私たちは夕食を終えると、外に出て特訓の準備をした。
もうすでに辺りは真っ暗である。
昼にちらついた雪がわずかに残り、月の光を反射して白く淡く輝いているのみであった。
「まずはあなたの攻撃手段の魔法を見せてほしいの。そこから一緒に考えていきましょう」
私は今使える攻撃魔法を放った。
炎属性のファイア、それから氷属性のブリザド系統3種+フリーズである。
特にフリーズは対象周囲を凍り付かせる大技。
「こりゃあすげえ魔法だな」
魔理沙が興奮していた。
だがそれと対照的にアリスは冷静にこう言った。
「なら、あなたはファイアとブリザドを磨きましょう」
「え、フリーズが現時点で使える高火力の魔法なのに」
「ええ、なんなら試してみる?私の作った上海人形を相手に無傷でいられたらね」
アリスが指をパチンと鳴らすと人形が出てきたのがわかる。
暗くてはっきりとはわからなかったが、5,60はいると思われる。
「さぁ、見せてみなさい!」
アリスの号令とともに人形たちが私をめがけて動き出す。
幸いにも敵は一か所に集中して接近している。
私はここぞとばかりにフリーズを放つ。
だが、私の魔法の発動とともに人形は一気に拡散していき、たった一体にしか被弾しなかった。
私は再び迫ってくる人形に再度魔法を放とうとした。
だが人形のほうがわずかに早く、
(体当たりされ――)
と思った瞬間人形が爆発し、近くの人形数十体も誘爆したのだった。
どれほど気を失っていただろうか。
気が付いた時には私はベッドに寝かされていた。
カーテンを開けるとすでに太陽が昇っていた。
どうやらあの時の爆発ですっかり気を失っていたようだった。
カーテンの音に気付いてか、魔理沙とアリスが部屋に入ってきた。
「やっと目覚めたか、ティナ」
「よっぽど疲れてたのね。爆発の威力を弱めたつもりだったんだけど、気絶してそのまま眠ってたみたいよ」
確かに前日までは魔力を相当消費してたので、疲れを感じないのも無理はなかったと思われる。
私たちは朝食を食べ終えると、再び特訓をした。
「ティナは今までどうやって戦ってたんだ?」
「私たちは基本3,4人でパーティを組んで戦ってたから、私は大技を叩きこんでいたわ」
私の答えにアリスは言った。
「なるほどね。確かにあなたの魔力を生かすにはそのポジションがいいのかもしれないわ。だけど、幻想郷では大体1on1の戦いが当たり前だと思って。大技ばかりをやると昨日みたいになるわよ。具体的に、フリーズをかわされた後がやはり狙われるポイントよ。だからできるだけ隙を作らないように魔法を細かく撃つのよ」
魔理沙も同じように言った。
「お前の世界では弾幕というより単発の威力の高い魔法をぶち当てるような戦いだからな。こっちのスタイルにも慣れないといけないな」
確かに私の攻撃には間隔が長く、隙も多い。ましてや弾幕を避けるほどの相手に単発の魔法なんてたかだか知れている。
妖精に勝てたのは所見殺しの魔法での不意打ちとか、実際に実力差で勝てただけのようなもの、一部の妖怪も、霊夢の手がなければきっと勝てなかっただろう。
私は彼女らの助言に頷くと、また昨日と同じ量の人形が出てきた。
(とにかく小さい魔法を細かく当てることに集中するんだ!)
私は敵との距離をとったり、攻撃を回避しながら一つずつファイアやブリザドで人形を迎撃していく。
「やっぱり戦い慣れしているだけあって、攻撃を避けたりするのはうまいんだな」
「あとは攻撃方法を確立するだけなんだろうけどね」
それから戦うこと15分、何とか私は人形をすべて撃ち落とすことに成功した。
私は魔法の連発による憔悴、体当たりによる爆発を回避するために必死になっていたため、完全にスタミナ切れを起こしていた。
「おーやるじゃん」
「攻撃のスピードも上がってきたし、次の段階に進んでもいいわね」
「へ、次…?」
「あ、なんだ、この程度で満足されちゃ困るぜ。あの程度じゃまだまだノーマルレベルだからな。今度はハードに挑戦してもらうぜ」
私はそう言いながら空を見つめた。
その時森の向こうの空で何が起きているとも知らずに……
(同刻)
妖怪の山にはある男が来ていた。
見るからの道化師のその男はぶつぶつと何かを言いながら山を登っている。
山頂には守屋神社があるのだが、彼の目的はただの参拝ではないようである。
「お前は何奴だ!?」
ちょうどそこに居合わせた哨戒天狗が彼に声をかける。
「おや~ぁ?ボクチンはてっぺんにある建物に用があるだけですよ~」
彼はわざとらしくおどけてみせる。
「とぼけるな、さっき破壊だのなんだの危険な言葉を抜かしていただろう!」
彼女がどなって言うと、彼は大きくため息を吐いた。
「はぁ~、ウザイウザイ、とっととボクチンの前から消え失せなさい!」
すると彼はとんでもないサイズの火球を彼女に向けて放った。
「うわぁ!?」
彼女はなんとか躱せたものの、彼はすでに次の攻撃態勢に入っていた。
「死ねえ!」
だがその刹那、私はすでに彼女のほうへと猛スピードで突進していった。
(ゴウ!!)
魔法が着弾し、激しい火柱が上がる。
だが彼は自分の魔法にほとんど目もくれることもなく言った。
「やれやれ、邪魔者も燃え尽きましたね。それでは退屈な山登りの続きでもしましょーか」
彼は誰に聞かせるつもりでもない独り言をぼやきながら過ぎ去っていく。
(あの男が対して注意を傾けず、攻撃を放った際に目を閉じていたことが幸いしてか、なんとか気づかれずに距離を取ることができたわ……)
私はそう思いながら腕に抱えている哨戒天狗に視線を向ける。
「文様…申し訳ありません……」
その哨戒天狗――、犬走椛が私に謝ってきた。
「そんなことは気にしないで、だけどあの男結構いいネタになるかもしれないね」
「は、はぁ…」
私こと射命丸文は新聞記者という職業上、こういったネタになりそうなことには敏感である。
だが、彼から感じ取った雰囲気は、人里に配るような号外にするネタではなく、妖怪の山の大天狗様をはじめ、幻想郷の主要人物に知らせなければならない……そういった危険さがにじみ出ていたのだった。
「さて、これから上に報告ですかね」
とうとうあのお方の登場です。ちなみに以前人里であった男性は別人ですよ。
次回は様々な場所で動きがあると思います。(適当)