幻獣娘が幻想入り   作:知恵の欠片

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憎しみ合いから始まった二人の物語。永遠を生きる者たちの憎悪は果たして永遠なのだろうか。


賢者の真意

薬品と薬品を混ぜ、新しい薬を作る。

 

同じ材料さえあれば大方同じものを作ることができる。

 

それは何千、何万、何億とやっても結果は同じである。

 

だけど人という素材は薬品と比べると相当イレギュラーである。

 

同じ人物、同じ場面など、どんなに同じ条件が重なったとしても、結果は些細に異なる。

 

妹紅、輝夜の二人の激突は何度も見た。

 

私が輝夜と会って、初めての二人の死闘を見た時に比べると今の二人はずいぶん変わった。

 

ましてや、今回はイレギュラーな人物が一人いる。

 

輝夜がティナに向かって攻撃を放った。

 

だけど私は何も驚かなかった。

 

だって分厚い火柱が彼女を守ったのだから。

 

その光景を見て私は呟いた。

 

「さ、役者が揃ったわね……では、始めましょうか……」

 

 

 

 

――――――――――――

 

妹紅の火柱が消えると、再び輝夜が目の前に現れた。

 

だが、輝夜さんはすでに私のことは眼中になかった。

 

「紅妹…ッ!何しに来たのよ!?」

 

激怒している輝夜とは対照的に妹紅は涼しい顔をしていた。

 

「決まってるだろ。負け犬の顔を見にやってきたのさ。朝私に負けたお前の顔をな」

 

「ッ……!今日一度でならず二度までも…!今度こそ、覚悟!」

 

「何度でも返り討ちだ、来いッ!」

 

二人はありえない速さ、数の弾幕を繰り広げた。

 

今まで戦った人たちとは比べ物にならなかった。

 

そんな時だったか、永琳が私を手招きして呼んでいた。

 

「いつまでもそんなところにいると流れ弾が当たってしまうわ。早くこっちにおいで」

 

私は永琳の呼びかけに応じ、死闘を演じている二人から遠ざかった。

 

永琳は安全な位置にたどり着くと苦笑を浮かべた。

 

「これがさっき輝夜の言っていた死闘よ、本当に死闘って感じがするでしょ」

 

「え、ええ。確かに容赦なく攻撃していて、周りも見えていないようで、いいのかどうなのかはわかりませんが……」

 

「とりあえず輝夜の次の攻撃を見てごらん。妹紅は体をねじって左に避けるわ」

 

「本当ですか?そんなはずは……」

 

だが妹紅は永琳の予測通りに弾幕を見事に躱した。

 

「嘘っ…」

 

「そして振り向きざまに妹紅が輝夜に向かって弾幕を放つわ」

 

永琳がそういうと直後に妹紅は輝夜目がけて弾幕を放った。

 

「なんでわかるんですか!?そんなこと、お互いの手の内がわかってないとできないはず……」

 

私のその言葉に永琳は少し吹き出した。

 

「ふふっ、輝夜たちがどれほどあれをやってきたか考えれば答えなんて簡単よ。お互いが自分の最善の手を尽くす。だけどその手の内はすでに読まれている。それこそ永遠とも言えるような手数までかしら」

 

「じゃ、じゃあなぜ今朝輝夜さんは負けたんですか!?」

 

永琳はふと微笑んで、

 

「いくら不死とは言えども、完全な人間ではないの。時に間違うこともあるし、間違いをもとに成長することもある。あの二人は殺し合いと言うと響きは悪いけれども、あれでもお互いの足りない部分を補おうとしているのよ」

 

「…………。」

 

「でも、もう二人だけでは何ともならない状態になっているの。だって戦いあうだけで成長できたら苦労なんてしないじゃない。だからあなたみたいな人が必要だったの」

 

「なんで私なんかが必要なんですか?」

 

「あなたは私やあの二人と違って不死でない。そして命の重さ、わずかなものに心を躍らせる豊かな感性を持っている。それは永遠の世界にいるものにとって一番欠けているピース。何が言いたいか分かるかしら?」

 

私は永琳の問いに素直にうなずいた。

 

ようやく私にはこの話の、永琳の真意がわかったのだ。

 

両者何かしらの因縁があってここまで戦いあってきた。

 

だが皮肉にも、彼女らの永遠は命の期間であって、憎しみの期間ではない。

 

その両者の関係をつなぐ架け橋として、私が呼ばれたのだと。

 

最初は不思議に思っていた。

 

永遠亭に来た時はてっきり拒まれたと思っていた。

 

それが永琳にはあっさり受け入れられたので罠かとも思った。

 

だが、それは永琳の眼鏡にかなうかどうかのテストであったのだとようやく確信することができたのだった。

 

「さて、真意がわかったところでそろそろ戻りますか、もう弾幕がぶつかり合う音もしなくなったし」

 

私は再び永琳に招かれ、二人のいた場所へと移る。

 

二人はお互いあお向けになって倒れていた。

 

朝からの連戦もあってか、お互い憔悴しきっていた。

 

だが、二人の顔は苦悩を表す苦しい表情ではなく、永い永い呪縛から解放されたような表情をしていた。

 

私は永琳にアイコンタクトを送った。

 

そうしたら永琳はふと微笑んでくれたので、私は倒れている二人に向かってこう言った。

 

「私はあなたたちに比べたら赤子同然の人生しか過ごせていないのかもしれない。そしてあなたたち二人の境遇も知らない。だけどこれだけは言わせてほしいの。どうせ永遠に続く命ならば、苦しむことよりも楽しく幸せな未来を迎えられたらなって思うんです。」

 

私がこう言ったら妹紅は言った。

 

「ずいぶんと漠然とした長期目標だな」

 

それに対し輝夜は、

 

「つまりこいつと仲良くやれってことかしら?」

 

輝夜の強烈な視線を感じたが、私も怯まず彼女を見つめた。

 

すると輝夜は大きくため息をつきながら、

 

「私の難題は無視して、代わりに私に難題を出すなんて、そんな変な人もいたものね」

 

「そんな小娘の発言に論破されるお前の難題は大したことなかったってことだな」

 

相変わらず、倒れていても毒を吐くことを忘れなかった二人ではあったが、最後に二人ともこう合わせた。

 

「まぁ、悪くはないのかもね……」

 

私は微笑みながら右手に輝夜の手を、左手に妹紅の手を握りながら微笑んで言った――――

 

 

 

――――――――

 

薬品と薬品を混ぜ、新しい薬を作る。

 

同じ材料さえあれば大方同じものを作ることができる。

 

それは何千、何万、何億とやっても結果は同じである。

 

だけど人という素材は薬品と比べると相当イレギュラーである。

 

同じ人物、同じ場面など、どんなに同じ条件が重なったとしても、結果は些細に異なる。

 

私は今回その人という素材のイレギュラーさを用いて最高の薬のレシピを得た。

 

それはおそらく紙に書き残したとしても、次に同じことが起こるとは限らない。

 

だけど、その人物が残した言葉だけは忘れず心に留めておきたいからあえて書き残すことにした。

 

「これからの未来が、私たちにとって輝くものでありますように……」

 




今回は永琳の視点が多かったですが、おかげできれいにまとまったと思います。

やっぱり、てるもこはいがみ合いつつも、仲良くなってくれればいいなぁと感じるこの頃です。

これでようやく永遠亭編は終わりです。

ここの章で覚醒した魔法は次回明らかになります。
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