなあてもない自分を働かせてくれているおばちゃんには感謝している。ついでにアパートも紹介してもらった(曰く付きだったので安く住める)りなど色々お世話になってる。
「持ってきました。それでは自分はちょっと…」ガラガラ
休憩しますと言おうとしたら扉が開く音がした。どうやらお客が来たようだ。そう思い扉を見るとやってきたのは馴染みのお客のようだ。
「お邪魔しまーす」
「失礼します、おばちゃんお好み焼き2つで」
2人の女の子が手慣れた様子で店に入ってき、カウンター前のちょうど自分前の席に座った。
「おや、いらっしゃい。響ちゃんに未来ちゃん」
おばちゃんが2人の女の子、立花響と小日向未来に笑いながら挨拶をする。
「今日は、いらっしゃいませ2人とも」
「あ、今日は真くん」
「今日は」
2人と挨拶した自分は休憩をするのをやめて2人にお水を出し、お好み焼きの調理の準備を始めた。
「ちょっと久しぶりだね2人とも。まぁ、受験が忙しくかったからしょうがないけど、そろそろ学校でも試験の結果が発表されてる頃かねぇ」
「はい、そうなんです。私と響も今日が結果発表の日でした」
「結果を見てきたんですよ、2人で」
未来がおしぼりで手を拭き、響がお水をぐびっと飲みプハーとした後におばちゃんに答える。
「それで結果は?」
気になったのでお好み焼きを焼きながら結果を聞いてみた。
「ふっふーん、私を舐めちゃいけないよ真くん。もちろん、私も未来も…」
「合格したよ。私は響はちょっと危ないと思っていたけど」
「えっ!?酷いよ未来!」
やっぱり合格したんだ。まぁ2人とも結果を見てきたなら、不合格だった場合響は目に見えてどんよりしている筈だった筈だしね。実際2人ともふらわーに入ってきた時はとてもいい笑顔だったし。
…正直な所自分は響の学力で大丈夫かと思っていたけど。
「おやおや、2人とも頑張ったねぇ。じゃあ今日ここにきたのは合格祝いってわけだね」
「響も未来もお疲れ様。じゃあ、いつもより気持ちを込めて美味しいお好み焼きを、作っちゃおうかな」
いつも以上に気合い込めてお好み焼きを作ると決め集中する。
そうしてできたお好み焼きを2人に渡した。
「はいお待ち遠さま、どうぞ」
「ありがとう、いただきまーす」
「いただきます」
もぐもぐとお好み焼きにがっつく2人とも。
「そういえば2人が受けた学校って何処だったけ?」
そういえば何処だったかなと頭に浮かんだので聞いてみる。
響が頬っぺたにお好み焼きを膨らませながら答えてくれた。
「もぐもぐ…私が4月からむぐむぐ…通う学校は、ぱくぱく………リィヒファン…おんはく…もぐもぐ…ごくん、院だよ」
「響、お行儀が悪いよ、ほら頬っぺたにもソースが付いてるし。それに何言ってるのかわからないよ。まったく、あっ真くん私たちが通うのは私立リィディアン音楽院高等科だよ」
未来が響を注意しながら、おしぼりで頬っぺたを拭き響の顔を綺麗にし自分に正しい名前を教えてくれた。
「ああ、そうだそこだ。確か小中高が一貫なんだっけ」
「うん、そうだよ。それにリィデアンでは音楽の授業中心に力を入れているだよ。まさに音楽の為だけにある学校で何より学費が安いんだあ〜」
口を空っぽにした響が説明してくれた。
「学費が安いんだ。私立なのに珍しい」
「だよねー」
「実際の所、響がリィディアンを選んだのはあの人に会いたいから何だけどね」
未来がこちらを見ながらお箸でお好み焼きを細くし口に放り込みながら喋った。あの人?
「あの人って?」
「真くんも知ってる人だと思うよ。ほら、歌手でトップアーティストの風鳴翼。知ってるでしょ」
「えっ、……………そうか……うん名前はしってるよ」
その名前を聞いて、一瞬心臓が締め付けられた感じがした。…あまり思い出そうとしないようにしていた記憶が自分の中に込み上げてきた。
『離れないで!ちゃんと自分の手を繋いで!』
『どうなってるの!?怖いよー!』
『大丈夫だから、大丈夫……』
「……くん…………ど…し……………いて」
逃げないと。
逃げないと。
逃げないと、死……
「真くん、どうしたの大丈夫?」
ハッと意識が戻ってくる。周りを見ると響と未来、おばちゃんが心配そうに自分を見ていた。
「えっ?何?みんな、どうしたの?」
「いや、どうしたって…大丈夫かい?アンタ顔が真っ青だよ」
「うん、どうしたの真くん。急に黙っちゃって調子悪いの?」
「うん、心ここに在らずって感じだったよ。調子悪いのなら言ったほうがいいよ」
みんなが心配していた。はあー、久しぶりに思い出しちゃったななるべく考えないようにしていたのに。みんなに心配かけるなんて情けない。
「大丈夫だよ、ちょっと考え事してただけだから。それより響はおかわりいる?」
「えっ?あ、うんおかわりお願いしまーす」
「ちょっと、響」
とりあえず響に話を振る。こういう場面は響に話を移したほうが回復するしね。とりあえず頭を切り替えて響のお代わりのお好み焼きを作り始める。
「大丈夫かい?真くんさっき調子悪そうだったけど」
「大丈夫ですよ。本当になんでもないですから」
おばちゃんが心配してくれてるが問題ないと返答する。
その後、全員が自分を心配してくれていたが自分がいつも通りの行動をした結果最終的には響と未来がふらわーにきた時の空気に戻ったのだった。
「「はー、ご馳走さまでした」」
「お粗末様です」
響と未来が手を合わせてご馳走様を言い自分は頭を下げる。
最終的に響はお好み焼き6杯と未来は2杯を食べた。
おばちゃんが2人の食器を片付け洗い始めた。
「今日は合格祝いだから自分が奢るよ。めでたい日だからね」
「いいの!ありがとう真くーん」
「えっ?でも悪いよ」
響が喜び未来は遠慮するが最終的には折れて「ありがとう」とお礼を言ってきた。
「じゃあおばちゃん、真くんまた来るからね」
「それでは失礼しますご馳走様でした」
「じゃあまたね」
2人にさよならをいい2人がふらわーを出ていった。
「相変わらずいい食べっぷりだったねえ響ちゃん」
アハハと笑うおばちゃん。
「そうですね。じゃあ自分は次に何をしますか?」
「そうだね、真くんは休憩しな。2人が来たから休憩がまだだったでしょ」
「いえ、自分は別に」
「いいから休憩しな、それにさっき顔色も悪かったでしょ。ちょっと休みな」
おばちゃんが自分に有無を言わせずに休憩を促してくるので断れなくなりとりあえずカウンターに座る。
そんな自分におばちゃんがお水を出しお好み焼きを焼き始めた。
「真くん、アンタが何を考えていたのか私は知らないけど。あんまり抱え込むのは良くないと思うよ。それに女の子を心配させるのはいけないねえ」
「……すみません」
おばちゃん謝る。……抱え込むか……自分にはちょっと無理かな。ごめんなさいおばちゃん心配をおかけしました。心でお詫びしていると目の前にお好み焼きが置かれる。
「さあ食べな、これはアタシの奢りだよ。嫌なことはアタシのお好み焼きを食べてふっとばすことさ、さあお上がり」
おばちゃんが笑顔で行ってきた。ソースの美味しそうな匂いがする。口の中で涎が出てきた。
自分は手を合わせながら考える。
そうだおばちゃんの言うとうりだ。嫌なことはこれを食べて吹き飛ばそう、それから残りの時間を頑張らなきゃ。
それでは。
「いただきます」
この美味しそうなお好み焼きを頂くとしよう。
1話投稿した時にかけてました。地味にショック!!