とある佐天の裏技遊戯(ニューゲーム) 作:RB_Broader
神裂火織(せいじん)と必要悪の教会(ネセサリウス)
私、
病院を勝手に抜け出した上、自分の足で
「一応、脳の検査は受けてもらうよ? 異常は無いとは思うけどね?」
その後、CTでも異常無しという結果を受け、
自宅に帰ると、部屋は私が倒れた時の痕跡が半分ほど残っていた。
具体的には、カーペットに大量の血痕がベッタリと付着してて、その上から古新聞が何枚か被せてあった。
テーブルは初春達が掃除してくれたのか、綺麗に拭かれており、出しっ放しになっていたコップなどの食器は全て洗って片付けられていた。
はぁ……。
初春と白井さんにはここんとこずっと迷惑掛けっ放しだなあ。
近いうちに埋め合わせしないと。
カーペットを引っ剥がしてみたが、裏側にまで血がベットリとこびり付いてるせいで、フローリングの床の塗装が一部剥がれた……やばっ。
これって『
……あ。
エアコンの修理まだだったし、レンジと炊飯器もまだ買い替えてない。
部屋は初春達が換気してくれてたのか、そんなに臭ってないけど、レンジも炊飯器も無いんじゃ自炊どころかコンビニ弁当も駄目じゃん。
…………。
外食にするか。ついでに銭湯にでも行こう。
……そういえば、スマホ部屋に置きっぱなしだった。
まあ入院中は必要無いから初春達もわざわざ病院まで持っていこうとは思わなかったんだろう。実際、ほとんど寝てたから使う機会無かったし。
って!!
何この不在着信!?
アケミとむーちゃんとマコちんから何件も来てる!
日時は一昨日と今朝に分かれてる。(あたしはずっと入院してた)
でも今朝のほうはアケミからだけ来てないのは何でだろう。
……まさか。
まさか。
まさか。
恐る恐る、留守電を聞いてみる。
すると、一昨日のは遊びの誘いだったが、今朝の留守電では、むーちゃんとマコちんが必死に何か叫んでるのが聞こえた。
『アケミが倒れた』という内容のようだ。
やっぱり。
とりあえず、こちらからリダイヤルしてみたものの、誰も出ない。
3人とも、まだ寝込んでるのだろうか。
放ったらかしにしてたため、3人にはメールで謝っておく。
後で会ったらもう一度謝ろう。
さて。もたもたしてたら遅くなっちゃう。
とっとと出掛けよう。
辺りはすっかり暗くなっている。
早くどっかのお店で済ませないと、お風呂行けなくなっちゃうよ。
そんな感じで、どこかいいお店が無いか街中を彷徨ってると、ふと
これは、もしかして──『人払い』!?
実際に目の当たりにするのは初めてだが、知識としてなら
宗派・学派によって方式は色々あるけど、人の
『何となく、そこへは行きたくない』──そう思わせることで、その場所に部外者を寄せ付けないよう誘導する術式、だと思う。
だとするなら、あたしは『部外者』のほうか。
何箇所か、他にも同じ術式が仕掛けられているようだ。
その位置から逆算すると『関係者』がいるのは……向こうの駅前広場か。
術を仕掛けたのも関係者だろうけど、単独犯とは考えにくい。
むしろ、人払いの中で何かする実行役と、人払いを発動し管理する監視役とに分かれていると考えたほうが無難だよね。
じゃあ……あたしは流れに逆らわず、一旦ここから離れるか。
監視役に目を付けられたら、今のあたしじゃどうにもならないから。
という訳で、駅前から少し離れた裏通りに面している喫茶店にでも入る。
本当はもう少し駅に近い有名チェーン店に入りたかったんだけどなあ。
あそこ、人払いの圏内に引っ掛かってるせいで、誰もいないんだよね。
そんな所に一人ポツンといたら、恐らく魔術師にあたしの存在がバレる。
なので仕方なく、私は個人経営の寂れた店のほうに入る。
いざ店内に入ると、外から見た寂れ具合に反して客が多いように感じる。
人払いのせいで、チェーン店から客が流れて来たのかな?
……これは時間掛かりそうかも。
とりあえず、時間が掛かるものを頼んで待たされるのも嫌なので何か軽いものを頼む事にする。
「すいませーん。ホットドッグとメロンソーダ、お願いしまーす」
そして、あまり待たされることなく、届いた品物を口に運び始める。
──そんな時であった。
入り口から入って来たピンクのワンピースのロングパーカー少女の顔を見て、私は固まった。
……初春!?
いや……。
その少女の顔は初春そのものだったが……頭の上には、彼女のシンボルと呼べる花飾りが無く、その代わりとでも言うのか、パーカーのフードを目深に被っていた。
別人か……?
いや、まさか、
私は何も味を感じられなくなったホットドッグとメロンソーダを惰性で口の中へ流し込み続けることで機械的に食事を済ませつつ、初春モドキのほうを凝視し続ける。
一方あちらさんは運ばれてきた『たっぷりホイップクリーム&イチゴ乗せ四段重ねパンケーキ』とアイスティーに至福の表情で舌鼓を打っていた。
ああして見ると……ホントに初春にしか見えないな……。
ホント忌々しいけど……恐らく中身は××××野郎だろうし。
すると、いつの間に食べ終えたのか、ニセ初春はそそくさと会計を済ませ足早に店を出て行ってしまう。
ちょっと! どうやればあんなバカでかい量をあんなにゆっくり味わって、あんなに速く食べ終えられるってのよ!
私はホットドッグとメロンソーダの残りを一気に平らげた後、慌てて会計を済ませ、彼女を追い駆けるように店を出る。
しかし、店の外に出た時には既に彼女の姿は無く、見失ったため、私は周辺一帯を探し始める。
すると……少し表通りへ出た辺り、コーヒーチェーンの前から広く見渡せる駅前広場のど真ん中が──『戦場』と化していた。
あ……やばい。
ここ、人払いの効果範囲内だった。
それに、広い道路にはいくつもの『線状痕』が走り、付近にある風力発電のプロペラの一部が切断され、破片がバス停付近の通路シェルターの屋根に突き刺さっている。
そして。
広場中央には、身長よりも長く大きな刀を持つジーパンとTシャツ姿の黒髪女性と、ボロボロになって這いつくばる男子高校生の姿があった。
あれは──駄目だ。
私の直感が告げる。
あの、長大な刀を持つ黒髪ポニーテールのパンクな格好をした女性。
アレには一生どころか、
喉がカラカラに乾く。
全身が痺れる。
呼吸ができない。
ツバを飲むことすら、死へと直結する──そう思えた。
そばで倒れ伏してるツンツン頭の男子高校生は……見覚えがある。
微かにまだ動いてる。連れて逃げるくらいなら……。
もし見殺しにでもしたら、きっと一生寝覚めが悪くなる。
でも、今の私は
私は……声も出さず、息を殺しつつ、音もなく後ずさり。
──そのまま逃げた。
後ろから、女性のひどく荒っぽい怒鳴り声が聞こえた気がした。
駅前広場から死角になる場所……裏通りの奥のほうまで逃げた時。
私の背後には、黒服の神父姿をした赤髪の長身男が立っていた。
「君……魔術師だね」
その男は懐から何らかの魔術記号が刻まれたカードを取り出し、咥え煙草をしながら、こちらを見透かすような視線を向けてくる。
「少し、魔力の残り香がしたんだ。それに人払いにも気付いてたみたいだし。気配の絶ち方も慣れていた。隠しても無駄だよ」
やばい。
やばい。やばい。やばい。
あたし、魔力切れてるし!!
ただの無能力者なのに、何でよりにもよって、今なの!?
やばい。コイツ……
死にたくないよ!!
「んん……? 何だい、その顔は。まるで素人じゃないか」
完全に戦意喪失した私の怯え顔を見て、赤髪の魔術師は怪訝な顔をする。
「まあいい。それが演技なのか本心なのか、これから確かめるとしよう」
「Fortis931──その意味は『我が名が最強である理由をここに証明する』」
そう『殺し名』を名乗った魔術師は煙草の火を投げ、呪文を唱え始める。
「
「──
魔術師の手には、『炎剣』が生まれていた。
一目見ただけで分かる。……あれに触れたら終わりだと。
背を向け、一目散に逃げる私に、その炎剣が躊躇いもなく振るわれる。
──その刹那。
ギュガッッッ!! ……ボッッッ!!!
炎剣が空中で何かを斬りつける音を立てた後、激しく爆発し、その炎が霧散したのだ。
私、佐天涙子と魔術師との間には、ピンクのワンピースのロングパーカーを着た少女が割って入り、付近には破裂した缶の破片が飛び散っていた。
そして、少女はすかさず私の手を取り、そのまま一目散に逃げて行った。
取り残された魔術師は舌打ちをした後、周囲を見回し足元に落ちている破片を拾い、それを見てもう一度舌打ちをする。
「液体窒素の缶か。3000度の炎はたとえ絶対零度だろうがものともしないが、窒素が気化した際の爆発力で掻き消されたか。味なマネをしてくれる」
「学園都市の生徒か。目撃者が増えるとは面倒なことになった。……まさか、あの魔術師のガキも学園都市の生徒なのか?」
「だとすれば、二人揃って生け捕りにしてから記憶を
「……まあ、人に言い触らしたところで、誰も信じないだろうけど」
そう独り呟きながら、赤髪の魔術師は来た道を駅前広場へと引き返す。
行間
液体窒素の沸点(気化する際の温度)は摂氏マイナス196度。
ステイルの『炎剣』は摂氏3000度の炎の剣。
ルーンの範囲内でのみ発動可能。
上条と神裂が戦った場所は立川駅北口の駅前広場(バス停留所が集まる広い場所)に相当する。
佐天が入った個人経営の喫茶店は、そこから東に外れた場所にある。
そこから駅前のやや近く(広場に面した所)にコーヒーチェーン店がある。
グーグルマップ上(2020年11月時点)では、駅前に近いコーヒーチェーン店の場所は『エ××ルシオールカフェ立川北口駅前店』となっている。
あれから私は、無我夢中で路地裏を縫うように走り続けた後、いつの間にか自分の寮まで戻っていた。
部屋の中には、ピンクのワンピースのロングパーカー姿の初春(ニセモノ)がちゃっかり上がり込んでいる。
「はぁ……はぁ……アンタ一体どういうつもり? 何であたしを助けたのよ?」
私は息切れしながらも、まず最初に一番聞きたかったことを聞く。
コイツのおかげで助かったのは事実だが、お礼の言葉が私の口から出てくる事は無かった。
初春を洗脳して人質に取ったように見せ掛けられた件もあり、今のコイツに対しては、どうにも拒否反応のほうが勝ってしまうからだ。
「詳しきことは言えぬけど、あなたに
ニセ初春は、いつになく真剣な表情で、若干含みのある言い方をする。
何か答えたくないことでもあるのだろうか。
『あそこで』──か。
つまり、あの魔術師達のやり取りを邪魔されるのも困るということ。
私があそこで赤髪の魔術師に殺されれば、それが何らかの新たなトラブルの火種となり、結果的に、コイツにとってもあの魔術師達にとっても困った事になると。
コイツは私の味方ではない。
そして、コイツはあの魔術師達と何らかの関係がある。
ただし、赤髪のヤツはコイツのことを知らない……というか、コイツが別人に変装している事を知らないだけで、実際は知り合いの可能性がある。
「質問を変えるわ。アンタはあいつらとどんな関係があるの?」
私はここで、核心を突く質問をする。
これにどう答えようとも、たとえ答えを拒んだとしても、どう転んだところで、そこからいくらでも情報を読み取れる形にするのだ。
ニセ初春は、しばしの間考え込んだ後、慎重に口を開き始める。
「あれはわたくしの部下よ。今は仕事中。詳しくは言えぬのよ」
部下? コイツは確か『イギリス清教の最大教主』とか言ってたっけ。
つまり、その部下であるあいつらも『イギリス清教』の一員という訳か。
まあ、それはそれとして。
『仕事』……? あれが?
ツンツン頭の人を、あんなになるまでボロボロに痛めつけるのが……?
私は、目の前が真っ赤になった。
気付けば、私の手がニセ初春の胸倉を掴んでおり、彼女の澄ました瞳には、怒りの形相で彼女を睨みつける私の両目が映り込んでいた。
「……ッ」
私が口を開こうとする、その刹那。
「あの少年に関しては心配無きことよ。
私が何に怒ってるのかを見透かすかのように、目の前の少女は私の懸念を打ち消す答えを返す。
カンザキ……あのパンクな格好したチャンバラ女か。
セイジン? 成人? 聖人?
兎に角、出来た人間らしい。
何か凄い声で怒鳴ってたような気がするけど。
いや、もしかして……
あのパンクなチンピラ姉ちゃんが?
──いや、まさか。
ただ、いずれにせよ、あんな乱暴なのはいただけない。
一介の男子高校生をあそこまで一方的にボロボロに叩きのめしたり。
女子中学生な私をつかまえて、有無を言わさず焼き殺そうとしたり。
私は、コイツらを信用しないことにした。
そして、ふと冷静になり、少女の胸倉を掴んでいる私の手を引っ込めた。
危ない危ない。あたしまで、こんな連中と一緒になっちゃ駄目だ。
「──あなた」
ここで、ニセ初春が神妙な面持ちで、再度口を開く。
もうその声で、その姿で、話し掛けて欲しくなど無いのだが。
「跡をつけられたりけるわよ」
……!!
直感でそれを
ちょうどアパートの階段を上り始めていた赤髪の長身の魔術師は、一瞬だけ怯むも、すぐに懐からカードを取り出しつつ駆け上がろうとする。
──
「くらすっぞ!! こんダラァァ!!!」
そう叫んだ私は、階段の上からクソ魔術師に飛び蹴りを放つのだった。
行間
佐天が住む学生寮の部屋は典型的な2階建てアパートの2階にある。
オートロックなどのセキュリティは無し。階段は鉄骨の外階段。
熊本弁の解説:
ころす:『殴る』の意味。『くらわせる』を訛りを加えて早口で言ったものが、標準語圏の人からはそのように聞こえる。
くらわすっ:前に同じ。
くらすっ:前の二つが微妙に混ざった感じ。正しいかどうかは不明。
だら:『馬鹿者』。『糞尿』という意味もある。
こんだら:『この馬鹿者』。
私はアパートの階段上から赤髪の魔術師に飛び蹴りを放ち、後ろへ仰け反らせたその体の上にのし掛かった後、その体をクッションにした状態で階段下へ向けスノーボードのように滑り落ちる。
が、体が階段下の地面に着く寸前、何かに引っ掛かって止まった。
よく分からないけど、このままじゃ反撃される……!
そう思った私は、咄嗟に魔術師の顔を踏み付けて階段下まで飛び降りた後、リュックから取り出したスタンガンを当て、電撃を浴びせて動けなくする。
相手が痺れて動かなくなったのを確認した後、一目散にその場から離れ、人目に付きにくい路地裏を縫うように逃げる。
もちろんその際、スキルアウトに遭遇しないため、AIM拡散力場を探知する嗅覚を利かせるのを忘れない。
そして、私の足は自然と『常盤台中学学生寮前』へと向かっていた。
……もう格好を付けるのは止めだ。
『こんな危険な事に友達を巻き込みたくない。』
そんな気持ちがあるのは確かだが、それに背いてまでも、今の私は見っともなくもただ
魔術師なんて代物は科学の街にとっては異質極まりなく、
友達なら、
炎剣使いの魔術師など一蹴でき、それどころか、あの『聖人』相手でも引けを取らないはずだ。
それに
私が常盤台中学学生寮の出入口から入ろうとしたその時、いきなり後ろから何者かに手を引っ張られ、そのまま足を引っ掛けられ、地面に転ばされる。
そしてすかさず、靴を脱がされてしまう。
私を地面に転ばせたのはピンクのワンピースのロングパーカーを着た少女──ニセ初春だった。
自力で勝手にどっか行くだろうと考え、寮に放置してきたつもりなのだが、いつの間に先回りして付いてきたらしい。
「なっ! ……アンタ、何すんのよ!!」
私は苛立ちをあらわにし、ニセ初春に食って掛かる。
「やはり。発信機を付けられたりけるわね」
そんな私に、彼女は呆れた様子で片方の靴の裏側を掲げて見せる。
そこには、ルーンが描かれたシールが貼り付けられていた。
どうやら、発信機で私の居場所が捕捉されていたようだ。
おそらく、駅前広場の近くで魔術師に遭遇してからずっと。
「このままここに入りたれば、お友達の家まで無駄に荒らされたるわよ」
……!!
あたしとしたことが。
何やってんだ。
……今は、コイツの言う事のほうが正しい。
大いにシャクだけど、コイツの話を聞こう。
「アンタ……さっきは助けてくれて、ありがとう」
そうしてようやく、私は素直になり、お礼の言葉を口にするのだった。
「わたくしの都合であなたを振り回したる以上、恩を感じたるのは野暮なりしことよ」
それに対し、ニセ初春は気遣いなど無用とばかりに、そう言葉を返しつつ、可愛らしく微笑むのだった。
……ちくしょう、初春の無垢な顔でそんな風に微笑まないでよ。
気を抜いたら、本当に友達だと思ってしまいそうになるじゃんか。
それから私はニセ初春の指示に従い、靴を両方とも脱いだ後、それを常盤台学生寮前の道路に面した場所に揃えて置きっぱなしにした。
発信機は付けたままなので、囮として時間稼ぎに使えるらしい。
そして、私の寮からニセ初春が持ってきた予備のサンダルに履き替えた後、前もって呼んで待機させていたタクシーに二人一緒に乗車。
目的地に『スパリゾート
行間
スパリゾード
第二十二学区の第三階層にある大衆浴場をメインとするレジャー施設。
その他、ショッピングモールやゲームセンター、ボーリング場まで完備。
階層内の地上から天井までを貫く巨大ビル。
第二十二学区。
佐天達の中学と寮がある第七学区に隣接する学園都市最小面積の学区。
レジャー施設などがメイン。
地下数百メートルまで開発が行われ、その内部には地下施設が充実。
地上には一般的な住宅やビルは無いが、地下街で消費する大量の電力を賄うため、ビル30階分程度の高さを持つ『巨大なジャングルジム』のような立体的な構造の風力発電のプロペラが並ぶ。
地下部分は円筒形で10の区画に分かれている。
第七学区の私が住む学生寮から常盤台の学生寮前まで逃げ続け、タクシーで第二十二学区の第三階層にあるスパリゾード安泰泉まで送って貰った後、私達
具体的には、施設内のホテルの宿泊場所を確保した後、ショッピングモールで必要な買い物を済ませ、お風呂屋さんでゆったり寛いで、豪華なディナーに舌鼓を打ち、部屋でグッスリと眠りこけていたのだった。
『身を潜める』とは一体。
そんな時。
「──
ビュワッ!!
その一瞬で、部屋の大窓のガラスが細切れのガラス細工となり、部屋の中に撒き散らされる。
それと呼応するように、私とニセ初春の掛け布団が捲くり上げられ、ガラス片を押し退けるとともに、刀女の視界を塞ぎ、私達の逃走経路を確保する。
だが──。
「無駄です」
刀女がそう呟くと、いつの間にか部屋の中をグルリと囲むように、ワイヤーが張り巡らされてるのが、窓の外からの星明かりによって微かに見えた。
ついでに、宙を舞っていた掛け布団も粉々に切り刻まれていた。
……規格外だ。
こんなのとマトモにやり合うなんて正気の沙汰じゃない。
さっきの炎剣の魔術師の躊躇いの無さも恐ろしかったが、今度の
もはや、戦えるかどうかの次元ではなく、生きて逃げられるかどうかを疑問に思わなきゃいけないレベルだ。
そんな風に、あっさり戦意喪失していた私の背中をニセ初春が指で突く。
──そうだった。
これは勝つためでも戦うためでもなく、
私は
それと同時に、ニセ初春は抱えていたクーラーボックスの中から大量のドライアイスを、宙を舞う敷き布団に向けてぶち撒けた。
そこにすかさず、刀女の見えない斬撃が炸裂し、布団ごと細切れになる。
「無駄だと言って──!?」
ピシッ。
何かが音を立て、刀女の動きが一瞬だけ固まった。
次の瞬間、ニセ初春がポケットから蛇の玩具みたいな紐を取り出し、空中に放り出す。
『
学園都市の最新技術で作られた玩具の一つ。
自動的に対象に巻き付く蛇型ダクトテープ。
ガス管やスチームパイプなど、接近困難な事故現場で、鋼管に巻き付いて漏出ポイントを塞ぐのに使われる。
操縦捕縄は宙を舞う布団とドライアイスの破片を包み込むように巻き付き、バスケットボール大の塊となった。
「──それも無駄です」
刀女がバスケットボール大の物体を細切れにしようと意識を向けたその時、別の方向に掛け布団が飛ばされるのが視界の端に映る。
「囮にしてそこから逃げるつもりですか」
布団を死角にして逃走経路を確保し、窓から逃げると踏んで、刀女は死角を潰すべく、それをも一瞬で切り刻む。
……だが、そこに私はいない。
ニセ初春の股下を潜り抜ける形で、私はバスケットボール大の塊の
そして、部屋の出入口の方向に向け、バットを思いっ切り振りかぶる。
「いっけえええええーーー!!!」
ドゴォッッ!!
ボンッッッ!!!
バットで打ち出されたバスケットボール大の塊は、出入口を塞ぐワイヤーのど真ん中へと突っ込み、細切れになった後、白い煙を上げ爆発した。
ピシピシピシッ!
その瞬間、再び何かが音を立て、刀女の動きが再度鈍る。
「もいっちょおおおーーー!!!」
そしてすかさず、私は金属バットを振りかぶり、ドライアイスの塊を浴びて
ガシャアアン!!
それまで、ありとあらゆる物を切り刻み、無類の強靭さを誇っていた鋼鉄のワイヤーは、いともあっさり、ガラスのように割れたのだった。
行間
ある種の鋼鉄には『
極寒の中では急激に脆くなり、衝撃によっていとも簡単に壊れるのだ。
炭素鋼はマイナス10度以下になると強度が下がり衝撃に対し脆くなる。
炭素含有量0.05~0.10%の時、マイナス10度を境に急激に脆くなる。
それ以上の場合は元々脆いので急激な変化はない。
0.04%の場合、マイナス30~40度。
0.028%だと、マイナス60~80度。
0.015%だと、マイナス100度あたりから徐々に脆くなり、マイナス120度で強度がおよそ半分くらいになる。
ほとんどの場合、マイナス100度で強度がゼロに近くなる。
ちなみに、ドライアイスの常圧での昇華点はマイナス79度。
聖人・
まともにやり合っても、ツンツン頭の男子高校生みたく一方的に捻じ伏せられるであろう事も。
そして、そんな無敵超人の技から逃げられる秘策がある事も。
ただし、彼女が本気を出し、『
ただ、彼女の
そして、ホテルの部屋からの脱出劇で、最初に一発かますのに成功した。
おそらく、次は無いと思われる。
逃走に備え、浴衣の下に普段着を重ね着し、布団の中で靴を履いたまま(掛け布団で上手く隠した状態で)寝ていた私達は、浴衣を脱ぎ捨てホテルからチェックアウトせずにそのまま脱出した。
料金はニセ初春のカードで払うため問題ないらしい。
もちろん、リュックなどの荷物も忘れずに持ってきている。
ホテルの前に止まっていたタクシーの運転手に呼び掛け、無理を言って乗せて貰う。
早朝の客を捕まえるため待機していたところで、ちょうど仮眠を取るところだったらしい。
時刻は既に深夜の1時過ぎ。日付は変わっている。
──よし。
「ああ、言い忘れけるが、魔力使用制限のリセット時刻は、日本標準時なれば午前9時なのよ」
……うえっ!?
「ななな……なんでそれを最初に言わないの!? ってか、どうして午前9時なのよ!?」
「グリニッジ標準時に合わせて術式を組みたるからよ」
へ……? グリニッジ、って『グリニッジ天文台』の事?
あ、イギリス清教だから、ロンドンの世界標準時に合わせてるのか。
日本との時差はマイナス9時間──日本より9時間遅れるという事。
「……って、ここは日本だよ!? あたし日本人!! 日本に合わせろよ!! もう!!」
タクシーの中にも関わらず、思わず声を上ずらせて怒鳴ってしまった。
「うふふふふふ」
何わろてんねん。コラ。
私は額に青筋立てながら、満面ニコニコ顔のニセ初春を睨みつける。
……ふー。
そう言えば、昨日(7月24日)は結構遅い時間に目が覚めて、病室で少ない朝食(重湯など)を摂った後、売店で菓子パンと牛乳買って食べたっけ。
それから
その途中から魔力を使い始めたから、とっくに午前9時は過ぎてただろう。
セレマの術式が発動してから一瞬で消えたことも合わせて考えると、魔力は使い切ったと考えて差し支えない、か。
──そんな思索に耽っていた、その時。
微かに魔力のニオイを感じた。
いや。
膨大な魔力の存在感が、遥か後方から迫ってくるのを感じた。
まさか。
まさか。
まさか。
運転席のミラー越しに、あの
ターミネーターかい!
「ひっ!? お、お客さん……アレ、何ですかね??」
運転手も怯えちゃってるよ……。ごめんねオジサン。
「聖人は音速を超える速さで動けるのよ」
ニセ初春が何だか怖い豆知識を披露する。そんな情報要らないってば。
音速って何? 気温15度の大気中では、秒速約340メートル?
時速に換算すると、約1225キロメートル?
リニアの最高速度(時速600キロメートル)の2倍超えてるじゃん!!
どう振り切れってのよ!
そうこうしている間にも、道路を走る人影が徐々に大きくなってくる。
ここで、ニセ初春がバッグからガスボンベを何本か取り出した。
いや、それはガスボンベではなく『液体ヘリウム』と書かれた缶だった。
それを空中に放り投げた後、ポケットからまた
……まあ、ドライアイスよりはよっぽど強力だとは思うけど、おそらくあの聖人の事だから、同じ手が二度通用するのか、怪しい気もする。
柳の下に二匹目のドジョウはいないのだし。
そんな私の懸念を読み取ったのか、ニセ初春はさらにもう一つ奥の手があるとでも言いたげに、得意気な顔をする。
「あとは、あなたのその『銀のケース』に収めしカードが必要なりたるわ」
「え? でも、今のあたしは魔力使えないけど?」
「わたくしがサポートするから心配なき事なのよ」
そして、ニセ初春は私から『銀のケース』を受け取り、中から『ロケル』のカードを取り出す。
大丈夫かなあ。
そのロケルは、私が学園都市に来る前に充填したものだ。
魔力が問題なく使える頃だったから、テレズマは十分に込められてたけど、あれから1年半近くも経ってるし、もうとっくに時間切れだと思う。
いざという時のために、使わずに取っておいてはいるけど。
「******」
その時、ニセ初春が小声で何やら聞き取れない呪文を唱えた。
もしかして、今のでテレズマ再充填とかやっちゃえたりするの?
充填できる時期や時間って厳密に決まってるはずだけど、イギリス清教内部だけに伝わる秘奥の裏技でもあるのだろうか。
「これでよき事よ」
そう言って、カードを手渡される。
これを使えって事か。
既に、聖人はタクシーにいつでも追い付ける所まで間合いを縮めている。
あともう少しだけ近づいてしまったら、その気になれば、さっきの『七閃』一つで車体はたちまち細切れにされるだろう。
その時、ニセ初春がタクシーの窓から、さっきの謎の物体を放り投げた。
……が、聖人は警戒したのか、それを
と、次の瞬間。
ニセ初春が手に握っているスイッチをカチリと押す。
すると、謎の物体が空中で勝手に爆発した。
ゴゥゥゥゥゥン!!!
何本かまとめられた液体ヘリウム缶と一緒に、遠隔操作式の小型爆弾が数個混ぜ込んであり、それらを一斉起爆したのだ。
この爆弾は衝撃波による破壊に主眼を置いたもので、高熱を発生させるものではないため、液体ヘリウムの冷気を相殺する事は無い。
突然の爆風と液体ヘリウムのマイナス269度の冷気に晒された聖人は──。
銃弾が発射された後でもそれを目視して対処できる超人級の運動能力を駆使し、七閃のワイヤーを高速に動かし一瞬のうちに防御結界を張り、爆風を全て防ぎ切ってしまう。
「今度は砕けません! 面心立方構造の『オーステナイト系ステンレス鋼』のワイヤーです。炭素鋼と違い、極低温下でも強度は失われませんよ」
さっき出し抜かれたのがよほど堪えたのか、そう得意気に見得を切る。
だが。
「
「
「
「
「
私は既にロケルの術式の詠唱に入っていた。
そして、私の後ろでは。
「第三の召喚文、すなわちIDOIGO、風の中の風よ。
同色のタブレットを司る言葉の羅列に従い我
ニセ初春が、何やらよく分からない術式を詠唱していた。
そして。
そして。
そして。
△○□×÷√=*&$%ーーーーッッッッッッ!!!!!!
聖人は、凍てついた防御結界を人智を超えた暴風の塊により粉々に砕かれ、その勢いのまま道路からコースアウトし、景色の彼方へと消えたのだった。
行間
オーステナイト系ステンレス鋼のマイナス269度での伸び率は30%なので、脆性破壊に強いとはいえ、液体ヘリウムで冷却すればそれなりに脆くなる。
ちなみに、神裂はステイルからの報告を受け、炭素鋼とオーステナイト系ステンレス鋼の2種類のワイヤーを予め用意していた。
ホテルの部屋での一戦で炭素鋼を使ったのは、様子見のために手を抜いていたから。
タクシーで第七学区の常盤台中学学生寮前まで戻ると、そこには脱ぎっぱなしのまま揃えられた私の靴が、手つかずのまま放置されていた。
さすが常盤台。
外部寮ですらも、他の場所と比べて治安が良すぎるにも程があるでしょ。
念のため、イタズラで何か変なものを入れられてないか確認するも、中からは何も出てこない。犬猫のフンさえ。
買ったばかりの新品の靴だし捨てるのは勿体ないので、裏に貼られてる発信機用のシールを剥がし、そのまま持って帰る事にする。
追手を撒く事も考え、ニセ初春とは別行動を取ることにした。
というか、もう夜も更けてきたことだし、そろそろお別れという訳だ。
いつまでも行動を共にして、知り合いに見られたら面倒だし、何より本物の初春に見られたら、面倒どころの話じゃなくなるから。
……それに何より、このままだと情が移って本当の友達になってしまいそうだから。
餞別代わりに、愛用の金属バットに『戦の神』のルーンを刻んで貰った。
大事に扱えば、いざという時、必ず助けてくれる『おまじない』らしい。
ってか、ルーンの他にも、何か名前みたいなのが刻まれてるんですけど。
『Gáe Bolg』──ゲイ、ボルグ?
何か聞いたことある感じの名前だな。
って、あたしの愛用のバットに勝手にんな名前付けられてもねえ。
ふと横を見ると、ニセ初春が本の栞みたいな紙切れを耳に当て、誰かと話をしている。イギリス清教内での連絡手段なのかな。
見ようによっては、魔術って科学の最新技術を超えてる事あるよね。
私達が振り切ったあの二人ともうまく話が付けばいいんだけど。
もう二度と、あんな命懸けの追い掛けっこは御免こうむる。
たぶん、命がいくつあっても足りないと思う。
今回はニセ初春のおかげで命拾いしたけど。
常盤台の学生寮前から私の自宅の寮があるアパートの前へ戻ると、鉄骨の外階段に赤髪の黒服男が座っているのが見えた。
帰ってくる所を待ち伏せしていた様子。
……アイツ、まだいたのか。
いい加減しつこいな!
足下には煙草の吸い殻が山のように積み重なっている。
私が第二十二学区へ逃げている間もずっと待ってたのだろう。
流石に睡魔には勝てなかったのか、火の消えた煙草を咥えたままウトウトと眠っているが。
…………。
ドスン。
『おい!! こんな夜中に女子中学生の家の前を彷徨く、ロリコン変態ストーカー魔術師!!』
階段に腰掛けている魔術師の頭上のほうから
魔術師はそれに反応し、アパートの階段上のほうへと反射的に顔を向ける。
「何だと!? 僕はロリコンなんかじゃない! 尊敬する女性はエリザベス一世、好みのタイプは聖女マルタだ! 断じてあんなガキのことなど──」
おまけに何やらコンプレックスでも刺激したのか、魔術師はムキになって反論し始めるが、それには構わず、
「これでも喰らえ! チェストオオオオオーーー!!!」
ぐわぁぁぁん!!
金属バットの先端が鉄骨の階段のスキマを抜け、その一撃が魔術師の臀部のど真ん中にジャストミートした。
「ごっ……!?!? っがあああああああああ……!!!」
哀れ、ロリコン魔術師は尻を押さえた格好のまま、肺の中から全ての空気を吐き出しつつ、悶絶する羽目になったのだった。
実のところ、私は魔術師の姿を確認した後、一旦引き返し、自分の声が聞こえないくらい遠く離れた場所まで移動した上で、音楽プレーヤーに自分の怒鳴り声を録音しておいたのだ。
その際、再生までのタイムラグを設けるため、最初の15秒間は無音になるよう
そして、魔術師に見付からないよう再び自宅アパートの近くまで戻り、その録音データが入った音楽プレーヤーを再生状態にした上でリュックに入れ、階段の上の通路へとリュックごと投げ入れたのだ。
あとは、階段の上から私の怒鳴り声が再生されるタイミングで、魔術師に背後から不意打ちを仕掛けたという寸法だ。
──作戦大成功!!
待ち伏せしてて何を出してくるのか分からないような危険な魔術師なんかとまともに勝負なんぞやってられるかってーの!
あたしは魔力も満足に練れない魔術師のなり損ないの無能力者だよ?
どんな卑怯な手を使ってでも、勝てばよかろうなのだー!
魔術師を撃退できたはいいが、よく見ると、階段の手すりとかアパートの外壁とか、周囲の建物とかに、魔術的記号が書かれたカードが何枚もペタペタと貼られている。
どれどれ……『オシラ(ōþila)』。
アルファベットの『O』が菱形になって、下から線が二本はみ出て、リボンみたいになってる形のルーン文字。
これが何枚か、アパートの周囲の空間を区切るように貼られている。
確か、『世襲の土地』、『領土』って意味だっけ。
領土……つまり、『人払い』の正体はこれか。
ここに他の誰も来ないようにした上で、あたしを待ち伏せてたってことね。
まず不気味だし、あたしの住んでる学生寮に他の人がずっと来れないままなのは普通に迷惑だから、全部剥がしとこう。
次は、っと……『ケナズ・アンスズ(Kēnaz Ansuz)』。
平仮名の『く』に似た文字と、アルファベットの『F』の横棒が右肩下がりに変形した文字が並んでいる。
意味は、『松明』と『神』……つなげると『炎の神』ってところか。
何か強力な術式を発動するための仕掛けみたいなものか。
これが階段の手すりやらアパートの外壁やらに、やたらとペタペタと何枚も貼られている。
ってか、これ一体何枚あるの? 貼り過ぎだよ!
何だかものすごい執念を感じて気持ち悪いし、アパート丸ごと放火されそうで、すっごく怖いから、全部剥がしちゃおうねー。
「……
うわっ! まだ生きてんの? しぶといな、この人。
駄目押しに、もう一発入れとこう。
ドグォォォッッッ!!
「
……ふぃー。撃沈完了っと。
いくら強力なルーンといえども、発動させなければどうという事は無い。
階段から転げ落ち、尻にバットが刺さったまま倒れ伏した魔術師には目もくれず、私は何十枚も貼られたルーンを黙々と剥がし続ける。
そうして、ようやく全て剥がし終えた頃には、空が白み始めていた。
ええ……もう朝じゃん。あたしの睡眠時間を返して……。
それから、私は
階段の下で“死んでいる”魔術師の尻からバットを引き抜いた後、無事、自宅への帰還を果たすのだった。
佐天が自宅へ帰った直後、アパートから少し離れた場所にある建物の影から一瞬だけ煌めきが起き、後には、くすんで抜け殻のように乾いた金髪の束と、ボロボロに朽ち果てたピンクのワンピースのロングパーカーが落ちていた。
それらはすぐに、風に溶けるように朽ちて消えていった。
解説1:
本編の創約1巻にて、
遠隔操作式の小型爆弾:
外伝の超電磁砲にて、フレンダ=セイヴェルンが
解説2:
ステイル=マグヌスが『炎剣』で使用したルーン:
ケナズ(kēnaz)=松明(炎という意味で使用)
スリサズ(þurisaz)=巨人、怪物
ナウシズ(nauþiz)=欠乏(苦痛という意味で使用)
ギーボ(gebō)=贈り物
『炎の神』のルーン『ケナズ・アンスズ(Kēnaz Ansuz)』:
ステイルが『
解説3:
『戦の神』のルーン:
軍神テュールを意味するルーン文字『ティワズ(tīwaz)』。
アルファベットの『T』の横棒を変形させ、上に尖らせた形。
上向きの矢印に似ている。
ゲイ・ボルグ(Gáe Bolg):
ケルト神話に登場する半神半人の英雄クー=フーリンが持つ槍。
クー=フーリンはこの槍を用いて、息子のコンラを始め、戦士のローホ=マク=エモニシュ、フェル=ディアドを殺害している。
ローホ=マク=エモニシュとフェル=ディアドはともに、戦闘中は敵の刃を跳ね返すほど皮膚を硬化させることができるが、ゲイ・ボルグにより