サブタイトルでオチが見えるかも?
ザオリクで蘇ったホンダラとオルカの二人。
アルスから散々説教を受け、グランエスタードに戻る。
そして最初にやったことは………
オルカの店で購入できる最強装備を買うことだった。
「銅の剣、旅人の服、皮の盾、皮の帽子?おめぇの装備品じゃダメなのか?」
「僕の装備品じゃ強すぎるからね。それじゃあおじさん達の修行にならないよ」
伝説の武具にこそ負けるものの、マール・デ・ドラゴーンで売られている武具は世界最強クラスの店売り武器だ。
防具類は呪文や火の息等のブレス攻撃を軽減できる効果があるし、メタルキングの剣は丈夫な上に軽く、マリベルのような女の子にも使いこなせる程に軽くて扱いやすい。
これらを装備していれば、ホンダラ達のようなレベル1の人間でも、フォロッドのカラクリ兵や過去のダーマに現れるモンスターぐらいならば楽勝できるだろう。
だが、それでは意味がない。
アルスはホンダラの楽して稼ぐという考え方をまず改めて貰いたいのだ。
「ケチくせぇこと言うなよ。こんなショボい道具を与えやがってよぉ」
「ショボくて悪かったね。それでもこれ一式、うちの店の商品なんだけど……」
自分の店の商品を貶されて不愉快そうにするオルカ。
彼の店はグランエスタードでも唯一、ドレスを扱う店であり、王室御用達の
しかしながら、世界が解放された現在となってはコスタールやマーディラス、リートルードから物が流れてくるようになり、少しずつ客足が遠退いているのだが。
「………どうしてもと言うなら、僕の装備品を買い取ってくれても良いけど?全部で20万ゴールドするけど」
「20万ゴールドォォォ!?マーディラスやコスタールでもそこそこの場所で家が建てられる金額だろ!?それ!」
「ホンダラさん。言っておくけど、その武具一式だって400ゴールドはするんだからね?いつか必ず返して貰うから……」
「うぐっ!うちの家賃分くらいはあるじゃねぇかよ!こんなのが!」
(
アルスがウッドパルナの森で最初にスライムに襲われた装備はもっと貧相だった。
「ひのきの棒(木刀)」「布の服」「皮の帽子」「おなべの蓋」である。
(今にして思えば、キーファがいなければ危なかったよね……)
あの時は本当に危なかった。
王子の嗜みとして剣術を習っていたキーファ。同じひのきの棒でもそれがあるか無いかで大分違う。
あの時、キーファがいなければ冒険の第一歩でアルス達は躓いていたかもしれない。
しばらく口論を続けるオルカとホンダラだったが、しばらくしてオルカの勝利で口論は終わる。
しかし、オルカはそれきり黙り、自分の旅人の服と町に来ている旅行者の服を見比べる。
「…………」
「オルカ?」
「…………いや、何でもない。アルスが勧める下地を作る旅って奴を教えてくれ。お前と同じ事をして、俺がお前より劣るなんて事は無いからな」
少し様子がおかしかったオルカだが、すぐにいつも通りに戻り、アルスを見下すような物言いをしてくる。
(何か、いつものオルカとは違ったみたいだけど……?)
少し疑問を持つものの、アルスは目的地に向かってルーラを唱えた。
ウッドパルナ…カラーストーン採掘場
「おおっ!ここがウッドパルナ名産、カラーストーンが採れる採掘場か!ここでカラーストーンを採って金を稼ぐってわけだな?アルス!」
「違うんだけど………それにカラーストーンって他の宝石よりも安いし………」
カラーストーン。
青、赤、黄色の三種類ある宝石の総称だ。
ガラスのように透き通った綺麗な石は、同じ色のルビー、サファイア、トパーズよりも綺麗だと評価の高い。
しかし、それならばウッドパルナという自治区はもっと栄えていた国だっただろう。
しかし、ウッドパルナはフィッシュベルよりは栄えているものの、グランエスタードよりは田舎だ。
カラーストーンがそれほど他の宝石よりも価値が低いのにはそれなりの訳がある。
カラーストーンは同じ色のそれとぶつけると砕け散り、消えて無くなってしまう。
加工する過程でちょっとでもぶつかればその苦労は水の泡。加工する匠も今ではほとんどいない。
そして所持してうっかり他の物とぶつかれば2つとも無くなってしまう。買い手が中々付かないのだ。
上記の理由でカラーストーンの値段はよほど大きな物でもない限り、ただのガラス石と同等かちょっと高い程度の値段だ。
ウッドパルナのお土産屋で細細と売られるくらいが落ちだろう。
「じゃあ何でこんなところに来るんだよ?」
「ここが安定して弱い魔物が出てくる洞窟だからね」
そう。カラーストーン採掘場には現在でも魔王復活以前からモンスターは生息していた。
故にここが石板世界を除いた世界で一番弱い魔物が出てくるモンスターの生息地なのである。
同じく最弱のモンスターであるスライムが出現するというのならば、現在のクレージュも当てはまるのだが、クレージュにはアルスの武具を装備したとしても瞬殺されると思われるゴールデンスライムやキングスライム、スライムベホマズン、メタルキングが高確率で現れるので確実性に欠ける。
アルスのMPだって無限では無いのだから、無用なザオリクの回数は押さえたい。
そんな事を考えている時………。
「アルスさん。アルスさんでは無いですか」
見知った顔が………しかし、何故こんなところにいるのかわからない人物が鉱夫達の詰所から出てきた。
「アズモフ先生とベックさんにスラッち……」
ハーメリアの天才学者と助手のベック。それにハーメリアの山奥の塔に住み着いている合体スライムのスラッちだ。今はキングスライムになっている。
過去のハーメリアで起きた大陸沈没事件が現実に起きたことなのか、それとも伝説に語られるだけのおとぎ話なのかを検証するためにハーメリアの魚の生体や山奥の塔の調査を行っていた人物である。
その頭には知識の帽子が被られている。
これは元々アズモフの物であったのだが、とある事件で盗難された。取り返すのにアルス達は奔走したが、アズモフは受け取らずにそのままアルス達に譲渡。
オルゴ・デミーラ討伐まではアルスの手元にあったのだが、今はアズモフに返却している。その時ももうあげた物だからと返却を拒もうとしていたアズモフであったが、マリベルが……
「将来新たに何か研究したいことがあったときにはまた必要になるでしょ?それか、アズモフさんがベックさんを認めた時の卒業した証として継承するとか。どちらにしてもあたし達が持っているよりも、本当に必要な人達が持っていた方が帽子も幸せよ」
と言って半ば押し付けるようにして返却した。
再びアズモフが知識の帽子を被っていると言うことは、また新たに研究したいことが出来たのだろう。
「お久しぶりです。こんなところでお会い出来るとは思いませんでしたよ」
アズモフが嬉しそうに握手を求め、アルスが知識の帽子を返却してからも何度かハーメリアに用事で行ったのだが、アズモフ達はいつも留守にしていた。
「ええ。本当にお久しぶりです。アズモフ先生達はずっとハーメリアを空けてますよね?」
「ええ、新しく知りたいと思うことが出来ましたので、旅に出ているんですよ。きっかけはほんの些細な事だったんですがね」
「オイラ達はアズモフの護衛だぜ」
「塔で調べものをしていく内に打ち解けましてね。本当に何が切っ掛けで縁が出来るかわからないものですよ」
ワハハハハと笑うアズモフとスラッち。
一方でベックはじっとアルスを見ていた。
「えっと………ベックさん。どうしたんですか?僕の顔をずっと見ていますが………」
「アルスさん………単刀直入に………」
「いけませんよ。ベック君」
「ですが………」
「いつも言ってるじゃないですか」
「そうですね。僕の悪い癖です」
相変わらず飄々とした人間である。反対にベックはせっかちな部分があり、その都度アズモフに窘められている。
結果を早く知りたいベックと調べていく課程を大事にしているアズモフの違いである。
「ですが、ベック君も大分出来るようになりましてね。この分ですと、もうじきこの知識の帽子は彼の物になることでしょう」
「そうなんですか?凄いですね、ベックさん」
「いえ。僕はまだまだですよ。先程のように叱られる事もしばしばですから………」
「叱られる…ですか?」
「ええ。『学者たるもの、真実は自分で解き明かす物であり、他者からヒントは貰っても、答えを求めて先入観を持つものではない』……と、先生にはよく指導を受けるんです。それなのに僕はいつも答えだけをまず最初に求めてしまうんですよね」
たははは……と、頭を掻いている。
「言われるんですよ。『先入観は正しいものも歪んでしまいます。それに、自分で謎を追い求めていく事は面白いですし、突き止めた時の達成感と言ったらないですよ?ベック君は学者としての閃きは優秀なのですが、その辺りが非常に損をしていると思います』って。直そうとは思うんですが……」
「その辺りはこれからですよ。ベック君」
良い師弟関係だと思う。
自分達で謎を解き明かして結果を導いていく。アルス達の旅だってその連続だった。ただ好奇心で始めた事が、世界の謎を解いていくのが、新たな島を冒険するのが楽しかった。新たな大地が復活し、そこに住む人々の笑顔を見るのが好きで、面白かった。
「ところでアルスさん。私は今、ウッドパルナの伝説について調べているんですよ。知っていますか?ウッドパルナには
「4つ……ですか?」
「ええ。ウッドパルナの町で広く知られているのは英雄パルナと英雄ハンクの伝説です」
その2つについてはアルスも良く知っている。現在では語られていない悲しい裏話も……。しかし、残り2つの伝説とは何だろうか?
「後の2つはこのカラーストーン採掘場にて起きた事なのですよ。アルスさんは英雄パルナと英雄ハンクの少し後の時代に、カラーストーンがスマイルロックや爆弾岩、メガザルロックに変化したという伝説をご存知ですか?」
「いえ。それは初耳です」
嘘偽りのない事である。
「そして、これはユバールの民から聞いた事なのですが、伝説の守り手のエピソードはいくつかあるのです。曰く、どこかの国の王子だったとか」
(キーファの事だ……)
しかし、それがウッドパルナと何の関係があるというのだろうか?
親友のその後の事が気にかかるアルス。
「彼には他にも守り手となってすぐに守り手の一族の試練を最年少で乗り越えたとか。その時に神の踊り手だった女性を妻にし、贈った結婚指輪は守り手の家系代々の家宝となったようです。不思議な事にそのデザインはグランエスタードの現在の意匠に似ているようなのですが………」
「!!!」
思わずオルカを見てしまったアルス。
守り手の家系に伝わる結婚指輪とは、アイラの一族に伝わったキーファの遺品で、バーンズ国王が亡き王妃との結婚指輪としてオルカの店にオーダーメイドした物だ。現在のグランエスタードのデザインにそっくりなのは当たり前なのだ。
そのエピソードも、移民の町のすれ違い石板で起きた奇跡に関係し、アイラがキーファの子孫だったという事が判明する切っ掛けだったのだ。
「そして、これがウッドパルナの最後の伝説に繋がる出来事なのです。妻が病気になってしまった際に、その特効薬をこのカラーストーン採掘場に採取しに来たそうです。その時にもここは異変に見舞われ、通常3つしか存在しないカラーストーンに黒や紫やオレンジ、緑と言ったあり得ないカラーストーンが出現したようなのです」
(他は知らないけど、緑色のカラーストーンは……あったんだ………)
「おや?緑色と言う言葉に反応しましたね?そうなのですよ。緑色のカラーストーンは、現在では消失してしまったようなのですが、ウッドパルナの伝説にはしっかりと残っていたのです。件のユバールの守り手も、妻の病気の特効薬に緑色のカラーストーンを求めていましてね。その時に最後の異変に巻き込まれたようなのです。そして、その最後の異変には、三つ目の異変を解決した事件にも登場した『ユグノア』という国の王子が関係しているのだとか……」
ユグノアなる国についてはアルスも聞いたことがない国だったが、緑のカラーストーンを求めたのは間違いなくキーファだろう。
キーファは緑色のカラーストーンが瀕死の重症をも治し、あらゆる病魔の特効薬になることを知っていたのだから。
「ところでアルスさん。あなたは緑色のカラーストーンの事に反応していましたが、地元のウッドパルナでも英雄ハンクを熟知しているほんの一部分の方しか知らない伝説の宝を、何故あなたがご存知なのですか?」
「えっと………」
この人はイヤな事を聞いてくるとアルスは思った。
自分達が過去の世界にタイムスリップし、各地の封印を解いて回ったことは自分達から言わない事にしている。
もしかして………
「ああ、これは答えを仰らなくても結構ですよ。答えはいずれ、自分達で解明しますから。もうほぼ、見当は付き始めていますがね。ついでに私はある存在について研究中でして、私が以前に研究していたハーメリアの海神グラコス伝説にも繋がるのですが……各地の伝承を紐解いて行くと、大抵は三人から四人組の旅人が登場するのですよ……ユバールの守り手になった人物とも思わしき旅人を伴った旅人が、時代も場所もまちまちであるにも関わらず、まるで同じ人物が現れたかのように……」
「!?」
(この人は………!!!)
間違いない。アズモフはほぼ答えに辿り着いているか、辿り着きかけている。
アルスやマリベルらエデンの戦士達が時を越えて旅をし、各地の異変を解決して回ったことに。
この事はアルス達は事情を知っている一部の人間にしか教えないようにしている。
それを自力で解く人間がいるとは………
「この仮説の裏付けをするのが、私の旅の最後の目的です。仮説そのものはベック君の閃きでしたがね。どうやら……本当に知識の帽子はもうすぐ、ベック君の手に渡るようです……」
「先生………では………いえ、それも自分で解き明かすのですね?」
「そうです。英雄ハンクが登場した『魔物の塔』があったとされる東の山間と、旅人が消えたとされる西の森の調査です!特に西の森に咲いていた花!あれは近年グランエスタードで品種改良されたばかりの新種の花。それが何故ウッドパルナの森で発見されたのか、是非とも調べる必要がありますからね!では、アルスさん。近々、またお会いするとは思いますが、今はこれで失礼します。大地の精霊像の学者さんをお待たせしていますので」
あの過去に残った考古学者の子孫も一枚噛んでいるらしい。案外、アズモフとあの考古学者は根は同じなのかも知れない。
「色々と聞くかも知れませんが、その時はお付き合い下さいね?アルスさん」
「じゃあな!また会おうぜ、アルス」
「ハハハ………どうぞお手柔らかに………」
キラキラした目でさって行くアズモフとベックを疲れきった顔で見送るアルス。
この師弟には頭が下がる。同じ事実に気付きかけている人物の中でも、切り口がマーディラスの大神官や聖風の谷のネファーナとは違う。
ウッドパルナの西の森で咲いている花は、過去のこの島でマリベルがマチルダに渡した花の種が咲き、それがこの地に何代も根付いた物だ。
エスタード島とウッドパルナ島の距離は近い。
天気が良ければグラン・エスタードの王宮からでもウッドパルナ島は見えるので、普通に考えれば気候が同じなのだから、ウッドパルナに咲いている花がエスタード島に咲いていてもおかしくはないとスルーするはずなのに、その花の品種から何から何まで全てを調べた上で、検証に乗り出すのだ。
ここまでするとは…………
「あの人はやっぱり天才だよ………」
「なぁアルス………さっきの話ってのは………」
「アズモフって言えばハーメリアの発明家……あの人の下で………」
「さ、さぁ。行くよ。時間は無いんだから」
アルスも知らなかったユバールの伝説
これはドラクエ7のエピソードではありません。3DS版のドラクエ11及びドラクエ11Sのやり込み要素、ヨッチ族の村でプレイできる『冒険の書の世界』でのエピソードです。
『冒険の書の世界』ではドラクエ過去作品の世界に11の主人公達が旅立ち、異世界に介入している魔物達を倒して世界を正常に戻すという冒険でのエピソードです。
それにはキーファが登場したり、ドラクエ2のサマルトリアの王子やラクエ4のアリーナが絡んだりと複雑な関係になったりします。
アズモフ
ハーメリアの伝説を科学的に調べたアズモフならば、各地に伝わるアルス達の旅の軌跡を調べるだろうと考えてみました。
独自のセンスと、確かな検証で切り込んでいきそうです。
アズモフ編はそのうちやろうかと考えています。
近々、体調不良で1週間の入院することが決まり、時間が出来そうなので……。
それでは次回もよろしくお願いします。