ではティナ編、アリスから魔法を得たティナが向かう先は……
朝日がカーテンから漏れている。
私はそれに優しく起こされた。
思考はまだ澱んではいるが昨日の戦いを少しずつ思い起こしていく。
あの時覚醒した「ダブル」ならびに「トリプル」という魔法は私の魔法の威力を落とすことなく拡散させる魔法だった。
もちろん消費する魔力もその分増えるためここぞという場面でしか使えないのはあるが、少しずつ弾幕攻撃に近いほど魔法を使えるようになっているようだ。
「そういえば最後の攻撃……」
私が最後に放ったフリーズはアリスの体を貫いているように見えた。
意識はそこで飛んでいるのだが、ひょっとしたら大変なことになっているかもしれない。
私は慌ててベッドから飛び降りて隣のリビングへと向かった。
だが私の予想に反して魔理沙とアリスは何事もなかったかのように食事の準備をしていた。
聞くところによれば、私の最後の攻撃は私の気絶とともに消滅したため、すんでのところで助かったそうだ。
私はアリスからここ数日いろいろと教わったため、どこかに行くあてはないかと尋ねられていた。
そんな会話をしながら食事をしていると、魔理沙が不意に私に尋ねてきた。
「ところでティナ、魔法以外に使えることはないのか?」
私はすこしばかり考えて、答えた。
「弾幕とは関係ないけど多少なりとは剣を扱えるわ」
「剣って、今は持ってはいないようだが?」
そう、ここの世界に来たときにはすでに腰に掛けてあった剣はどこにもなかった。
「剣は魔理沙のとこにはないの?」
「生憎だが、私の所にあるのは書物ばかりだぜ」
「じゃあ霖之助さんの所はどうかしら?」
アリスが魔理沙に向かって言った。
「霖之助さん?」
「ああ、この森の近くに住んでいる私の知り合いだ。確かにあいつなら剣の類を持っていてもおかしくはなさそうだな。まぁロクなものはなさそうだと思うが……」
「まぁそこに行ってみましょう」
その話の流れで私と魔理沙はその霖之助という人物のもとへと向かうことになった。
魔理沙の家よりはだいぶ人里に近く、比較的行き来しやすい場所にあるらしい。(もっとも人里からの客はほとんど来ないらしい)
だが……
「まぁ、あいつも癖があるやつでな、あいつの気分次第で物を売ってくれないときもあるんだ」
「はぁ……」
私もため息を吐きながら答えるしかなかった。
森を進んでいくと、出口が近づくにつれ木々の木漏れ日も少しずつ強くなり明るくなっていく。
その中に古ぼけた建物が一軒立っていた。
「香霖堂……?」
「あぁ、ここがそいつの店だ。入るぞ」
魔理沙に言われて中へ入ると、中はよく見えないほど薄暗く、物があふれかえっていた。
「よぉ、香霖、遊びに来たぜー!」
魔理沙が香霖と呼ぶその先に人の姿を確認する。
銀髪長身で眼鏡をかけた男性のようだ。
「魔理沙か……、それとそちらは?」
「私、ティナ・ブランフォードと言います。今日は霖之助さんにお願いすることがあって連れてきてもらいました」
霖之助はそれを聞くとため息を漏らしながら答えた。
「君一人で来たなら立派な客としてだったんだが、魔理沙が連れてきたとなると……、面倒ごとの予感しかしないのはなぜだろうね」
「魔理沙、霖之助さんに何か面倒なことでもしているの?」
私が気になって質問してみると、
「私が死ぬまでここの道具を借りているだけだぜ」
と悪びれる様子もなく答え、私と霖之助はため息をついた。
「とにかく中に入って、話はそれからだ」
私たちは霖之助に続いて店の中の居間へと向かった。
私たちは畳という床に敷いてあるものの上に座ると、霖之助は部屋の明かりを灯し、話を切り出した。
「僕は森近霖之助という、おおよそ詳しいことは魔理沙からもすでに話がされてあると思う。今日は一体どんな理由でここに来たんだい?」
「私もともとここの世界の住人でなく、違う世界にいたんです。ですがここに来たとき持っていた剣を無くしてしまったので、それに代わるものが欲しくて来ました。」
「外の世界……?」
霖之助がその単語に目を細めて呟く。
「どうやら私たちが言う「外の世界」とはまた違う別世界のようなんだぜ。数日ティナと一緒にいたが、食事も文化も聞けば聞くほど一致しないからな。それに極めつけは魔法も使えるんだぜ!」
「魔法の世界……か」
そうつぶやくと霖之助は私をじっと値踏みするかの如く眺めた。
「ティナと言ったかな、君は剣の腕前はどのくらいかな?」
「具体的な腕前がどれくらいかはわかりません……。魔法を使い、その合間に武器として剣を使っていたくらいですから」
「そうか……、君にはあの剣を貸すことにしよう」
そう言うと霖之助は店の奥へと入っていった。
「魔理沙、なんとか譲ってもらえるみたいだけど?」
だが、魔理沙は少しばかり表情は曇っていた。
「いや、あいつのことだから何か条件があるに違いないぜ」
「条件?」
魔理沙は霖之助の家の菓子棚をちゃっかり漁りながら続ける。
「例えば……「体」とか、な」
「体……?」
魔理沙の言った例えの意味が分からず私はきょとんとしてしまった。
「そ、お前の体とかな」
「……?どういうこと?」
「へ……?」
魔理沙は私の違う反応を期待していたのだろうか、うっすらと焦りの表情が見える。
「魔理沙、教えて」
「あ~っと……、その、なんだ。そう、あれだあれ……」
「あれじゃわからないわ、はっきり言ってちょうだい」
「あ……ぅ……」
暗いながらも魔理沙が赤面して動揺している姿が見てわかる。
私もただ教えてほしいだけなんだけど……。
「待たせたね、これだ」
そんなやり取りをしている間に霖之助が例の剣を持ってきた。
霖之助は慌てながら自分のお菓子を勝手に漁っている魔理沙を見てため息をつきながら、「勝手にしてくれ」と言った。
「さ……サンキューだぜ、香霖」と魔理沙は余裕なく答えた。
そんな魔理沙を放っておきながら霖之助は私に剣を見せた。
「これはかなりの名剣だと思う、ぜひ使ってくれ」
霖之助が手渡すそれを見てみる。
しかし、それはかなり錆びついていて本当に剣として使えるのかも怪しい。
「なぁ香霖、お前ならもちろんこの剣の使い方と名前はわかるんだよな」
「あぁ、もちろんだ」
「え?」
私が聞き返すと、
「僕の能力で、この剣の名前、効果はわかるんだ。最近私もこれを手に入れたばかりで、ここ数日剣を研いで磨きなおそうとしてみたのだが……不思議な力が働いているのか全く変化しないんだ」
「ちなみに名前はなんていう名前なんですか?」
魔理沙も「私も気になるぜ!」と脇から口を出すが、
「まだ内緒だ」
と霖之助に、突っ返されてしまった。
「つまり、霖之助さんがこれを貸してくれるというのは……」
「そう、君みたいな剣の使い手がこいつを名剣として昇華させてくれれば僕は構わない。君がいずれ元の世界に帰る時にそれを僕に返してくれれば一番いいからね、もちろん魔理沙を介して返すのはダメだからね」
「ちっ、こんなボロ剣私はいらねーからな、大丈夫だぜ!」
魔理沙に釘を刺すことも忘れず、そう言って霖之助は私にこの剣を預けた。
剣をもらえるところまではうまくいったのだが……
「やっぱりただのボンクラな剣じゃないのか?」
私は魔法の森の木を試しに切ってみようとしたが、全く切れない。
刃こぼれこそあれども刃先も普通の剣と同じくらい鋭いのに、これではただの鉄の棒もいいところである。
「とりあえず私の家に戻って一旦飯にしようぜ、あいつ茶の一つ出しやしないし」
「……そう言いつつ勝手にお菓子を漁っていたのはどこの誰だったでしょうね?」
そこで私はさっきの魔理沙が動揺していた話を思い出して、もう一度彼女に問いただそうとしたその時だった。
「お、ティナみーっけ!!」
そこにいたのはチルノ、大妖精、それから初めて見る3人の少女たちだった。
人を愛することを知らなかった少女。無論物語終盤で気付いたにしてもそれに対するもっと深い知識までは知らないという体で書きました。(今時中学生でもそりゃねーだろという声も飛んできそうですが……ましてやティナは設定上18歳、世界崩壊後だから19歳でその知識の無さは……)ティナに対するイメージが崩れたという方がいらっしゃったら申し訳ないです。私の中のティナはそんな無垢なお方なのです。
なお作中の剣についてはFF6にも登場しますが、6のそれとは違う入手法になります。(そもそも使ってて覚醒するのは血塗られた盾という防具ですが)
次回、ティナ編カルテットとの対決です。