この素晴らしい世界で、死なない俺は生を謳う。   作:shoon K

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プロローグ

宝石のように眩い世界に、立つべき演者が躍っている。日の光が当たる場所で演者たちは踊る。

俺のようなカスは暗い場所でゴミをあさり、スポットライトの当たるそいつらを黙ってみている。

だが俺は、それでよかった。

スポットライトの下に立つのにどれだけの苦節があったかは知らない。恨み節や妬み、何なら引きずり落としあいもあったかもしれない。

だが、裏の事情がどうであれ、舞台にて立つそいつらは、美しかった。

ずっと見ていたいと思った。観客側として永遠に見ていたいと思った。だから、これでよかったんだ。

 

 

 

だが、世界はそれを許してはくれない。

 

殺された。理由は単純。俺と同類の人種に襲われ、犯され、死んだ。

分かっていたさ。いつかはこうなることくらい。

 

―ただ、もうちょっと後でよかったのに。

 

 

 

 

 

『この素晴らしい世界に祝福を』

 

 

 

 

俺が死んで、どれくらいの時間がたったのか。

分からない。体内時計なんて当てにはならないし、時間を数えられるほど俺の頭は賢くない。

それでも意識はある。死後ってのはこんなもんなのか?

 

「...き.........い...きて...くだ...い」

 

声が、聞こえた。俺じゃない。女の声だ。

 

「起きてください!!」

 

突然大きくなった声に、俺の目は反射的に開かれた。いや、死後なのに目が開くとかあるのか?

そんな自己問答は置いておく。目の前には羽毛が付いた修道服を被った女性が、こちらに向けて頭を下げていた。

 

「初めまして、白石奏(しらいしかなで)さん。」

 

言い終わると、女性は頭を上げ、こちらに笑顔を見せる。

眩しい。俺には勿体ない笑顔を。

 

「...名前、あったのか。俺。」

 

名前なんてないと思っていたが、記憶に残らない両親が付けていたようだ。あるいは俺が忘れていたか。

開口一番にネガティブなことを言ってしまった俺は、しまったと零し口を閉ざす。俺のその姿を女性は悲しげな眼で見る

 

「申し訳ありませんでした。嫌な記憶を思い出させてしまったかもしれません。」

「いや、大丈夫ですよ!嫌な記憶なんてあんまりないですし!」

 

少し食い気味に、愛想笑いでそう返す。ちゃんと笑えているかはわからない。

とにかくそう返した。俺はこの時、適当な相槌をして流されると思ったが、違った。

 

女性が、美しい顔から一筋の涙を零した。

 

「え...?え!?」

 

女性が泣く。そんな場面に遭遇したことは生前一度もない。俺は戸惑う

 

「何故...あなたはそこまで()()でいられるのですか...!!」

 

震える声でそう言われた。

言っている意味が分からない。善人なわけがない。善人であるならば、人に手を差し伸べられるから。

俺はそういった人間と違う。世界に不要と淘汰されたカス。灰汁なのだ。

 

頭ばかりが働いているだけで言葉にはできない。無限と思われる程続くその時間、泣き止んだ女性は言葉を紡ぐ。

 

ここが死後の世界であること。

彼女は前任からこの役割を引き継いだ女神であること。

そして...異世界への転生を斡旋していること。

 

その他さまざまな情報を話した彼女は、少し俯く。

何がそうさせるのか理解はできない。だが、俺の頭は異世界という文字でいっぱいだったからそんな様子の彼女に配慮なんてできない。

 

異世界...興味をそそられる。そこもまた演者が集い、踊っているのだろう。笑いが絶えない光景が広がっているのだろう。

せっかく女神さまが異世界への転生を進めているんだ。これに乗っからない手はない。

 

「異世界転生、させてください」

 

決意を込めてそういうと、女神さまは少し間を開けて了承する。そして、一つの本を俺に手渡した。

 

「...異世界転生する方には特別にひとつ、特典を差し上げることになっています」

 

渡された本を開いて、一通り眺めてみる。なんでも切れる魔剣に、超能力、特異体質......。

正直、どれも俺にはもったいない代物だ。だから受け取れない。

そう思って本を返そうとしたが、女神さまは頑なに受け取らない。どれでもいいから受け取れと言ってるようだ

受け取らないというのは無理そうだ。なので再び本を見る。

 

「......あ、じゃあこれをください」

 

そう言って俺は一つの項目を女神さまに見せる。

『不老不死』という体質。これだけだな。欲しいと思えるのは。

 

「.........死ねないことがどれほど辛いか、わかりますか?」

 

女神さまがそう尋ねてくる。確かに死ねないのは残酷だ。大事な人を置いていかれる...それくらい俺でもわかる。

だが、大事な人なんていないし作らない俺には関係ない。

 

「ああ、だけどこれがいい。」

 

「......わかりました。それではこのサークルの中央に立ってください。」

 

神々しい光を放つ円が現れる。俺は言われるがままにその中央に立つと放つ光がさらに強くなり、俺の体が宙に浮く。

 

「それでは、貴方の人生に祝福があらんことを。...あとひとつ。」

 

女神さまは俺の目をまっすぐ見据えて、言う。

 

「貴方は必ずその特典を選択した自分に後悔します、なのでいつか、本当に壊れそうになったその時は、無理にでも私が特典をはく奪しますからね!」

 

後悔なんて微塵もなく、するはずもない。

そう確信している俺は、異世界へと旅立った―




リッチーとは違います。不老不死の特典を授かったオリ主です。
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