【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第十一話「始まりの(バベル) アクシアの風といっしょに」

 歌い終わり、アカシアと響達は世界に降り立つ。

 もう彼らの間に言葉は要らなかった。歌がアカシアと響達を繋ぎ、お互いの想いを……ずっと一緒に居たいという気持ちを理解した。

 

 故にアカシアはこの選択に後悔は無い。

 

 アルセウスとの融合を解いたアカシアの体は──光の粒子と化して消えようとしていた。

 それを見た並行世界の響達は目を見開き、何でと口にする。

 

『──戦う前から既に歴史の修正は完了していたんだ』

「そんな……それじゃあ!」

 

 結局救えていないじゃないか、と並行世界の響は顔を歪める。

 この世界の響達も泣きそうな顔をしていた。一緒に歌を唄っているうちに理解し、どうにかできないのかと語りかけ──アカシアは時間切れだと伝えた。

 

 

 だからあの時間を、一緒に唄った時間を愛おしげに想う。

 

 しかし響は違う。

 

「──結局変わらないじゃないか……!」

 

 響は思い出す。エンキに言われた事を。

 過去は変えられない。確定した未来がある故に、今彼女達が居るこの時間も、未来においては過去だ。

 そして未来で見たレポートには響のした事が書いており──この結末も初めから決まっていた、という事だ。

 

「意味なんて無かったんだ! わたしの行動は……!」

 

 響の泣き叫ぶ声に。

 

『違うよ響ちゃん』

 

 しかしそれをアカシアが否定する。

 

『あのまま消えていたら──僕は忘れる所だった。忘れて良いと思っていた』

 

 最後に一緒に唄った事でそれは変わったとアカシアは言う。

 

『響ちゃんの見た未来で、みんなは僕を覚えていた──僕はその未来が良い』

「──」

『忘れて欲しくない。人助けとか関係ない。僕の我儘剥き出しな……祈りだ』

 

 だからどうか。

 

『僕の事を覚えておいて。忘れないで──お願い、します』

「……っ」

 

 響は涙を流し。

 

「ばか」

 

 震える声で何とか言葉を紡ぎ。

 

「忘れる訳ないでしょっ!」

 

 アカシアを強く強く強く見据えた。

 

「お前の事を、忘れる訳ないだろうが! ……今までも、これからも」

 

「オレはお前が居なければどうなっていたか──忘れるくらいなら腹を切る」

 

「コマチの事を忘れたら……わたしはわたしを許さない。だから!」

 

「響を助けて、支えて……みんなが、わたしが感謝している。それを忘れるなんて事ないよ!」

 

「アナタみたいな特異な存在、忘れる方が難しい。だから……ずっと覚えておく」

 

「コマチは衝撃的な事ばかりしてたから忘れるのは無理デス! ……本当に無理、デスよ。忘れるなんて」

 

「リッくん先輩の優しさを忘れるなんて──そんなの無理です。だってわたしはアナタの優しさに憧れたのだから」

 

「──この力も、この勇気も、永遠にわたしと共に、未来に紡いでいくわ」

 

 忘れない、と装者達はアカシアに想いを込めて言い、響も想いを伝える。

 

「絶対に忘れない。アンタと過ごした日々も。アンタに救われた事も。アンタの事が大好きだった事も! ──約束する」

『──ありがとう、響ちゃん』

 

 響の言葉にアカシアは心の底から喜び──体の殆どが消え掛かっていた。

 

 もう、お別れの時間だ。

 

『──最後にもう一つだけ』

 

 アカシアが最後の我儘を彼女達に言う。

 

『歌を唄って欲しい』

 

 それはかつて、アカシアの、コマチの誕生日の話の時に彼が言ったお願い。

 

『最後はみんなの……みんな歌を聴いて消えたいんだ。みんなの歌が好きだから』

 

 そんな彼のお願いに、彼女達は。

 

「もちろん」

 

 と答えて、並行世界の自分達から託されたギアを解き、本人に返した。

 ……彼を見送る為のギアは自分達のギアを使いたいのだろう。

 アカシアとの想い出が詰まった、彼が大好きなシンフォギアで。

 

 装者達は──歌い出す。

 

 

 ◆

 

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl(託す魂よ)

 

「なんだこいつ? ネズミ……か?」

「ピカチュウ、チャア!」

 

 初めて出会った時は、その不思議な姿に奏は警戒していた。

 

「うわ、あざとっ」

「──」

 

 しかし警戒してるのもアホらしくなる程に無害で。

 

「〜〜〜あああ! 可愛いなお前〜!」

「ピカ!?」

 

 ただの可愛い動物だと思ってて。

 

「ありがとう、光彦」

「チャア〜」

 

 でも自分の事を真剣に考えてくれて、誕生日プレゼントまでくれて、いつの日にか家族の様に想ってて。

 

「死ぬな! 光彦! ……死なないでくれ」

 

 その家族に命を助けられて。

 

「──光彦?」

「ブイ?」

 

 再会して。

 

「光彦って呼んで良いのか? でも今のお前は」

「ブイブイブイ!」

「──ったく、相変わらずお人好しなんだから」

 

 変わらない彼の存在に救われて──だから悲しかった。

 彼ともう二度と会えないのが。

 しかし彼を見送る為に、彼女は歌を送る。

 

 

 ◆

 

 

Imyuteus amenohabakiri tron(天を羽撃くヒカリ)

 

「煮ても焼いても食えなさそうだな……」

「ピカ!?」

 

 初めは妙な生き物だと思った。

 

「やいへんちくりん! オレの姐さんに何かしたら許さないからな!」

「ピッピカー……」

 

 奏が取られると思い、変な対抗意識を持っていた。

 

「ピカピ」

「……ん。大丈夫だ。ありがとうな光彦」

 

 しかしそれをすぐに収まり、奏と同じ様に仲良くなり。

 

「誰が絶壁・アメノハバキリだコラァ!」

「ピッ」

 

 時には喧嘩し。

 

「光彦、ありがとうな。素直に嬉しいよ」

「ピカチュウ!」

 

 誕生日プレゼントを貰えるほどに親密になり。

 

「お願いだ光彦……また一緒に馬鹿なことしよう」

「チャア〜」

 

 命を散らして奏を助け、消えた彼に手を伸ばし、届かず涙を流した。

 

「ブーイ」

「相変わらずだなお前も」

 

 そして再会することができ。

 

「ブイブイブイ!」

「あーん? 別に無理してねーよ。てかそれはオレの台詞だ──今度はオレが守るから」

 

 誓いを胸に、剣に立てて──しかしそれが叶わず。

 後悔しながら、納得しないまま。

 それでも弟の頼みを聴いて彼女は歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Killter Ichaival tron(弓に番えよう)

 

「ブイブイ!」

「とも、だち?」

 

 公園で初めて会った時は、言っている意味が分からなかった。

 

「ブーイ!」

「美味しい? そう……ありがとう。嬉しい」

 

 でも段々と一緒に居る時間が楽しくなり、もっと一緒に居たくなって。

 

「ごめん、コマチ」

「ブイ……」

 

 すれ違いつつも、それでもコマチの優しさを感じて。

 

「──うん。これからもよろしくコマチ」

「ブイ!」

 

 響やフィーネ、翼達と繋がりひとりぼっちじゃなくなって,それはコマチのおかげで。

 だからここで別れる事が悲しくて、嫌で。

 それでも彼の為に歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Rei shen shou jing rei zizzl(沸き立つ未来)

 

「大丈夫?」

「ブイ?」

 

 初めて会った時はかつての響の様に思えた。

 

「そっか……君がずっと響の事を守っていたゆだね。ありがとう」

「ブイ!」

 

 お日様にずっと寄り添っていた事に感謝し、それはやがて好意となる。

 

「助けて──響。コマチ」

 

 シェム・ハの言う通り二人に嫉妬し、二人の事が好きだと自覚して、伝えたい想いがある事を知った。

 

「これからは響やコマチの隣に居たい──だから覚悟してねコマチ?」

「ブイ? ……ブイ!」

 

 宣戦布告を聞いてもコマチは理解しておらず、その純粋な姿が愛おしかった。

 でも結局宣言通りにできず、彼女は誕生日プレゼントに歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Granzizel bilfen gungnir zizzl(紡ぐ魂よ)

 

「リッくん先輩! リッくん先輩!」

『だからリッくんは……あぁ良いよ、うん。だから泣きそうな顔しないで』

 

 初めての存在にドキドキして、いつも甘えていた。ずっと一緒に居たいと思った。

 

「リッくん先輩! わたしを鍛えてください! わたし、アナタみたいになりたい!」

『……うむ。分かった。でも俺の修行は辛いぞ』

 

 いつしかそれは憧れとなり、リッくん先輩との時間は充実していた。

 

「あの、リッくん先輩……何でもないです」

『……? うん?』

 

 そして憧れは恋へと変わり。

 

「リッくん先輩!」

『さよならだ、マリア』

 

 しかし別れ、彼の意志を受け継ぎマリアは強くなった。

 それでも彼女はリッくん先輩に敵わなくて、弱い所もあって、でも彼女はそれが自分の強さに繋がる事を分かっていて。

 マリアは教えてくれたリッくん先輩に感謝しながら、歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Seilien coffin airget-lamh tron(腕に包まれて)

 

『セレナは優しいな』

「えへへ。ありがとうございます!」

 

 彼女の優しさはリッくん先輩から褒められて、大人になっても忘れなかった。

 

「何で、こんな事に……!」

『泣かないでセレナ。最期は笑った顔を見せてくれ』

 

 だからリッくん先輩との別れには涙を流し、リッくん先輩はそんな彼女の優しさを愛おしく思っていた。

 

「ブーイ」

「ふふふ。可愛いなリッくん先輩」

 

 そして再会した彼は自分達との想い出は失われ、それでも一緒に居られて幸せだった。

 

「きゃー! リッくん先輩! マリア姉さん! 最高です!」

「ブイ……」

「セレナ……」

 

 愛し過ぎて暴走して、それに巻き込まれる二人は疲れた顔をしながらも、楽しい時間を過ごしていた。

 その時間が永遠に失われると思うと悲しい。でもそれを見せないように、彼を悲しませない様にと彼女は優しく歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Zeios igalima raizen tron (太陽のように強く)

 

『そんな! アナタも一緒に帰るデスよ! それがキリカの願いデス!』

『ごめん。でも俺はこのやらかしのケジメを付けないといけない』

 

 キリカの力で目覚める際に、切歌はコマチの優しさで五体満足で起きる事ができた。

 感謝しつつも、無理をする彼に少し怒っていた。

 

「コマチ! 次はこれで遊ぶデスよ!」

「ブイ!」

 

 その後の日常は楽しく、切歌が遊ぼうと言えばコマチは嫌な顔せず切歌に付き合った。

 ウェルや調には心配掛けたくなかった為、彼の優しさは嬉しかった。

 

「コマチ……キリカの事忘れないでくださいね」

「ブイ!」

 

 そしてキリカに救われたコンビとして、二人だけの約束があった。

 その約束にコマチを忘れない、も追加されて。

 切歌は彼の為に歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Various shul shagana tron(月のように優しく)

 

「解剖してみたい……」

「ブイ!?」

 

 初めはただの興味だった。

 

「切ちゃんとまた遊んでくれたんだね。ありがとう」

「ブイ!」

 

 切歌と仲良くしている事に感謝していて、大親友の友達程度と認識だった。

 

「……呆れるほどお人好し」

「ブイ?」

 

 しかし共に過ごしていくうちに、コマチの優しさを心地良く思う様になった。

 

「アンタが居なくなったらみんな悲しむ。だから勝手に居なくなったら切り刻むから」

「ブーイ……」

「……冗談」

 

 だからずっと居たいと思った。

 これからも居たいと思った。

 それが敵わないから。

 切り刻む代わりに歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Balwisyall nescell gungnir tron(繋ぐ魂よ)

 

 

「ブイブイブ〜イ」

「わたしに触れないで」

 

 初めは拒絶していた。

 

「期待したくない……! 光に焦がれて、この身を焼いて痛い思いをするのなら──一生闇の中で良い。独りで良い」

 

 闇の中に身を落とし続ける響を、コマチは諦めなかった。

 

『──だとしても、俺は君に手を差し伸ばす事を諦めない』

「──っ」

 

 響はコマチに救われ。

 

「──ブイ」

「──コマチ!」

 

 ネフィリムに食い殺された時は頭がおかしくなった。

 アダムに囚われた時は死にたくなった。

 ……コマチの滅びの歌を唄った過去を変えられなかった時は悲しかった。

 

「コマチ。わたしはアンタの事が大好き」

 

 だからこの別れの時が訪れるのが怖かった。

 永遠に来なければ良かったと思った。

 でも──彼は生きて欲しいと言う。歌って欲しいと言う。

 ならば──。

 

「お誕生日おめでとう──コマチ」

 

 彼女は彼の為に歌を唄う。

 

 

 ◆

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal(何億の愛を重ね)

 

 彼女達の想いがアカシアに届く。

 

Emustolronzen fine el baral zizzl(我らは時を重ねて)

 

 

 アカシアの想いが彼女達に届く。

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal(奇跡はやがて歴史へと)

 

 

 彼の最期は、大好きなみんなの歌と共に。

 

 

Emustolronzen fine el zizzl(誇り煌めくだろう)

 

 最期は呪われた滅びの歌ではなく、彼女達の祝福の歌により──見送られた。

 

『みんな』

 

 アカシアは涙を流しながら、歌ってくれたみんなを見下ろす。

 彼女達は──泣いていた。彼と同じ涙を流していた。

 別れるのが寂しい。辛い。嫌だ。

 

 しかし──もう未来を否定する事はないだろう。

 何故なら彼と約束したからだ。その約束を忘れない限り彼女達は大丈夫だろう。

 それを感じ取ったアカシアは。

 

『ありがとう』

 

 その短い言葉に想いを込めて彼女達に送り──世界から、歴史から、過去現在未来全てから消滅し、滅びの歌は消え去った。

 

 その直後、彼女達は──彼の名を叫んだ。泣きながら。別れを惜しみながら。忘れない様に。

 愛する者の名を。

 

 

 第十一話「始まりの(バベル) アクシアの風といっしょに」

 

 

「んあ……」

 

 とある町のとある一軒家にて、一人の子どもが目を覚ました。

 上体を起こし、体をグッと伸ばし……何故か頬を伝っていた涙を拭った。

 

「何で俺泣いているんだろ……」

 

 その子どもは寝ている時に見た夢を思い出そうとし、できなかった。

 ただ、夢の中にでてきた人達の事は愛おしく想い──何故そう思ったのか思い出せない。

 不思議な感覚に首を傾げていると、ガチャリと扉が開く。

 

「あ、起きてる」

「……ノックくらいしてよヒビキちゃん」

 

 その子どもの言葉に、ヒビキと言われた少女は鼻を鳴らして答える。

 

「起こしてあげたんだから感謝しなよ」

「……はいはーい」

「……」

 

 その反抗的な態度にヒビキは。

 

「はいは一回」

「いでででで! 分かった! 分かったからギブ!」

 

 その子どもにアームロックを掛けてお仕置きし、子どもの悲鳴が響き渡る。

 

 それがこのシンフォギア地方ソロタウンの、朝から見られる日常だった。

 

 

『決まったー! 四天王サンジェルマンのリザードン戦闘不能! よって勝者はチャンピオンマリア!』

『ワアアアアアアアア!!』

 

 昨日録画したチャンピオンと四天王によるエキシビジョンマッチを流しながら、その子どもはヒビキと朝食を摂っていた。

 パンを食べながらキャロル、プレラーティ、カリオストロ、そして今まさにサンジェルマンのシンフォギア地方四天王を下したマリアをボケーと見つめる。

 

「相変わらずチャンピオンのルカリオは強いなー。ヒビキちゃんは戦った事あるんだっけ?」

「まぁね。でも勝てなかった」

 

 故に今はノーマルタイプのジムリーダーとして研鑽しつつ、マリアに挑む時を待っているらしい。

 やる気満々の彼女に思わず苦笑いする。

 

「そういうアンタこそ、今日からジム戦巡りするんでしょ? 気合入れてよね」

「んー、分かっているけど」

 

 そう言って思い浮かべるのはこの地方のジムリーダー達。

 電気タイプのカナデ。飛行タイプのツバサ。草タイプのキリカ。鋼タイプのシラベ。フェアリータイプのセレナ。エスパータイプのミク。そして目の前のヒビキと最強のジムリーダーのドラゴンタイプのゲンジュウロウ。

 全員ととある縁で知り合いな子どもは、げんなりとした。

 

「勝てる気がしない……」

「バッジの数によっては手加減するから。ほらそろそろ博士の所に行くよ」

 

 ヒビキに手を握られ、その子どもはズルズルと引き摺られていき、この町の研究所へと向かう。

 そこには初心者用のポケモンが用意されており、この子どもも今日受け取る予定なのだ。

 

「ですから! それはそちらの管轄でしょう! あまり僕の愛娘に頼らないでください!」

『喧しいこの親バカ! こちらに居る以上私に従って貰う!』

「だったらナスターシャ教授に──ってフィーネ!? ……通信切りやがった」

 

 はぁ、とため息を吐き電話を置くこの研究所の主、ウェル博士。

 彼はこちらに向くと、子どもに気付き表情を明るくさせて声をかける。

 

「おお! アカシアくん! よく来てくれたね! ヒビキくんも付き添いご苦労様です」

「いえ」

 

 子ども──アカシアは緊張した表情でウェルと向き合っていた。

 そんな彼にウェルは優しい笑みを浮かべながら、ポケモン図鑑、傷薬十個、モンスターボール二十個、ランニングシューズを渡す。

 

「そう固くならないでください。これからの旅は君にとって楽しいものになる筈です。子どもは旅を通して成長する──自由に行きなさい。怪我もして良いし、心配をかけても良い。ただ絶対に後悔をしない選択を」

「──はい!」

 

 ウェルの激励の言葉に、アカシアは強く頷いた。

 その姿に彼は微笑み、三つのモンスターボールを台の上に置く。

 

「さて、このモンスターボールには三体のポケモンが入っています。他の地方と違って少し経路が違いますが……」

 

 そう言ってウェルが三つのモンスターボールから解放したのは。

 

「イーブイ。ピカチュウ。リオル。どれも成長すれば君にとって最高のパートナーになるでしょう。さぁ、誰を選びます?」

「──」

 

 ウェルの問い掛けに、アカシアは一体のポケモンを選びモンスターボールを譲り受ける。

 残ったポケモンをモンスターボールに戻しながら、ウェルは満足そうに頷きながら言った。

 

「──では行きなさい! 君の冒険に!」

 

 アカシアは、選んだポケモンとヒビキと共に研究所を後にした。

 

 

 

「えっと、最初はデュオタウンだね」

「そ。道中の草むらには野生のポケモンが居るから気をつけてね」

 

 そんな会話をしながら歩いていると、彼らの視界に一人の幼い子どもが転んでいるのが見えた。

 

「あ」

 

 それを見たアカシアは当たり前の様に助けに行こうとし。

 

「よう、坊主大丈夫か?」

「……うん」

「よし、泣かなかったのは偉いぞ!」

 

 そう言って別の青年がその幼い子どもを助け起こした。

 幼い子どもは一言二言青年と話した後、浮かんでいた涙を引っ込めて笑顔を浮かべ、青年に手を振りながら走り去っていく。それを見ている青年はまた転けない様にと苦笑しながら声を掛け。

 

「そっか。僕が無理して助けなくても大丈夫なんだ」

 

 アカシアは、何故かそう思った。

 

「僕だけが頑張らなくても、人は助け合って生きていける。祈らなくても、奇跡なんか無くても──転んでも立ち上がって、支え合って未来に向かって歩いていけるんだ」

「……アカシア?」

 

 ヒビキが不思議そうに問いかけると、アカシアは日陰を吹き飛ばす様な明るい笑顔を浮かべて。

 

「何でもない!」

 

 元気にそう答えて走り出した。

 その後をはヒビキは首を傾げながらも、しかし優しい笑みを浮かべながら追いかける。

 

 これからこの少年には様々な出会いが、試練があるだろう。

 しかし彼は一人ではない。

 何故なら彼は人と手を繋ぐ事ができるから。

 もう、自分を犠牲にする事はない。

 

「──む!」

 

 ガサゴソと草むらが揺れ、アカシアはポケモンが入ったモンスターボールを構える。

 

「よし──キミに決めた!」

 

 唯一持っているポケモンに信頼を込めてそう叫んで、彼はモンスターボールを思いっきり投げた。

 

あ! やせい の ポケモン が とびだしてきた! 

 

 そして彼は今この瞬間に、ポケモントレーナーとして未来へ一歩踏み出した。

 その一歩は──とても小さく、しかし大きなものだった。

 

 

 こうして、一つの物語が終わり。

 神様も、人も、ポケモンも知らない歴史が刻まれ。

 新たな物語が始まった。

 

レポート  これから  こと  かきこみますか? 

 

 

 

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次回 戦姫絶唱シンフォギア 〜キミに決めた!〜 最終話
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