その後のドラゴンクエスト7   作:本城淳

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沢山のUA、ありがとうございます。

「エデンの戦士になっていたかも知れなかった者」
このサブタイトルは「サガ・フロンティア」の裏解体真書に書かれている幻の8番目の主人公、ヒューズにスポットを当てた小説、「8番目の主人公になり損ねた男」から取りました。
サガ・フロンティアと言えば去年、リマスター版が発売されましたが、ヒューズ編が「8番目の主人公になり損ねた男」をベースに作られていますね。ロマサガシリーズとサガフロが好きだった私としては嬉しい限りです。
ラスボスラッシュはまだクリアをしておりませんが。

前置きが長くなりましたが、その「エデンの戦士になり損ねた者」……
それは誰の事なのか。
その人物に触れている作品も存在するので、お気付きになる方もいらっしゃるのかも知れませんね。

アンチ砂漠の3バカとレブレサックが強いので、苦手な方はご注意下さい。


エデンの戦士になっていたかも知れなかった者

グランエスタードの大広間。

 

普段は王族(バーンズ王、リーサ、アイラ)が集まり、食事をとるための食堂といった場所なのではあるが、それ以外の事で使われる場面も少なくない。

例えば大きなパーティーを催した時。

例えば大人数で執り行われる会食やらお茶会が催される時。

果ては前のオルゴ・デミーラが出現した時のような軍の会議に使われたり等だ。

元々小さなエスタード島にある島国のグランエスタード。世界が本来の姿を取り戻すまでは、本来の使われ方以外で大広間が使われる事など滅多になかった。

その大広間が最近ではよく別の用途で使われる事が多くなって久しい。

諸外国からの来賓が多くなり、時には国賓クラスの来客を会食を伴って面会する機会も多くなったからだ。

各国の王族やその使者は勿論の事、国王を擁しない国については各地方の村長や族長、ダーマの神官長やブルジオ等も国賓として扱っている。

中にはマーディラスや砂漠の国のように女王ネフティスと砂漠の民の族長のように、1つの国の中にいくつかある代表をも等しく国賓として扱う場合もあるし、クリスタルパレスで神(正確には神を騙った魔王オルゴ・デミーラ)との謁見の場で集まった一般人も国賓として扱っていた。

アルスの本当の父親ではないかと思われるマール・デ・ドラゴーンのシャークアイ、英雄メルビンもこのカテゴリーに入っているし、流石に貴族扱いこそされてはいないものの、メルビンと同じくエデンの戦士の一人であるガボも城に遊びに来たときはバーンズ王と共に食事をしている。

流石に懐が深い名君と呼ばれるバーンズ王も、ダーマの山賊の頭みたいな存在を国賓として扱うことは無かったが。

この日、グランエスタードを訪れた人物もそんな国賓と同等の歓待を受けていた。

ハーメリアの学者にしてかつては世界一の頭脳者として名を轟かせていたアズモフとそのお供だ。

アズモフのお供には助手のベックと護衛のスラッチも同席している。

ハーメリアの代表としてクリスタルパレスに招かれていたアズモフ本人だけならば国賓として納得がいくし、その助手のベックもギリギリで良しとしても、護衛の…ましてスライムのスラッチまで会食の席に招くとはバーンズ王も懐が深いというか、細かいことは気にしないと言うか……。

 

「すみません……私やスラッチ君まで……」

 

肩身が狭そうに小さくなり、頭を垂れるベック。

 

「構わんよ。聞けばベック殿もスラッチ殿もアイラ達の友人であるとの話。娘の友人とあるならば、親として歓待せんわけにはいかぬだろう?」

「それがオイラ達魔物でもか?」

 

スラッチは今はグランエスタード城にやって来たときのキングスライムから分離し、スライム状態で会食場のテーブルの上に乗っていた。

バーンズは寛大にもスラッチのみだけでなく、お供のスライム達をもテーブルの上に上げている。全員が娘…アイラの友人というのが理由だ。

 

「友人に魔物とかそういうのは無いものだとワシは考えておるよ。移民の町やルーメンのモンスターパークの例もあるのだからな」

「さすがはアルス達の王様!話せるぜ!」

 

上機嫌な様子でスラッチ達は料理にかぶり付く。

アズモフは彼らを優しい目で眺める。アズモフとスラッチ達の出会いはあまり友好的とは言えなかったが、今となっては良い友人関係だ。

 

「して、アズモフ殿。此度はどのような御用向きで我が城へ?」

「書状で申し伝え上げた通りでございます。現在、私めは各地に伝わる伝承を調査しております」

「ほほぅ……」

 

バーンズはポーカーフェイスを保ちながらも興味深げにアズモフの瞳を見据える。

バーンズはアルス達の旅を報告として聞いており、全ての真実を知っている。知ってはいるが、それを世間に公表しようとは考えていない。

それはエデンの戦士達の意向もあるのだが、他にも世界の情勢やらも絡んだデリケートな問題もあるからだ。

それ故に黙っていたのだが、それはそれとしてバーンズはアズモフの調査の結果には興味深かった。

そこから続くアズモフの話。

所々ではアルス達の冒険の真実とは違うところもあったのだが、概ねで史実と同じだった。

 

「いかがですか?アルスさん。これが私の調べたあなた(・・・)達の偉業ですが……」

「あはははは……もう確信しているのですね?」

「決め手になったのは砂漠の国ですね。国の意向で口を開く者は少なかったですが、族長の息子さん達が救い主様の伝承を色々と教えて下さったので……」

「あんの3バカ………前のお説教だけじゃ足りなかったわね……」

「あはははは……」

 

同席していたマリベルがワナワナと肩を震わせ、アルスは顔をひきつらせながら乾いた笑いをする。

前の説教とは先日のホンダラ関連の事だ。

砂漠の民はアルス達が時を渡った旅をしたという真実を広めたくない意向を尊重しており、頑なにアズモフの調査には非協力的な意思を貫いていたのだが、族長の息子達はその限りではなかったようだ。

 

「同じ大地の精霊を崇める者としては悪く言いたくは無いんだけど……」

「アイラお姉様。どうしたのですか?」

「何でもないわ。リーサ…」

 

大地の紋章を痣として胸に宿しているアイラは深く溜め息を漏らして頭に手を当てる。そんなアイラにリーサは心配するが、リーサ自身はあまり状況を飲み込めていない。

ちなみにリーサは最近、アイラの事を実の姉のように接している。自身を呼び捨てにして欲しいと懇願していることがその証だろう。※1

 

「ふむ………お見それしましたぞ、アズモフ殿。しかしアズモフ殿……この事は……」

「わかっておりますよ。バーンズ王。これは私の好奇心から起こした行動であって、(いたずら)に世界の歴史に介入して混乱を起こしたくはありませんので。特にレブレサックとブロビナ、マーディラス、砂漠の国にとっては火種にもなりかねませんし……」※2

 

過去のレブレサックとブロビナの神父の事情と現代のレブレサックとブロビナ、マーディラス………。

明るみに出ればレブレサックの未来は危うい事になるだろう。

 

「私が調査した記録は後に事情をご存知のグランエスタードに譲渡いたしましょう」

「そうですな。丁度良い場所が、この国にはありますからな。そうじゃろ?アルス」

 

思い当たる場所とは謎の神殿の最奥……またはそこから行ける神様、または4精霊が住処にしていた『更なる異世界』の事だろうか?と考えるアルス。

 

「あはははは…神様がいらっしゃった恐れ多い場所に封印するよりも…例えば天空の神殿の書物庫でも良いのでは?ねぇメルビン」

「一歩間違えば世界戦争の火種になりかねぬ書物は、もっと厳重に封印されるべきでござるよ。神の石だとて、いつ落ちるかわからぬでござるからな。アルス殿。寛大な神様なら笑ってお許し下さるでござる」

 

天空の神殿も一般人が立ち入れる場所では無いものの、天空の神殿を空に浮かせている『神の石』だとて、過去にはフォロッドの東に落下した事実がある。

アズモフの記した歴史書(仮)が絶対に世にでないという保証はない。

メルビンの反論は、間違っていないだろう。

他にも海底王の神殿等も考えたが、海底王は地上の事と関わりを持つのを嫌うので、引き受けてはくれないだろう。

結局、最も人の手に渡る可能性が低い場所を一点に考えるならば、『謎の神殿の最後の鍵を使わない限りは絶対に立ち入れない最奥にある、石板の台座から行ける、世界一最強の雑魚モンスター達が跋扈する更なる異世界の最奥の神様が暮らしていた場所』が一番なのだ。

 

「あそこに行くのかぁ………」

「ワシが遺す手記も頼むぞ?」

「手記……ですか」

「当たり前だろう。お前達がワシにしてきた報告は王に対する報告だ。会話内容に関して記録を残さん王がどこにいる」

「僕としては友達の父親に対する報告のはずだったんだけどなぁ………」

 

小さくても一国の王。

英雄であろうと、一般人のアルスとは感覚と心構えが違うということを改めて思い知り、またアルスは1つ、大人になった。

 

「それでですね……アルスさん達に聞いて欲しいことがいくつかあるんですよ」

「聞いて欲しいこと……ですか?」

「はい。例えば先日お会いした際にも言いましたが、アルスさんはウッドパルナ島にあるカラーストーン採掘場の歴史をいくつかご存知ありませんでしたよね?」

「ええ……確かに……」

 

アルスは先日にアズモフと会ったときに聞かされた過去のカラーストーン採掘場の事件や、紫やら黒やらのカラーストーンがいきなり現れた事件を知らない。※3

 

「アルスさんは気にはなりませんか?カラーストーンのお話のような、アルスさん達が去った後の世界のお話を……」

(確かに気になる………)

 

アルス達も旅の過程である程度はその後の歴史を知る機会があったが、それは誰もが知る歴史の一部といった内容だった。

現代日本で例えるならば学校で習う歴史の上澄み……という感覚であろう。

冒険が関わったのであればともかく、その後の歴史を深く知ることはあまり無かった。

今からでも謎の神殿に行けば、その時代に行くことは出来る。

中にはエンゴウやグリンフレークのように、少し時間がずれた過去の世界に行くことも可能だ。

しかし、その方法では『その当時』を知ることは出来たとしても、『その当時』と現代の間にある歴史を知ることは出来ない。

例えばライラとの結婚を許されたその後のキーファの事や、または………

 

「例えばアルスさん。長いダーマの歴史において、最強の騎士長はどなたかご存知でしょうか?アルスさん達が関わったであろうフォズ大神官の時代にあたるのですが」

「え?」

 

丁度その事を考えていたアルスはドキッとする。

 

「フォズ大神官!オイラ、好きだったなぁ……」

 

当時のフォズ大神官と同じ年代の年頃のガボは目を輝かせる。

ガボは今でもダーマで転職するならば、フォズ大神官の手で転職したいと言い出している始末だ。

ガボが言う『好き』が色恋のそれかどうかは鈍いアルスにはわからないが。

 

「フォズ大神官時代の最強の騎士長と言えば……カシムさんじゃ無いんですか?」

 

メルビンの英雄の力を使い、ダーマの地下を封印した時の騎士長は確かにカシムだった。※4

 

「カシム騎士長はその先代ですね。最強の騎士長はカシム騎士長の弟子であり、そして……その義弟です」

「カシムさんの義弟……?それって……まさか……」

 

アルスは再びドキッとする。

キーファの次に考えていたのは、まさにその人物の事だったからだ。

 

(ダーマの地下を封印した時はまだ彼は帰って来ていなかった………ネリスさんは寝込んでいたし、カシムさんは彼を心配していた………)

 

アルスは時々は思い出していながらも、ついぞ彼のその後を偶然知ることは無かった。忙しくて彼の事を調べることも無かった。その彼の名は………

 

「ザジ……ですか?」※5

「ええ………ザジ殿です。ダーマ奪還から世界放浪の旅を経て成長した彼は、帰還した後にカシム騎士長の弟子となり、騎士長になったようです」

「ザジが………」

 

アズモフから語られる、その後のザジの物語をアルスは静かに聞いた。

これは、もしかしたらエデンの戦士達となっていたかも知れなかった少年の、あったかも知れないもしもの物語である。

 

続く




※1
アイラに呼び捨てにして欲しいというリーサ
3DS版追加ストーリーにおける原作通りです。キーファのその後を語るストーリーにて、アイラがキーファの子孫と発覚した後にアイラを連れてリーサを訪ねると、リーサがアイラに対して呼び捨てにして敬語も止めて欲しいと懇願してきます。
ブラコンだったリーサがその後、アイラに対してどう接していくかを想像したら……
「アイラお姉様化」になりました。

※2
ドラクエ7における胸くそイベントと、その後に起こりうる火種(レブレサック、ブロビナ、マーディラス、砂漠の国)
ドラクエ7で胸くそイベントとして有名なのが現代のレブレサックの歴史改竄とそれを追求した結末でしょう。
そしてレブレサックを出る際に神父様は村の少年、ルカスから黄金の女神像を譲り受けます。
その女神像からレブレサックの神父とブロビナの過去の世界で非業な死を遂げた神父は同一人物とわかります。
そして過去のブロビナにおける事件では、魔物達は当時は他国(マーディラス)に侵略を仕掛ける国家、ラグラーズの名を騙り、ブロビナを攻めていました。
現代のラグラーズはマーディラスに吸収合併されていますが、これらの事が全て明るみになった場合、レブレサックに対する心証を考えると……ガタガタ……
更にレブレサックとエデンの戦士達を心酔する砂漠の国は橋を1つ挟んで同じ大陸に位置する事を考えると……カオス!カオスですぞ!

※3
アルスが知らないカラーストーン採掘場事件
これも以前に投稿した話にも後書きで書いたことですが、この2つのエピソードはドラクエ11の話と関連しています。

※4
ダーマのその後とメルビンの英雄の力
これも3DS版の配信追加エピソードです。
伝説の英雄の割には、仲間としては大して強くなかったメルビンの設定を補足するエピソードです。
魔物によって大改造され、邪気に満ちた地下を封印しようとするフォズを連れて『世界一高い塔』へと挑むという物でした。
ホットストーンを使わなければ開かない扉は、ホットストーンそのものだったメルビンの英雄の力で開き、最上階では、本来ならばメルビン復活に使われるハズだった力をフォズが利用し、ダーマの地下を封印するというエピソードです。
これにより、復活したメルビンの力が以前よりも落ちてしまっていたという設定になり、プレイヤー達の『レベル19で英雄とかwww』という大草原のツッコミに対するメーカーの回答ではないか?と言われています。

※5
エデンの戦士になっていたかも知れない少年
それがザジです。
ダイアラックのクレマン、ユバールのジャン、グリンフレークのペペのように大半の出奔したキャラクターのその後が語られる中で、全くその後が分からなかったキャラクターであるザジ。
真相は分かりませんが、その理由は開発段階ではザジがエデンの戦士達の正式な仲間に加わるはずだったからでは無いか?と言われています。
その噂が本当ならば、8人目の主人公になり損ねた男、サガフロンティアのヒューズみたいですよね?
リメイクでは正式に主人公に格上げされたヒューズと違って、ザジはリメイクでもその後が語られる事はありませんでしたが。
追加エピソードでもカシムから「ザジはまだ帰って来ていない。ネリスが寝込んでいる」としか語られておらず、ガボが怒っているくらいしか語られていませんでした。

それでは次回もよろしくお願いいたします。
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