【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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■■のカウントスタート。


第一部 戦姫絶唱シンフォギア LET'S GO ピカチュウ編
第一話「あ! やせい の ノイズ が あらわれた!」


 ──めのまえ が まっくら に なった。

 

 

 ◆

 

 

 ……はてさて。

 腕を組み頭を傾ける……いわゆる考えるポーズをしながら、俺は困っていた。

 しかし俺の乏しい人生経験では、今の状況を打開する術が無い。

 つまりどうしようもないのだ。

 ハァ……とため息を吐くが、そのため息が耳に響くと同時に現実逃避したくなる。

 

 ……俺は何処にでもいる普通の人間だった。

 名字二文字に、名前が三文字の何処にもでもいる普通の人間。

 社会の歯車となり、ほどほどに疲れて家に帰って飯食って風呂入って寝る。

 それを何が楽しいのか毎日毎日同じ事を繰り返し、時折「あぁ、なんか刺激欲しいなぁ」と誰もが思う事を思い、そして誰もが辿り着く答えに至って日常を繰り返す。

 それが俺だった……はずだ。

 

 駆ける。記憶にあるものよりもだいぶ低くなった視界が、後ろへと流れていく。

 人よりも速い足。チラチラと視界に入る黄色い小さな手。

 しばらく駆けていると、湖が見えた。そこに俺は恐る恐る近寄り……水面を覗く。

 

「ピカピィ……」

 

 ピカチュウが居た。

 ……いや、この表現は正しくないな。

 

 ──ピカチュウになった俺が居た。

 

 ヒクヒクと口元がヒクつくのを感じる。

 目が覚めた時に覚悟……いや、諦めていたが──どうか叫ばせて欲しい。

 

「──ピカピ──ー!?」

(なんでピカチュウになってんだ俺えええええ!?)

 

 しかし虚しく響いたのは俺の言葉ではなく、ピカチュウの鳴き声だった。

 

 

 第一話「あ! やせい の ノイズ が あらわれた!」

 

 

 ピカチュウになった現実を受け入れ……なんとか受け入れた俺は先ほどの湖から去り歩いていた。

 何故こうなったのかは分からないが、俺の本能が囁くのだ。あそこに居たらやべぇ、と。ピカチュウになった事で獣の本能が目覚めたのかしら? イヤだなぁ……。

 

 でも人間の時みたいに二足歩行で歩くよりも、四足歩行の方がしっくり来る辺り手遅れかもしれない……。

 

 ──だとしても! 諦めたらダメだ。

 いきなりピカチュウになって混乱したが、俺は絶対に元の体に戻るんだ。

 そして、自分の家に帰る……! 

 ……この姿で帰っても誰も俺だと気付いてくれなさそうだけど。

 

 とりあえず人の居る所に行こう。なるべく人に見つからないように。

 家に帰るにしても現在地を確認しなくてはならない。

 ……こんな姿だからな。もしかしたらポケモンの世界なのかもしれない。

 そうなると、俺がさっき居た場所はトキワの森なのかもしれない。もしくは、ピカチュウが出現する別の場所……。

 しかしそれにしてはキャタピーやビードルが居なかったし……でもあそこに居て嫌な予感したから何か高レベルのポケモンが居たのかもしれない……。

 まぁウダウダ考えても仕方がない。少なくとも、塗装された道路がある所から人間がいるのは確実。ダンジョン系の世界ではなさそう……か……? 

 それにしても。

 

「ピカピィ……」

 

 疲れたな……。

 結構な距離を歩いているが、景色は変わらず人どころか動物すらいねえ。

 疲れと慣れない体に変わった事によるストレス、そして寂しさから思わず愚痴をこぼしてしまった。

 

「ピカ、チュウ……」

(ああ、誰でも良いから会いたいなぁ)

 

 しかし口から出てきたのは鳴き声。

 どうしようもなくピカチュウだな自分……。

 

 ──なんて思っていると気配を感じた。

 もしかして、さっきの言葉が現実になったのか!? 

 と期待半分不安半分に振り返る。果たしてそこにいたのは……。

 

「……(ピギョピギョ)」

 

 ──なにこれ? 

 そこに居たのは人ではなかった。

 かといえばポケモン……かといえばそうでもなさそうな生物がそこに居た。

 二足歩行で、顔がなく、生物とは思えない無機質なナニカ。

 ……もしかして、俺が知らないだけで、コレもポケモンだったりするのだろうか? もしくはウルトラビースト……うん、それっぽいな。

 とりあえず、こちらをじっと見つめている(頭であろう部分には顔はないが……)ウルトラビースト(仮)とコンタクトを取る事にした。

 足元まで駆け寄り、後ろ足で立ち前足を上げ、全国の人間を虜にしたこの顔と声で挨拶する。

 

「ピカ!」

(オッス! オラピカチュウ! よろしくな!)

 

 それに対してウルトラビーストは──ビンタという形で応えた。

 うん。ぶっころ。

 敵意ありと判断した俺はすぐさま距離を取る。先ほどのビンタがきっかけか、心なしか目の前のウルトラビーストもこちらを倒す気満々のように見える。

 つまり、ポケモンバトルだ。

 

 ──あ! 野生のウルトラビーストが現れた! 

 

 脳内でそんなテロップが現れる(イメージ)のを感じながら、目の前のウルトラビーストを睨みつける。すると、俺の頬袋からバチバチと音が鳴り、ピリッとした感覚が走る。

 それで俺は確信した──これ、電撃放てますね。

 この体になってから確認していなかったが、どうやらこの体のポテンシャルを問題なく発揮できそうである。

 さて、ピカチュウと言えばあの技だろう。

 相手がじめんタイプだったら効かないが、ぶっつけ本番。男は度胸。何事も試してみるものだ。

 頬袋から電気があふれ出し体中をめぐり、それを指向性を持たせて解き放つ。

 

「ピッピカ、ヂュウウウウウ!!」

(これが俺の、10万ボルトだぁぁぁぁぁ!)

 

 電気で辺りを照らしながら、俺の10万ボルトはウルトラビーストに直撃し──炭となって消えた……。

 

「……」

 

 ……や、殺っちまったああああ!? 

 瀕死通り越して殺してしまったああああああ!? 

 本来なら戦闘不能、もしくはダメージを与える程度に考えていたのだが、まさか死体すら残さないなんて誰が思うよ! 

 四倍弱点どころの話じゃねぇ……! 

 

「ピカァ……」

 

 気分が落ち込む。感情に釣られるように耳と尻尾がへにゃりと垂れ下がった。

 ポケモンになって初めてのバトルは、俺の心に浅くない傷を刻み込んだ。

 力加減が分かるまで、技は使わないようにしよう。

 俺はそう決意し、先ほどのウルトラビーストの亡骸をしっかりと見て……。

 

「(ピギョ)」

「……」

 

 しっかりと見て……。

 

「(ピギョ)」

「(ピギュ)」

「……」

 

 ──またなんか居る……。

 ──しかもなんか多い……。

 

 気が付いたら、先ほどの同種族と思われるウルトラビーストと新種のウルトラビーストがたくさん居り、俺を取り囲んでいた。

 

「……」

 

 とりあえず。

 

「ピッピカチュウ!」

 

 可愛く鳴いてみた。

 

「(ピギュン)」

「ビガァ!?」

 

 再びビンタされた。

 どうやらダメらしい。

 

 

 ◆

 

 

 認定特異災害──ノイズ。

 何処からともなく現れ、人間のみを襲う人類共通の敵。

 触れた人間を己事炭素へと転換させて殺すという質の悪い性質を持っている。

 さらにノイズの持つ位相差障壁により、一般的な兵器は通用せずすり抜けてしまい、普通の方法では対処不可能である。

 

 そう、普通なら。

 

「ノイズの反応を検知!」

「場所は市街地から離れた無人地帯です!」

 

 此処は、特異災害対策機動部二課。

 唯一ノイズの対策方法を有する世間から秘蔵されている政府機関。

 その二課は現在出現したノイズに対して対応中だった。

 今回のノイズは、人の居ない場所に現れた。

 故に、自壊するまで観測をするのが普通だが……。

 

「司令! ノイズ出現地帯に未知のエネルギー検知!」

「さらに移動しながら……これは、戦っている?」

 

 オペレーターの目には、未知のエネルギーを追いかけるノイズの反応が徐々にその数を減らしているのが見えた。

 報告を受けた司令と呼ばれた男──風鳴弦十郎は、冷静に指示を出す。

 

「翼と奏を向かわせる。現場で何が起きているのか確認せんとな」

「了解!」

 

 司令の指示を聞き、オペレーター達は忙しなく機器を動かす。

 それを横目に弦十郎は、反応が示されているモニターをじっと見つめる。

 

(ノイズと敵対しつつ……かといって市街地へ擦り付けるような動きはない)

 

 最近きな臭い動きをしているとある国の工作員かと思った弦十郎だったが、その可能性は低いのかもしれないと思い直す。

 しかし……別の懸念もしていた。

 

(シンフォギアで対処可能なのか……?)

 

 シンフォギア。二課が所有するノイズに対抗できる唯一の手段。

 ゆえに、シンフォギア以外でノイズを倒している存在を彼は警戒していた。

 だからこそ戦闘の指示ではなく現場の確認に留めた訳だが……。

 

「早まるなよ、二人とも……!」

 

 

 ◆

 

 

 よっしゃあこれで8体目ぇ! 

 でも全然減らない! それどころか増えてるよピッピカチュウ! (マジギレ)

 先ほどの誓いを溝に捨てて10万ボルトを連発して、なんとか包囲網を脱出。

 しかし相手は際限なく現れて正直泣きそう。こいつらホントにウルトラビーストか? ってくらい現れてくるし、倒したら炭になっていく。

 ははーん。もしかして俺の知らない特性か技を使っているんだな。だから一発で消えるし、死んだようには見えない訳だ。

 

 だからと言って多くないですかね……? 

 

 まともに戦ったらダメだと悟った俺は逃げ出した。

 でもあいつらは追いかけてくる。

 もう放っておけよ! 逃げ切ったらお前ら「え? 初めからいませんけど?」って感じに影も形もなく消えるじゃねーか! 

 それなのに草むらに入っているわけじゃねーのにぞろぞろ追いかけおってからに! 

 幻ポケモングループのプライドないんですか??? 

 そう悪態を吐きたいけど出てくるのは「ピカ!」の可愛らしい声だけ。ふざけんなポリゴンショック仕掛けんぞ。

 

 しかし、このまま逃げていてもいつか追いつけられて捕まる。

 その後は瀕死のその先か、卵製造機にさせられるのかもしれない! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに! 

 そんなニッチな趣味なかったわ。

 でも割とマジで碌な事にはならなさそうだ。さて、どうしたものか……。

 

 

 

 

 そんな風に考えていた俺の耳に──歌が聞こえた。

 

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

 

 初めて聞く歌だが、この声には聞き覚えがある。

 え? バーロー? ここコナンの世界? しかも劇場版?

 いやコナンはファンタジーじゃないしな……ファンタジーみたいな事してるけど。

 

 そんな俺の思考を他所に、その人は空から現れウルトラビーストたちに突撃。

 激しい音と共に衝撃により土煙が舞う。そしてその中に人影が見えた。

 な、なんだこいつ……! まさかスーパーマサラ人?

 

 とりあえず助けてもらったんだ。お礼を言いに行こう。ようやく人に会えたし。

 俺はもはや慣れた動きで人影に近付き、ぴょんと身軽にその人物の肩に乗る。

 そして親愛と感謝の意味を込めて鳴いた。

 

「ピカ!」

(サンキュー見ず知らずの人! おかげで助かったぜ)

 

 それにしてもなんであの高さから降りて大丈夫だったんだ? と今更な疑問を思い浮かべ……。

 

「へ!? な、何だお前!?」

 

 そこに居た全く知らないが、声だけは聞き覚えのある女の子を見て──俺は思考停止し、しかし混乱する自分を抑えて……叫んだ。

 

「ピ、ピカァ!?」

(ハ、ハレンチだぁ!?)

 

 ……いや、まだ混乱しているようだ。

 




天羽奏とサトシの声優が同じと勘違いしてました
後ほど訂正します

訂正しました。ハレンチ路線にしましたがすぐに脱線します
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