幻獣娘が幻想入り   作:知恵の欠片

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ティナ、永琳の相互の思惑が合致し、ティナは輝夜と会う。


姫様の難題

私が寺子屋を出た時から黒い雲が立ち込めていたのは薄々気づいていたが、まさかそれが雪雲だとは思わなかった。

 

初めて幻想郷に来た時はあんなに暖かい陽気だったのに2日後の今日はなんと雪がちらついている。

 

「雪……か」

 

雪を見るとナルシェにいた時を思い出す。

 

良くも悪くも思い出の場所である。

 

私がそんな感傷に浸っていると、

 

「あ~、寒いわ~」

 

「霊夢…、くつろぐのはいいんだけど、一応他人の家だし……」

 

霊夢は先ほどの戦闘の時の集中とは打って変わってぐうたらな姿勢になっていた。

 

とても同性とは思えない仕草であった。

 

「いいのよ、休めるうちにしっかり休めれば」

 

ある意味霊夢はメリハリの差が激しいのかも、と私は思った。

 

それから数分後、再び永琳が現れた。

 

「部屋を移動して頂戴。会ってほしい人がいるのよ。それと、移動するのはティナだけでいいわ」

 

「あん?私はこのままでいいのかしら?」

 

霊夢が寝っ転がったまま永琳に返す。

 

「ええ、私たちが今用事あるのはティナだけですから」

 

「ふーん、じゃあ邪魔になるまでこうしているわ」

 

私は永琳について部屋を後にする。

 

こうして入った部屋には一人の女性がいた。

 

華やかな服を着た見たところ高貴で黒髪の女性がそこに座っていた。

 

「あなたがティナね?私は蓬莱山輝夜。質問が一つあるのだけどよいかしら?」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「あなたたちはなぜここに来たのかしら?」

 

輝夜は穏やかな口調で、かつ物事を見据えるような瞳で私を見つめた。

 

「私は幻想郷の人ではありません。元の世界に帰るために私の魔法の力を覚醒させています。幻想郷の人にたくさん会い、魔法を覚醒させるきっかけをもらうための旅としてここに来ました。」

 

「なるほど、そして私からもそのきっかけが欲しいということかしら?」

 

「はい、そうです」

 

私の答えに輝夜は不敵な笑みを浮かべた。

 

「ふーん、それに協力してあげてもいいんだけど…何事もギブアンドテイクというものが大切よね?あなたが私にしてくれる見返りはなぁに?」

 

「う……それは……」

 

確かに想定すべき言葉であった。

 

金品の類はすでに霊夢に渡したので何もない。

 

アクセサリーも特に身に着けているわけでもない。

 

武器も防具も今は何もつけていないのだった。

 

私が見返りに悩んでいると、輝夜は一つ提案をしてきた。

 

「もし何も思いつかないんなら…、この季節外れの雪を降らせている張本人を連れてきてほしいの」

 

「雪を降らせる張本人!?」

 

「あら、知らない?永遠亭の外、幻想郷の中にはそういうことをするのがいるのよ。俗にいう冬将軍ってやつかしら?一度会ってみたいのよねぇ」

 

「は、はぁ…」

 

「じゃあこの天気がいつまで続くのかはわからないけど、明日までによろしくね」

 

困惑する私を見て、輝夜は再びその不敵な笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

「……っていうことがあったのだけれど……」

 

最初に連れてこられた部屋に戻り、霊夢とどういうやり取りがあったか話した。

 

「あぁ、それってレティのことかしら?」

 

「えっ、知ってるの!?」

 

「ええ、一度会ってるしね。異変の解決の最中に出てきたからスペルカードで倒しちゃったけど」

 

なるほど、さすが異変の専門家である。

 

「で、どこに行けばいいの?」

 

一番の問題の場所がそれであった。

 

霊夢は若干難しい顔をして、

 

「季節外れの雪にそもそもあいつが出てきてるのかしら?冬にしかあいつを見たことはないわよ?」

 

確かに初春の季節なので、レティを探せるかどうかは不明である。

 

「そもそもあんたは飛べないのにどうやって探す気?」

 

「いや、動かなくてもその人物の服装さえ分かれば大丈夫!私にはあの魔法があるから!」

 

「服装?青と白の厚手の服を着ている女だけど」

 

「よーし、そんなイメージね…」

 

私は目を閉じ、呪文を詠唱する。

 

「サイトロ!」

 

永遠亭を真上から見たようなイメージが頭の中に浮かぶ。

 

そこから視野を動かそうと精神を集中させる。

 

私たちの通った竹林。

 

人がたくさんいた人里。

 

木々が生い茂る魔法の森。

 

そして霊夢と出会った博麗神社。

 

他にも見たことない景色がたくさん私の中に入ってくる。

 

だが霊夢のイメージに該当する女性はどこにも見当たらなかった。

 

20分ほどたっただろうか、霊夢が心配して声をかけてきた。

 

「大丈夫?すごい汗かいているわよ?」

 

「え?…あ…」

 

無理もない。

 

いくら魔力の消費が少ない魔法でもずっと打ち続けは厳しかったのだ。

 

ケフカを倒した時並の魔力ならまだしも、こっちにきてからまだ使える魔法はごくごく一部にしか過ぎなかった。

 

「こんな時にこれを使えばいいのかしら。はい、これ」

 

霊夢がそっと私に液体の入った小瓶を渡した。

 

「これは…エーテル?なんで霊夢が持ってるの?」

 

「あぁ、紫が「ティナが困った時に使いなさい」ってもらったのよ。どういう効果かわからないけど」

 

「ありがとう…いただくわ」

 

私は霊夢からエーテルを受け取り、一気に飲み干す。

 

失われた魔力が微量だが回復したようだ。

 

「ふーん、なるほど。霊薬みたいなものね。でもこれしかないからもう連発はできないわよ。どうするの?」

 

確かに霊夢の言うとおりだ。

 

無策で探していても手がかりになるようなものなんてない。

 

私はもう一度さっきサイトロで見た景色を思い出してみる。

 

どこも幻想郷では雪がちらついていたのだが、ある部分だけとても雪が多かったような気がした。

 

もう一度私はサイトロを発動し、女性ではなく、その地点を探すことにした。

 

「神社…森……あれ、ここだけやっぱり多いかも…」

 

魔法の森の北部、岩が角ばった地点に入ると途端に雪の量が変わった。

 

「霊夢、魔法の森の北に岩石が多いところってある?」

 

「あぁ、玄武の沢ね。そこが怪しいと思う?」

 

「うん、きっと…」

 

「じゃあ急いで行くわよ!」

 

「えっ、そこまでどうやって…」

 

「飛んでいくのよ」

 

「でも私は飛べないし…」

 

「ったく、こうするって言ってるの!」

 

霊夢は私を抱きかかえ、そして飛んだ。

 

「わぁ…飛んでる…!」

 

私が驚いたように言うと、霊夢はこう言った。

 

「あんなに寄付してくれたんだからこれくらいサービスよ、サービス!」

 

すごく怒っているような口調で言われた。

 

後ろから抱きかかえられているので表情はわからない。

 

でもこれが霊夢なりの優しさなんだろうなと思う。

 

そして何よりだが、

 

私自身このように優しく包み込まれた記憶がない。

 

だって普段は逆に優しく包み込む方だったからである。

 

「ありがと、霊夢」

 

私はとても小さく、呟いた。

 

 

 

私たちは一気に上空を飛び、雪が一際降る場所へと向かっていく。

 

雪の白さ、純粋さとは裏腹にどす黒い悪意があるとも知らずに……

 




次回、レティさんが登場します。黒幕(?)な彼女ではありますが、ガチ展開のバトルになるかも…(今までぬるめのバトルしか書いたことがなく不安ですが…)
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