やはり東方の青春ラブコメはまちがっている。   作:セブンアップ

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 まさかの1年越しの投稿。今も昔も忙しいので、毎日投稿とか週1投稿なんて淡い期待なんてやめてください。


かくして、東方学院生徒会は終わりを告げる。

 

 2学期が始まってしばらくが経つ。1学期同様、2学期も行事が多々ある。生徒会選挙、文化祭、球技大会。学年によっては修学旅行など、忙しい時期になる。

 

「もうこの生徒会も終わりですね」

 

 そう。3年である四季先輩、および風見先輩は本日を以て生徒会を引退する事になる。

 

「そうね。生徒会長の肩書きが消えて肩の荷が降りたんじゃないの?」

 

「否定はしません。しかし、やりがいもある。生徒会長として得た経験は、私のこれからに必ず繋がると信じてます」

 

「流石、裁判長を目指す人間の言う事は違うわね」

 

 これから彼女達3年は、自身の将来に向けて歩き始める。四季先輩の将来は前に聞いたが、そういえば風見先輩の将来は聞いていなかったな。

 

「風見幽香は、高校を卒業したらどうするのですか?」

 

「園芸の専門学校に進学するつもりよ。花に関した仕事をするのが、私の夢だから」

 

 生徒会きってのフラワーマスターも、自身の将来をしっかりと明確にしていた。

 

「八幡はどうするの?将来の仕事」

 

「専業主夫志望ですが」

 

 これは譲れぬ夢である。だから揃いも揃ってゴミを見るような目で俺を見ないで欲しいです、すみませんでした。

 

「自分にそれだけの価値があるとでも?理系は絶望で人脈に難あり。社会的にも危険だと危ぶまれて将来性皆無の貴方に、そんな奇特な人間が居ると思います?」

 

 分かんないだろ。もしかしたら世の中そういう人を選んじゃうお馬鹿さんが居るかも知らないだろ。

 

「…まぁ居そうだと思うけど。ほら、命蓮寺のあの子とか。多分八幡の為なら臓器すら売りかねないわよ」

 

 鍵山先輩がそうぼそっと呟く。確かにあいつならやりかねない。自傷する事になんの躊躇いも無いからな。

 

「八幡クラスじゃモテモテだもんね〜。他クラスからもモテてるし、選びたい放題だ」

 

「単に男子が少ないから物珍しいだけでしょ。五分五分の男女共学なら俺なんざモブでしかないです」

 

 こちとら「比企谷?誰?」と3年言われ続けた事もあるんだぞ。「あー、ヒキタニね!」と頷かれるまである。誰だよヒキタニ。

 

「八幡、目が死んでるよ」

 

「デフォなんで大丈夫です」

 

 彼女達が周りに居るのは、数少ない男子だからという理由が大きい筈であり、もしモテモテになる要素があるとするのなら、俺はその要素をどこで拾ってきたって話になる。

 

「私と風見幽香は本日を以て生徒会を引退します。生徒会長、および書記の席が空く事になります。貴女達4人は新たな生徒会長、そして書記の方を支えてあげてください」

 

「ん?や、ちょっと待ってください。なんか普通に残ってる俺達が生徒会引き継ぐみたいな話になってますけど」

 

「知らないのかい?ここの生徒会は1度役職に就くと、引退するまでは辞められないのさ。校長曰く、"生徒会なんて面倒な仕事をやる人間なんてあまり居ないのだし、毎回毎回入れ替わるのも面倒でしょう"って」

 

 あんのアラサー何してくれてんだ。ていう事はあれか、俺3年の今頃になるまで就かなきゃならないって事かよ。

 

「でも希望する子が居るなら、その子に譲る事も出来る。互いが就きたい場合は、決選投票になるけどね。正直、決選投票になんてならないと思うけど」

 

 河城先輩の言葉の意味に対し少し考え、納得した。

 生徒会なんて仕事自体をやる人間はそう居ない。内申点欲しさにやるか、俺のように問題児扱いされてぶち込まれるかのどちらかだ。故に、決選投票にはならないというわけだ。

 

「でも俺が来た時ってすんなり生徒会入れましたけど。前任の人は居なかったんですか?」

 

「雑務をやりたがる人間が居ると思うかい?」

 

「居ないでしょうね」

 

「そういう事だよ」

 

 すぐに納得しちゃったよ。生徒会に入りたい人間がこんな雑務をやるわけがない。だから他の役になれないと悟った瞬間、辞退を申し出たんだろう。

 

「でも実際、八幡が来てから仕事がやりやすくなったのは事実よ。1人居る居ないで仕事の速さが変わるのもそうだけど、貴方仕事出来るから」

 

「嫌な褒め言葉ですねそれ。仕事したくない人間なんで」

 

「後2年は仕事が出来るわよ。良かったわね」

 

 クソが。あの作文1つで俺の学校生活がこうも歪んでしまうのか。それも全部よく分からん決まりを作ったあの校長のせい。俺は悪くない、校長が悪い。

 

「さて」

 

 四季先輩が1つ、手を叩く。

 

「今日はこれで終わりにしましょう。掃除も片付けも、粗方済ませた事ですから」

 

 今まで使用していた生徒会室の大掃除が終わり、退室する。退室したと同時に、四季先輩は扉の方に振り返り、頭を下げる。

 

「ありがとうございました」

 

 そう一言、感謝の言葉を述べて生徒会室を後にした。

 

「最後まで生徒会長だったわね」

 

「お世話になった部屋です。感謝の言葉の1つも無いと罪ですから」

 

「…そうね」

 

 最後の生徒会は早く終わり、時刻は16時半。夏が過ぎたとはいえ、まだ外は明るい。

 

「ねえ、今日早く終わったんだしさ。打ち上げ的な感じでどっか遊びに行こうよ!」

 

 廊下を歩きながらそう提案する河城先輩。

 

「良いけれど、花以外の場所なんて私知らないわよ」

 

「そこはもう学生と言えばってとこでさ!」

 

「にとりの提案乗った。この面子が次いつ集まるかも分からないからね。四季様も行きましょうよ」

 

「いや、私は帰って…」

 

「…良いんじゃないんですか、今日ぐらい」

 

 小野塚先輩に便乗するように、俺も一言加える。

 

「勉強以外の時間を遊びに使う事も、学生生活の一環なんじゃないんですかね。俺は大抵家に帰るから知らないですけど」

 

「八幡、貴方……」

 

 四季先輩が努力家でクソが付くほど真面目なのは周知の事実。生徒会長という大役を持っておきながら、自身の将来の為に勉強に励んでいる。半日も無い数時間を息抜きに使ったって、神ですら怒る権利などない。

 

「ゴールデンウィークの時も、貴方は似たような事を言っていましたね。休息は大事だと」

 

「世の中、休みたくても休めない人間がそこら辺に居ますし。それを見たら、休みは人間の幸福の1つだと思ったんで」

 

 休み大事。俺なんざ監視されてようがなんだろうがサボる時はサボる。休みが無い人生なんてクソだ。

 

「全く、いつも貴方は捻くれた解釈をしますね。だから社会的に危ぶまれると判断されるんですよ」

 

「捻くれた解釈っていうか、率直な感想なんすけど」

 

「…けれど、その捻くれた貴方の言葉は人の心を解かせる。皮肉なものです」

 

 別に解いたつもりは無い。今の四季先輩に関しては、ただ単純に休息も必要だと教えたまで。

 今まで関わって来た人間もそうだ。誰かの為にしたかったわけじゃない。そうせざるを得ない状況だった。放って更に面倒になるのであれば、その可能性を排除するのは当然の事。俺はそこまでお人好しじゃない。

 

「貴女方の言う通り、今日ぐらいは羽目を外しても良いかも知れませんね。行き先は貴女達に任せます」

 

 四季先輩は納得し、行き先を河城先輩と小野塚先輩に任せた。

 彼女達が目指す行き先は俺には予想が付かない。何故なら生徒会があろうがなかろうが、終われば家に帰るのが俺のスタイルだから。だから放課後学生がどこに行くとかなんて俺には分からん。

 

 ららぽーと行っとけばとりあえず学生生活謳歌してるみたいになるだろ。ならないか。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ラウンドワンかよ」

 

「学生の遊び場って言ったらここだよね」

 

 ここはボウリング以外にも、ビリヤードに卓球など、様々なスポーツを1日で遊べるアミューズメント施設。更にゲームセンターも設置されており、人気が出ないわけがない。

 

「名は聞いた事ありましたが、実際に入った事がありませんね」

 

「私も無いわね。特にこの手の施設に興味が無かったから」

 

 3年2人はラウンドワンが初めてだそうだ。かく言う俺も、片手で数える程度でしか行った記憶が無い。全部小町だけど。

 

 店内に入り、河城先輩が受付の前に設置されている機械を操作する。

 

「どうせなら全部やっちゃおうよ!22時まで遊ぶとしても、3時間以上あるし!」

 

「待ってください。それは流石に羽目を外し過ぎです」

 

「でも仮に22時にここを出ても、高校生は補導されませんよ。校則もそこまで厳しくないし、良いと思いますよ」

 

「む……」

 

 小野塚先輩の言葉に一理あると感じたのか、四季先輩が言葉を詰まらせる。そして諦めたのか、溜め息を吐いて。

 

「はぁ……分かりました。ですが時間は見ておきますから。生徒会を引退したとはいえ、節度を持って遊んでください」

 

「よし決まり!」

 

 これあれだな。明日筋肉痛確定のやつだな。だってボウリングにスポッチャとか、普段運動してない人間のする所業じゃねぇもん。明日は大事を取って休もう。

 

「じゃ最初はボウリングだよ!」

 

 受付でボウリング場の入場の確認をしてもらい、そこからボウリングを行うための靴を手に取る。ボウリング場に行くと、平日の夕方にも関わらず賑わっている様子だった。

 指定されたレーンに向かって、俺達は荷物を置いて靴を履き替える。ちなみに6人のため、2レーン使っている。振り分けとしては、俺と四季先輩と小野塚先輩、そしてもう1レーンが河城先輩と鍵山先輩、風見先輩である。

 

「それじゃ、ボールを探しに行こうかね。四季様のボールはあたいが選びますから」

 

「助かります。何がどういうボールなのか分からないので」

 

「なら八幡は私の選んでくれないかしら?ボウリングは知っているのでしょう?」

 

「あ、はい。まぁ一応」

 

 とは言っても、ボウリングのボールなんて重さ加減で選ぶぐらいだろう。プロなら違うところに目を向けるのかも知れないが。

 

「俺はボールの重さで決めてます。重い方が倒しやすいですけど、自分の合わない重さを選んでも投げにくいだけですし。それに指を入れる穴のサイズもやや違ってくるんで、触れながら選ぶのが早いと思います」

 

「そういうものなのね。…じゃあ私はこれにしようかしら」

 

 そうして彼女が手にしたのは、15ポンドのボールだった。15ポンドのボールだった。いやおかしいだろ。

 

「それ重いやつなんですけど…」

 

「別に。むしろまだ軽い方よ」

 

 化け物かよこの人。腕力どうなってんだよ。明らかに俺より細腕に見えるんだけど。何?この世の力とは思えない力が働いているのん?

 

「逆に貴方は軽すぎないの?私より軽いでしょう?」

 

「これが手に馴染んでるんで…」

 

 俺のは13ポンドのボール。普通にボウリングのボールなんて自身に合うボールを選んだとしても多少重く感じるのが普通なのだが、この人からその様子すら見えない。

 俺達は指定されたレーンに戻り、ボールリターンに自分が選んだボールを置く。河城先輩と鍵山先輩が8ポンドのボールで、小野塚先輩が14ポンドのボール。いやこの人もパワーどうなってんだよ。

 

 そして四季先輩のボールは。

 

「これが1番手に馴染みますね」

 

 5ポンドのボール。つまり5本の指を入れるあの緑のボールである。これもう小学生とかそこら辺用のボールじゃねぇか。これを堂々と持ってくる四季先輩可愛いなおい。

 

「く、くくく……」

 

 小野塚先輩が大笑いするのを堪えている。これ確信犯ですね。この人おそらく真っ先に四季先輩にキッズボールを選ばせたのだろう。まぁ腕力的にそれが正しいのかも知れんけど。

 

「それじゃ始めよっか!」

 

 1番手は風見先輩、そして小野塚先輩である。

 

「確か、あの白いのを全部倒せば良いのよね」

 

 風見先輩はボールを持って振りかぶる。上投げで。

 

「ちょっと待て待て」

 

「何かしら?」

 

「なんで上から投げようとするんですか」

 

「上から投げちゃダメなんてルールがあるの?」

 

 そんなキョトンとしてるけど、やってる事が害悪行為だぞ。というか、なんで上から投げれるんだよ。しかもあの人、穴に指を通さずボールを鷲掴みして投げようとしてたぞ。握力どうなってんだよ。あの人と握手したら間違いなく骨砕けるぞ。

 

「一応、下から投げるようにしてください。上から投げたらボールやらレーンやら傷付く恐れあるんで」

 

 これハンドボールでもドッヂボールでも無いんだぞ。

 

「そう……不自由な遊戯ね、ボウリングは」

 

 あんたが自由過ぎるんだよ。周りの人若干ドン引きしてたよ。

 そんな風見先輩の初めての第一投。言われた通りに下から投げる。ボールは勢いよく真っ直ぐに転がり、いきなりストライクを取ってしまう。

 

「あら、全部倒れたわ。簡単なのね、ボウリングは」

 

 因みに、ボールの速さだけで言えばプロボウラー顔負けのスピードであった。ほんとあの人何者だよ。妖怪かよ。

 

「流石は風見幽香、見事な投球です。小町、貴女も行きなさい」

 

「ラジャーです」

 

 小野塚先輩もボールを手に取り、真ん中に立つピンを狙って投げる。すると簡単に全ピン倒れてしまう。えっ、この人らマジでボウリング上手くね?

 

「これはアレだね。私もストライク出さなきゃならない流れなやつだね」

 

 河城先輩はそう言って、何やら鞄の中をゴソゴソと探る。そして取り出したのは。

 

「…これ、何?」

 

 鍵山先輩が尋ねる。なんだあのアイアンマンの腕みてぇな機械は。何する気だあのメカニック、あれを利き腕に装着して何する気だ。

 

「まぁ見てなって。……ストライク」

 

『ストライクプログラム、作動』

 

 おい、なんか声出たぞ。

 

 ツッコミどころ満載の河城先輩の第一投。大きく振りかぶると、そこから明らかに人間離れした投球スピードが発揮され、風見先輩の投球よりもスピードが出るボールと化した。そのボールは真ん中に当たり、ストライクと表示される。

 

「いえーい!」

 

「いや、いえーいじゃなくて」

 

 何を堂々とインチキしてるのん?あんた今の所業風見先輩よりぶっ飛んでたぞ。大体なんでそんなもん鞄の中に潜ませてるんだよ。もしかしてこの人今日ボウリングやる気満々だったのかよ。

 もうやだこの人達。常識に囚われなさすぎじゃない?型破りにも程がある。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「八幡、生きてるかーい?」

 

 もう無理、疲れた、しんどい。

 単にラウンドワンを楽しんだだけでここまで疲れるわけがない。いや、インドアの俺ならボウリングの時点でまず腕が持ってかれてるだろうけど。じゃなくて。

 

 この人達ほんとにやべえ。

 

 風見先輩はなんちゃって細腕で、スポーツ全般パワープレーでゴリ押しするし。

 

『あら、球が破裂しちゃったわ』

 

 じゃないんだよ。破裂するってなんだよ。ドーピング使ってもそうはならねぇよ。

 

 河城先輩はお得意の機械でなんかずるい事するし。

 

『これぞ新作!これがあれば、一突きで全てのボールを落とす事が可能なんだよ』

 

 じゃないんだよ。ビリヤードやってる時にキューを取り出したからガチなのかと思ったらがっつりメカメカしいの出ちゃったよ。

 

『こ、こうでしょうか?』

 

 四季先輩は始終なんか可愛かったし。ボウリングの時なんて両手で投げてたぞ。バッティングの時はバットの重さで自分が振り回されてたし。時折見せる閻魔の様な表情が一切見えなかった。

 

「四季様、どうでした?」

 

「…そうですね。とても有意義な時間でした」

 

 時間に厳しい四季先輩でさえ、時間を忘れかけてしまうほど楽しんでいた。河城先輩が前々から考えていたのか、パッと思い付いたのかは分からないが、来て良かったのではないかと思う。

 

「言っておくけど、まだ最後にやる事あるよ?」

 

「まだ何か?」

 

「プリクラだよ!この間のゴールデンウィークじゃそんな機械無かったし、そもそも生徒会のメンバーで出かける事無かったからさ」

 

 なん、だと……。

 

「プリクラ……聞いた事あります。確か、顔を加工するのだとか…」

 

「まあ要のとこは今より写真をもっと可愛く撮りましょうって事ですよ。行きましょう四季様」

 

 なんだか乗り気であるが、ちょっと待って欲しい。俺は過去にプリクラを撮っているが、それはまぁ酷い顔だった。なんだあの微妙に気味が悪い大きい目は。俺の顔は生だからカッコいいのだろうがよ。加工なんぞしたら折角の整った顔が台無しになるんだぞ。

 

「あ、すみません。ちょっと急用思い出したんで…」

 

「は?」

 

 ひっ。閻魔様の一声がもう怖い。

 

「すみません、なんでもありません……」

 

 俺もう謝ってばっかじゃねぇか。ぼっちちゃんかよ。ぼっち・ざ・ろっくかよ。俺でもあそこまで酷くないぞ。……多分。

 俺の抵抗はあえなく散り、プリクラの機械が並んでいるエリアに向かった。その中の1つの機械を選び、河城先輩が手慣れた操作で進めていく。

 

「どんな風な写真になるのでしょうか……」

 

「四季様なら今より可愛く映りますよ」

 

 基本的に俺以外は盛れるだろう。俺なんぞ加工してもただただ駄作になっていくだけである。なんて無駄なのだろう。

 

「それじゃあ入ろう!」

 

 河城先輩が1番初めに入り、鍵山先輩や風見先輩達も次々と入っていく。諦めの意味も含め、俺は溜め息を吐いて中に入る。

 

「四季様は後ろだと映らないんで、前で」

 

「私と雛も前に行こっか」

 

 立ち位置が決まった。前列には河城先輩、四季先輩、鍵山先輩、後ろは風見先輩、俺、小野塚先輩となった。

 ていうか前と横から良い匂いするんだよ。しかもそこそこ密着状態だからダイレクトに来るんだけど。これだから嫌なんだプリクラは。ドキドキしてしまうから。もう変態じゃねぇかよ。

 

「八幡、顔赤いわよ」

 

「…まだ夏の気温が残ってるんで」

 

「とかなんとか言って、本当は女子5人と密着状態でプリクラ撮るのが興奮するんでないの?」

 

 おいこらメカニック余計な事言うな。

 

「ならもっと密着してあげましょうか?」

 

「プリクラなんて密着してなんぼだよ。ていうか、今更密着状態云々に赤面するかい?」

 

 そう揶揄う風見先輩と小野塚先輩。すると言葉だけでなく、身体を使って揶揄ってくる。

 言い回しがいやらしいな。単に今より密着して来ただけだろうがよ。

 いや良くないから。思いっきり胸とか当たってんだけど。1回自分の身体が如何に男性を狂わせるか確認したほうが良いと思います。そんで自覚したら2度と近づかないでください。

 

「あら、もっと赤くなって」

 

「本当、こういう時だけは思春期男子だね八幡は。いつもは大人びてるくせに」

 

 大人びてるのと思春期男子は関係ないだろ。ていうか本当やめて?思春期男子拗らせると本当碌な事ないから。お願いだから。

 

『カメラを見てね!』

 

「そろそろ撮るよー!」

 

 こうして、極限まで密着した状態で生徒会の面々とプリクラを撮った。両隣の2人の距離だけでなく、途中から前列の3人の距離も縮まって密着状態となっていた。これで理性を保ててる俺の鋼の精神を褒めて欲しい。

 

 そんな地獄の撮影が終わり、俺達はラウンドワンを後にして帰路を辿る。

 

「八幡の魂が抜けてる」

 

「プリクラって別にそういう機械じゃなかったわよね」

 

 帰って寝たい。これはいつもの事であるが、なんだかどっと疲れた。反対に、四季先輩は先程撮ったプリクラの写真を見て顔を綻ばせている。

 

「四季様、ずっと見てますね。そんなに気に入ったんですか?」

 

「…えぇ。今日は最良の日でした。私は今日という日の思い出を宝物にします。この写真と共に」

 

「そうね。最後の最後に学生を楽しんだ気がするわ」

 

 今日という日が終われば、四季先輩と風見先輩は生徒会を去る。そして自分の道を歩いて行く為に、努力するのだろう。

 

「この生徒会で過ごせた事、私は本当に良かった。風見幽香が居て、小町が居て、河城にとりが居て、鍵山雛が居て、八幡が居る。貴女達だからこそ、私は良い時間を過ごせた。…改めて、感謝します」

 

「四季様……」

 

 それは、別れの言葉のように。彼女は感謝を告げた。四季先輩はきっと、この生徒会を自分の居場所だと思っていたのだろう。俺が来るずっと前から、彼女の居場所は生徒会だったんだろう。

 

「小町。貴女のサボり癖は手に負えないものでしたが、後輩思いである部分は評価します。だからといってサボり癖が有耶無耶になるわけではありませんが」

 

「は、はい……」

 

「河城にとり。貴女はいつだって、生徒会の場の空気を作ってくれた。私には無いその天真爛漫な貴女の立ち居振る舞いで、これからも生徒会を盛り上げてください」

 

「うん!」

 

「鍵山雛。誰かが、周囲が、世界が間違っていたとしても、それは貴女1人の責任じゃない。一切気にするなとは言いません。しかし、気にし過ぎるのも良くない。何かあればすぐに私でも、生徒会の誰かにでも頼るのです」

 

「はい…」

 

 小野塚先輩、河城先輩、鍵山先輩に、言葉を掛ける四季先輩。次に視線を向けたのは勿論、俺だった。この流れで俺に何の言葉も無かったら、ステルスヒッキーが進化した瞬間だったのかも知れない。あるいは俺には何も無さすぎてコメントが無いとかね。

 

「八幡」

 

「…うっす」

 

「貴方は悪い人間です」

 

「えぇ……」

 

 いやまぁ褒められる事は無いだろうなとは思っていたけどさ。まさかこんな純度100%のストレートをぶつけられるとは思わなんだ。

 

「依然、貴方の人としての立ち居振る舞いに問題がある事は変わりません。それを私が引き続き矯正する事も」

 

「そうですか…」

 

「けれど」

 

 いつもの有難いお言葉だと思っていた。彼女がこの接続詞を使うまでは。

 

「貴方の言葉、行動で救われた者も確かに居る。…私も、そうですから」

 

「…別に。救うとか、そんな高尚な事は考えてません」

 

 適材適所。自分が出来る事をしただけだ。俺はフィクションの主人公のように、万人を助ける事の出来る力なんて持ってない。

 

「そうやって、人の評価を遠慮する部分は良くありません。人の評価は素直に受け入れなさい」

 

「…はい」

 

 ツンデレとかでは無い。事実を言ったまで。

 

「これから貴方には、更なる苦難が待ち構えている事でしょう。ですが、思い出しなさい。貴方の後ろには、私が…私達が居る事を。いくら間違えても誤っても良い。その度に私が正します」

 

「…カッコ良すぎでしょう、あんた」

 

「それが私の使命ですから。貴方を矯正する、私の」

 

 いや本当。霧雨とは違うベクトルでカッコいいんだが。なんでうちの学校の女生徒はこんなカッコいい部分多いのん?

 

「悩んで、足掻いて、苦しんでください。その末に出した結果が間違えたとしても。誰からも必要とされていない答えだったとしても。その貴方の選択を、私は本物だと認めますから」

 

「四季、先輩……」

 

 俺は彼女の言う通り、これから間違えてしまうのだろう。人間は間違える生き物だ。その度に、考えて、悩んで、足掻いて、誤った部分を正すのだ。

 

「これからの、貴女達の活躍を願っています」

 

 俺の選択は、これからも間違える。その度に、彼女が正すのだろう。彼女のその掛ける言葉一つ一つに、俺はいつか寄りかかってしまいそうだ。

 

「頑張ってください」

 

 生徒会長に就く人間は、どいつもこいつもカッコいいじゃねぇか。

 

 

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