やはり東方の青春ラブコメはまちがっている。 作:セブンアップ
ついでにご報告すると、俺ガイルとかぐや様のクロスを作成しました。そちらもよろしければどうぞ。
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では本編へ。
「えぇっ!?八幡、出かけるの!?」
「…1週間前にそういう話になってな」
「相手は!?相手は誰!?」
「あれだ。博麗と博麗の愉快な仲間達と、新聞部のやつだ」
中間試験も終わり、今日は休日の土曜日。昨日の夜、霧雨から電話がかかってきたのだ。
『八幡!明日遊びに行くぞ!』
なんとまぁ分かりやすいお誘いだこと。というのも、先程伝えた通り、1週間前にサイゼでそういう約束をしていたからだ。しかし予想通り、封獣は何一つ納得していない様子だった。
「絶対ダメ!あんな女達と遊びに行くなんて許さないから!」
「ぬえ、落ち着け。比企谷はお前の恋人でもないだろう。束縛し過ぎだ」
ナズーリン先輩が封獣を宥めようとするが、それは逆効果でしかなかった。彼女を更に荒立ててしまう。
「私の!私だけの八幡なの!他の女が軽々しく一緒にいていいわけないだろ!」
「私とご主人がなんとかする。君は早く行ってくれ」
「…すいません」
ナズーリン先輩と寅丸先輩が封獣を抑えている間に、俺は命蓮寺から出ていく準備を始める。しかし、封獣は二人を振り解こうと暴れだす。
「離せよ!待って、待ってよ八幡!」
「…夜には戻るから。そんな世界の終わりに直面するような顔すんなよ」
俺はそう言い残して、命蓮寺から出て行く。部屋からは、封獣の悲痛な叫び声が聞こえてくる。
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現在、午前11時半。
場所は変わって、酒々井プレミアム・アウトレット。千葉県の酒々井町にある大規模なアウトレット。霧雨に集合場所を尋ねたところ、ここだという。
「なんでこんなクソ混んでる時に…」
繰り返して言うが、今日は土曜日。休日となれば、平日以上に人が賑わうのだ。女子ってなんでこう混んだ日を狙って遊びに行きたがるんだろうか。
「おーい!はちまーん!」
どうやら、霧雨が来たようだ。霧雨だけでなく、マーガトロイドや博麗も一緒のようだ。
「…なんであんた制服姿なわけ?」
そう。今の俺は、制服姿である。命蓮寺に泊まる際、荷物を出来る限り少なくした結果、外出用の私服は命蓮寺に持って行ってなかったのだ。命蓮寺にいる間は、貸し出されている着物を着て過ごしているのだ。
とはいえ、そんなことを博麗や射命丸に馬鹿正直に言えば、色々面倒なのだ。なんせ、紅魔館や封獣が絡んでいるからである。
「…あれだ。さっきまで学校に行ってたから、そのまま来たんだよ。生徒会の用事だ」
「…そう。ならいいけど」
「みなさーん!お待たせしましたーっ!」
後から遅く、射命丸が到着。こちらに駆け寄ってくる。
「あやや?なんで制服?」
「さっきまで学校行ってた。以上」
「へー……生徒会の用事とかですか?」
「まぁそうだ。…それで、こっからどうすんだ?」
時間的には昼飯でもいいだろうし、少しどこかに寄ってからってのもありではある。
「やっぱりアウトレットに来たなら、服とか靴だろ!」
「なんで女子ってこうお洒落したがるのか分からないわね」
「今の世の中、お洒落は必須条件ですよ!」
「そういうものなの?」
「まぁ、博麗はお洒落とは程遠い存在……ってちょっとタンマ。なんで笑顔で俺にグーを見せつけてるの?」
博麗さんはすんごい笑顔でこちらにジリジリ詰め寄ってくる。しかし、こめかみをピクピクさせ、博麗の右拳は震えている。
「あんたにだけは言われたくないと思ってね」
「…本当、貴方たち仲良いわね」
「「仲良くない(から)」」
「ほら息も合う」
「息合わせてんじゃないわよ。祓うわよ」
「理不尽だろこの暴虐の巫女」
「あ?」
「ひぃっ」
怖い。怖いよこの子。やっぱいつか俺暗殺されそうで怖い。暴虐の巫女じゃなくて暴虐の暗殺者だろ。
バーカ!博麗のバーカ!
「…で、最初はどこに行きましょうか」
「とりあえず少しだけ服屋さんに寄って、それからお昼ご飯でいいんじゃないですか?」
「魔理沙。今日の私のご飯代、魔理沙が出してくれるんでしょ?忘れてないわよ」
「ちっ、覚えてたか…」
そんなこんなで最初に向かう店になったのは、服屋である。女子が出向く店ランキング1位と言っても過言ではない。多分、男子が出向く店ランキング1位でもあるだろうけど。
この間のように、金がない博麗と、服に興味のない俺は店の前で彼女達を待っている。
「…ねぇ」
「ん?」
「なんであんた制服なわけ?」
おっと何これデジャヴ?ていうか、ついさっき同じような質問してなかったかお前。
「だから、生徒会の用事……」
「嘘でしょ。それ」
「はっ?」
「生徒会の用事なんて嘘。本当は私達に何か隠してるんでしょ?」
「…根拠は?」
「ない。単なる勘」
「勘かよ」
こいつ本当凄ぇ鋭い勘をしてる。普段はガサツで男子が慄く暴虐っぷりを見せているが、頭がキレるやつではある。それに霧雨から聞いたところ、こいつの勘はとてつもなく優れているらしい。
勘一つで探し物を見つけたり、人探しをこなすことが出来るらしいのだ。そこまでいくと、超能力者レベルだ。
「もう一つ。その隠し事には封獣ぬえが絡んでる」
ほら。何のヒントも与えていないのに的確に言い当てる。博麗の巫女改め、博麗の超能力者という二つ名に改名してみてはどうだろうか。
しかし、勘は勘。根拠がなければ、俺は否定出来る。
「あんたが隠してる理由。私達に話すことで、ややこしいことが起きるから。違う?」
この子怖いガチ怖い。俺の心の中を読んだのかっていうくらい、的確に言い当ててくる。そんな博麗に、俺は動揺を隠し切れなかった。
「…その表情。当たりっぽいわね」
「お前の勘怖ぇよ。エスパーかよ」
「巫女を舐めるんじゃないわよ」
もうこれからこいつに隠し事一つ出来ねぇや。
俺は観念して、今までの経緯を博麗に話し始めた。話を一通り聞き終えた後、博麗は溜め息を吐き。
「あんたって結構面倒な女に絡まれるのね」
「…そうだな」
「あんたの境遇を私は完全に理解出来ないし、肯定することも否定することも出来ない。私とあんたじゃ色々違うからね。……けどもし、本当に辛くなったら、アリスや魔理沙、なんなら最悪私でもいい。話しなさい。話すだけでも、だいぶ心にゆとりが出来るから」
「博麗……」
「…それくらいなら、私だって聞いてあげてもいいから」
博麗は優しげな笑みを見せてそう言った。普段の博麗とのギャップがあるせいか、少し見惚れてしまった。彼女も、こんな風に誰かに優しく笑うのだと。…直接言ったらしばかれるだろうけど。
今の一言だけでも、心に少し余裕が出来た。こいつのことを見直す必要が…。
「あっでも、私に相談する時は相談料1500円ね」
「え、金取るの?」
「当たり前よ。世の中甘くないのよ。私が善意で聞いてあげるって言ってるんだから金くらい払いなさい。そこらのおじさんでも話すだけで金は払うと思うわよ」
ないな。前言撤回だわ。
こいつやはり金の亡者でした。暴虐の巫女、金の亡者。物騒な二つ名が付けられる運命である博麗霊夢は、いつになったら優しくしてくれるのでしょうか。
「…博麗」
「ん?何かしら」
「…ありがとな」
「えっ気持ち悪い」
んー、何が正解か分からんくなってきたんだけど。笑い返すわけでもなく照れるわけでもなくマジ真顔。
え、これ泣いていいの?往来の場で醜く泣き叫んでいいの?そのうち店員さんに連れて行かれるけど大丈夫?
「冗談よ。お礼なら素敵な賽銭箱に金を入れてくれればいいわ」
「…相変わらずだな」
この我を貫き通す姿。博麗らしいと言えば、らしいかも知れない。俺からすれば、そんな彼女は嫌いじゃない。
そんな思いに馳せていると、買い物を済ませた霧雨達が退店してくる。
「おーっす。待たせたな」
「霊夢さんはともかく、八幡さんは買わなくていいんですか?」
「まぁ欲しいものがないしな。…そろそろ昼飯時だが、どうする?」
ケータイで時間を確認すると、既に12時は回っていた。
「私はどこだっていいわよ。魔理沙が奢ってくれるしね」
「少しは遠慮ってものしろよなー」
「フードコートがありますし、そこで済ませますか?」
「そうね。そうしましょう」
満場一致でフードコートに決まった。フードコートに到着し、適当に空いてる席を見つけて確保する。
「今の時間帯だとどの店も混んでるわね…」
休日の、しかもお昼真っ只中だ。席を確保出来たこと自体、奇跡のレベル。
「俺は決めたから、先買いに行ってる」
「八幡さんは何にするんですか?」
「ラーメン」
そうして、俺はフードコートに並んでいるラーメン屋へと向かった。
ここには結構有名なチェーン店が揃ってる。その中で俺が食べるとすれば、好物のラーメンだろう。
「にしても、やっぱ人が多いな…」
「そうね。人混みになるところに来るんじゃなかったわ…」
「まぁ休日ですし、仕方ないですよ。お嬢様」
「そうだな……って…」
待て待て待て待て摩天楼。なんでこの人らがここにいるのん?
俺より背が小さく、俺の姿を捉えた紅い瞳を携えた人間。そして隣には、仕事を共にしたメイド。
「レミリアお嬢様…。それに十六夜…」
「久しぶりね、八幡。元気にしてた?」
何故か、紅魔館の主人のレミリア・スカーレットお嬢様と、十六夜咲夜がフードコートにいた。
「なんでここに…」
「なんでって、別に休日に外に出ることになんら不自然ではないでしょう?偶然よ」
「…運命操れる人間が偶然って言うには、ちょっと妙だと思うんですけどね」
「あら心外。単純にショッピングを楽しみに来ただけよ。ねぇ、咲夜」
「はいお嬢様。…それより、八幡は誰かと来ているの?」
「…まぁあれだ。いつものあいつらプラス新聞部のやつだよ」
「あぁ…」
同じクラスである十六夜は、すぐに理解した。
「ていうか、フランドールと紅は?」
「美鈴達ならおもちゃ屋にいるわ。フランお嬢様の付き添いでね」
あの狂人妹もここにいるのか。これは、ちょっと面倒くさいことになったぞ。
「ねぇ八幡。よければこの後、私達とデートしましょうよ。久しぶりに会ったのだし、その後紅魔館でゆっくり話がしたいわ」
「や、たかだか一週間ちょっと会ってないだけじゃないですか。ていうかそれ、絶対帰す気ありませんよね」
「当たり前じゃない。貴方をなんで帰さないといけないのよ。私と貴方の運命は、二人で一生を共にすることよ。そのための準備も行わなければならないのだから」
「いや、怖いし遠慮します。ていうか、博麗達と一緒にいるので」
危ねぇよこの人危ねぇよ。何?帰す気ないってあれか?俺監禁されるの?紅魔館って地下部屋あるし、割とガチであり得そうなんだけど。
「ツレないわね。まぁ、そんな八幡も好きなんだけれど」
フランドールといい、レミリアお嬢様といい、なんで俺の周りの女子はよく分からんことで好感度が上がってるの?俺そんな好きになるようなことはしてないぞ。
「まぁ、その気になれば貴方を連れ去ることくらいは出来るし、別にいいんだけれどね」
聞きましたかみなさん。この人隠さずに連れ去るとか言いましたよ。やっぱ危ねえよ。
「次の方どうぞー」
前の人が頼み終えたので、次は俺が注文する。ここは無難に、普通のラーメンでいいだろう。
会計を済ませて、出来上がったらアラームで知らせてくれる機器を渡される。
「じゃあ俺席に戻るんで」
「そう。またね、八幡」
レミリアお嬢様達と別れて、俺は自分の席に戻る。
あぁ怖かった怖かった。危うく俺捕食されるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ。
俺は席に戻って、ラーメンが出来上がるのを待つ。俺と、何故かマーガトロイド以外のみんなは、それぞれ違う店に出向いたようだ。
「…昼飯は?」
「あまりお腹が減っていないから」
「そうか…」
「そういえば八幡、さっきの女達は誰だったの?一人うちのクラスもいたようだけど…」
さっきの女達……あぁ、紅魔館組の連中か。
「まぁあれだ。学校の先輩だよ。生徒会関係じゃないけど、まぁ知り合ってな」
「にしては、少し距離が近過ぎたように見えたけど。特にその先輩が」
「…俺もよく分からん」
「なんだなんだ?何の話してるんだ?」
マーガトロイドと話していると、霧雨達が戻ってくる。
「…吸血鬼って怖いよねって話だよ」
「は?ついに頭の中が爆散したの?」
知らん。俺も何言ってるか分からん。
すると、そこそこな音量でアラームが鳴り始める。ラーメンが出来上がったという知らせだ。俺はアラームを止めて、席から立ち上がる。
「出来たから行くわ」
俺は先程のラーメン屋に戻り、注文したラーメンを受け取る。うむ、やはりラーメンとは食欲をそそるいい料理だ。
「おっ、ラーメンを頼んだのか?」
「まぁな。じゃあ、先にいただくわ」
俺は手を合掌させ、心の中でいただきますと呟く。まずスープを軽く飲み始める。次に麺を少量、啜り始める。
そんな最中、博麗達のアラームも鳴り始める。
「おっ、出来上がったみたいだぜ!」
「私のも出来たようね」
「私もです!」
彼女達は自分達が注文した店に戻り、そして出来上がった料理を持ち帰ってくる。
博麗は蕎麦を、霧雨はオムライスを、射命丸はカツ丼だ。いただきます、と手を合掌させて、食事を始めた。
「八幡さん。もし罪を認めるなら、このカツ丼を食べさせてあげてもいいですよ」
「やっぱり八幡、何かやらかしていたのね。私には分かっていたわよ」
「八幡も大概なワルだぜ」
「あの、急に刑事ネタぶっ込んで来ないでくれる?後やっぱりってなんだやっぱりって。俺は至って真面目に生きてる人間なんですが」
「は?こんなやつが真面目に生きてるなんて世も末ね。退治しないと」
えっ何この状況。急に何かやったって前提で白状しろって言われるし、なんか目の前の巫女めっちゃイキイキして手をパキパキ鳴らしてるんだけど。
「やだ怖い。帰っていい?」
「いいわよ。還してあげる」
「なんか意味が違うと思うのは俺だけ?」
「あはははっ!」
「ふふふ……」
「いや笑ってないで止めて?」
と、このランチタイムは終始、俺が揶揄われ続けるのであった。博麗、俺はお前を許さんからな。いつか罰が降るんだからな。
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昼飯を食べ終わると、俺達は再びショッピングを始めた。といっても買っているのは射命丸や霧雨、時々マーガトロイドで、俺と博麗はただただ見ていただけだった。
ただそれだけでも、今日という一日は、決して退屈というわけではなかった。
そんな充実した時間を過ごし、外に出ると、空は既に夕焼けの色と化していた。
「今日は楽しかったぁー!やっぱこのメンバーが一番だぜ!」
「私からすれば、約一名妖怪がいることに不満があるんだけど」
「俺の方見ながら言うのやめてね」
「…でも確かに、このメンバーが一番気が楽に過ごせるわ」
マーガトロイドに一理ある。心のどこかで、こいつらと過ごすことが気が楽になると思っている。集団で馴れ合うのは俺が嫌っていたことなのに、徐々に彼女達と過ごす時間が充実したものだと感じるのだ。
「写真!写真撮りましょうよ!」
「お、いいぜ!」
「この間ららぽーとで撮ったのにまた撮るの?」
「いいじゃねーか!思い出として、ちゃんと残したいんだよ!」
「…仕方ないわね。じゃあ、撮るから。早く入って来て」
マーガトロイドがケータイを掲げ、その画面にみんなが映るようになる。
「八幡!早く来いよー!」
「…へいへい」
俺も画面に映るように、入り込む。すると、霧雨が俺の肩に左手を回す。それに便乗したのか、博麗は俺の耳を引っ張り、射命丸は後ろから抱きつく。
痛い痛い痛い柔らかい柔らかいいい匂いいい匂い痛いいい匂い柔らかい。
「八幡さんのハーレムですねぇ〜」
「八幡、顔赤いな!あはははっ!」
「じゃあ、撮るわよ」
そしてこの混沌とした状態で、写真を撮られてしまった。何枚か撮って、みんながマーガトロイドのケータイに映された写真を注目する。
「うっわ、八幡なんて顔してるのよ。通報されても文句言えないわね」
俺完全な被害者なんですけど。
純真無垢な純情男子に向かって、肩を組んだり、背後から抱きついたり、挙げ句の果てには耳を引っ張る始末。これで平常心でいれるわけないだろ。一般男子なら勘違いするぞこんちくしょう。
「アリス、これ後で送ってくれよな!」
「あ、私にもお願いします!」
「えぇ、分かったわ」
…こんな日常がもっと続けばいいと、柄にもないことを考えてしまった俺は病気かも知れない。永遠に続くものなんてないというのに。いつか切れる関係なのに。
本当、どうしたんだろうな。