その後のドラゴンクエスト7   作:本城淳

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ダーマ奪還後、姉弟喧嘩の末にネリスの元を去ったザジのその後を書いていきます。
完全オリジナル話ですのでご了承下さい。


ザジの冒険(駆け出し編)

ダーマから離れ、山を西から時計回りにぐるりと回るようにして2日ほど歩いた島の東の所に建つ大きな宿屋にザジの姿があった。

 

「ここまで一緒に連れてきてくれてありがとう。僕一人ではここまで来れなかったよ」

「それはこっちのセリフだぜ?坊主。流石は地下闘技場の突破者だな。お前の呪文は助かったぜ」

 

屈強な戦士風の男に肩をバシバシと叩かれ、顔をしかめるザジ。

いくら戦士に転職したとはいえ、元々僧侶と魔法使いだったザジにとっては結構痛い。

職歴に加え、まだ幼かった事もあって、冒険者としては非力な方なのだから仕方がない。

 

(そんな事を言ってもいられないんだけどな。地下闘技場の突破者と言ったって、殆どは………)

 

ザジはその殆どはアルス、マリベル、ガボのお陰だと思っていた。

実のところ、ザジの助力も決して小さくはない。

ベホイミ、イオ、スカラの呪文はアルス達の痒いところを的確に補助していたし、火事場の馬鹿力とも言うべきか、時々繰り出す会心の一撃はアルス達の度肝を抜いていた。

本人が思うほど、ザジは活躍が無かったわけでは無いのだが、今のザジはとにかく自己評価が低かった。

 

「ケホッ!ケホッ!止めてくれよ。僕はまだ戦士としてはなりたてなんだからさ」

「ハハハ!悪い悪いっ!とにかく、ここから港はすぐだからよっ!元気でやれよ?」

「あんた達はすぐに行かないのかい?」

「俺達は井戸にちょっとな………」

「井戸?」

 

ザジは宿屋の井戸に目をやる。

一見、何の変哲もないただの井戸のようであるが、そこの中は………

 

(ああ……カジノか……『吹き溜まりの町』での生活が長かったから、すっかり忘れていたや。何でこんな井戸の中にカジノがあるんだろうな……)

 

実際はザジが言うほど『吹き溜まりの町』に長くいたわけでは無かったが、人間、嫌な事ほど長く感じるものである。

 

「わかった。船代まで使い込まないように気を付けろよ」

「へへへ……分かってるよ」

「どうだか……」

 

そう言ってザジは男達のパーティーと別れる。

中にはのめり込みすぎてせっかくダーマの島に来たと言うのに転職せず、この宿に長期宿泊しまくっている人間もいるという。

何のためにダーマまで来たのかと思うが、偽大神官によって力を奪われ、『魂砕き』の恐怖に怯える、あの『吹き溜まりの町』の生活を強いられる、この最近までのあの事件に巻き込まれなかったと思えばのめり込みすぎた人間は運が良いのか悪いのか……。

そんな事を考えながら、池の上に建てられている宿屋の扉を開ける。

 

(懐かしいな………)

 

もうどのくらい前だったのかすら忘れたが、ダーマに行く道すがら、確かに寄ったここは、外から見たときとは裏腹に中は驚くほど広い。

少しだけ昔を懐かしんだザジだが、ダーマから出てここまでノンストップで来たせいか、体が休息を求めてくる。

 

(宿、取れるかな………)

 

建物自体は広いと言えども、この宿屋そのものは狭く、大部屋が1つだけある宿屋だ。

付け加えて事件中であった以前と比べ、これからダーマへ向かう者と、転職を終えて帰る者とで人が多い。

特に今はダーマが解放されたばかり。『吹き溜まりの町』で囚人のような生活を強いられ、我先にダーマ地方から出ていきたい者達に溢れていた。

 

(失敗したかなぁ………)

 

勢いに任せてダーマを飛び出したザジだったが、少し考えればこうなることはわかっていたことである。

転職を終えてすぐに出るのではなく、一晩宿屋に泊まってから旅立てば良かったと少し後悔する。

 

(いや、そうしたならば決心が鈍っていたし、こうしてここまで同行できるパーティーがいなくなっていたかも知れない)

 

酒場や池の畔で雑魚寝だったり、最悪はカジノの酒場で寝るのも良いだろう。

持っている財布が心配ではあるが、『吹き溜まりの町』に比べたら治安が悪い所などまずあるまいと思い直す。

 

(あんな最悪な環境だったけど、こんな変な度胸が付いちゃったのは良かったのか悪かったのか……)

 

内心で苦笑しながらザジは宿屋のカウンターへと向かう。

 

「泊まりたいが、空いているか?」

「ええ。もうじきいっぱいになりますが、大丈夫ですよ?お泊まりになりますか?」

「一泊頼む」

「わかりました。ごゆっくりお休み下さい」

「食事は自分で作るのか?それとも食事のサービスはあるのか?」

「食事のサービスはありませんが、炊事場なら無料でご使用になれます。薪や食材に関しましては道具屋にてお求め下さい。後は、地下に酒場がありますので多少は割高となりますが、そちらのご利用もどうぞ」

(今日は自分で作る気にはなれないな……)

 

お世辞にも上手とは言えないが、それでもザジは自炊を始めとした最低限の家事をすることが出来る。

自分以外は誰も頼れない「吹き溜まりの町」では姉の看病をしながら生活をするには最低限、自分の事が出来なければ生きてはいけなかった。

殺人と魂砕き以外は何をしても許されるのが吹き溜まりの町の掟だ。自分の事は自分で出来なければ死ぬ。

弱肉強食のサバイバル生活は否応がなしにザジに生活力を付けさせた。

 

『本当に全て、自分自身で出来ていたのか?』

(くっ!)

 

頭の中で自分ではない自分の声が響く。

いや、ザジ本人も分かっている。この声は自分が目を逸らしている部分を許さない本心の部分からの囁きだ。

 

『あの町で僕や姉さんが生きてこれたのは本当に自分だけの力か?違うだろ?誰のお陰だ?』

(うるさい………)

 

「酒場で食べてくる」

 

自分の内の声から逃れたくて、ザジは酒場へと向かうことにする。

 

「行ってらっしゃいませ」

「帰ってきたら寝床が無くなっている……ということは無いよな?」

「そんな事はありませんよ。まぁ、ダーマの事件は聞いていましたから、疑心暗鬼になられるのは理解してますけど」

 

一瞬だけムッとした女将だったが、ダーマの一件の事はこの2日間で散々聞いていたのだろう。すぐに表情を取り繕って笑顔で答えてくる。

ザジだって疑いたくは無かったが、少しでも油断していたら、あの町では当たり前のように住処を奪われ、物は盗まれる。

疑り深くなるのは必然だった。

 

(こりゃ、感覚が前に戻るまで時間がかかりそうだ…)

 

ボリボリと頭を掻きながら、ザジは酒場への階段を降りていった。

 

「食事はあるか?」

「エール………いや、ハーブティーと燻製肉(ベーコン)、パンに簡単なサラダとスープで良ければありますよ」

「それで良い。ハーブティーなんて小洒落た物があるんだな」

 

世間一般的な酒場のメニューであるが、今のザジにとってはご馳走だった。理由は言うまでもない。

 

「グリンフレーク産の茶葉の値が下がってね。酒が飲めない人用に出せるくらいには仕入れられるんだ」

「僕はもう独り立ちした冒険者だ。酒くらい飲める」

 

酒を飲めば嫌なことを忘れられる……そう聞いていたザジは、今はとにかく嫌な事を忘れたかった。

 

「ふぅ。こちらも商売です。飲みたいと言うのであれば、お出しするのも吝かではありませんがね?ここは神殿の騎士様も巡回で来るんですよ。下手な事をして神殿に睨まれるのだけは……わかりますよね?」

 

世界中から人が集まるダーマ。それ故に下手な水よりも酒が安全な水分摂取という地域もあり、子供の頃から酒を飲んでいたという人種が訪れる事も少なくない。

バーテンもそういう地域出身の子供ならば、躊躇いなく酒を提供する。だが、商売柄とでも言うべきか、バーテンはザジがそうでは無いということは一目で見抜いていた。

 

「それに、あまりお節介は言いたくないですがね。お客さんの年で飲まれる酒を飲むのは……お勧めできませんね。どうせ飲むのであれば、初めての酒は良い酒であるべきだと思いますよ」

 

ザジが大人であれば、バーテンは黙って酒を提供していただろう。

どんな酒であっても、酒で身を崩す事になっても、それは全て自己責任だ。

初めての酒が逃げる酒……溺れる酒……。酒を提供する身としては、出来ればそんな悲しい酒を提供したくないとバーテンは思っていた。お節介の1つも焼きたくなるだろう。

 

「バーテンさんの言うとおりですよ?お兄さん。初めてのお酒は、もっと楽しいお酒であるべきです」

 

それでも酒を頼もうとするザジを止めたのは、もう少しで中年と呼ばれる年齢に手が届きそうな吟遊詩人風の男だった。

半ばこの酒場に居着き、ダーマの事を教え、転職してきて戻って来た者の話を聞くのが何よりの楽しみとしている一風変わった趣味をしている男だ。

ダーマに向かう者は必ずここへ寄り、そしてここに帰ってくる。キメラの翼を使ったり、ルーラを使える者以外は転職を終え、帰り道の最中にモンスターと戦い、新しい職の感覚を経験した感想を聞けるという男の趣味を満たす場所として、この酒場は二つと無い絶好の場所なのだろう。

男は様々な人間を見てきた。中にはザジのような人間も。

一方で、ザジもこの男の事は覚えていた。

「ダーマに行ったものが、最近はここに戻って来ないのです。私に付き合うのが嫌だという理由であるならば、それで構わないのですが……心配でなりません」とこぼしていたからだ。

 

「……あんたに何がわかると言うんだ?」

 

ザジは男を睨む。八つ当たりなのはわかっているが、今はとにかく何かに当たりたかった。

 

「………私にはあなたに何があったのか分かりません」

「ならば余計な説教は止めてくれないか?」

「説教なんてしませんよ。ご存知でしょうが、私はダーマで転職をしてきた方々のお話を聞くのが何よりも好きなのです」

「それが……何なんだよ」

 

ハリモグラやサンダーラットのように刺々しい態度で返すザジ。

それでも男は笑顔を絶やさず、優しい声でザジに返す。

 

「お聞かせ下さいませんか?僧侶だったあなたが、ダーマで何を経験し、何を思い、何に転職し、ここに戻られたのか」

 

転職とは生き方を変えるもの。

ダーマの転職は魂の指針を変えるもの。

魂の指針を変えたいならば、そうする理由というのが必ずあるものだ。

男が聞きたかったのは『転職』という行為から見える人生模様なのかも知れない。これも、所謂1つの人間観察というものなのだろうか?

男の優しい雰囲気に包まれたせいなのだろうか。それともあの牢獄のような生活によってささくれた心が、解放されて以来初めて触れた優しさのせいなのだろうか。気が付けばザジは全てを男に話していた。

話していく内に、これまでの事が頭の中でぐるぐると渦巻く。

まだ子供で、親を失った小柄なザジが病弱なネリスを守り、生きていくために僧侶を目指していたこと。

ネリスを守る為には回復呪文だけではなく、攻撃呪文も必要だと思い、魔法使いになるためにダーマを目指していたこと。

吹き溜まりの町に落ち、魔法力を奪われた事で、ネリスを守る為には魔法力だけではダメだと思ったこと。

そして……結局はカシムの力が無ければ自分ではネリスを守ることは出来なかった事……。

 

(本当は気付いていたんだ……)

 

誰も頼れないはずのあの(牢獄)で、ザジは自分の力で姉を護りながら生きていたつもりでいた。

しかし、実際はカシムがいなければとっくの昔に自分達は野垂れ死にしていただろう。

カシムがネリスに薬や癒しの効果があるアクセサリーを贈らなければ、とっくの昔にネリスは病魔に蝕まれて倒れていただろう。

そしてカシムがいなければダーマ奪還作戦の糸口を見出だせず、魂砕きの犠牲者となったザジは今でも魔物達の手先となっていたかも知れない。

カシム……カシム……全てがカシムのお陰だ。

ネリスに惚れていたカシムの下心があったにせよ、全てカシムの厚意により助けられていた。

そんなカシムに対し、姉離れ出来なかったザジはちっぽけな子供の対抗心を燃やしていた。

そして……戦士となって喜んでくれるだろうと思い、ザジはネリスの元に向かった。

結果は………溜め込んでいたネリスのストレスが爆発。それによりザジは思いしった事……。

 

(僕が姉さんを守っているつもりで、僕は姉さんに寄りかかっていたんだ………そんな僕が、姉さんの重荷になっていたんだ……)

 

もう姉の元にはいられない。

自分が姉の重荷になっているのだったならば、自分の居場所は姉の隣にはない。

そう悟り、逃げるようにして一人旅に出るザジ。

剣を買い、ネリスを置いてダーマから去る時、ザジに話しかけてきたカシムとのやり取りを思い出す。

 

『ネリスは俺が貰うぞ』

『それは姉さんとあんたの問題だ。僕には関係ない』

 

そして、カシムと話す直前まで話していたアルス達の前を素通りしてダーマを飛び出すザジ。

無視していたものの、彼らの顔をザジは忘れない。

アルスは何かを言いたげな表情を浮かべていた。

マリベルは冷ややかな視線を向けていた。

ガボは唸りながら顔を真っ赤に染めていた。

全員が何かを言いたげで……それでも黙っていた。

そんな彼らに気が付いていながらも……。それでもザジが足を止める事は無かった。

ダーマが解放され、転職の儀式が再開されたこの日。

元々吹き溜まりの町にいた者達の目的は転職だった。

転職という目的が果たされれば、大半の者達はダーマに留まる理由が無くなる。

その後はそれぞれの都合で行動が変わってくる。

しばらくダーマ周辺で新しく得た力が馴染むまで修行をする者。長い監禁生活に疲弊した者や負傷したり等の理由で療養する者。今回の事件で目標を見付けてダーマに永住する者。そしてザジのように先を急ぐ者。

キメラの翼やルーラのような移動手段の無いものは乗り合い馬車か徒歩でダーマの南東まで行き、船でダーマの島国を出ていく。

この日は先を急ぐ者達が多かった。一人では港まで歩くのは不安な者達が、即席のパーティーを組んで旅立つのが目立つ。

ザジはそれに便乗してダーマを旅立った。

そして今に至る。

 

「そうだったんですか……」

「結局は、僕の独り善がりだったんだ……だから、僕はもう、姉さんの側にはいられない……」

 

全てを吐き出したザジ。気が付けば涙が頬を伝っていた。

 

「僕は……姉さんに嫌われていたんだ」

「そうでしょうか?」

 

自己否定を続けるザジに、これまでは相槌だけをして黙って聞いていた男が初めて口を挟む。

 

「これまで共に寄り添って生きていた姉弟だったのです。今は少しだけすれ違ったのかもしれませんが、互いに思いあっていたあなたのお姉さんが、簡単にあなたを嫌いになるとは思えません。魂砕き……ですか?それによってあなたの魂が砕かれた後、あなたの仇を取ろうと体に鞭を打って戦いに身を置いたお姉さんの行動を考えればですが」

 

精神疾患が確立されている現代地球医学ならば、こう診断されるだろう。

共依存。

互いが互いに必要とし、必要とされる事で依存しあう。

ザジとネリスの関係は正にそれだった。

それが健康でバランスの取れているのであれば、それでも問題は無かった。

ザジは明らかにネリスに依存していた。

一方で、後にわかるのだが、ネリスの方もザジが行方を眩ました事により、元々の疾患もあって精神のバランスを崩し、寝込むことになってしまう。ネリスはネリスでザジに依存していたのだ。

ザジとネリスは想い合っていたが、歪になっていた。

互いが互いの為に無理をして……。そんな関係は何かのきっかけでいつか破綻する。

それが今回のダーマの事件だった。

 

「でも姉さんは……僕を拒絶して……」

「そうですね。今は……お互いに距離を置く時間が必要かもしれませんね」

「時間……。それは一体いつまでなんだ?」

 

藁にもすがる思いでザジは訊く。本音ではザジだってネリスの元から離れたくはない。

男は静かに首を振る。

 

「残念ですが私にはわかりません。ですが……」

 

男はまっすぐにザジの目を見てから告げる。

 

「あなたがあなた自身を責めている内は……その時では無いのだと思います」

「僕が僕を責めている内はその時ではない……?」

「はい。もしくはあなたが自分の弱さを認め、乗り越えた時……ですか」

 

目を見開くザジ。

 

(僕はまだ……自分の弱さも認めてはいないんだ……)

 

表向きは解っていたつもりでも、どこかでまだ認めていなかったのかもと思うザジ。

 

「………自分の弱さを認める事も強さか……」

「時には自分を見つめ直す事も、人には重要だと私は思いますよ」

「自分を見つめ直す………か。僕も、いつかは自分を許せる時が来るのかな……笑って姉さんと向き合える日が来るのだろうか……」

 

その瞳は、そこにはない何かを見つめていた。

カシムと結ばれ、仲睦まじく子供を抱いて幸せそうにしているネリスがダーマに帰って来た自分を暖かく迎え入れる光景だ。

そして成長した自分が優しく笑いながら、その輪に入っていく………。

今はその光景を受け入れるのには心が痛むし、モヤモヤした気分になる。そんな自分になれる気がしない。

 

(でも……それを受け入れられた時が…ダーマに…姉さんの元に戻れる時なんだろうな……)

 

心の(しこり)はまだ重い。それでもさっきまでよりかはましかもしれないとザジは思う。

今はまだ、それは気のせいなのかも知れない。でも、それでも良い。勘違いだったとしても、少しは前向きになる切っ掛けにはなっただろう。

人は急には変わらない。しかし、こんな小さなきっかけの積み重ねが……いずれ人を変えていくものかも知れない。

 

「あんたに会えて良かった……ちょっとだけ、そんな気がするよ」

「それならば良かったです」

 

ザジは財布からゴールドを取りだし、バーテンに渡す。

 

「マスター。この変わり者の詩人に一杯……」

 

幸いにもダーマ奪還や立て直しの立役者として、ザジは僅かばかりの報酬を貰っていた。

船に乗ってしまえばほぼ文無しになってしまうが、詩人に一杯奢るくらいは余裕があるだろう。

 

「いえいえ。私は吟遊詩人です。人の経験を物語にし、それを歌にして日々の糧を得るのが私の仕事です。あなたとのお話は良い物語となるでしょう。むしろ私の方こそ一杯奢るべきです」

「いや。これは僕からの感謝だ。受け取ってくれ」

「そうですか。ではこれならいかがですか?私はあなたに一杯奢る。あなたは私に一杯奢る。互いに奢りあうのならば、これでお互いの気が晴れて気分も最高。違いますか?」

「良く口が回るな。まるで詐欺師のようだ」

「吟遊詩人とはそう言うものですよ」

 

バーテンはザジと詩人に酒を出す。

 

「ところで……僕は酒を飲まない方が良かったんじゃないのか?」

 

口を付けようとしたところでザジは思い出す。

 

「先程までのお酒と今のお酒は意味が違います。先程までのお酒は自棄の果ての悪いお酒。今のお酒は新しいあなたの門出を祝う、所謂良いお酒です」

「本当に口が回る。吟遊詩人なんか辞めて、詐欺師になった方があんたに向いているんじゃないか?」

「そうかも知れませんが、私は人の物語を聞き、そして歌うのが好きなのですよ。信じるかどうかは、あなた次第ですが」

 

ザジと男は笑い合い、杯を鳴らした。

ザジにとっての初めての酒は苦く、そしてしょっぱかった。

 

「酒って……苦くてしょっぱいんだな……」

 

ザジの言葉にこれまで黙っていたバーテンが口を挟む。

 

「お酒と言うものは、その時の気分によって味が変わる物なのです。苦いときもあれば、辛いときもあります。あなたが今後飲むお酒が、苦いか、辛いか、それとも甘くなるかは……あなた次第ですよ」

「マスターの方がよっぽど詩人だな」

「これはこれは。本業の方を前にしてお恥ずかしい」

 

人生初の飲酒が苦かったのは、元々そういう味だったのか、それともこれまでの自分を苦々しく思っての事なのか、置いてきた姉に対する罪悪感からなのか、最後まで素直に接する事が出来なかったカシムへの想いなのか、笑って別れる事が出来なかったアルス達への想いなのか……。それらの全てでもあり、どれも違うようでもあり……今のザジにはそれがわからなかった。

けれど、いつかまた酒を飲み、今の答えが出てくる日が来るだろう。

 

(それがいつ、どんな味の酒を飲んでいる時かはわからない。わからないけど……)

 

ザジの脳裏にまた、ネリス達と理想的な再会を果たした時の自分の姿が過った。

 

(あんな風に姉さん達と再会した時で、それが甘い酒だった時が………良いかもな)

 

もしそうならば、その酒がどんなに苦く、世界一不味い酒だったとしても……自分にとっては甘くて世界一旨い酒であると感じるだろう。

何故だかザジは、そんな気がした。

 

これはもしかしたら、『六人目のエデンの戦士』になっていたかも知れない一人の少年の門出の物語である。

 

続く。




ゲームで考察するザジの職歴
僧侶……レベル5「高司祭」
ベホイミは使えるが、バギマ、ベホマ、ザオラルは使えない。
人間職では覚えられないものの、モンスター職で習得できるキメラのメラ、死神貴族のヒャドを超える7ではレア呪文なイオを修得している希少な存在(人間職、モンスター職でもイオは覚えられない。PS版ではメルビンのみ、3DS版ではマリベルも修得する以外は本当に覚える手段がない)。どこでイオを覚えたんだ?ザジ!
戦士……レベル1「見習い」
ダーマ編のエピローグで転職。

ちなみに病弱な姉のネリスは……
マホターン…上級モンスター職でのみ修得可能
ヒャド…中級モンスター職でのみ修得可能
ヒャダルコ…魔法使いマスターレベル
マヒャド斬り…魔法剣士(中級職)で習得可能
HP…460

比較対象
ダーマ大神官…フォズ
戦闘で使う特技・呪文…ヒャダルコとベホイミ

……………大神官?
…………ベホイミ?ベホマじゃなくてベホイミ?魔法使いマスターしているのに僧侶で習得するベホマは?

結論
習得技能だけならフォズに匹敵するレベル。あと物理攻撃がやたら痛い。病弱とは何ぞ?

ツッコミダーマの途中の道の宿
1…井戸の中にあるカジノ
何故井戸にカジノがあるの!?普通に階段じゃダメだったの!?現実で考えたら出入りするだけでも一苦労だろ!?
そもそも生活水の確保の為にあるはずの井戸なのに、水が一切ない井戸って存在意義があるの!?
2…無駄に池の上に建設されている宿屋(しかも無駄に広い)
宿屋だけじゃなく、武器屋に道具屋に地下(・・)の酒場。
ウンウン♪激闘のダーマを乗り切るにはこれくらいの施設がないといけないね♪
ウンウン♪
…………で、納得するわきゃぁない!
何で無駄に池の上に建てたの!?池の横じゃダメだったの!?特に池の上に建てた宿屋の地下に酒場を作った意味は!?
現代の地球だったら大した事はない建築方法だけど、中世ヨーロッパレベルの建築技術ですごい技術ですね!?

そして今回登場した吟遊詩人。
この人は完璧なるモブです。
モブ。
MOB!
THE MOB!
原作でも登場した名も無きモブ!
なのに異様にかっこよく書いてしまった気がします!
どうしてこうなったかは自分でもわかりません。

それでは次回もよろしくお願いいたします。
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