悪女が逆ハーレムを夢見るとき、生贄たちは推しのユメを見る   作:paruco

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 *あてんしょん

 主人公たち≠ユウリ・マサル
 複数主人公
 夢・腐的要素あり
 勘違い要素をふんだんに盛り込む予定
 捏造設定・特殊設定有り
 とにかくなんでも有りが大丈夫な人のみ閲覧推奨



推しの知らない物語

 その日、私は囁くように言った。

 

「推しを見に行こう」

 

 

推しの知らない物語

 

 

 事の始まりは今から何年か前のあの日。

 いつものように、趣味と推しに使う軍資金を稼ぐためだけに続けている仕事を終え、早く家に帰って溜まりに溜まったストレスを発散させるが如く推しを愛でるぞとルンルン気分で帰宅していた刹那。どこぞの夢女子なヲタクに、通り魔よろしく刺されたことから始まった。

 確かその時、その通り魔なヲタク夢女が何事かを呟いていたような気がするが、実のところ、大部分の記憶が薄れてしまっていて覚えていない。なんだって本当の自分の名前も、それこそ友達や家族の名前さえも忘れてしまっているのだから。

 ただ、印象に強かったからなのか単純にヲタクとして業が深かったからなのか推しや多少のヲタ用語に関しては覚えているという。恐ろしいね、ヲタク。

 

 それだけでも割と衝撃的だというのに、騒動はそれだけでは終わらなかった。

 なんと、次に目を開けたら見覚えのない森の中で倒れていたのだ。それも、着た覚えのないボロボロな薄汚れた白い服一枚を装備した幼児の姿で。更に言うなら、自分以外にも似たような服を来た男児と女児も居て、二人とも同じようなスペキャ顔をしているというオマケ付き。

 現状を理解した瞬間、もしかしてリアルTRPGやっているのでは、と考えてしまったのは仕方ないことだと思う。

 尚、そのあとの自己紹介の際にこの二人も私と同じ通り魔夢女の被害者だと知った。

 

 自己紹介も終え、さあこれからどうしようかと話し合っている最中、どこからともなく現れた怪しい研究員に拉致され、あれやこれやとしている間にこれまた怪しげな研究所へと連れられ、気がついた時には今のような実験体生活がスタートしていた。

 間違いなく記憶が薄れる原因は実験によるストレスですね。

 

「えっ、どうしたんだよ藪から棒に。ちなみに異議なしな」

「個人的に推しに会いに行くんじゃなくて見に行くっていう一方方向なのが良き。わたしも異議なし」

「分かる。寧ろ俺みてェなヤベェヲタクなんて存在をキバナ様に認知されるとか解釈違いすぎて死ぬ」

「それな~~~! わたしもダンデさんに認知されたら死ぬ気しかしないわ。そうなったら42A、一緒に墓作ろ……」

「おう、『あなをほる』なら任せろ」

 

 うんうん、今日も楽しそうでなにより。

 面白いことに、私たちはみんなヲタクな社畜だったらしく、キバナ限界ヲタクな男児が42A(フォートゥーエー)、ダンテ強火担ヲタクな女児が68C(シックスエイトシー)という。ちなみに私はネズ・カブ推しである。仮として使っている名前は21S(トゥーワンエス)。これは各々が此処で呼ばれている被検体番号から拝借した。

 

 あと、42Aが言っていた『あなをほる』は墓守的な意味ではなく技という意味だ。

 実は私たち、数々の実験によりポケモン化することができるようになっている。

 ただ、メタモンのように色んなポケモンにはなれない。体内に組み込まれた遺伝子のポケモンにしかなれないのだ。

 ああ、でもヒトからポケモンに変身する能力はメタモンの遺伝子が関わっているらしいけど。

 

「ってか、そもそもガラル地方までどうやって行くンだよ。68Cのテレポートって行ったことのある場所にしか行けねェだろ?」

「すまんな。夢と脳内では何度も訪れたんだけど、テレポートさんが流石に無理って言うから……」

 

 カートゥーンアニメのように半目で笑みを浮かべながら68Cはサムズアップした。

 前髪が長いからちょろっとしか見えなかったけど。

 だけどね、流石の私も何の突拍子もなく言ったわけじゃないからね。

 

「今日戦った相手がアーマーガアだった」

 

 そう、実は今日の対戦相手が、あの、ガラルのタクシーで有名なアーマーガアだったのだ! 

 なんでも、研究員たちは私たちがどこまで技を再現できるのかを調べたいらしく、ポケモン化に成功した次の日から怒涛の実戦ラッシュが始まった。昨日までは注射ばかりだったのに、ある日いきなり凶暴そうなボーマンダと対峙させられてびっくりしたよね。

 

「21Sが神だった……?」

「つまり神は虫タイプだった……?」

「ストライクを崇めよ」

 

 コロンビアポーズをとれば、二人がヒューヒューと口で言ってくれた。

 うん、そこ口笛じゃないんだね。あっ、口笛吹けないの? そっかそっか。

 一先ず、決行は早いに越したことはないと思うので、明日にはこの研究所を破壊してとんずらしようと思う。

 一応、この研究所に捕まっている他のポケモンたちにもそれとなく伝えてくれる? とお願いすれば、68Cは二つ返事で念話を飛ばしてくれた。

 

 そして次の日、私たちは予定通り脱走した。

 といっても、私たちがしたことといえば、脱出口を作るために『はかいこうせん』をぶっ放したくらいだけど。

 あとは他のポケモンたちがこれまでの恨みつらみを晴らすが如く大暴れしていたと思う。

 

 アーマーガアの背に乗って空へと飛び立った後、背後から物凄い喧騒と爆発音が聞こえてきたのは無視させてもらった。

 


 

【とある会議室side】

 

 ガラル地方には、ワイルドエリアという名の修羅の土地が存在する。

 ガラル地方の中心部に位置すし、ほぼほぼ人の手が加えられていない、ありのままの自然が広がる広大な土地。勿論、サファリパークとは違いポケモン達も純野生。何食わぬ顔で高レベルなポケモンがその辺りを徘徊しているのが当たり前……それがワイルドエリアである。

 

 何度聞いても他地方からはイカれているんじゃないかと思われているエリアだが、その実、ガラルのトレーナーからしてみれば大自然溢れる手持ちの修練にもってこいな場所、という認識でしかない。

 しかし、人の手が殆ど入っていないからこその危険があるのも事実。

 新米トレーナーが高レベルのポケモンと遭遇してしまい手持ちが全滅、などは日常茶飯事で、そこから命からがら近くのエンジンシティやナックルシティに逃げ込めればまだ良い方だが、そのまま行方不明となることも少なくない。

 また、ワイルドエリアは非常に気候が移ろいやすくそのせいで足を滑らせ……などといった事故も多い。

 自然との共存ではある程度致し方ない部分ではあるが、それでも未然に防ぐことができるならばとポケモンリーグ協会でもこれまで様々な対策を取ってきていた。

 どれもこれも決定打とまでは行かずとも、しかし数値で見れば年々被害数は軽減されており、ここいらが妥協点かと誰もが考えていた、そんな時だった。

 

「最近、ワイルドエリアの各地で倒れているトレーナーが見つかることが多いらしいんだ」

 

 ガラル地方のチャンピオンとジムリーダーたちで行われる定期会議の途中、現チャンピオンであるダンデが不意にそう切り出した。

 

「それって……そんなに珍しいことでもないんじゃない?」

「ああ、だがどうも彼らの証言からするとかなり不可解でな」

「不可解って言っても……おおかた、野生のポケモンに襲われて気絶したってオチなんじゃねぇの?」

 

 ぐっと眉間に皺を寄せるキバナに、ダンデは首を振って否定した。

 曰く、被害者は元々倒れていた場所とは別の場所にいた、と言っているらしい。中には立ち入り禁止区域で事故に遭い、重傷を負った者もいたとか。

 だが、発見された時には皆、軽傷か酷くとも中傷程度の怪我しかしていなかったという。

 ワイルドエリアでは行方不明者が多い。それは即ち、〝帰ってくる者〟が少ないということだ。

 だが、最近は倒れているトレーナーが発見される数が増えるほど、行方不明者の数が激減していた。

 それらを踏まえて考えたところ、導き出されたのは

 

「まるで、誰かが怪我を治し、敢えて見つけやすい場所に放置したようだと思わないか?」

 

 行方不明者が減るのは良いことである。これが、例えば一般的なトレーナーの善意だけの行動で、しかし騒ぎ立てられるのを億劫と思ったが故の結果ならば、彼らも手放しで喜べただろう。

 しかし、誰が、何の目的で、どういった意図をもってしてそのような行動をしているのか分からないとなると、途端に薄気味悪さと一抹の不安を感じさせるだけとなる。

 寧ろ、何が悪いことが起こる前兆ではという酷く嫌な想像までしてしまい、彼らは息を呑んだ。

 

「一応、俺もできる限り巡回するつもりだ。もし、少しでも何か情報が分かれば教えてくれ」

「分かった。オレも手が空いたらワイルドエリアに出るようにする」

「ボクも見回りを強化しよう」

 

 ナックルシティとエンジンシティは地理的に丁度、目と鼻の先にワイルドエリア位置しており、時間さえあればすぐに向かう事ができる。

 だからこそ、キバナとカブは率先して声を上げた。

 そんな二人に、ダンデは嬉しそうに笑って頷くと、それから、と続ける。

 

「これは直接的にはガラルとは関係ないんだが、どうやらここから遠く離れた場所にある、どこの地方にも属さない孤島の研究所で事故があったと報告がきている」

 

 スッと全員に詳細が書かれた書類が配布され、彼等はそれに目を通す。そして、そこに書かれた驚愕の事実に大きく目を見開いた。

 

「ちょ、ちょっと、これって」

「……本当なんです?」

 

 信じられない、と言いたげに口に手を当てて絶句するメロンの声は震え、反対に鋭い視線を投げかけるネズは地を這うように低い声だった。

 書類には件の研究所がどういった施設だったのかが記載されていた。

 表向きはポケモンの生態について研究している施設となっていたらしいが、その実、行われていたのは違法行為ばかりだった。

 遺伝子改造、異種族同士の交配、薬剤投与、そして……子供を使った人体実験。

 

「俺も信じられないが……事実らしい」

 

 ぎり、と響いた歯軋りはいくつあっただろう。

 載っている顔写真はどれもこれも年端もいかぬ少年少女ばかり。恐らく、生きていれば彼らの娘息子や妹弟と似たような年齢だっただろう。

 

「……やるせないねぇ」

 

 ポプラの短い一言に、ダンデは静かに目を伏せ、強く拳を握りしめる。

 

 資料の一番最後、関係者や被験者に関して書かれた記事には、関与している者は全員死亡した、と書かれていた。

 


 

 ガラル地方のワイルドエリアまで来たものの、ゲームにはなかった、ワイルドエリアから街への出入りにトレーナーカードの提出が必要という仕様を知り、膝から崩れ落ちたあの日から数日。

 私たち三人はといえば、ワイルドエリアで野生のポケモンたちと共にそこそこ平和に暮らしていた。

 何故そこそこなのかといえば、まあね、三人中二人が色違いポケモンで、しかも42Aに関してはガラル地方に生息していない『ミニリュウ』というね。

 まあ、トレーナーがこぞって捕まえようとするよね。

 そもそもポケモン化できるとはいえ元は人間なので、正直ボールを当てられても捕まえられない気がするが、それはそれで問題になりそうだったので、仕方なく私が応戦し、ボールは全て自慢の両鎌で真っ二つにさせてもらった。

 ただでさえ個体値でもそこそこのスピードがあるというのに、実験によって素早さがバグっている私。飼い馴らされたポケモンの攻撃なんぞ当たることもなく、ワンターンで瀕死に追い込み、手持ちを入れ替えようとしている隙に頭に乗せていた68Cの『さいみんじゅつ』でトレーナーにも眠っていただいた。

 尚、眠ったトレーナーは私たちに関する記憶を『ゆめくい』で消してから比較的安全そうな場所に放置するのも忘れない。

 流石に、眠っている間に野生ポケモンに襲われてそのまま……とかは申し訳ないしね。

 作中ではいなかった警備隊が逐一巡回しているみたいだし、きっと見つけて保護してくれているだろう。切に願う。

 

 それにしても、流石はワイルドなエリア。

 二次創作でも修羅の土地やら修羅の国やら言われていたけれど、まさかそこらかしこでトレーナーが行き倒れているとは思いもしなかった。

 もしかして道具とか落ちているのってそのせい? 

 ……深く考えるのはやめておこう。私はまだ深淵を覗きたくはない。

 とりあえず、見つけてしまったものは仕方ないと思ってそういう人たちも安全そうな場所に放置しておいた。

 次の日に見に行ったら誰もいなかったからきっと保護されたんだ。そう思っておこう。

 そうして、頭に68C、首に42Aを巻いた状態で色んなエリアを推しはいないかと探しながら走り回っては、きのみを食べ、行き倒れトレーナーを見つけては安全そうな場所まで運ぶという日々を繰り返した今日。

 

「ヒョエッ」

「……えっ、これどういう状態?」

「知らない」

 

 額から血を流し、倒れている42Aの最推しことキバナ様(42Aがそう呼べと五月蠅い)を見つけた。

 

「と、とととと、とりあえず、落ち着いて治療だァ!!」

「いやまずお前が落ち着け??」

 

 興奮してべしんべしんと尻尾を振るのはいいけど、それ下手したら『はたく』か『ドラゴンテール』になるからね? 

 きみ、攻撃特化型だから物凄く効くからね?? 

 未だ興奮覚めざらぬ状態の42Aに68Cが『めざましビンタ』を喰らわせるのを横目に、顔面600族の美貌を拝む。

 尚、技に関しては物理的に無理のある技以外は属性問わず使えるらしい。トリップ特典かな? 最強のポケモンにおれはなる! ってか。

 

「顔が良い」

「当たり前だよなァ! キバナ様だぞ?」

 

 あぁ、うん。顔面600族だもんね。うん。

 過去一番良い笑顔を浮かべる42Aには見たことないほど覇気がある。

 でも多分、私も68Cも推しを前にしたら似たような状態になるんだろうなぁ。

 刃の側面で42Aをぽふぽふと撫でながら、68Cの治療が終わるのを待つ。

 ちなみに治療には『いやしのはどう』を使っている。

 凄いよね、これである程度の怪我を治せるんだもん。私もたまにお世話になっていたりする。

 

「はい終わった~。出血のわりに怪我はそうでもなかったなぁ」

「額だからね。……じゃあ、運ぶ」

「慎重に運べよ……? 万が一、少しでも傷つけたら今日をもって俺らの友情は終わる」

「そうなって大変なのは42Aだけどね」

 

 少しでも心のメモリーに残そうと瞬きを最小限に抑える42Aは、その、控えめに言っても気持ち悪い。

 いや、まあヲタクなんてみんな似たようなものだけど、うん。

 いつも通り68Cの『ねんりき』で浮かせて鎌の上に乗せてもらう。

 刃は下向きについているから、こうしていればトレーナーが怪我をすることはないので、安心して運べるのだ。

 42Aの黒いまなざし……じゃない、無言の圧力を受けながら、なるべく慎重に運ぶ。

 放置する場所はナックルシティ前でいいだろう。

 

「それにしても、ワイルドエリアってトップジムリーダーのキバナでも怪我するくらいには危険な土地なんだねぇ」

「作中では、ただのオープンワールドだったもんな……あとキバナ様にはちゃんと様をつけろ」

 

 いつも以上に丁寧かつ手際良くキバナ様を地面に転がしていたら二人の会話が聞こえ、心の中で確かにと同意する。

 作中では、主張しまくりな巣に行きオンラインでダイマックスポケモンに挑んだり、所持しているバッチの数で野生のポケモンのレベルが変動していたりしていたけれど、そこまで危険な場所という印象はなかったと思う。

 

「気をつけないと」

「まっ、私たちなら大丈夫だと思うけどね~」

「基本、21Sがいれば問題ないよな」

「慢心だね」

 

 ゆるゆると首を振れば、二人は可笑しそうにケラケラと笑い、とりあえず一旦仮拠点に戻ろうと提案された。

 確かにこのままここに居てキバナ様が目覚めたら色々と、主に42Aが面倒臭いことになるか、と納得して特に反論することもなく仮拠点である巣に向かって走り出した。

 

 三人が豆粒ほどの大きさにしか見えなくなった時、背後でピコンッと機械が止まる音がしたことも知らずに。

 


 

【キバナside】

 

 定期会議から数日、キバナはといえばダンデに言った通りワイルドエリアの見回りに来ていた。

 本当はもっと頻繁に行ければいいのだが、ジムリーダーには色々とやることが多いため、なかなか時間を作れないのが現実。それこそ、ジムチャレンジのシーズンなどニャースの手も借りたいほどだ。

 ジムチャレンジ最後のジムリーダーであるキバナでこの忙しさならば、最初のジムを担当しているヤローなどもっと大変だろう。

 

「にしても、まさかこうも上手くいくとはなァ……」

 

 自身が操作する携帯の画面に映し出されている動画を見返しながら、キバナはギガイアスの入ったボールを指の腹で撫でる。

 

 最初、キバナはダンデの情報を元に例の助け人の行動範囲を絞ろうと思っていた。だが、発見場所は点々としており、それこそワイルドエリアの端から端までといっても過言ではないほどだった。

 流石にそれでは範囲を絞ることはできないので、キバナは一芝居打つ方向へと考えを変えた。

 助け人が助けたトレーナーはみんな気絶しているか、怪我をしているかだった。ということは、怪我をして倒れていればワンチャン出会えるのでは……? と思ったのだ。

 

 そうして、キバナの目論見通りそれはやってきた。

 

「まさか、助け人がポケモンだったとは予想外だぜ」

 

 キバナは作戦を決行する前に自身のスマホロトムに一部始終を録画するように頼んでいた。

 その映像に映っていたのは、頭には色違いのラルトスを、首には色違いのミニリュウを巻き付けたストライクだった。

 怪我を治すラルトスの手際や、迷いなくキバナを運ぶストライクの様子からして、これが初めてというわけではないことが窺える。

 ラルトスは感情を読み取るポケモンなので、恐らく己が狸寝入りだったことはばれていたはずだが、それでも彼等は構わずにナックルシティの出入り口近くまで運んだということは、自分たちに害はないからと判断したのだろうか。

 一通り流し終わり、再度繰り返す映像を止めると、丁度己を見下ろすストライクの姿が大きく映し出される。

 

「……ガラス玉みたいな眼だな」

 

 じっとこちらを睨むでも、見下すでもない、真っ黒な瞳には、何の感情も浮かんでいない。

 まるで道に転がる石や、風に揺れる木の葉を見るようなその瞳が、酷く心をざわつかせた。

 元々、虫タイプは感情表現が多いわけではなく、寧ろ岩タイプや鋼タイプのように少々わかりにくいことが多い。

 だが、どうもこのストライクはそうではないような気がする。

 

 そもそも、なぜワイルドエリアに生息していないポケモンがいるのか、という疑問もあった。

 

 キバナはガリガリと別の意味で痛む頭を一つ搔き毟ってから、スマホロトムに声を掛けた。

 

「Hey、ロトム。ダンデにこの動画と共に助け人の正体が分かったってメッセしてくれ」

「了解ロト!」

 

 三匹が去って行った方を眺めていたキバナは、やがてくるりと方向を変え、ナックルシティの方へと歩いて行く。

 本当は彼らの背を追いかけていきたいのだが、しかしこの後にはやらなければならない仕事がある。

 仕方なく、ナックルシティの門を抜けた時、あっ、とキバナは小さく呟いた。

 

「あの眼……既視感があるなって思ったら、あの時の資料に載ってた被害者のと、似てたんだ」

 




 21S(♀)

 生贄にされた挙句、ストライクにポケモン化できるようになっちゃった人。
 元々はちょっとブラックな香りのする会社に勤めるごく普通のヲタ。
 脳内では色々喋るけれど、表情筋が固まりまくったのと他二人の萌え語りの聞き専をしていたら無表情がデフォな口数の少ない子になってしまった。
 一人のキャラにぞっこんというよりはガラル地方領ネズ・カブ村の住人的なノリ。


 42A(♂)

 生贄にされた挙句、色違いミニリュウにポケモン化できるようになっちゃった人。
 キバナ限界ヲタク男。
 キバナ関連には五月蠅い。それ以外はわりと無頓着だったりする。
 暴れるとかなり強いが、如何せん実力を把握できていないので、握った拳を振り降ろしたらクレーターができたなどという案件になっては、と思い、戦闘を回避している。


 68C(♀)

 生贄にされた挙句、色違いラルトスにポケモン化できるようになっちゃった人。
 ダンデ強火担。
 ダンデ関連には五月蠅い。常にダンデに相応しい人であるために奮闘中。
 読心術も未来予知もなんでもできるけど人としてアウトだと思うことは基本的にしない。だってダンデならそんなことしないもん! 
 今回は回復ポジ。


 チャンプとジムリーダー

 おや ワイルドエリアのようすが ? 
 研究所の事故()は色々ときな臭そうだとは薄々感づいているが、そもそもガラルは関係ないのでとそこまで重要視はしていない。
 しかし被害者のことは本気で悔やんでいる。
 だがそうも言ってられないかもしれない。


 キバナ

 ヤベェ問題に片足突っ込みかけてるトップジムリーダー。
 既に運命がロックオンしている、かもしれない。



 *次回あるかもしれない予告

「待って。今、推しに認知された喜びと推しに認知されてしまったことの解釈違いに内なる己が全面戦争している」
「つまりどちらにせよ、待っているのは推し()
「ヤベェな、これ、死んだわ」
「オレが……ッ、オレが、お前らを、護ってやる! だから、だから……そんな悲しいこと言うなよ! なあ!」


 気が向いたら書きます。

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