やはり東方の青春ラブコメはまちがっている。   作:セブンアップ

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ようやく、生徒会役員との出会いを果たす。

 魔王もとい、八雲紫校長との話を終えた俺は、自分の教室に戻った。俺の席の周りには、博麗や霧雨、マーガトロイドが未だに座っていた。

 

「おっ、帰ってきたぜ」

 

「お帰りなさい。なんの話だったの?」

 

「…俺にもよく分からん」

 

 俺がそう端的に答えると、3人は怪訝な顔をする。俺はそんな3人を放って、パンを食べ始めようとすると。

 

「何をしているのですか!」

 

 突然、廊下から稗田先生の怒鳴り声が聞こえてきた。その怒鳴り声で、廊下は野次馬で大量に沸き出す。

 

「ざまあみろバーカ!」

 

 そんなざわついた中、たった一人の女生徒だけが愉しげに、誰かに向かって吐き捨てた。

 

「一体、なんの騒ぎなのよ」

 

「あれって……封獣(ほうじゅう)ぬえ?」

 

 マーガトロイドが、騒ぎの中心である女生徒の名前を呟いた。

 黒髪のショートボブで、右の後ろ髪だけが外に跳ねている、左右非対称な髪型をした女子。それが、封獣と呼ばれた人物だ。

 

「それってあいつか?悪戯好きで有名な…」

 

「えぇ。命蓮寺(みょうれんじ)の厄介者よ」

 

 命蓮寺、というのは千葉県にある一つの寺院である。そこそこ有名な場所で、初詣の時には人が溢れ返るほどとまで言われている。

 

「…ほーん」

 

 とはいえ、別クラスのいざこざなんて俺には関係ない。ああいう他人に迷惑をかけるやつなんて、どこに行ってもいるもんだからな。

 

 事態は結局、教師陣が集まることで収集した。封獣は、事態の騒ぎに紛れて、いつの間にか廊下から消えていた。

 そんなことは気にも止めず、俺はいつも通りに学校の生活を過ごした。

 

 そして放課後。

 

「え、八幡って生徒会に入ってたのか!?」

 

 ホームルームが終わり、霧雨に一緒に帰ろうと誘われた。俺は理由を話して、その誘いを断った。

 

「ということは、昨日急いでたのは生徒会の仕事だったってことなのね」

 

「…とはいえ、作文書いて生徒会に入れられるって、あんたも災難ね。まぁ内容が内容だけに、仕方ないっちゃ仕方ないけど」

 

 適当に嘘書いてりゃ良かった。そうすりゃ愛する小町の下へ瞬足で帰ることが出来るのに。

 

「…そういうわけだから。先帰ってくれ」

 

「なら仕方ないかー……でも、生徒会休みの時は一緒に帰ろうな!」

 

 そう言って、霧雨達は帰って行った。

 なにあの子めっちゃいい子じゃない。こんなん告って振られるルートまっしぐらだろ。振られんのかよ。この自虐ネタ何回目だよ。

 

 俺は鞄を持って、生徒会室に向かった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 生徒会室に到着し、部屋の扉をゆっくりと開けた。そこには、男子の姿が誰一人としておらず、女子だけが生徒会室を支配していた。

 ダメだ。もう帰りたくなってきた。

 

「…来ましたね」

 

「あれが庶務の……」

 

 四季先輩と小野塚先輩は見覚えがある。が、他の3人は見覚えがない。どうやら残りの生徒会のメンバーのようだ。

 

「…へぇ。会長から聞いてる通り、陰気なやつね」

 

「幽香さん、そういう言い方やめてください」

 

「そうだよ。幽香さんに泣かされた後輩、今まで何人いると思ってるのさ」

 

 なんか今怖いワード聞こえてきたんだけど。幽香と呼ばれる人物が、おそらくだが数えるのが億劫になるくらいの人数を泣かして来たって。

 何もされてないのに怖くて泣きたいんだけど。小町助けて。

 

「高校生にもなって泣くなって話でしょうが」

 

 ごめんなさい。俺今号泣したいくらい怖いんですけど。

 

「えっと、君が新しいメンバーかい?」

 

「あ、はい」

 

「そっか。じゃ、まずは自己紹介しなきゃだね。私は2年の河城(かわしろ)にとり。役職は広報だよ。よろしくね、後輩くん」

 

 ウェーブのかかった外ハネが特徴的な水色の髪を、赤い珠がいくつも付いた数珠のようなアクセサリーで、ツインテールにしている。

 もっと分かりやすく言うと、初音ミクみたいな容姿をした女生徒。しかもお値段以上。何がお値段以上なんだろうか。

 

「で、あの子が会計の鍵山雛(かぎやまひな)。同じく2年生だよ」

 

 緑色の長い髪を、後ろからサイドにかけて全てを胸元で一つに纏めており、頭部にはフリル付きの暗めの赤色のリボンを結んだヘッドドレスを着けている。

 

「…よろしくね」

 

「そんであの怖ーい先輩が、3年の風見幽香(かざみゆうか)。書記をやってる」

 

「誰が怖いのよ誰が」

 

 河城先輩の紹介に、風見先輩がツッコミを入れる。

 

「まぁそれぞれ個性はあるけど、これが生徒会メンバーさ。よろしくね、後輩くん」

 

「今度の庶務はやめなければいいけどね。幽香さんを怖がってやめていく人って絶えないし、私が近くにいるだけで不幸になるし…」

 

「は、はぁ……」

 

 なにこの生徒会大丈夫?後輩泣かせる人物が生徒会にいて大丈夫なの?もしかして裏では相当ヤバいやつだとか?

 やめようかな。

 

「んんっ!」

 

 変な空気が流れかけた中、四季先輩が咳払いをする。周りは、四季先輩に注目する。

 

「ひとまず、生徒会メンバーはこれで揃いました。では、今日から本格的に…」

 

 すると、生徒会室の扉を誰かがノックする。

 

「今日って来客の予定ありましたっけ?」

 

「いいえ。…どうぞ、お入りください」

 

 四季先輩が許可を出すと、ゆっくりと生徒会室の扉が開き始める。そこから入室してきたのは、金色の髪に紫色のグラデーションが入ったロングウェーブの女性だ。

 

「あの……ここが生徒会室、でよろしいのでしょうか?」

 

「貴女は?」

 

「あぁ、初めてまして。私、命蓮寺の者である聖白蓮(ひじりびゃくれん)と申します。今日は、生徒会の皆様にお願いしたい案件がありまして……」

 

「命蓮寺の……とにかく、そちらの長椅子に掛けてください。小町、お茶をお出しなさい」

 

「了解です」

 

 突如、生徒会に来訪してきた聖さんは、長椅子にゆっくりと腰掛けた。小野塚先輩がお茶を出し、それを聖さんが一口啜る。

 

「…それで、その命蓮寺の方が、生徒会に一体なんの御用でしょうか?」

 

「あの……1年生の封獣ぬえ、という女生徒は分かりますでしょうか?」

 

「封獣……」

 

 その名には、すぐにピンと来た。昼休み、廊下で稗田先生に叱られていたあの女子の名前だ。

 

「あの悪戯好きで有名な子よね」

 

「うん…。今日もなんか騒ぎがあったそうだよ」

 

「あぁ……やっぱりご迷惑をおかけしていましたか……」

 

 そういえば、封獣も命蓮寺にいると聞いた。つまるところ、聖さんは封獣の保護者という立場なのだろう。今の反応からして、おそらくその予測は正しい。

 

「…あの子、昔はもっと元気でみんなに優しい子だったんです。でも、中学校に入ってから、あの子は変わってしまったんです。私達、命蓮寺の者にも何も話してくれず、学校から聞くのはぬえが悪戯した話のことばかり。一体、何があったのかすら分からないのです……」

 

「要するに、中学校に入ってから封獣ぬえに何かがあった……そういうことですか」

 

「…はい。いつもぬえに話しかけているんですが、無視されてしまい……」

 

「……八幡くんはどう考えます?」

 

「えっ?」

 

「えっ?じゃないです。貴方も生徒会の役員なのだから、考えなさい」

 

「は、はぁ…」

 

 四季先輩に言われた通り、とりあえず話を整理して考えてみよう。とはいえ、大体理由は分かっている。

 中学から封獣が変わって、学校側から封獣の悪事のことしか聞かなくなった。そして聖さんにすら話をしない内容。

 

「……可能性の一つとしては、いじめですかね」

 

「…その根拠は?」

 

「…人はそう簡単には変わらない。もし変わるとすれば、何度も何度も痛い目を見て、心に消えない傷が刻まれて、その痛みからの回避本能によって行動が変化するだけです。封獣がそんな風に変わったのは、いじめが影響したからじゃないんですかね」

 

 封獣が悪戯を続けるのは、周りを誰も信用していないから。自分以外はみんな敵と判断して、自分の身を自分で守るため。

 

「そんな……。私は、どうすれば……」

 

 次第に、聖さんの瞳から涙が溢れ出してくる。涙を流すくらい、聖さんは封獣のことを、家族として心配しているのだろう。他人のために涙を流すのがその証拠だ。

 

「ちょっと待った」

 

 しかし、ここで小野塚先輩が俺に待ったをかける。

 

「その子、昔は明るくて優しい子だったんだろ?そんな人格の子なら、少なからず小学校で出来た友達くらいいるんじゃないの?中学校ってことは、その小学校の友達も一緒に同じ学校に進学してるはずだし、いくらなんでも周りが全員敵なんて認識にはならないだろうよ」

 

 そう。そんな人格の子ならば、小学校には友達がいるはずだ。そんでもって、友達ならば他人が困っていたら助けるのが、人としての優しさだろう。

 しかし、そんなことが絶対あり得るとは限らない。

 

「…封獣に向けられたいじめは、少なからず周囲の友人にも向けられる可能性がある。誰も信用していないってことは、その友人に助けてもらえなかった、裏切られたってことなんじゃないんですかね。こいつと一緒にいれば、自分達もいじめを受ける。人間、他人より自分が可愛いから。だから他人を捨てて自分の身を守るんですよ」

 

「…だとするなら、相当下衆な連中ね」

 

 いじめというのは、いじめてる側は何も思わないものだ。もし怒られるとしても、「いじめてるつもりはなかった」みたいな決まり文句を言って、遠回しにいじめられているやつの責任にする。

 いじめが無くなることはない。無くなるとすれば、人類が滅んだその時だろう。

 

「…そういえば、まだ聞いていませんでしたが。聖さんはなんのために生徒会室にいらっしゃったのでしょう?」

 

「……今のぬえは、独りぼっちで誰も信用していません。出来るのなら、彼女の心の闇を取り除いて欲しいのです」

 

 聖さんはそう嘆願した。これを受けるか受けないかは、四季先輩の判断次第。だが、正義感の強い彼女ならば。

 

「…分かりました。微力ながら、我々生徒会がなんとかしてみせましょう」

 

「…ありがとうございます!」

 

 四季先輩はあっさりと受託する。生徒会の仕事なのかと言われたら怪しいところだが、まぁ気にしないでおこう。

 

「それで、封獣ぬえが今どちらにいるか分かりますか?」

 

「は、はい。既に命蓮寺に帰宅しています」

 

「…では、少しばかりご訪問させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「え、えぇ。大丈夫です」

 

「…決まりましたね。河城にとり、鍵山雛、そして比企谷八幡。この案件は、貴女達に任せます」

 

「分かりました!」

 

 こうして、俺達3人が抜擢され、聖さんの依頼を請け負うことになった。鞄を持って、聖さんの案内のもと、俺達は命蓮寺に向かった。

 

 




 正直この生徒会の面子が謎過ぎる。笑

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