【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第十六話「この今日へと紡いできたメロディ」

 セレナの先導の元、コントロールルームに向かっていた調達は曲がり角から人の気配を感じ取って立ち止まる。

 

「誰?」

「……」

 

 呼びかけに応じて出て来たのは──ガングニールのシンフォギアを纏った響だった。仲間との合流に調と切歌はホッとし、しかし目の前の響の視線に気づくと慌てて説明する。

 

「ま、待ってください響さん! この子はもう戦う意志は無いのデス!」

「わたし達が説得して、着いて来て貰っている。……コマチの事が大切な響さんにとって許せない存在かもしれないけど、彼女は──」

「良い」

 

 しかし響は、意外にも調達の言葉に理解を示し、同行しているエルザをジッと見ている。

 

「今なら──何となく分かるから」

「ほっ、良かったデス」

 

 此処最近の響は精神的に成長しているのだろうか、出会ってすぐ戦闘みたいな事にならず、切歌は安堵の息を吐く。

 

「じゃあ、一緒にコントロールルームに──」

「ごめん、行けない。先に行っていて」

 

 響はそれだけ言うと、エルザ……そして切歌と調を順番に見た後走り出した。

 何かあったのだろうか? と考え、そういえば翼と奏もまだ到着していない事を思い出す。

 という事は彼女達を迎えに行っているのだろう。

 そう判断した調と切歌はエルザを伴ってコントロールルームへと向かった。

 

「……」

 

 

 ◆

 

 

 バチバチと床に電気が迸る。奏の力がフィールドに力場を作り出しているようで、それに直接触れているミラアルクは、ビリビリと来る痺れを鬱陶しそうにしていた。

 ツヴァイウィングとミラアルクの戦いは長丁場となっていた。

 時間を止めるミラアルクと高速移動で対処するツヴァイウィング。どちらも決定打を決める事ができず、時間が過ぎていく。

 

「──地球が!」

「どうなっていやがるんだ……!」

 

 そんな戦闘の最中、奏と翼は遺跡から見える青い地球が赤く染まっているのを見て呆然と呟く。明らかに異常事態であり、何か良くない事が起きているのは確かだった。

 対して、ミラアルクはそんな地球を見て酷く落ち着いた表情を浮かべていた。

 

「どうやら始まったようだゼ」

 

 その言葉に翼が反応を示し、彼女に叫ぶ。

 

「あれが、お前達のやりたかった事なのか!?」

「……」

「光彦を殺す。そう言っていたが、アレと何か関係あるのか!?」

「──シェム・ハが真の力を取り戻せば、アイツがアカシアを終わらせてくれる。その為に、力を得る為に人間にはちょっとだけウチらと同じ怪物になってもらうんだゼ」

『──!?』

 

 その言葉に、翼達は絶句した。

 

「何を言って──」

「──神の力じゃないと、アカシアは転生を繰り返し生き続けてしまう! 記憶を失っている間は良いが──時が来たらもう終わりなんだゼ!」

 

 ミラアルクの頬に涙が伝う。

 

「あんなに頑張ったのに! あんなに償ったのに──結末がアレじゃあ、あまりにもあんまりだゼ!」

 

 だから。

 

「何も知らないうちに、アカシアを殺す──それがウチらノーブルレッドの願いだ!」

「──だから、意味が分らねぇって言ってんんだろ!」

「それに、それでライブの人たちを──無関係の人たちを殺して良い理由になる訳がないだろうが!」

 

 ミラアルク達がして来たことを思い出し、奏と翼が怒り心頭で叫び返す。

 だが──無関係。その言葉を聞いたミラアルクは。

 

「──人が人であり続ける限り! 無関係じゃねぇんだゼ!」

 

 その言葉を否定し──ツヴァイウィングに襲い掛かった。

 吸血鬼のスペックを用いたゴリ押し。肥大し、強化された拳の連打を二人に浴びせていく。

 それを二人はそれぞれアームドギアで受け止めるが、ミラアルクはラッシュを加速させながら嘲笑うように砕き、そしてボディに当てていく。

 

「お前達の抵抗は──無駄なんだゼ!」

「くっ──」

「ガッ──」

 

 ガンッ腕の一振りで二人は吹き飛ばされ、その追撃をするべくミラアルクは全身の血液を、筋肉を、怪物の力を全開にしながら突っ込んでいく。

 

「お前達を殺すのはやはり、シェム・ハから譲り受けた神の力! ウチだけの世界で動ける最大の時間は──7秒! その7秒の間に片を付けさせて貰うぜ」

 

 そして、ミラアルクは──。

 

「来れウチだけの世界! 時よ止まれ!!」

 

 世界がモノクロに変わる。

 時が止まった世界で動けるのはミラアルクのみ。それはまるで怪物となった彼女を世界が拒絶し、孤独にしてしまうかのように。

 しかし──ミラアルクは恐れない。

 孤独は孤独でも、同じ孤独であるヴァネッサとエルザが居る。

 だから怖くない──怖いと思ってはいけないんだ。

 

「ウチはたくさん人を殺したからな」

 

 そして今も、これからもたくさんの人を殺す。

 

 ミラアルクは遺跡の天井を砕き巨大な鋼鉄を作り出すとツヴァイウィングの頭上に向けて投げ付ける。

 ミラアルクが触れればその物質はこちらの世界でも動けるようになる。

 だから彼女達を確実に殺すには、時が動き出してからだ。

 もう以前のような分身は使わせない。

 ミラアルクが飛び、ツヴァイウィングの上から拳を構えて襲いかかる。そして──時が動き出す。

 世界に色が戻り──目の前の鋼鉄を掴んで落下しながら叫ぶ。

 

「アイアンローラーだぁあああああ!!」

『──っ!』

 

 アイアンローラー。それは鋼の力を宿すアカシアの技の一つで──戦場に迸るエネルギーをリセットしながら相手にダメージを与える技。

 鋼鉄をツヴァイウィングが受け止めた瞬間、床に迸る電気のエネルギーが鋼鉄に集束、そしてミラアルクへとチャージされ──雷速のラッシュが、剛腕のラッシュが叩き込まれる。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

 鋼鉄越しに浴びせられる拳を前に翼と奏は──ギアのエネルギーを拳に纏わせて殴り返す事で、相殺を試みた。

 

「はぁあああああああああ!!」

「負けるかぁぁあああああ!!」

 

 上と下から猛烈な打撃を受け続けている鋼鉄がひしゃげ、形を歪ませる中、ミラアルクは両腕以外の血液を右腕の集中させていく。

 

「無駄で無駄な抵抗は──無駄なんだゼ! ウリィリャアアアアア!!」

 

 そして掲げた右腕に全てを込めて。

 

「ぶっっっっっっっっっ潰れろォオオオオ!!!」

 

 全てを終わらせる為に振り下ろし──下からの抵抗など無いと言わんばかりに鋼鉄が豪速球で落下し、遺跡の床に轟音を立てて巨大なクレーターを作り上げた。

 

「はぁはぁはぁ……!」

 

 それをミラアルクは見下ろし、ボコボコになった鋼鉄を見て、あれの下敷きになればいくらシンフォギアでも助からないと確信し。

 

 また、殺したのだと思った。

 

「──っ」

 

 しかし、それは──思ってはいけない。

 考えてはいけない事だった。

 ヴァネッサやエルザになるべく手を汚して欲しくないと思い、自分がやると決めた時に──誓った筈だ。

 殺した事を悔やむな。殺した相手に哀れみを抱くな。──殺したくなかったと思うな。

 

 覚悟を持って、目的の為に手段を選ばず、まだ生きていたいと、死にたくないと涙を流した人たちを殺したのだろう? 

 殺させないと自分を止めようとした人間を振り切り、殺し、守ろうとした人間の心を傷つけたのだろう? 

 

 だったら──今更、普通の人間のように罪悪感を抱くな。

 やりたくなかったと後悔するな。

 何故こんな事をしなくてはと被害者面をするな。

 

 そう誓ったのだろう──ミラアルク? 

 

「──ああ、そうだ。ウチは……ウチは!」

 

 

 

「──やっぱりオレ達はお前を許せそうに無い。だがな」

「──それでも涙を流している女の子を放っておく程、冷たくないぜ」

 

 

「──っ、な、うし」

 

 背後からの声に、ミラアルクが振り返ると同時に──二つの拳が彼女の顔面に突き刺さった。

 

「──!?」

「だから、一度本気でぶん殴った後に!」

「無理矢理話を聞かせて貰うぜ!」

 

 ツヴァイウィングの拳が──アカシアの力を解放し雷光と蒼翼となった二人の拳が、ミラアルクを吹き飛ばす。

 床に激突し、ひしゃげた鋼鉄を彼方へと吹き飛ばし、それでも勢いが止まらずミラアルクは床を何度も打ち付けながら吹き飛んでいく。

 時間を操る力を行使するだけの思考がなかった。ただ痛みが彼女の顔面を襲い──しかし、それ以上に二人の言葉が、ミラアルクの涙を案じ、彼女のしてきた事に怒りを抱き、それでも話を聞こうとするその姿勢に、胸が痛んだ。

 やがてミラアルクは壁に激突し、ようやく止まる。

 視界が開け、ミラアルクは時間の巻き戻しで傷を癒そうとし──こちらに向かってくる光に目が眩んだ。

 

「ミラアルク! お前がやった事は消えない。巻き戻せない。無かった事にはできない!」

「だが、これからの未来は変えていける! だから──」

『無駄無駄無駄と駄々を捏ねずに、少しは抗いやがれぇえええええ!!』

 

──雷光のフリューゲル。

 

 奏と翼が雷を纏い輝く羽と化した剣を思いっきり振り下ろし──ミラアルクの体から、ディアルガの力が消え去った。

 

 

 第十六話「この今日へと紡いできたメロディ」

 

 

 一方、地球では──。

 

「キリュルルルア!!」

「パルルルルルア!!」

 

 メガレックウザと化したコマチとパルキアが激突し──ピンチに陥っていた。

 

「キュリュウ……」

 

 ギラティナの赤い鎖を砕く事ができたのは完全に不意打ちのおかげだった。

 鎖の破壊を警戒したシェム・ハは、ディアルガとパルキアの鎖を破壊されないような立ち回りを支持し、空間を操る力を持つパルキアの攻略は難攻を示した。

 断絶させた空間を抜けてパルキアの攻撃を当てる事ができるのはコマチのみであり、他のメンバーからの援護は期待できない。

 加えて……。

 

「ウオオオオオオオ!」

「はぁああああああ!」

 

 弦十郎がシェム・ハに、マリアがディアルガに拳を叩き込む。

 そしてその援護を二代目、サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティが行うが……戦力不足だった。

 神殺しの力で何とか喰らい付いているが──自力が違い過ぎる。

 シェム・ハとディアルガをコマチの元へ行かせないので精一杯だった。

 キャロルやノエル、フィーネ達はダメージにより未だに復帰できていない。

 

 ──このままではイグニス達の犠牲は無駄になるのか? 

 

「……!」

 

 それだけは、ダメだ。

 

「──キュオオオオオ!!」

「──パルルルキュア!?」

 

 コマチが強引に体を割り込ませて、パルキアの空間を操作する力を突破する。

 そしてその長い体をパルキアに絡めさせて全身を締め付けさせて、鎖に思いっきり噛み付く。

 絶対に負けられない、と。

 

「パルキュア!」

 

 それに対しパルキアが激しく抵抗する。目の前に向かって亜空切断を放ち、裂け目を形成。そしてその先にありとあらゆる技を放ち、次々とコマチの体に当てていく。

 どれもがドラゴンタイプの技で効果抜群だ。コマチが痛みに耐えながら鎖に噛みつき。

 

「キュオ──パルルゥア!!」

 

 パルキアの放った亜空切断がバッサリとコマチの体を切り裂いた。

 

「──!」

 

 それでもコマチは鎖を放さなかった。

 イグニスと約束したんだ。絶対に勝つと。そしてみんなの未来を取り戻すと。

 命を賭けて、自分に明日を託した友がいる。

 だからコマチは──。

 

「キュルルゥアア!!」

 

 何がなんでも、彼らを解放しなくてはならないのだ。

 パキンッと音が鳴り、パルキアの赤い鎖が砕け散り──パルキアの目に理性が戻ると、この世界から出て行った。

 それを見送る事なくコマチはディアルガを見る。

 

 残り一体。

 

 しかしコマチの体は、力はボロボロで──だとしても諦めない。

 

「キュオオオオ!!」

 

 明日に向かう為に。

 

 

 ◆

 

 

「……」

 

 エルザとミラアルクが倒された事を感知したヴァネッサは、コントロールルームへと訪れていた。

 彼女達は最後までよくやってくれたと本心から思っていた。二人ともシンフォギア装者に連れられてこの場所に来ている。

 おそらくあの二人はヴァネッサを説得するのだろう。もうやめようと。やっぱり間違っていたのだと。

 そう言われてしまえば、ヴァネッサは悩んで──全てを打ち明けてしまうのかもしれない。

 

 それがたまらなく怖かった。

 

 だから。

 

 狂っているうちに、全てを終わらそう。

 

「だから──アナタ達には死んで貰うわ!」

『──!』

 

 空間転移でセレナ達の間をすり抜け、端末に触れようとするヴァネッサ。

 しかし響がギアを纏い回し蹴りで彼女の腹部を捉え、壁に叩きつける。

 遅れてクリスとセレナがギアを纏い、響が前に出ながら叫ぶ。

 

「二人はバラルの死守を! こいつはわたしが!」

『了解!』

 

 クリスとセレナが空間跳躍による直接攻撃を警戒するべく、ギアを構える。セレナの見えないリボンで結界を形成し、クリスのギアが少しの異音も聞き逃さないようにと集音能力を高める。

 そんな中、響は怒りの表情でヴァネッサと拳を交える。

 

「アンタ達のやろうとしている事は既に分かっている! 絶対に人を怪物にしない! コマチを殺させない!」

「その優しさが、愛が、執着が! アカシアを苦しめると何故分からないの!?」

「分かるかぁ!」

 

 ガインッと響の拳がヴァネッサを弾く。

 

「理由を言わないで、コマチを殺すって、それが救いだと言われて。納得できる訳がない!」

「だったら、アナタが知っている範囲で言ってあげる──アカシアはこの五千年間ずっと人を救い続けた!」

 

 ヴァネッサから無数のミサイルが放たれる。

 

「でもその五千年でアカシアが受け入れられたのはほんのひと握り! 人間は彼を恐れ、迫害し、そして殺す! 何度も何度も何度も!」

「くっ」

 

 レーザーが空間の穴を通じて響の死角から襲い、彼女の足が撃たれる。

 

「そして救えなかった命も多かった──それを彼は悔やみ、苦しみ、涙を流す!」

 

 それでもと響が踏ん張った所で、ヴァネッサのロケットパンチが巨大展開され、響を床に叩きつける。

 

「そして──そして! 例え救えたとしても、彼は必ず命を落とす! アカシアは死ぬのよ。悔やむのよ。泣くのよ!? その苦しみを永遠と味合わせる事なんて──許せない!」

 

 巨大な拳が響を押し潰していく。

 

「だから私は、アカシアを殺して──これ以上の苦しみを!」

「──だとしてもォオオオオ!!」

 

 しかし──セレナのリボンとクリスの狙撃がロケットパンチの軌道をズラし、その一瞬に響の拳がその巨大な鋼鉄を穿ち、破壊する。

 

「わたしは! この手で! アイツと手を繋いで──!」

「く──」

 

 ヴァネッサが空間転移で逃げようとし──四肢をリボンが巻き付け、さらにアカシアの力が込められた弾丸が命中し、炎の結界が作られる。

 そこに最速で最短で真っ直ぐに一直線に跳んだ響の拳が──。

 

「これからも生きていく!!」

 

 ヴァネッサの頬に叩き付けられ、神殺しの力がパルキアの力を打ち消した。

 吹き飛ぶヴァネッサは地面に転がって倒れ伏す。

 早く立ち上がらなくてはならない。

 そして目的を完遂する。

 その為にヴァネッサが顔を上げて響を睨み付け──。

 

「──ヴァネッサ」

「──もう、やめようゼ」

 

 そんな彼女に悲しみを帯びた声をかける者が居た。

 調と切歌に連れられたエルザと、ボロボロの状態で奏と翼に肩を貸して貰っているミラアルクだった。

 ヴァネッサは二人の姿を見て──涙を流す。

 どうして、と二人に問いかける事はできなかった。

 ただ──。

 

「そう……私たちは」

 

 やっぱり、無理だったのね。

 無力感に身を沈めながら、彼女は力を抜いた。そんなヴァネッサに二人が駆けつけ、寄り添い、涙を流す。

 三人で支え合い、目的の為なら何でもしてきたノーブルレッド。

 しかし──諦めてしまった仲間を、苦しんでいる家族を見てしまっては……もう無理だった。

 

「話を、聞かせてください」

 

 涙を流す三人に、クリスが声を掛ける。

 

「アナタ達がコマチの事を嫌っていない事は知っています。だから、どうか理由を」

 

 クリスの言葉に、ノーブルレッド達が顔を見合わせ──潮時かとそう判断し。

 

「──分かったわ。私たちが彼を殺そうとする理由。その理由は」

 

 口を開いたヴァネッサ。

 

「──」

 

 しかし──突如彼女の腕が分離し端末に突き刺さる。

 

「やはりアカシアを救えるのは我だけか」

『貴様、まさか──シェム』

 

 エンキの姿にノイズが走り──その姿がシェム・ハへと変わる。

 それと同時にヴァネッサの瞳の色が戻り──え? と戸惑いの声を出した。

 

「ヴァネッサ! 何を!」

「いや、まさか──これは!」

 

 エルザがヴァネッサの突然の行動に驚き、そしてミラアルクは何が起きたのかを理解した。

 しかしもう遅かった。月遺跡は……既にシェム・ハの手中にあった。

 ヴァネッサの躯体に潜んでいたシェム・ハが月遺跡の制御プログラムに乗り移ったのだ。

 ごっそりと体力を持っていかれたヴァネッサが倒れ込み、端末から腕が落ちる。

 

『よくやった怪物共──これで人間はこの星から消え失せ』

 

 ──我とアカシアだけが生き残る。

 

 その言葉を聞いたヴァネッサ達は──理解し、絶望した。

 

「まさか、シェム・ハ。私たちを騙して……!」

『──何故、愛する人が死する事を良しとする?』

 

 シェム・ハは──初めからアカシアを殺す気がなかった。

 それどころか人類を全て端末化させ、己の力にしようとしていた。

 人類を生かさず、アカシアを生かす。

 初めから──ヒトを捨てるつもりだったのだ。

 

「シェム・ハ……シェム・ハァァアアアア!!」

『愚かな怪物。そして人間。バラルの呪詛に阻まれながらも、繋がり続け、アカシアに縋り、苦しめる害虫共──今日、この日。全てを終わらせてくれる!』

 

 月の遺跡の崩壊と共に、消え失せよ。

 その言葉を最後に、遺跡のあちこちで爆発が起きていく。

 どうやら、月遺跡を爆破する事でバラルの呪詛を解きつつ、響達を抹殺するつもりのようだ。

 

「ギアを! ギアを纏わないと!」

「でも、ギアを纏っても──」

 

 切歌と調の焦りを含んだ声は──遺跡の崩壊に呑まれ、消えた。

 

 

 ◆

 

 

 ──か、に思えた。

 

 響達は生きていた。

 ギアに宿るアカシアの力が彼女達を「まもる」。そしてさらに、爆破の衝撃から守り、地球への帰還通路を形成するのは──怪物達のダイダロスの迷宮。

 

「アナタ達……!」

「……ごめんなさい。真実を言う時間も、勇気も私たちには無いわ」

 

 その身を犠牲にしながらヴァネッサが言う。

 ノーブルレッド達はシンフォギア装者達との戦闘、そして神の力の喪失、並びにダイダロスの形成により──命が尽きようとしていた。

 それでも響達を地球に送り届けようとしているのは──今のアカシアの望みを、大好きな人たちを死なせたくないと思ったからだろうか。

 

「──月読調に暁切歌」

「……何?」

「なん、デスか……!」

「──手を差し伸ばしてくれてありがとうであります。アナタ達の優しさは──温かったであります」

 

 エルザの言葉を聞いて──二人は涙を流す。

 しっかりと手を取ることができた。

 しかし、結局話を聞くことができずこうして別れる。

 本当に自分たちは救えたのだろうかと考えてしまう。

 それでも──二人は頷いた。エルザの為に。

 

「天羽奏。風鳴翼」

「……」

「……」

「ウチは……謝れない」

 

 ミラアルクは、涙を堪えて言葉を紡ぐ。

 

「だから忘れないでくれ。この極悪人のウチの事を。ウチの罪を」

「──当たり前だ」

「絶対に忘れない。絶対に許さない。だから」

 

 お前も忘れるな。自分がした事を。

 あたし達も忘れないから──だからあの世でしっかり謝って、ぶん殴られてこい。

 

「──ああ。そうさせて貰うゼ」

 

 二人の怒りに、言葉に──ミラアルクはまるで救われたかのようにそう返した。

 

「──立花響」

「──何」

「アカシアの事を手放さないで。何があっても」

「当然」

 

 ヴァネッサの言葉に、響が即答で返す。

 それに彼女は笑い。

 

「そう、例え──」

 

 彼が許されない罪を犯してしまったとしても。

 その言葉を最後にヴァネッサは──ノーブルレッドは消える。

 まるで自分たちの想いを無理矢理託したかのように。

 怪物はついぞ人間に寄り添う事はなく、伸ばされた手を掴む事なく。

 しかし──最後の最後に背中を押した。

 

 そして。

 

 響達は──地球へと帰還する。

 

 

 ◆

 

 

 ユグドラシルの稼働が停止していく。

 八紘の指示により動いていた緒川忍軍が各国機関に綱渡しをし──全人類がシェム・ハに対抗している。

 インターネットワークシステムを利用して稼働したユグドラシルシステム。

 ならばそれを止めるのもまたインターネットワークシステム。

 ファイアウォールを形成し、ユグドラシルシステムの妨害を行なっていた。

 

『米国大統領の名において、非常事態宣言を発動する! 腕に覚えがある者、及び各国機関は世界規模で発生しているハッキングに対抗せよ! 各端末の演算機能を死守する事でこれ以上の侵食を死守できる! 人類の総力で押し留めるのだ!』

 

 そして主導して行なっているのは──かつて日本に幾度もエージェントを送り、反応兵器すら使い、アカシアを何度も殺し、殺そうとした国であった。

 シェム・ハという強大な敵を前に、彼らはようやく──幾千年前のあの日と同じように、アカシアの隣に立つことができた。

 

「ちっ……」

 

 ユグドラシルが止まったのを見てシェム・ハが舌打ちをする。

 しかし、対応しようにもできない。

 弦十郎、そして錬金術師協会の四人による妨害がある為に。

 

 そして、コマチは。

 ディアルガと戦っているコマチは。

 

「──!」

 

 空を見上げた。地球に向かって落ちている7つの光。流れ星。

 彼はそれを迎えに行く為に、マリアを連れて飛び上がる。

 

「デュルルガァ!」

 

 それをディアルガが追いかける。

 もう、コマチには力がほとんど残っていたなかった。神との三連戦は瞬く間に力を削ぎ落としてしまっている。

 それでも──未来に繋げる為に、太陽に手を伸ばす。

 メガレックウザの体はぐんぐんと伸びていき、あともう少しで響たちに辿り着く場所まで来た。

 

「──アアアア!!」

「──っ! リッくん先輩!」

 

 そこにディアルガが己の力を、時を集束させて──解き放つ。

 

 ──ときのほうこう。

 

 神の一撃はメガレックウザを貫き、そして──。

 

「──ブイ!」

 

 粒子と化して消えていくメガレックウザの中から、コマチが飛び出す。

 身代わり。

 それが彼が神の力で最後に使った──いや、使わされた技。彼を生かすために友が死した後もコマチを守る為に行使した技。

 コマチはそれに心の中で感謝の言葉を送りながら──目の前に伸ばす。

 

「──コマチィイイイイイ!!」

「──ブイィイイイイイイ!!」

 

 ──させるか! とディアルガが再びときのほうこうを放ち──二人を飲み込む。

 

「──流れ星。堕ちて燃えて尽きて」

 

 

 

『──そしてぇぇええええ!!』

 

 ディアルガのときのほうこうが掻き消され、そこから出てきたのは──タイプ・ラストシンフォニーへと至ったコマチと響だった。

 二人は拳を突き出し、そのまま──ディアルガの鎖を穿つ。

 そしてその勢いのまま流星の如く地上へと駆け抜け、その後を奏、翼、クリス、マリア、セレナ、切歌、調が続き──ユグドラシルを数本折り砕きながら戦場に降り立ち、シェム・ハの前に立つ。

 シェム・ハは苛立ち舌打ちをし、先ほどまで彼女と戦っていた弦十郎達は呆然と響達を見る。

 

「──あれは」

 

 そんな中、ようやく意識を取り戻したフィーネは──ありえない物を見た。

 アカシアの力は凄まじく、その能力は決戦機能というのに相応しい。

 しかしシンフォギアにはエクスドライブという秘められた力がある。

 それを起動させるには膨大なフォニックゲインが必要であり、まさに奇跡の力。

 

「──まだ戦えるだと?」

 

 そして、アカシアは奇跡を起こす。

 

「何を支えに立ち上がる? 何を握って力と変える?」

 

 そして、アカシアはフォニックゲインを蓄積させ、それを解放させる力を持つ。

 

「鳴り渡る不快な貴様らの歌の仕業か……?」

 

 その二つの奇跡が同時に起きた時──彼女達は最強の力を手にする。

 

「そうだ──貴様らの纏うそれは何だ?」

 

 戦姫達は、アカシアの力を使いながらエクスドライブに至った。

 

「このような絶望。心は折り砕けるはず」

 

 その力の名は名付けるならば──アカシック・エクスドライブ。

 

「なのに何故戦える!? それはアカシアの力なのか!?」

 

 未来を取り戻す為の。

 

「貴様らの纏うその力は何だ……!」

 

 人と手を繋ぐ為の──。

 

「──何なのだ!?」

 

 ──切り札だ。

 

 響達は神と全く同じ力を発しながら、それとはまた別の力を解放しながら、シェム・ハの問いに応えた。

 

『──シンフォギアアァァアアアアアア!!!!』

 

 ──闇の中に、光が差し込んだ。




アカシック・エクスドライブ。
簡単にいうとイグナイトモジュールみたいなる超強化する力をアマルガム並みにバンバン使える力をさらに出力上げたやつとエクスドライブを掛け合わせた力。

今まで出てきたグループでどれが好き?パート2

  • 博士と最高傑作(ウェルキリカ)
  • 死を灯す永遠の輝き(錬金術師組と相棒達)
  • 陽だまりと太陽(響未来)
  • 雪解けの太陽(響クリス)
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