だが雲行きは怪しく……
「帰れ」
「ま、まぁ落ち着けって…、それにな、客もいるし……」
私は二人のやりとりにどうしようもできずおろおろとするばかりだった。
何が起きたのか説明しよう。
博麗神社に着いた私たちは紅白の服装をした少女と会った。
名前は博麗霊夢という、巫女をやっている人だそうだ。
簡単に言えば神様に使える人を巫女というらしい。
そういう人は基本人々から信仰を集めなきゃいけないらしいから、私は真面目な人なのかと想像していた。
この巫女さんと魔理沙は仲がいいとここに来る前までは話していたのだが……
「いい?最近お賽銭が入らなくて私がお菓子を食べる余裕さえないのよ?それなのにあんたはここに来たらタダ寝、タダ食い、タダ飲みしかしないじゃない!少しくらいお金を置いていきなさいよ!」
「い、いやなぁ……勘弁してくれよぅ……」
と、お金のことでかなり交渉が難航していた……
「今回ばかりは全くまけないわよ」
霊夢は相当強情である。
魔理沙は助けてくれと言わんばかりに私に、
「なぁ……金なんて……持ってないか…?」
「うーん…、お金なんて……」
さすがにこの世界のお金は持ってないが、前の世界のお金なら持っていた。
「私が出せるのはこれくらいしか……」
手元には大体5万ギル入っていた。
瓦礫の塔でモンスターもそこそこ持っていたので(なぜモンスターがお金を持っているかは不明である)それなりには持ち合わせていた。
こっちの世界では持っていてもしょうがないだろうし、有り金全部を霊夢に手渡した。
「なにこれ……見たことないお金なんだけど…」
「私の世界のお金なので…」
「ふーん…」
霊夢は一通り眺めてみてこう言った。
「紫ぃ~!これをお金に換えて~!」
すると突然目の前の空間が割れた。
「おやおや、いきなり人を呼びつけて換金業をさせるだなんて」
中から金髪の女性が現れた。
だが、初めて聞く声ではないし、ましてや目の前の空間が急に開けるような場面も初めてではなかった。
紫と呼ばれるその女性は霊夢からお金を受け取った。
「なるほど……、これは「ギル」ですわね。なかなか珍しいので…、これくらいでいかがかしら?」
紫さんはパッとお金を取り出し霊夢の手の上に置いた。
どうやら札束のようである。
「な……っ!?こ、こんなにもらえるの!?」
霊夢は狂喜乱舞した様子で紫に話しかける。
「ええ、この方のような住人はあまりいませんからね」
紫さんは私を一瞥して言った。
「ところで、貴女にお会いするのは初めてではありませんが、私を覚えていますか?」
「もしかしてですが……、前の世界で私のことを呼んでくださったお方でしょうか?」
「ご名答ですわ。八雲紫と申します」
彼女は恭しく頭を下げる。
「あの……、私がこの世界に来た理由は―――――」
だが私のセリフは遮られるようにして、
「残念ですが、まだ今の貴女では力不足ですわ。またいずれお会いしましょう」
紫さんは言いたいだけ言って、去ってしまった。
「で、霊夢。さっきの件なんだが…」
魔理沙がさっきの交渉を切り出そうとした瞬間、
「あなたたち、三食昼寝おやつ付で一週間泊まっていっていいわよ!!」
霊夢は目を爛々と輝かせ声のトーンも数段高まっていた。
なるほど、どうやら信仰の価値は経済力によって決まるらしい……。
「ま、霊夢はこんなやつだぜ……」
魔理沙もどうやら呆れているようであった……。
神社の中の一室に私たちは招かれた。
日中の気温はそこそこだが、夜は冷えるため、まだ暖房器具が部屋に残っていた。
私たちはこたつという机に足を入れる。
「今すぐ用意できるものはみかんくらいしかないけど、明日は腕によりをかけて料理するから待ってなさいよ!」
と、どうやらもう自動的に泊まることに決まってしまったらしい。
まぁ、予定もないからいいことにしよう。
「まぁ、霊夢。話があるんだがな」
みかんを頬張りながら魔理沙が話を進める。
私の紹介と、どういう経緯でここに来たかということについてである。
一通り魔理沙の話を聞き終えると、霊夢は私のほうへ向かって、
「そういえば、自己紹介が遅れたわね。私は博麗霊夢、楽園の素敵な巫女よ」
と紹介をした。
魔理沙が隣で、「貧乏な」と付け加えたが、霊夢はそれを無視するかのように話を進めた。
「あなたがなぜこの世界に来たのか、ってことの手がかりを求めてここに来たのね?」
「はい…」
「さっき紫が「今のあなたじゃ力不足」とか言ってたけど、こっちに来て何か変わったことは?」
「うん…と、私の魔法の大部分が使えなかったんだけど、幻想郷の住民とかかわっているうちに魔法が覚醒していったわ」
なるほど、と言って霊夢は考え込んだ。
(霊夢は大丈夫かな?)
私は魔理沙にそっと耳打ちをした。
(大丈夫、霊夢はお金に関してはアレだが、仕事もそうだし、こういう時の勘もすごく冴えるんだぜ)
そのやり取りをしている間に霊夢の思考がまとまったようだ。
霊夢は私たちに話しかける。
「幻想郷のやつらとかかわって魔法が覚醒するなら、今はいろんな場所に言って親睦を深めてくることが先でしょうね。それを裏付けるのが紫の一言よ」
「紫さんの…「今の私じゃ力不足」ってこと?」
「そうよ。あなたは前の世界で存在が不安定になったのは「人間として大切なこと」があるかないかが関わっている。大切なことを学ぶってのはずいぶん曖昧だけど、それが魔法として形に現れるのであれば、より多くの魔法が覚醒することで、より多くの大切なことを学ぶってわけよ」
「なるほど……、では、私はどこに行けばいいのでしょうか……?」
「一概に、とは言えないけど、安全面を考えれば、永遠亭に向かうのがいいんじゃないかしら?」
「確かにあっちの方はそこまで好戦的な奴はいないから得策かもしれないな」
永遠亭…、聞きなれない場所だが、私が元の世界に戻るための手段の第一歩と考えるとわくわくせずにはいられなかった。
「ひとまず、今日はこのあたりにしましょう。お布団用意してくるから待ってて」
そう言うと霊夢は部屋を出ていった。
どことなくだが、霊夢と魔理沙の姿を見て私はエドガー、ロックを思い出した。
自我が戻った後、何もわからなかった私をただ助けてくれたロック。
私の力を必要としてくれて、また私の正体を知るための道標となってくれたエドガー。
その二人が魔理沙や霊夢にそっくり当てはまったのだ。
(きっとこの二人といれば何とかなりそうな気がする…)
そんな気持ちが芽生えつつ、幻想郷に来て2日目が終わろうとしていた。
自分の勉強不足かもわかりませんが、FFキャラで幻想入りの作品を見たことが少ないです。(某20歳児のお話は除く)
ゆえに、「ギル」はレアリティの高いお金=高いレートで取引されるという勝手な解釈をしました。
霊夢の金銭感覚はアレだけど、大事なところで戦力になる……はず