【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第八話「METANOIA」

「くっ……!」

「儂を倒していながら──果敢無き哉。全くもって見るに耐えぬ」

 

 訃堂の剣閃が煌めき、弦十郎は必死になって避ける。訃堂の一閃一閃が必殺で、避けるので精一杯だ。

 しかし彼が顔を顰めているのは訃堂の攻撃に対してではなく、彼の言葉にあった。

 

「俺は、ヒビキくんの──」

「迷いを含んだ力無き言葉よ」

 

 険しい表情を浮かべる弦十郎にそう言い捨てると、訃堂は刀を振るい続ける。

 それを横目に、翼はある事を確信していた。

 訃堂に弦十郎を殺す気がない事を。

 ただ単に足止めをし、自分たちの邪魔をさせないようにしていると。

 

(ウェル博士から予め聞かされていたが、まさか本当だったとは)

 

 ウェル自身も訃堂が協力してくれるかは賭けだった。

 それでも結果は見ての通りで、何故彼が助力してくれたのかは──訃堂自身にしか分からない事。

 

「アイツの力を借りるなんて、ますますオレと違うな!」

 

 ツバサが吐き捨てるように言い放ち、翼の剣を弾く。

 この世界の訃堂も翼の世界の訃堂も、どちらも外道だ。両世界で行われた所業は到底許せるものではない。

 違うのは──彼が誰に、何に誓いを立てた事か。

 しかしそれ自体は翼達には関係なく、彼女達は目の前の自分に集中す流。

 

「わたしは──お前に負ける訳には行かない!」

「ああ、そうかい! それはこっちも同じだ!」

 

 そう言い放ち翼を弾き飛ばして、翼はギアに眠る力を解放する。

 途端彼女は蒼い翼に包まれ──アカシアの力を解放する。

 

 ──アメノハバキリ・フリューゲル。

 

「お前達を倒して──夢の続きを!」

 

 空を飛ぶ翼の力が宿った斬撃がツバサから放たれ、あまりにも大きなエネルギーに爆発が起きる。

 蒼く光る羽の形をしたエネルギー残滓がひらひらと空を舞い──爆煙ごとそれら全てを吹き飛ばして出てきたのは、黄金の力を身に纏った翼。

 

「夢とはなんだ」

 

 アマルガム。

 ギアを形成するエネルギーのシールドでツバサの一撃を受け止めた翼は、その手に巨大な剣を携えてもう一人の自分に問いかける。

 

「眠り過去に縋り付き、明日に続く未来を……目を閉じ、耳を塞ぎ、歩みを止める事か?」

「……ッ」

「だとすれば──軟弱にも程がある!」

 

 二つの剣が激突する。

 

「そうではなかった筈だ──風鳴翼は、そういう女では無かった筈だ!」

「知った口を!」

「知っているからこその口だ」

 

 ガインッと音を立ててツバサの剣が弾かれる。どうやら一撃の重さは翼の方に分があるようだ。

 

「少なくとも──思ってもいない事を囀る貴様の口よりはマシだ!」

「本当にイラつくなお前は!」

「貴様が本当に胸惑わせているのは──己自身だろう!」

 

 ツバサが空を駆り、ヒットアンドアウェイで翼を翻弄しようとする。

 しかし、翼はそれを全て見切り、一撃一撃を丁寧に受け止めていく。

 

「何を!」

「いい加減目をかっ開け! 胸の内を曝け出せ──そして、己が使命を見失うな!」

「──黙れええええええ!」

 

 二つの刃は、言の刃は、激しさを増していく。

 

 

 

「うおらぁああああ!」

「グッ!」

 

 奏同士の戦いも激しさを増していた。

 通常状態では勝負が付かないと判断した二人は、早々にデュオレリックの力をそれぞれ使っていた。

 

 ──ガングニール・サンダーマグニフィセント。

 

 光彦との絆が生んだカナデの雷の力。

 

 ──ブリージンガメン。

 

 並行世界の奏が得た業火の力。

 

 炎のガングニールと雷のガングニール。

 二つの力は互角で、破壊のエネルギーが周囲を徐々に焦土へと変えていく。

 

「言葉は呪いと変わる。歌ですらそうだった!」

「なんだと!」

 

 炎の中を突っ切りながらカナデは叫ぶ。

 

「あたしが生きるのを諦めるなって言ったせいでヒビキは苦しんだ。光彦は歌が大好きなのに、その歌のせいでみんなを殺しちまう!」

 

 そんなの。

 

「悲しいじゃねえか!」

「……!」

「あたしはいつも空回りしてしまう! だったらもう何も言わない方が良いんだよ!」

「んな訳あるか!」

 

 雷で形成された槍を炎で焼き尽くしながら、奏は叫ぶ。

 

「アンタはアイツの先輩だろうが! だったらどっしり構えて見本になってやれよ!」

「何を言って……!」

「お前がそんなんだと、後輩のアイツは心配して、無茶して、傷ついてしまう!」

 

 翼を失い、一人だと思い込んで、そして並行世界の翼と出会って、認められなくて──結果響が傷ついた。

 それを見て──奏は自分が間違っていると自覚する事ができた。

 それでも認めるのが怖くて直ぐには受け入れられなかった。

 

「先輩ってのは辛いもんだ。後輩より前を歩かなくちゃいけねぇ。でもな、それで後輩を盾に自分だけ楽な方に逃げるのは違うだろ!」

「あたしは逃げてなんか──」

「だったら!」

 

 ゴオッと炎が唸り、奏はカナデの胸ぐらを掴んだ。

 

「なんで嘘吐くんだよ」

「──……ッ」

「そんなのあたしらしくねーぞ」

 

 一瞬カナデの動きが止まり──しかしすぐに雷鳴が轟き、強引に奏を振り解く。

 

「うるせぇ! もうテメェの説教はうんざりだ──黒焦げにして消してやる!」

「──黒焦げになって反省するのはテメェだよ!」

 

 炎と雷がぶつかり合い、轟音が絶え間なく響き鳴り響く。

 

 

 ◆

 

 

「くっ……」

「よく避けますね。見えていないのに」

 

 ──アガートラーム・マジカルベール。

 

 透明なリボンが小さなセレナを捕らえようとするが、悉く回避されている。同じセレナだからだろうか? それとも……。

 

「精霊さんの力、ですかね?」

「──!」

「わたしのこの力は妖精の力。似ているからか、見えてしまうのかもしれません」

 

 精霊ヴェイグ。世界蛇の戦いの際にセレナと心を通わせた精霊。

 その精霊はどうやら見えないリボンを見る事ができるらしく、セレナに助言していた。

 小さなセレナは、目の前の大人のセレナに叫ぶ。

 

「もうやめてください! こんな戦い……!」

「意味がない、と? 確かにあなたの言う通りなのでしょう」

 

 でも。

 

「それだけでは、優しさだけではヒビキさんも、リッくん先輩も救えなかった」

 

 だったら。

 

「優しさを捨てて、力で相手をねじ伏せないと──幸せになれない」

「そんな幸せ……!」

「そうです──意味がないんです! それでも!」

 

 セレナの不可視のリボンがセレナを捕らえる。 

 

「守りたい世界があるんですよ!」

「──それでも!」

 

 小さなセレナは、自分の言葉を認めない。

 

「優しさを失ったら──誰も笑顔で居られないんですよ」

 

 白銀の刃がリボンを斬り裂く。

 

「優しいだけではダメだと。力不足だと。役に立てないと……自分が嫌になる」

「……」

「だからといって今までの自分を捨てたら──悲しいんです」

 

 小さなセレナの言葉は、大きなセレナに突き刺さり。

 

「──そんな事!」

 

 認めてはならないと、力で黙らせようとリボンを鞭の様に振るった。

 

(何とかしてあそこまで引き付けないと……!)

 

 希望を絶やさない為に、セレナは諦めない。

 

 

 ◆

 

 

「ちょっせい!」

 

 クリスが弾丸をばら撒きつつ、この世界のクリスへと突貫する。

 手数で押し切るつもりだ。

 しかしこの世界のクリスに──苦手な距離は無い。

 近づいて来たクリスにあえて自分から距離を詰め、握り締められた拳が振り抜かれる。それを紙一重で回避しながらクリスは手に持った二丁拳銃で弾丸を放つが、弾道を予測したこの世界のクリスが最小限の動きで避ける。

 そして鋭い蹴りが放たれ,それをクリスは腕で受け止めるが弾き飛ばされる。受け止めた腕がジンジンと痛み、思わず悪態が出た。

 

「狙撃手が格闘戦してんなよ!」

「そんなのそっちの勝手な思い込み」

 

 冷たくそう言い放ち、この世界のクリスはライフルを構える。

 銃口を向けられたクリスは慌ててその場を飛び退き、一瞬遅れて地面に風穴が空けられる。

 それを冷や汗を垂らしながら見て、クリスは叫んだ。

 

「なんでそんな力がありながら……」

 

 イチイバルが姿を変え、ガトリングとなり数多の弾丸が解き放たれる。

 その嵐の中、この世界のクリスは踊るように回避しながら時折狙撃をする。

 狙撃をいなしながらクリスは叫んだ。

 

「人は何度だって間違える! けどな、それを殴ってでも止めるのが友達じゃねぇのか!」

「うるさい……! 耳障り……! もう放って置いて!」

 

 拒絶の言葉にクリスは。

 

「放って置ける訳ないだろうがっ!」

 

 狙撃弾でガトリングを破壊されながらも、その爆発音に負けないように叫び返す。

 

「こちとら託されているんだよ! お前の家族に! お前の仲間に」

 

 クリスの脳裏に悲しみの表情を浮かべるアカシアと命を散らしながらも仲間の幸せを願うウェルが過ぎる。

 

「何より──気に食わないんだよ!」

 

 クリスはこの世界に来てから気に入らない事があった。

 

「別に夢の世界に逃げる事を悪いとは言わねぇ! あたしだって逃げ出したいと思った事は何度もある!」

 

 こんな筈ではなかったと。もっと良い未来があった筈だと──いつも思う。

 

「でもそれじゃあダメなんだよ。理想ばかり追いかけて真実から目を逸らしたら取り返しのつかない事になる!」

 

 ヒビキの行いを、彼女の顔を見ていると──より一層そう思えた。

 

「その前に止めろよこの馬鹿野郎!」

「それができないからこうなったんだ!」

 

 特大ミサイルと巨大なレーザーが真正面から激突し、閃光が迸る。

 その中を二人のクリスが走り抜け、銃とライフルが激突する。

 

「わたしだってヒビキには……!」

「……あぁ。その調子だ」

「……!?」

「その調子でどんどん──本音を曝け出しやがれ」

 

 ニヤリと笑みを浮かべてクリスがそう宣い、この世界のクリスは怒りの炎を燃え上がらせた。

 

 ──イチイバル・レイジングフレア。

 

「──その口、焼き尽くしてやる……!」

 

 

 それに対抗する様に、クリスもアマルガムを使い黄金の力をその身に纏う。

 

「ぷちょへんざだ。──さぁ派手に火遊びと行こうぜ!」

 

 破壊の弾丸が火を吹く。

 

 

 ◆

 

 

 ──シュルシャガナ・バリエーションシルバー。

 ──イガリマ・グリーンソウル。

 

 地上が草原に覆われ、脚を着ければ蔓が拘束し。

 空を移動すれば流動する銀が覆い尽くす。

 

「デデデデース!?」

「っ、厄介……!」

 

 切歌と調は緑と銀の拘束から逃れる為に絶え間なく走り続けていた。

 足を止めても、無闇に跳んでも捕まる。

 自然と選択肢が狭まれていた。

 

「隙……!」

「だらけデス!」

 

 そこにこの世界の切歌が斬りかかり、調が後方からビームを放ってくる。

 受け止める事も、防ぐ事も許されず、二人は避けるしか無い。

 

「っ、切ちゃん!」

「調!」

 

 さらに切歌と調を分断する様に攻撃してくる為、二人は必死になって纏って動こうとする。分断を許してしまってはたちまち火力差でゴリ押しされてしまうが為に。

 自分達と同じ故に、自分達の強みを理解し、それを崩そうとしている。

 強き絆で困難を打ち砕くのではなく、絆を壊して相手を弱くする。

 そんな戦い方だった。

 生き残るよりも邪魔者を殺す戦いだった。

 

「いい加減、倒れろ……!」

「これ以上苦しいのは、辛いのは、悲しいのは──嫌なのデス!」

 

 悲痛な叫び声だった。

 もうどうしようもない現実に心が折れてしまい──未来を見るのを諦めた叫び。

 二人の刃が重なり、緑と銀が混ざった斬撃が切歌と調を襲う。

 

 しかし、耐える。

 それは、認めてはいけない叫びだ。

 

「──偽善でも何でもいい」

「それでも忘れないで欲しいデス。あなた達の為に命を賭けた人がいる事を」

 

 アマルガムを発動し、そのエネルギーシールドで受け止めていた彼女達は、黄金の力で押し返す。

 

「優しさを捨てたらダメデス!」

「託された想いを踏み躙ったらダメ」

 

 ウェル博士の夢の世界を破壊してこの世界に入ってきた彼女達は、憎き敵だろう。

 しかし復讐心でがむしゃらに戦い続ければ──彼女達の心は擦り切れる。

 それではダメだ。

 誰も喜ばない。誰もが悲しむ。

 だから彼女達を止めなくてはならない。

 偽善者と罵られようと。お気楽者と蔑まれようとも。

 

「切ちゃん、忘れないでね」

「分かっているデス。──絶対に勝つために、あそこに行くデス!」

 

 サババの二振りの刃同士が激突する。

 

 

 ◆

 

 

「──諦めなさい」

 

 無傷で佇むガングニールを纏ったマリアの視線の先には。

 

「くっ、かは……」

 

 血を吐き、苦悶の表情を浮かべるアガートラームを纏ったマリアが居た。

 

「実力の差は歴然よ、わたし。自分自身だから分かるでしょう──わたしとあなたの違いが」

 

 何処までも冷たい目で自分自身を見下すマリア。

 ふいに各戦場へと視線を向けて、波導で相手と味方の動きを感知し、口を開く。

 

「何か考えているようね」

 

 でも、とマリアは続ける。

 

「無意味よ。あなた達の使う力とわたし達のアカシアの力は互角のようだけど、世界自体がこちらの味方。ヒビキがアダムの相手を終えれば、直ぐにフォニックゲインを吸い取られて終わり」

「……ッ、その前にあなた達を倒せば」

「──だから」

 

 一瞬でマリアの前に移動し、蹴り放つ。

 まるでボールの様に吹き飛ぶアガートラームのマリア。

 

「それが無理って言っているのよ」

 

 吹き飛んだ先に移動して殴り、また移動して槍で弾き、そして再び移動して蹴り……それを延々と繰り返し、白銀の鎧を削っていく。

 

「時間が経てば経つほどあなた達は疲れていく。タイムリミットもある。でも倒せないし、時間稼ぎもできない。そんなあなた達に何ができるの? わたし達よりも弱いあなた達が──」

「──随分と強さに拘るのね」

「──」

 

 一際強く拳が振り抜かれ、地面に沈められるマリア。

 一瞬意識が飛び、しかし痛みで覚醒する。

 そんな彼女の頭を強く踏み付けるガングニールのマリア。

 

「弱かったから、守れなかった」

「……ッ」

「弱いままなら強くなれる──そう、信じていたのに」

 

 かつて教えられた言葉が無意味だったと彼女は語る。

 

「救えないなら、守れないなら──弱いままで居られない!」

 

 拳に波導が込められる。

 

「わたしは強くなくてはいけなかった」

 

 そしてその拳はふり抜かれ、地面が揺れ、大地が砕け散り──しかし血塗れとなったマリアがその拳を握り締めながら立ち上がる。

 その姿にガングニールのマリアは目を開き──口の中で誰かの名前を呼ぶ。

 

「本当にらしくないわね──わたし」

 

 ギロリと睨み、マリアは。

 

「あなた強いけど──今までで一番弱く見えるわ」

 

 そう言って白銀の腕は──深々と相手の頬に突き刺さった。

 吹き飛ばされるガングニールのマリア。今まで自分が与えたダメージを考えれば、大して効いていない筈なのに。その拳はズキズキと痛む。

 

「確かにわたしは──わたし達は一人では勝てない」

 

 だったら。

 

「みんなで勝つ! 手を繋いで!」

 

 マリアがそう叫ぶと同時に──各方向から幾つかの流星が降り注ぐ。

 その流星はガングニールのマリアの側へと落ち──この世界の装者達が軽傷を負いながらも倒れ伏していた。

 

「翼! 奏! 切歌! 調! クリス! セレナ!」

 

 そして、アガートラームを纏ったマリアの側にも彼女の仲間の装者たちが降り立つ。

 全員が戦うべき相手をこの戦場に連れて来た。

 何が目的なのか、今一理解できないこの世界のマリアは──目の前の自分達の上空にいつの間にか陣取っている一人の錬金術師を見つける。

 

 彼女はキャロル・マールス・ディーンハイム。

 基本世界では奇跡の殺戮者であり、この世界とある世界では奇跡の完遂者であり。

 

「高く付くぞ──」

 

 彼女の歌は、70億の絶唱を凌駕するフォニックゲインだ。

 

「オレの歌は!!」

 

 キャロルの歌で生じたフォニックゲインが、並行世界のマリア達に力を与える。

 マリア達が止める間も無く──奇跡の力が顕現する。

 

 エクスドライブ。何時だってシンフォギアに勝利を、意志を通す絶対的な力を授けた彼女達の希望の歌が此処に現れた。

 相対するのは自分自身。纏うのは 奇跡と絆が生んだ異界の獣の力。

 

「さて、精々気張れよシンフォギア」

 

 消耗したキャロルは息を切らしながらそう言って戦線を離脱し。

 

「──負けられないのよ!」

 

 アカシアの力に縋っているマリアが泣きそうな声で叫び。

 

「──負ける訳にはいかない!」

 

 奇跡の力で立ち上がったマリアが強い意志で叫び。

 

 装者達は踊る様に、荒々しく、歌い紡ぎながら戦闘を開始した。

 

 

 ◆

 

 

「──ちっ。厄介な」

 

 その光景を見つめるヒビキは思わず舌打ちをした。

 アダムとの戦闘に気を取られてエクスドライブを許してしまった。あれだけのフォニックゲインを吸収するには時間が掛かる上に、できないだろうと判断した。

 

「何か言い残す事ある?」

 

 ヒビキは倒れ伏し、夢の世界へと消えていくアダムに問い掛ける。

 

「──無いさ、特に。もう吐きまくったからね、人類への恨み言は」

「──そう」

 

 その言葉を最後に呆気なくアダムはこの戦いからリタイアし。

 

「さぁ、次はアンタ達の番だ」

 

 そう言ってヒビキは視線をアダムから次に戦う相手へと向ける。

 そこにはアカシア、未来、そして響が居た。

 ヒビキの瞳には感情が込められておらず、まるで作業をするかの様に無機質だ。そうしないと心が保てないから。

 

「でも神獣鏡は厄介だな」

 

 向こうの世界の未来を見てヒビキは呟き。

 

「手伝って、未来」

「──うん。ヒビキ」

 

 翳りが入った己の陽だまりを呼び。

 陽だまりは光を失ったお日様に従う。

 

 ヒビキと未来がそれぞれファウストローブを纏い、シンフォギアを纏った自分達を見据える。

 

「最後の戦いだ──これで全てを終わらせる」

 

 神の力を解放させながら、ヒビキは強く響を睨みつけた。

 

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