幻獣娘が幻想入り   作:知恵の欠片

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いまさらですが、一点お願いします。

ティナ編でレティと戦い勝利した際にブリザガ、フリーズが覚醒したという言葉が入っていなかったようです(新しい魔法が使えるようになったとしか書いてませんでした)。私も本文を読み返していて気づきました。
今回はシャドウ編ですが、次のティナ編に戻った時、まえがきにてティナの現時点で使える魔法を示していきたいと思います。


ナイフとダガーの円舞

小町という死神と別れてから数分後の出来事である。

 

俺はただ目的もなくどこかへと向かっていた……

 

(ぐぅぅぅぅぅ)

 

いや、目的はある。

 

この空腹をなんとかせねばならない。

 

ちょうど視線の先には湖があり、その先に大きな館が見える。

 

間違いなく食べ物があるに違いない。

 

盗みを働くというの気の咎めはあったものの空腹感には勝てず、俺はその館へと駆けて行った。

 

 

 

(数分後)

 

俺は門の付近へとたどり着く。

 

さすがに木々の影をうまく縫いながら進まないと侵入がばれそうだったので警戒しつつ先へと進んだ。

 

館から手前側の茂みから門の様子を伺うと門番らしき人影が見える。

 

(あそこからしか侵入は不可能だ……何か手はないものか……)

 

そう考えていると突然館の一部が爆発した。

 

すると門番は何かを言って館の中へと走っていった。

 

(何かトラブルが発生したのか……なら混乱に乗じて飯にありつける!)

 

俺は見られていないことを確認しつつ館へと突入した。

 

内部に突入すると人の気配はほとんど感じなかった。

 

内部を見渡すとほとんど真っ赤である。

 

(まるで血のように赤いな……ん?血……?)

 

なぜか血という言葉が頭の中で反芻する。

 

(いや、まずは飯にありついてから俺が何者なのかゆっくり考えることにしよう……)

 

 

 

 

(この少し前の出来事)

 

この館のとある部屋では見た目幼き姉妹がおやつの時間を心待ちにしていた。

 

「お嬢様、妹様、このケーキを召し上がりください」

 

「ありがとう、咲夜。いただくわ」

 

「わーい、ありがとう咲夜!!」

 

こんな平和な時間であるはずだったのだが……

 

「何、フラン?ケーキ食べないの?」

 

お嬢様――レミリア・スカーレット――は妹様――フランドール・スカーレット――に尋ねた。

 

妹様は震えながらこう言った。

 

「…さいの……小さいの、私のケーキ……お姉さまのよりも……」

 

「そう?私には同じにしか見えないけど?ねえ、咲夜?」

 

お嬢様は私――十六夜咲夜――に確認を取った。

 

「ええ、私が正確に切り分けたので寸分の狂いもないかと」

 

それでも妹様の怒りは収まらなかった。

 

「小さい、小さい……ウフフフフフ……」

 

妹様の手にはスペルカードが今にも発動されそうな状態でセットされていた。

 

「神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」

 

それを見るやいなや、お嬢様のスペルが発動、巨大な紅い槍が妹様のほうへと投げ出された。

 

「グ……アァッ!」

 

槍は壁に直撃し、部屋には大きな穴が開き、見るも無残なことになっている。

 

妹様はお嬢様がわざと直撃を避けたため大きなけがはないが気を失っていた。

 

「咲夜、フランを地下牢に2日閉じ込めておいて」

 

「……は」

 

私は妹様に申し訳ないと思いつつ、お嬢様の指示に返事をした。

 

「妹様!!」

 

突如ドアを思いっきり開け女性が入ってきた。

 

「美鈴、何をしに来たの?門番の仕事はどうしたのかしら?」

 

私は門番の紅美鈴に向かって尋ねた。

 

「この爆発音がしたのでここに走ってやってきたのです。きっと妹様がまた暴れたのだと思って……」

 

「それを何とかするのは私の仕事であり、門番のあなたの仕事ではありません。早く持ち場に戻ってください」

 

私は妹様を抱きかかえ部屋を後にしようとすると、美鈴は私に質問をしてきた。

 

「妹様はどうなるのですか?」

 

「2日間地下牢に閉じ込めるわ」

 

お嬢様がそれに答えた。

 

だがその答えに美鈴は食い下がった。

 

「いつも思ってたんですが……、あんまりにもかわいそうだとは思いませんか?」

 

「何?主に向かって盾突く気?」

 

「だって……お嬢様の妹じゃないですか!自分の身内にそんな閉じ込めだなんて……ッ!?」

 

突如お嬢様は美鈴へと殺気を向ける。

 

その視線の先に私はいないのにかかわらず恐ろしく静かでとてつもなく冷たい殺気を。

 

「私は自分の妹だからこそかわいそうだとは思わない。悪いことには罰を与えなければならない。自分が悪さをしたにもかかわらず、そのままにしておく方がよっぽどかわいそうだと思わないのかしら?」

 

美鈴は答えることもできず、ただその場に立ち尽くしてしまった。

 

「せっかくのケーキが台無しね、行くわよ、咲夜」

 

「はい、お嬢様」

 

私たちは固まっている美鈴の脇を通り部屋を出ようとしたのだが、私は館の内部に違和感を覚えた。

 

何者かの気配を感じるのだ。

 

「お嬢様、どうやら館の内部に鼠がもぐりこんだようです。いかがいたしましょうか?」

 

「鼠……?そう……」

 

そう言うとお嬢様は少しばかり悩んでいたようだったが、すぐにこう答えた。

 

「咲夜、あなたはすぐにそのものを追って!獲物には何をしても構わないわ」

 

「はい、お嬢様」

 

「それと美鈴、美鈴!」

 

「は、はいっ!!」

 

「あなたは私と一緒に地下牢へ行き、フランを運ぶわよ、いいわね?」

 

「しょ、承知しました!!」

 

お嬢様の命を受け、私はその者のもとへ急行したのだった。

 

 

 

――――――

 

俺は侵入してからしばらく同じ階層を進んでいるが、部屋の風景は全く変わらなかった。

 

(おかしい……外から見た時はこんなに距離があった気がしない、それに向こうの角を目指しているはずなのに全然たどり着けないだと……?)

 

振り返ってみると入口もすぐ目の前にある。

 

いくら足を進めても全く変わらない景色に少々不気味になり別の場所を探索するために入口のほうへと進んだ。

 

「お待ちしておりましたわ」

 

「!?」

 

突如正面に銀色のショートヘアの女性が姿を現した。

 

「レミリア・スカーレットお嬢様の館へようこそ。私は十六夜咲夜と申します。ここでメイドを務めておりますわ。あなたは一体この館に何用で来られたのですか?」

 

「……」

 

俺は無言で彼女を睨んだ。

 

「そうですか、答えてはくれませんか……」

 

咲夜はそう言うと何もなかった空間から突如ナイフを握り構えた。

 

「ならば肉塊になってもらうだけです」

 

俺もダガーを構え戦闘態勢を取った。

 

咲夜は持っているナイフを俺めがけて投げつけてきた。

 

だが、俺はそのすべてを弾き落とした。

 

体のどこかを狙っているのが簡単だったからこそできた技である。

 

「この程度では弾かれますか……ではこうしたらどうでしょう?」

 

彼女は壁付近にナイフを投げた。

 

だがそのナイフは壁に反射し予想もしなかった軌道で俺に迫ってきた。

 

(ズザザザザッ!!)

 

「ッ!」

 

何とか体を翻して回避しようとしたが、数本体を掠め、血が流れ出した。

 

「これでおしまいかしら?」

 

俺は何度かよけようと試したが、予測不能な角度で飛んでくるナイフを弾き返すことができず、時間が経つたびに傷が広がるだけだった。

 

(奴はどこからかナイフを取り出し、無限に投げつけてくる……投擲としてナイフを使われると圧倒的不利に違いない……だが、その取り出す瞬間を狙って接近戦を持ち込むしか……)

 

じりじり距離を詰めてみるが、そのたびにナイフを投げられなすすべがない。

 

(いや、手はある!ここにはあいつが投げた無数のナイフがある。投げるだけなら俺にもできる!)

 

俺は一旦距離を取り、落ちているナイフをかき集め始めた。

 

「させません!」

 

「くっ!?」

 

何とか身をひるがえしてかすり傷程度に済ませたものの、拾えたナイフはたったの3本。

 

咲夜までの距離は約10メートル。

 

まず一本目を咲夜目がけて投げ、そのまま咲夜へと走り出す。

 

咲夜は持っていたナイフで弾き、そのまま壁に向かって投げつけた。

 

ナイフはえげつない反射をして俺に迫ってきたが、スピードに乗っているために回避はそこまで難しくもなくそのまま正面に飛び込みながら2本目のナイフを投げる。

 

「その程度の投擲で私を倒せるとでも?」

 

咲夜はいともたやすくそれを弾き返した。

 

そして彼女はそのまま次のナイフを投げようとしたところある俺の変化に気付いた。

 

(あの男はもう一本ナイフを持っていたはず……、一体どこへ……)

 

「お前のナイフって跳ねるんだろ?」

 

「ッ!?」

 

そう、2投目を放ったと同時に3投目も別の手で投げていたのだ。

 

一か八かの作戦ではあったが、咲夜は体勢を崩して回避が精いっぱいだった。

 

もう距離の差はほとんどない。

 

俺はダガーを彼女の胸元狙いまっすぐ突き出した。

 

だが、次の瞬間、彼女は消えてしまった。

 

「奴はどこへ!?」

 

(ぱちぱちぱち……)

 

「!?」

 

突然手を叩く音がして、俺があたりを見回すと、入り口の階段ホールで咲夜と見知らぬ女の子がいた。

 

拍手をしていた女の子は俺にこう述べた。

 

「ただの鼠と思ってみたらこの咲夜を本気にさせるほどの手練れとはね……、面白いじゃないの、私はレミリア・スカーレット。あなたの名前は?」

 

「名前は知らん、悪いが記憶がないんだ」

 

「そう……、残念。じゃあ、あなたの目的は?正直に言ったらこちらも少しは考えてあげる」

 

「ならば言おう……食いものはないか?」

 

俺がそう言うと二人はあっけにとられたような表情になった。

 

「食いもの……?」

 

「ふ……ッ!悪魔の館に食事をねだりに来るなんて、なかなか滑稽な男がいるものね……、いいわ、咲夜、案内しなさい」

 

「!?ですが……」

 

「問題ない、いつまでも客を待たせてはいけないよ」

 

二人が何かこそこそ話し始めたが、俺には聞こえないので確認を取った。

 

「で、飯は出るんだ?出ないんだ?」

 

「ただいま用意します。こちらへどうぞ……」

 

俺は咲夜の案内に従った。

 

ようやく飯にありつくことができ少しはほっとしたが、ただ上から俺を見降ろしているレミリアの微笑を見て、後悔することをのちに知ったのだった……。

 




さて、今回の文章が本編よりも長いのは彼に対するリスペクトだと思ってください。

ティナ編も頑張って書いていきます。次回こそアリス編完結です。お楽しみに。
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