(短編)ts転生inディストピア   作:投稿希典

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とある世界に転生した異形の少女が大切なものを見つける話。


第0話:ts転生inディストピア

「おい、なんでここにいるんだよ。」

「ここは俺たちの遊び場だぞ!おまえなんかがここに来るんじゃねえよ!」

「…」

烏が鳴く夕暮れ時のとある公園。その隅にて一つの争いが起こっていた。

そのやり取りから察するに彼らは幼い子供なのであろうが、今の状況は子供の行いといえども看過できないものであった。

一人の周囲を複数人が囲んで逃げられないようにしながら罵倒しているのである。

明らかにいじめの光景であるが、周囲に大人がいるにも拘らず大人は止める気配がなく、それがこの光景の異常性を物語っている。

しかしこの光景ではそれ以上の異常性が存在していた。

まず周囲の子供達が怒りや蔑みといった感情を露わにして大声を上げる一方、罵倒される子供は泣いたり怒ったりすることなく冷めた表情で無言を貫いており、その態度が余計に周囲の子供の火に油を注いでいるという点。

次にこの状況でみられる人物がすべて我々人間とは異なる異形の風体をしている点。

罵倒されている子供は体が半透明である以外は幼い少女_それも美がつく_をしている一方、周囲の異形は完全に人間とは異なる体型をしている。

そして最後は、このいじめられている少女は「精神的には子供ではない点」である。

 

 

 

#

気が付いたら見知らぬ場所にいた。

そんな状況で私はまず自身の姿を確認すると、その姿はヒトのそれとはまったく異なっていた。その造形こそ美少女だが、体は乳白色調の半透明な物質で構成され、胸の中心部には心臓の替わりとでもいうように赤色の立方体が収まっている。近くに水溜りがあったので覗き込むと、頭部には毛髪の代わりに麺類のような黄色の透明な触手が何本も生えており、それで三つ編みが編まれ後ろに垂れて(いわゆるラプンツェル風)いた。さらに瞳は赤く、その形は正方形となっている。まるでスライムやらアメーバを美少女化したらこうなるとでもいうような外見になり果てていた。

そんな自身の姿に戸惑いつつも、次に自身の記憶を遡ってみた。だが自身には二つの記憶、ヒトという種の雄として生きていた記憶と、今までこの意味不明の存在として生きていたという記憶があった。しかもヒトの方の記憶は、何かしらの理由で死んでしまったということ以外は何も思い出せなかった。

死んだと思ったら意味不明の存在となっていたこと、そしてその存在として生きてきた記憶があるということから、私は輪廻転生を果たし全く別の存在になってしまったのではないかと結論付けた。

私は、自身の前世の記憶はないのに確立された意識はあるという妙な感覚への戸惑い、親族や友人のことを思い出せないことを悲しまないことへの気持ち悪さを少々抱えたが、「どうにもならない、何とかなる」と消極的な結論を出して周囲の状況把握につとめることにした。

 

今の場所はどこかの山奥であり、その近くにぽつんと不自然に立っている半透明の立方体型の建物は私の家なのであると今世の記憶から判断した。

そこに私とともに住む今世での母(半透明の立方体そのもの!)の話を聞くに、私の父は純ホモサピエンスの男性であったそうなので、私は半人間、半異形の存在であると分かった。

しかしその人間である私の父は育った家にいなかったため一度母に聞いてみたが、母は半透明の体をわずかに濁らせながら口を濁すばかりであった。

そんな母は見た目が半透明な立方体とは思えぬほど時に優しく時に厳しく、そして常に愛情をもって私に接してくれ、女手(?)一つで私を育ててくれた。

しかし母はある時から体調を崩し始め床に臥せるようになり、一日の大半を布団で過ごすようになった。その頃には私自身の肉体も小学生程度に成長していたため、母の面倒をみつつ私も家事をして身を切りつつ働いていた。

 

しかしとうとう母が今際の際という時に、母は父についてポツリと話し始めた。

父は母の故郷にある時旅人としてやってきた男であり、父と母は一目見た瞬間お互い恋に落ち、幾度かの逢瀬の果てに結ばれたそうだ。

もちろん流れ者である父との結婚には周囲の反対もあった(まあ見た目立方体と人間の時点で反対されて当たり前である)が、特に母の一族が苛烈であったらしい。

というのも母の一族、というより母の一族の所属する故郷の民には共通の使()()とも呼ぶべきもの(しかもその使命について聞くと、元人間の私からしたら到底受け入れられるものではない)があり、父と母の結婚はその使命に反するからだったそうだ。

それらの反対を押し切り駆け落ちして故郷を飛び出し結婚、そして私を授かったそうだ。

私が目の前の立方体から物理的にどのように生まれたのか少し興味があったが、聞いていい空気ではないと切り捨て母に続きを促すと、それからのことについて話してくれた。

それ以降は父と共に新たな村に訪れつつ赤子である私を育てていたが、ある時母の一族が襲撃してきたそうだ。

使命を捨てた一族の汚点を消すための襲撃_父は母と私を逃がすために一人襲撃に対応し、燃え盛る家屋から逃げ出してこの山奥にたどり着いたそうだ。

父の行方は分からないと母は濁したが、私は何となくその末路を悟った。

そうして母が話し終えると、母の命の灯がとうとう失われようとしていた。かつて美しかった母の水晶のような美しさは失われ、白く濁った体をさらしており、弱弱しく震えながらも最期の言葉を、力を振り絞って言い始めた。

「使命や私の一族への復讐心なんかにとらわれちゃだめよ。自分の生きたいように生きなさい。そして本当に大切なものを見つけなさい。」

「私の... 愛しい... ココ...。」

 

[ココ]_私の今世での名前を最期に、母は息を引き取った。

 

しかし母を埋葬してしばらく後、その母の一族と思しき連中が現れ、私を誘拐した。

そいつらは母の生まれ故郷に私を連れていき、母の両親、私の祖父母にあわせた。

面会した祖父母は「あいつは一族の面汚しかつ親不孝者だったが、唯一お前を残したのは親孝行だったな。」「あの子みたいにならないようにしっかり教育してあげますね。」などとほざいていたが、おおかた一族のメンツを保つために罪人である私を許すという善行を行っていることのアピールと、私を他の人間から一族への嫌悪をそらすスケープゴートにでもしたいのだろう。現に今虐められているのに見て見ぬふりをしている時点で明白だ。

 

ふと母の遺言を思い出す。「自分にとって本当に大切なものを見つけなさい」という言葉を。

私に、父を殺されたのに復讐もできない人でなしの私にできるだろうか。

 大切なものを見つけることを。

 

 

#

(あー、早く終わらないかな。)

自身がいじめられている理由もわかっている。そしてそれが理不尽なものであるともわかっている。しかし反論したら余計に面倒なことになるとわかっているので、少女は唯々相手の気が済むまで相手の罵倒を右から左に受け流しつつ現実逃避を行っていた。

 だがそんな少女の反応が気に食わなかったのか、周囲の子供達がその少女にとってのタブーを言い放った。

 

 

「父ちゃんに聞いたぞ!お前の母ちゃんどこぞのろくでなしと逃げたって!」

 

 

瞬間、少女の表情に明らかな動揺が見られた。

 

一方いじめっ子たちはその動揺を見てこの話題が効果的だとわかったのか、_自分の親に話すのを止められていたにも拘らず_そのことで罵り始めた。

「お前の母ちゃんは俺たちの使()()から逃げたんだって!」

「だっせーよな!」

「そんなあほな奴が母ちゃんじゃ俺たちに言い返せなくても仕方ねーか!」

 

あはははははは!!

 

その笑いが耳に届いた瞬間、少女はいじめっ子たちを鋭い目でにらみつけた。

これまで何の反応も見せなかった少女が見せた敵意は、その赤い瞳や今が夕暮れ時なのも相まって余計に不気味さや恐ろしさを感じさせる。

少女にとって自身への罵倒はどうでもよかった。どうせ子供の言うことだし、大人であろうともこちらが聞き流していればいずれやむことだからだ。

だが母への罵倒は別だ。こいつらは地雷を踏んだのだ。だったらやることはわかっている。

 

いじめっ子たちは途端に動揺し始める。もともと彼らが少女をいじめるのは大人たちが上記の使命のことで差別していたのもあるが、何より少女の姿形が異形でありながら自分達とはどことなく異なっているものであるからだ。

 

「なんだよ、なんか文句あんのかよ!」

するといじめっ子の一人がその様子におびえつつも、自分がおびえているということを認められないのか、その少女に殴りかかった。

少女は避けるそぶりを見せない。そのいじめっ子の姿かたちから、自分を傷つけうるものではないとわかっているからだ。そのまま殴り返してやろう、正当防衛だ、もしそれでこの国から出ることになったとしても、もともとここに居たくているわけではないのだと考えていると_

 

 

「そこまでだ、いじめっ子諸君!」

 

そこに声が響き渡る。

いじめっ子達、そして少女も声がした方向を振り返ると、そこにもまた異形がいた。

その姿は少女同様透き通っているが全体的に青みがかっており、子供より大きい体格から大人であるとわかる。

「やれやれ、久しぶりに里帰りしたら嫌な場面に出くわしちまったぜ。」

 

その異形はそうしてため息をつくと、子供たちに向かってこう言い放った。

 

 

 

「いじめなんかやめて、まずはこの私の美しい姿に見惚れてなさい!そして自らの行いを懺悔したまえ!」

 

 

 

その言葉を聞いた子供達_虐められていた少女も含め_がまず感じたのは、困惑でも恐怖でもなく、ただただイラっとした感情であった。

 

いじめっ子達は顔を見合わせ一つ頷くと、落ちていた小石を拾い上げ、その青い異形に向かって一斉に投げ出した!

 

「ふざけんじゃねーぞコラ!!」

「ムカつくこと言いやがって!!」

「何が美しい姿だ!賞味期限切れてるみてーなもんのくせによぉ!」

「ちょ、イタ、アイタタタ!こら子供達やめなさい!せっかくこの私が素晴らしい提案をしてあげたのに!」

「ふん、ふん、」

「ええーっ!?こらそこの少女よ、私が助けてあげたようなものなのに何故砂をかけるのかね!こら、やめなさい、やめてぇ!!砂や石が食い込む、食い込んじゃうううううっっ!!!!」

すっかりいじめの空気や少女の怒りが霧散してしまった公園では、烏が「アホー、アホー、」と日が沈むのを鳴いて告げるのであった。

 

 

 

「うむぅ...」

草原の中、マントに身を包んだ少女が目を覚ます。

それはあの公園の少女であり、当時より幾分か成長した姿であった。

マントの下には競泳水着のような体に密着した服を着こんでいる彼女は、たった今まで見ていた夢を思い出していた。

睡眠を終えた彼女は立ち上がると草原を歩き始める。

…随分と懐かしい夢を見ていた気がする。

「彼には本当にお世話になったなあ…。」

思えばあの時彼と初めて出会っていたからこそ、あの時のいじめっ子と仲直りできて友達となることが出来たのだなあ。ウザいけど。

なおかつ今の私が力を手に入れたのは彼が修得していた武術を教えてもらっていたからであり、今の私がいるのは彼のおかげと言っても過言ではないだろう。やっぱりウザいけど。

そして何より、彼がいたからこそ私は「自分の本当に大切だと思うもの」を見つけることができたのだ。

彼に初めて会って以降、反抗する力が必要と感じた私は、腐れ縁となったこの若干ウザい異形である彼が武術を修めていたと知り、半ば無理矢理弟子入りした。

(なおその際「ではまず私をグレートマスターと呼び、終生崇め奉りたまえ」と調子にのったので思わずチョップを食らわせた。)

 そうして彼に武術を教わっていく内に彼と次第に心を通わせていき、兄貴分のような関係へと変わっていった。

そんなある日、彼につい自身の生い立ちと母の遺言による悩みを話してしまった。

 彼に尋ねても意味がないとわかっているのに、彼とある程度仲良くなってしまったからだろうか、つい気を許して口を滑らせてしまったのだ。

そうして話を聞いた彼の第一声は、「ふーん、話が長いね。それで?」だった。

思わずアッパーカットをした。彼は汚い悲鳴をあげて吹き飛んだ。

 さらに追撃をかけようとしたが、彼は慌てて言い繕い始めた。「私の悩みは結局その程度のことなのだと。」

 結局私の大切なものを見つけられるかどうかの悩みなどその程度のことだ。だったら悩む前に大切なものを見つける努力をしなさい。そうして大切なことを見つけた私こそが、父と母の行いが正しかったことの証明となるのだと。そしてお前にはその力があるのだと。

 私の目から涙が零れ落ちた。今まで面倒だと目の前の理不尽に抗うこともしなかった自分はどこかで諦め、擦れていたのだ。

周囲から存在を否定され続ける日々、味方は誰一人いなかった。

そんな時私を、私の親を彼は肯定してくれたのだ。

それから私は彼の教える()()により一層真剣に取り組むようになった。

幸いにも私には才能があったのか、いくつか独自の技も身に着けることが出来た。

 そして私をいじめていた子供達にも自分の言いたいことを言い放ち、最終的に仲直りすることが出来た。

 

 

それからだ、私の彼に対する感情が更に変わっていったのは。

どうしようもなくかっこつけでナルシストでウザいけど、どこか優しさを併せ持つ彼。

彼のことを考えていると、私の胸の中心部の核が震えることからわかる。

私の前世が男だからとか関係ない、私は彼のことが好きなのだと。

 

そして今はそんなウザい彼に会うための旅の途中だ。私は少し前から世界を支配する()()()()()()()に対するレジスタンス活動の為各地を旅していた。少し前に彼がその帝国に所属したと聞いたときはショックを受けたが、彼のいた部署がつぶれ、その後彼が帝国を倒すために立ち上がったと聞いた時はやはり変わっていないのだとわかった。

そして旅の途中、彼は今その悪の組織を倒すために仲間とともに旅をしていると聞いた。

その仲間もその組織に滅ぼされた王国の生き残りや伝説の存在など錚々たるメンバーだ。

そして思ったのだ、私も合流しようと。今の私なら戦える。

 そうして歩いていると、前方に数人の人影が見えてくる。

この悪の帝国の時代に反逆の意を示すようなアフロの長身の男、その男の後ろに続く桃色の髪の少女、近づくものは全て突き刺さんと伸びるとげを全身に生やす異形。ほかにも数人の人影が見られる集団だ。

 そしてその中に、彼が見えた。

あの時と変わらぬ青い半透明の全身にニヒルな笑みを浮かべた彼。

 

思わず胸の核が胎動する。

そしてその衝動のままに私は全速力で走り始める。途中で白い犬っぽいのと先程の棘を突き飛ばした気がするが無視だ。

衝動のままに彼の名を呼びつつ彼に衝突し、抱き着いた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところ天の助様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

「どわぁぁぁっ!?え、誰、誰!?」

「私です、ココです、ナタデ・ココですよっ!!」

 

 

 

悪の帝国を滅ぼした旅の終わりに、彼に伝えよう。

あなたこそが、私の本当に大切な存在であると。

 

 

 

 

 

 その後、彼女は彼らの旅に同行して悪の帝国と戦っていく。

途中別世界に飛ばされて鬼狩りとよばれる者と共に鬼退治を行ったり、魔法少女とよばれる存在と魔女退治を行ったりするのであるが、その旅の果てに彼女が彼に思いを伝えられたのかは読者諸君の御想像にお任せしたいと思う。

 




というわけで本作は終了です。
ぶっちゃけ最後のやりたかったんで書いたのが本作なので、合流時の原作の時系列とか考えてません。
原作名の「多重クロス」に関してですが、
一応続きとしては鬼滅の刃世界にオリ主と原作キャラがトリップして好き勝手やったり、鬱作品世界にトリップしたりして悲劇をブレイカーする話とかを書くつもりなので間違ってはいません。
また主人公の使う真拳とか含めて設定とか色々あるのですが、長くなるんでまとめて割愛しました。(十分長いけど)
正直最後のオチがきちんとオチとして機能しているかも不安ですし、細かな設定で矛盾してるかもしれません。
それでも本作を読んで時間潰しにもなって下されば幸いです。
最後に、本作を読んでいただき本当にありがとうございました。
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