私は小走りで人里の出口の方へと向かうとそこには霊夢が立っていた。
「ごめんなさい、霊夢。ちょっと遅れたわ」
「ったく、結構待ったわよ」
霊夢は待たされたため少々怒っているようだった。
「ごめん、じゃあ帰りましょう」
「ん、帰るってどこへ?」
「え、神社へ買い物道具を置きに行くんじゃないの?」
そう言ってはみたものの、霊夢は買い物道具をどこにも持っていなかった。
慧音と話してから1時間も経ってないはずなのに…
「あぁ、さっきは二人で歩いてきたから1時間以上はかかったけど、一人だったから空を飛んで帰ったのよ」
「え、霊夢も空を飛べるの!?」
「あ、あぁ、うん。むしろ幻想郷の住人は大部分空を飛べるけど」
「ほんとに!?」
私は驚愕した。
ある意味自分の世界とカルチャーギャップを感じた瞬間でもあった。
私も空を飛べることは飛べるのだが、そのためには私自身を幻獣化させる「トランス」を使わなくてはならない。
逆に考えると、いずれトランスを使えるようになるのだろうか。
そんな疑問は置いておいて、私たちは竹林へと足を進めた。
竹林に入ると、一気に辺りは暗くなった。
天気が曇りに近かったのはともかくだが、竹が鬱蒼と生えていたこともあり、ほとんど外からの光が届かないのである。
辺りには動物の鳴き声が木霊するだけだった。
「なんか気味が悪いわね…」
「気味が悪いだけなら問題ないんだけどね」
霊夢は歩みを止めて言った。
目の前には人に持ちえない耳を持った人の姿をした生き物が2人立っていた。
「どうやらあまり歓迎はされてないみたいよ」
霊夢がそういった瞬間私の視界は大きくぐらついた。
今までに感じたことのない奇妙な感覚に吐き気がした。
どうやら目の前の人物が空間を操作しているようである。
「おとなしく帰ってくれればこんなことはしないのだけれど…」
紫色の髪をした女性が話しかけてくる。
髪は今のところ私がこっちの世界で見た人物よりも遥かに長かった。
「今日はあんたたちのところに要があっていかせてもらいたいんだけど」
「里の人間の診療ならともかく、巫女が来るとたいてい厄介ごともついてくるからダメよ」
私は霊夢に聞いてみる。
「霊夢はいつも厄介ごとを持っていくの?」
「私は異変解決をしに来てるだけよ。失礼しちゃうわ」
霊夢は一旦間を開け、私に再度話しかけた。
「向こうはもう臨戦モードなのはわかるわね?私も一緒に戦うけど、あんたの実力も知っておきたいから、私は防御に徹するわ。いいわね?」
「わかったわ。霊夢に背中を預ける!」
そして弾幕の射出とともにタッグバトルでの弾幕勝負が始まった。
二匹の兎は様子見程度の弾幕を放ってくる。
以前の三妖精の弾幕程度で避けれないことはないが、空間がいじられているせいで距離感がうまくつかめない。
「この程度で苦戦してたら今後が厳しいわよ」
「そ、そんなこと言ったって…」
そう言っている間に数発被弾する。
別の角度から放ってきた小柄な兎の弾幕である。
私はお返しとばかりにファイアを唱える。
だが炎弾は楽勝とばかりに避けられてしまう。
「ふっふーん、そんな弾は当たらないわー」
小さな兎はわざと大げさな避け方をする。
まるでケフカのようにいやらしい。
だが、やはりそれ以上に幻覚を見ているような感覚で攻撃の命中も、攻撃をかわす能力も私たちは落ちているのかもしれない。
「隙だらけよ」
「ッ!?」
またしても逆方向から紫色の髪の女性の攻撃が飛んでくる。
「夢符「二重結界」ッ!!」
私を覆うようにできた結界によって敵の攻撃は弾かれる。
「ほら、反撃よ!」
霊夢の発言にはっとして攻撃された方向にブリザドを放つ。
「その程度じゃ当たらないわ!」
さっきと同じようにいともたやすく躱されてしまう。
「ティナ!あなたが使える魔法をよくよく思い返すのよ!ただ攻撃するだけがベストな選択じゃないんだから!」
霊夢は私の方向に飛んでくる弾もさばきながら悠然としている。
(攻撃だけでなく補助魔法も…、サイレスはきっと命中しないし…なら自分にかけれる魔法…)
思考は一気に澄んでいく。
あわてて反撃した時とはまるで違うように。
そして私は一つの魔法を唱えた。
「バニシュ!」
私が透明になり、敵二人には動揺が走る。
「なっ…消えた…!?」
「へえ、なかなかね。でもここからどうするのかしら?」
敵の動揺とは対照的な反応の霊夢。
だがその落ち着いた声が私を答えに導いた。
私は小声で魔法を詠唱しながら敵の背後に回る。
「てゐ、気をつけなさい!罠かもしれないわ!」
「こっちは抜かりないわ、鈴仙!」
なるほど、紫色の髪の女性は鈴仙、もう一人はてゐというらしい。
そのてゐに向かって魔法を放つ。
「ブリザド!」
てゐの死角から彼女をめがけて魔法を撃つ!
だが攻撃はすんでのところで躱される。
「死角からってのはなかなか考えたね。だけど単発の攻撃は当たらないよ」
てゐは姿は見えないものの、魔法が飛んできた位置にいるであろう私に声をかける。
「じゃあ単発でなかったとしたら?」
「え?うぎゃっ!?」
てゐは分厚い氷の下敷きになった。
私があらかじめ小声で詠唱していたブリザラを上空に放ち、隙を作るためにブリザドをあえて見せ、時間差で攻撃する作戦はうまく決まった。
「てゐ!?もう、だから言わんこっちゃない……」
鈴仙は手を額に当てガックリとする。
「これで状況は2対1よ。それでもまだやる気?」
「お師匠様の命令だからね、それにまだここからが本番よ!」
「あんたのお師匠様ってのはただの来客を追い返すのが趣味なようね」
「あんたたちは大体まともな来客じゃないのよ!」
私は二人が話している間に新たに覚えた呪文を詠唱してみた。
響きが補助魔法のようだったのでとりあえず自分にかけてみる。
「ベール!」
白い光が柔らかく私を包み込んだ。
さっきまでクラクラするような幻覚が完全ではないが和らいでいく。
私は霊夢にも同じ魔法をかける。
「なにこれ、さっきより楽になったわ。ナイスアシストよ、ティナ!」
「ええ、ここからさらに追撃よ!」
「させないわ!」
そう言って鈴仙は自身のスペルカードを構える。
戦いの第二幕の始まりであった……
魔法の開設について
ベール 初出 FF13 対象を状態異常にかかりにくくする
鈴仙の狂気を操る程度の能力による幻覚を状態異常と見立てて、魔法の効果によってその能力を軽減する…という扱いにしました。
てゐは健康に気を遣っている妖怪。だからこの魔法が覚醒したというわけです。
えっ、てゐがやられると知ってわざわざ戦いを挑むはずがない…?
……
……………
そう突っ込まれたら苦しいですが、鈴仙に対してゐが弾幕でタッグを組みたいとでも言ったと解釈していただければ……(汗)