ハッピーシュガーライフ future life 神戸あさひの原材料 作:しゅが
松坂さとうや神戸しおとは異なり普通の家で育った少女、宮崎すみれ。
なにをやってもうまくいかないすみれは、
誰かの真似をしながら生きてきた。
少しでもみんなに近づけるように。
すみれも高校生になりいつものように、みんなと同じようにバイトを始めるが
やはりうまくいかない。
そんななか彼女は松坂さとうと出会い、初めて自分で好きになれる人を見つける。
ハッピーシュガーライフ3巻で活躍した宮崎すみれちゃん=すーちゃんの過去と、4巻~8巻の裏でのすーちゃんの心情が描かれ、前作『神戸あさひの原材料』
ではかけなかったすーちゃんの想いを補完します。
「すみれおはよう」
「・・・おはよう」
「家ではそんなでもいいけど、外では笑顔で元気よく挨拶しなさいよね。
すみれってぬけてるところ多いんだから、愛想くらいよくないと。」
そうだよね。
私ってバカでずっとふてくされててうっとおしいよね。
そう言おうとして私はやめた。
「・・・わかってる、気を付ける。」
「ん。ほら、朝ごはん冷めないうちに食べなさい」
「いってきます」
私は学校まで電車で通っている。
正直、だるいし疲れる。
「ん~・・・。」
眠いので椅子に座って寝てしまいたいが席はすべて埋まっていた。
「ねぇねぇ、見てよこれ」
「わーかわいい!っあ!これ今はやりの・・・」
「そうそう!どこのお店も売り切れてて買うの大変でさ~」
そんな中椅子に座り楽しそうに話してる女の子達がいた。
見てよと言った女の子の鞄を見ると小さなライオンのぬいぐるみのようなものがついている。
へぇ。
今はあれが流行ってるんだ。
スマホを取り出して調べてみるとすぐにあのぬいぐるみのことが出てきた。
「帰り探してみようかな」
学校につくと女子グループから声をかけられた。
「あ、宮崎。おはよー。」
「おはよう。」
何となく挨拶をして何となく話す。
それが楽しいとは思わないし、はっきり言うとつまらないが、ちゃんとしないといけないこと。
わたしは少しでもまわりのひとと同じでいるようにしないといけないから。
「それでさ~」
「うん・・・」
適当に話を流していると他の子達の鞄にも朝見かけたぬいぐるみがついていた。
(やっぱりはやってたんだ。)
学校が終わり私は学校近くのショッピングセンターによった。
朝見かけたあのぬいぐるみを探すために。
なんとなく歩いて探していたが、どこも売り切れてると聞いていたのにすぐ見つかった。
しかもたくさん置いてあった。
入荷したばかりなのかな。
だとしたらラッキーだ。
私はすかさずひとつ棚からとりレジに出した。
「ありがとうございます」
さっきのぬいぐるみを買い終えた私は
フードコートでさっそくそれを開封した。
・・・普通だな。
青色の毛でおおわれたぬいぐるみをまじまじと見てみるとやっぱり普通だ。
どちらかというとこのぬいぐるみのとなりに少しだけおいてあったピンクの熊のぬいぐるみのほうがかわいかったなあ。
まぁ、かわいいとは思うけどそんなにいいのかなぁ、これって。
・・・いや、みんながかわいいっていうんならこれはかわいいんだろうな。
やっぱりわたしはおかしいんだな。
「またこんな点とって。勉強ちゃんとしなかったんでしょ」
「・・・勉強したよ」
「嘘言わないの。勉強したならこんな点とるわけないでしょ」
私はいつもテストの点が低い。
それは昔から変わらなかった。
そしてそのテスト用紙を持って帰ると母親はイライラしながらわたしにだらだらと説教をするんだけど、仕方ないじゃん。
何回同じことを読んでも、練習しても全然覚えられないんだよ。
授業中に名前を呼ばれて、算数や数学の式を解けと言われるのも苦痛だった。
全然わからないのに呼ばれても答えられるわけないのに。
またみんなに指を指されて笑われものになるだけなのに。
体育もおなじくくらい苦手。
「みてよ、まだあの子あんなところにいる。」
「おっそー」
グラウンドをみんなで走ったらいつも最後にゴールするのは私だった。
がんばれがんばれってきこえてくるけどどうせほんとはからかってる。
そんな私を見てある女の子は私にこう言った。
その子はクラスでは人気者だった。
なんでもできるしかわいいし。
だから、なんにもできないじみなわたしがうっとおしかったんだろうな。
「あなたってなんにもできないのね」
さすがにその子は先生にあとで注意されてたけど、わたしは意外と何も感じなかった。
なにもできないのは、自分が一番よくわかっているから。
でも、どうしたらいいの?
どうしたらみんなとおなじになれるの?
・・・そうだ、みんなと同じものをもてばいいんだ。
みんなが好きなことを私も好きと言えばいいんだ。
私でもできる、みんなとおなじこと。
なにもできない私を見た両親は神頼みで救おうとしたけど、そんな水晶やおまじないなんていらないよ。
・・・これが、私がみんなの真似をするようになったきっかけ。
高校生になっても私のそんな生活は変わらなかった。
ただみんなの真似をする生活。
ただなにもできないバカな自分を笑うみんなの前で無理して笑う生活。
高校生になるとみんなバイトをしていた。
正直、そんなにお金は必要じゃないけど、みんなしてるなら私もしないといけない。
私はさっそくバイトを探した。
まず、コンビニの店員からやってみた。
みんなバイトをしてるけど、その中で一番多かったから。
面接で聞かれた動機は、ネットで調べた動機を適当に伝えただけだったけどすぐに採用された。
なんだ、簡単なんだ。
なんて思っていたけど実際はとても大変だった。
まず、レジで商品をいくつももってきたお客さんがいたら何個か商品をレジでと押し忘れることが何度もあった。
それだけじゃなくて、コンビニはやることが多すぎる。
だって、レジだけじゃなくて唐揚げとかの廃棄だとか、コロッケの調理だとか、棚の整理だとか、ゴミだしだとか。
そんなのとても覚えきれない。
「宮崎さんまた間違えたの!?何回目よ!」
「・・・すいません」
結局5日ほどでやめてしまったけど、誰もそれをとめようとはしなかった。
「あら、そう。残念ね。」とだけ。
「あの子いたら余計な仕事増えて大変だったのよ」
そんなこと言われた訳じゃないけど、なんだか言われてる気がする。
他のアルバイトも同じだった。
覚えきれないし、動作は遅くてたらたらとしてるし、なにより仕事について行くのが精一杯で愛想のよさなんて考える暇もない。
他のバイトは全部初めて1日か2日くらいでやめてしまった。
こんなにめんどくさいならバイトなんていいかなぁ、もう。
そんなことを考えながらぼーっと町を歩いているとどん、と音がなった。
見てみると男の人が何人かいた。
派手な見た目の人たちで、わたしのことにらんでる。
あーあ、やってしまった。
「おい、あやまれよ!いってえな~」
「・・・そんないたくないでしょ」
「あ?」
「なんだこいつ、しけた顔してつまんなそうなやつ」
「つまらなそうでわるかったですね」
そんなの言われなくてもわかってる。
「お前、なめてんのかよ!」
あ、殴られる。
「ごめん、お待たせ!」
ん?
「あ、松坂さんだ!」
さっきまであんな怖いおにみたいな顔をしてた男の人たちが急にとろけた顔になっていた。
どうやらみんな、今やって来た松坂さんという人と待ち合わせしてたらしい。
その人をみて、私は胸がどくっとした。
こわいからじゃない。
その逆。
とても綺麗な人だったから。
さらさらの長いピンクの髪。
丸い大きな目。
胸も大きくて。
・・・綺麗な人。
もしかしたら、これが好きってことなのかも。
一目惚れなのかな。
これが私が初めて、自分で好きになった人との出会いだった。
それから私は毎日さとう先輩に釘付けだった。
最初にさとう先輩とあった日、先輩は高校の制服を来てたからネットで子の辺りの高校の子とを一晩かけて調べて牧巣原高校に通っていることを知った。
最寄り駅で待っていると、さとう先輩が見えた。
家がどこかまではまだわからないけど、この辺にすんでるのかな。
どんな家庭環境なのかな。
隣にいるショートヘアーの女の人は誰なんだろう。
あの人も綺麗だなぁ。
もっと、さとう先輩のこと知りたい。
しばらく会話を聞いてたけど、
この二人バイト仲間みたい。
働いてるお店はキュアアキュートといった。
客として入ってみてびっくり、メイド喫茶。
そこにいるお客さんの男の人はみんなメイドに釘付けだった。
お客さんの会話を聞いていると、アニメやゲームの話が多かった。
オタク、という人かな。
この人たちは自分の好きなものがちゃんとあるんだな。
そう考えていると先輩が出てきた。
熊耳や熊の手なんてつけててもやっぱり綺麗だ。
「さとにゃーん!!」
多分さとう先輩のことだ。
気持ち悪い呼び方だなぁ。
でも、そう叫びたくなる気持ちはわかるよ。
あんなに綺麗でキラキラした人、好きにならない方が変だもん。
店を出た私はさとう先輩が店から出てくるのを待った。
早く出てこないかなぁ、先輩。
キュアアキュートの連絡先を控えていると気づけば
夜8時過ぎ、先輩は店から出てきた。
さとう先輩だ!
私は先輩のあとを追いかけた。
先輩の家までいかなくちゃ。
それでもっと先輩のことを知らなくちゃ。
さっそく私は先輩のあとを追う。
・・・あれ?なんだろう。
けっこう複雑な帰りかただなぁ。
けっこう遠くから帰ってるのかなぁ。
バスを使ったり、電車をつかったり、狭くて暗い道をとおったり。
「あっ」
そうしているうちに先輩はいなくなっていた。
しまった。
それから私は何日も先輩の帰りについて言ったけど、駄目だった。
いつも気づいたらいなくなっている。
というか、いつも帰り道が違う。
さすがの私も何日も先輩を追っていればそれくらいは理解できた。
となると、ただ追いかけるだけじゃ先輩の家がどこかはわからない。
それに、こうして影から先輩を見てるだけじゃ駄目だ。
初めて自分で好きになれた人なんだから、もっとあの人のことを知りたい。
お客さんとして店にか用だけじゃわからないこといっぱいあるし、もっと先輩と仲良くなりたい。
もっと近くで先輩をみたい。
もっと近くで先輩を感じたい。
・・・そうだ。
もう一度バイトをしよう。
キュアアキュートで。
これまでのバイト先はアルバイトの住所がかかれた履歴書を記録として残してあったし、あそこで働けばさとう先輩の住所やいままでのことがわかるんだよね。
なら、もう一度頑張らなきゃ。
きっとキュアアキュートも大変なんだろう
けどこんな私でもさとう先輩と仲良くなるためなら、きっとがんばれる。
[
さとう先輩との関係はどんどんよくなっていった。
最初にさとう先輩と一緒の日になって初めて挨拶をした日は胸がばくばくして仕方なかった。
それをさとう先輩は初日ゆえの緊張だと思ったのか「すーちゃん。そんなに構えなくても大丈夫だよ?なにかあったら私が助けてあげるから」
それから私はやっぱりミスばかりだった。
でもその度に先輩は私のフォローをしてくれた。
今までのバイト先の人みたいに嫌なことひとつ言わないで助けてくれた。
初めて、バイトを続けたいと思えた。
幸せだ。
だってこんな近くでさとう先輩を見れて、こんな近くでさとう先輩の匂いを堪能できて、
さとう先輩をこんな近くで感じられるんだから。
毎日バイトが終われば、私は必ずさとう先輩のロッカーを開けてなかを見ている。
先輩の服、先輩の髪飾り、先輩の靴下、どれもかわいいしいい匂いだなぁ。
・・・あ、しまった。
靴下によだれがついちゃった。
乾かさなきゃ。
先輩の靴下をドライヤーで乾かしていると、私はふと先輩のことを思い出していた。
先輩、最近地味な下着多いなぁ。
先輩の着替えてる時の写真を何日分か見てみたけど、やっぱり地味なんだよね。
なにかあったのかな?
先輩だって女の子だもん。
悩みだってきっとある。
先輩かわいいからもしかしてストーカーとかかもなぁ。
最近ストーカーにつけられてるかもってしょうこ先輩に話してたし。
それなら、私が助けないと。
それで、もっと仲好くなるの。
・・・なんて、考えすぎかなぁ。
明日も頑張りましょうね、先輩。
でも、そんな幸せな日々は長く続かなかった。
「私ちょっと怒ってるんだけど」
「・・・あ、ご、ごめんなさい!
嫌いにならないでくださ・・・何でも、なんでも言うこと聞きますから・・・!」
さとう先輩が、わたしが先輩のこと調べてるのに気づいた。
先輩は私にバイトをやめてほしいと言った。
だから私はその日すぐにバイトをやめた。
考える時間がほしいから、落ち着いたらまた連絡するからって。
まさかさとう先輩があんなに怒るなんて。
どうしよう。
・・・いや、大丈夫。
さとう先輩なら。
優しいさとう先輩ならきっと許してくれる。
だから今は我慢しなきゃ。
先輩が許してくれるまで、ずっと。
・・・でも、つらいよ。
今まで当たり前に感じられてた先輩を感じられないのがこんなに辛いなんて。
辛いのはそれだけじゃなかった。
「あんたなんでも人の真似だよね?ストーカー?キモいんだけど。」
その言葉をきっかけに私は学校いじめのターゲットにされた。
机の上をカッターでズタズタにされた。
体育のあと制服を泥々にされた。
・・・そんな地獄がもう数ヵ月。
あれからさとう先輩からの連絡は一切ないし、わたしから連絡してもさとう先輩は出てくれない。
今日は特にひどい。
体育倉庫につれられ、両腕を押さえられながら何回も殴られた。
ドン、ドン、ドン
何回殴られたかわからない。
ふと気づけばわたしのまわりは赤黒くなっていた。
「げほっ、はぁ はぁ・・・」
「こいつ意外とタフだね~」
「あんたのそのしけた面にはあたしらうんざりしてたのよ。
話すこともなんでも人の真似。
真似。真似。真似。」
いじめグループの一人がわたしのスカートに手をかけた。
やめて。
どうして私がこんな目にあわないといけないの?
私はストーカーなんかじゃない。
私はたださとう先輩の写真を握りしめながらたださとう先輩を待つことしかできなかった。
私は信じてますから。
いつかさとう先輩が迎えに来てくれる。
そう思うだけで私はこの痛みに耐えることができる。
きっと先輩が今までみたいに助けてくれる。
手をさしのべてくれる。
「・・・ん?」
いじめグループの一人が私のかばんに目を向けた。
「なにこれ?ケーキ?あんたかわいいのもってるじゃん?これも真似?」
「あぁほら、たしかこいつのバイト先の先輩の。」
「ふーん・・・」
ぶちっと私が今まで集めて、ないものは何日も街中を探して探して、どうしてもないものは作り方を調べて、何日もかけてつくって、そうして集めてきたさとう先輩とお揃いのフェイクスイーツが引きちぎられた。
そう思った瞬間、フェイクスイーツを踏みつけ始めた。
それも、何度も。何度も。
ぶち、ぶちとそれは潰れていく。
まるで、落としたケーキみたいに。
それを見てわたしのなかでなにかがプツリと切れた。
「うわあぁぁぁぁぁっ!!」
女子たちの手を振りほどき、私は
近くにあった鉄パイプを手に取る。
「ちょ・・・あんた!」
ボゴッ
「すみれ・・・なんてことしたの。」
今私は母親と面と向かって話している。
あのとき先輩とお揃いのフェイクスイーツをめちゃくちゃにされた私はあの女を鉄パイプで殴り付けてしまった。
いじめグループの女は致命傷ではなかったが重症をおい、私はその日のうちに停学処分となった。
「悪いのはあの人たちだし」
「ならお母さんやお父さんに相談すれば良かったでしょ。本当にバカな子・・・あっ」
「やっぱりお母さんもわたしのこと」
「もういいわ、あんたが殴った子の両親とは私が話してくるから、あんたは家にいなさい。」
なんで私が悪者になってるんだろう。
私は悪くない。
たださとう先輩と仲良くなりたかっただけなのに。
母親も父親も妹ばかり可愛がって、バカで鈍い私のことなんてどうでもいいんだ。
・・・やっぱりさとう先輩しか、私のこと愛してくれない。
だって、先輩いってくれたもん。
「私だけがすーちゃんを愛してあげる」
・・・明日、キュアアキュートにいこう。
それでさとう先輩に会うんだ。
そう思っていたとき、携帯の着信音がなった。
携帯の液晶に写し出された名前を見た私の目からは涙が流れ落ちていた。
そこには、「さとう先輩」の名前が。
あぁ、やっと迎えに来てくれるんですね。
私はすぐ通話ボタンを押した。
「さとう先輩!私ずっと待ってて」
「すーちゃん、話聞いて?」
「あ・・・すいません。」
「すーちゃん、たしか妹がいたよね?その妹とすーちゃんってパスポート持ってるよね。それを持ってきて。」
パスポート?なんのために?
「え?なにに」
「いいから持ってきて」
あのときと同じか、それ以上に冷たい声だった。
本当にさとう先輩なのか疑ってしまうような、低い声。
凍えてしまいそうな冷たい声。
なんでパスポートが必要なのかはわからないけど、とにかく持っていかないと。
やっとさとう先輩から連絡が来た。
しかも私を必要としてくれてる。
このチャンスを逃したら、もう二度と先輩から連絡は来ないかもしれない。
それに、私のことなんてなんとも思ってない家族なんてもうどうでもいい。
パスポートをもっていくなんて簡単なこと。
それだけでさとう先輩にあえるなら。
わたしは妹の机からパスポートを取り出し、家を出た。
あの電話のあとさとう先輩からメールが来た。
時計を見るともうすぐ約束の時間。
今日の夕方、ここで先輩と待ち合わせ。
やっとさとう先輩に会える。
やっとさとう先輩に触れられる。
やっとさとう先輩を感じられる。
・・・あ、先輩。
甘い甘いいい匂い。
久しぶりに見るさとう先輩。
あれ?髪型変えたんですね。
あの長い綺麗なピンク色の髪をまとめて帽子に納めてるし、服も少しじみ。
それに・・・両手を怪我してる。
手の甲には包帯が巻かれてて、よくみると少し血がにじんでる。
なにかあったのかな?
いや、それよりも今は先輩にパスポートを渡さないと。
「先パイっ!お久しぶりです」
わたしは満面の笑顔だったと思う。
・・・あれ?なんだか反応が変。
先輩、どうしてそんな目で私を見てるんですか?
「先パイ私ずっと我慢して
先パイの事待ち続けて」
「うん、それで?」
・・・なんで、そんなに冷たい目なの?
私を助けに来てくれたんじゃないの?
でも、先輩にパスポートを渡さないとまた嫌われる。
仕方なくパスポートを二つ渡した。
「ありがとねすーちゃん」
さとう先輩は私に背中を向けて歩き去ろうとした。
「あのっ、あのあの」
「・・・」
「次、いつ会えますか・・・?」
「私が連絡するまで、待っててね」
また、戻ってしまった。
さとう先輩を待ち続ける日々に。
でも、また連絡をしてくれるといっていた。
・・・ということは。
よかった、わたしのこと嫌いになった訳じゃなかったんだ!
私は嬉しさのあまりスキップをしてしまった。
そうだ。
お店を見てみよう。
さとう先輩にフェイクスイーツをプレゼントして、笑顔になってもらうの。
さとう先輩と美味しいお菓子食べて、
一緒に楽しいことをして、一緒に笑うの。
そしてもっとさとう先輩と仲好くなるの。
さとう先輩さえいればいい。
さとう先輩がいれば学校の人も、家族も、バイト先の人たちも必要ない。
今はまだ気持ちの整理をできてないだけ。
さとう先輩はきっと私を許してくれる。
私だけを愛してあげるといってくれたんだから。
さとう先輩がいないと私は生きていけないから。
さとう先輩とまた一緒にいられる日が来る。
そう思うだけで、私は幸せ。
・・・また、連絡してくれますよね?
家に帰ってから、私はさとう先輩を少しでも感じられるように
さとう先輩のまねをして集めたものを全てとりだし、
私はこれからのさとう先輩との幸せな日々を想像した。
きっと、私はさとう先輩と幸せになるんだ。
明日からは停学も解ける。
学校にいこう。
さとう先輩と一緒にいても、迷惑かけたくないから、普通でいなきゃ。
そう思っているうちに朝日が窓から差す。
これからの私の幸せを祝福してるような眩しい光。
私、これから幸せになるよ。
「先日のマンション放火事件の続報です」
「同マンションの屋上から転落死したとみられるのは松坂さとうさんで松坂さとうさんの叔母に当たる人物が関与していた疑いがあり―」
ズルッ