【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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戦姫絶唱シンフォギア 〜キミに決めた!〜
最終話「紡ぎ -Rhapsody-」


 ……はてさて。

 腕を組み頭を傾ける……いわゆる考えるポーズはできない為、首を傾げて……俺は困っていた。

 しかし俺の乏しい……というには波瀾万丈な人生経験では、今の状況を打開する術ないし、良いアイデアも思いつかない。

 まぁ、なんだ。つまりどうしようもないというやつだ。

 ハァ……とため息を吐きそうになり、グッと堪える。そういう暗いのはただの現実逃避で、俺はしたくないと思った。

 

 ……俺は何処にでもいる普通の人間だった。

 名字二文字に、名前が三文字の何処にもでもいる普通の人間。

 社会の歯車となり、ほどほどに疲れて家に帰って飯食って風呂入って寝る。

 

 そして死んで生まれ変わって償い切れない罪を犯し。

 また別世界に行き、そこでも俺はやらかして──でも素晴らしい出会いがあった。

 

 記憶を、想い出を駆ける。鮮明に想い出されるのは──お日様と虹と閃光。

 最期に見たのはみんなの涙と笑顔。そして──歌。

 

 俺はアカシアだったモノ。

 あの時歴史の修正により消えた筈なんだけど……。

 

「ブイ……」

 

 水溜りを覗き込むとそこにはイーブイが居た。

 ……いや、この表現は正しくないな。

 

 ──イーブイのまま、コマチのままの俺が居た。

 

 頭の中に疑問が浮かんでいく。

 目が覚めた時は戸惑い、どういう事だと叫びたかったが……

 

「──ブイ」

(多分アルセウスの仕業なんだろうな)

 

 こんな事ができるのは彼だけだ。……俺を憐れんだのだろうか。

 だから俺をこのままの状態でこの世界に置いている。彼は人が好きだから、元人間の俺を助けようとしたのかもしれない。あっちでもそうだったし。

 

 ただ。

 

「ブイ……」

(あれって……)

 

 そういう事、だよな。

 俺は先日ある町に行った。そこには懐かしい雰囲気があり、感じた気配を探すと──俺と響ちゃんに似た人がいた。

 響ちゃんだけではない。この世界には、あの世界と似た人達が生まれて、暮らして、生きている。多分アルセウスがこっちに帰って来る時にみんなの魂を少しだけ持って来たのだろう。

 そしてこの世界の理に乗せて転生させて、あの少年──俺の生まれ変わりと一緒に居させている。

 

 つまり彼も彼女達も、そして俺も偽物じゃない。本物だ。

 向こうのみんなは覚えてないみたいだけど──不思議と悲しくも寂しくもなかった。

 幸せそうに、仲良さそうに暮らしているからだろう。

 だから俺は──その場を立ち去った。

 

 あの光景を見れただけで満足だった。

 この世界に辿り着けたと思うと──これまでの旅路は無駄ではなかったのだと、救われた思いだった。

 

 だからこの世界のみんなはこの世界の俺に託した。

 

「ブイ……」

 

 よって俺はこうして余生をのんびり過ごそうとポケモンしかいない森に居るのだけど……。

 

「……」

 

 ふと青空に浮かぶお日様を見て──もう一度響ちゃんに会いたいと思うのは、俺の弱さだろうか。

 そんな事をぼんやり考えながら、俺は昼寝をした。日陰が心地良い。

 

 だんだんと意識が無くなっていく中──。

 

「──ようやく見つけた」

 

 俺はその声に驚き、思わず立ち上がった。

 

 

 最終話「紡ぎ -Rhapsody-」

 

 

「まったく。わたしの為なら消えても良いなんて二度と言わないで」

「うう……ごめんなさい」

 

 コマチと別れて十年後。

 響は自分の妹、小町に対して凄く怒っていた。

 先ほど、過去からやって来た響におもいでプレートのコピーを見せて貰ったのだが……やはり自分が行くべきだったかと悩んでしまう。

 

「ごめんなさい……」

「……はぁ。仕方ないから許す」

 

 そう言ってやれば、小町は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 ──あれから大変だった。

 コマチとの別れはとても悲しくて、立ち直れなくて……それでもみんな未来に向かって歩き出した。

 

 奏さんと翼さんはツヴァイウィングを引退した後、彼女達に憧れていたエレオノーラを歌手としても装者としても鍛え上げて後継者にした。今ではスッカリTVに引っ張りだこの彼女を溺愛している。

 また、戦地で保護した男の子、名前は光彦。

 光彦くんを養子にして、今では人気俳優。電話でも親バカ炸裂で正直鬱陶しい。

 ただ翼さんの女タラシが移ったのか、よくエレオノーラにしばかれている。……素直になれば良いのに。

 

 クリスは世界中を飛び回って、彼女の両親と同じ様に歌で世界を平和にしようとしている。

 行く先々で求婚されては断っているらしい。そろそろ良い年なんだから受ければ良いのに、というと凄く怒られた。……何でだろう。

 

 未来はリディアンの教師になった。小町もリディアンに通っており、よく懐いているしよく可愛がられている。

 二人はとても仲良しで、見ているとどうしても昔を思い出してしまった。

 

 調と切歌はウェルさんと共に会社を設立して、社会に貢献している。ウェルさんが居るからか、いつも凄い発明品を世に出しては騒がられている。

 最近ウェルさんの財産目当ての女が彼に言い寄っているらしく、調と切歌がその事で愚痴っていた。彼女達の母親になる人はハードル高そうだ。

 

 マリアはアイドルになった。セレナの策略らしい。最初は嫌がっていた彼女だけど、今ではノリノリでアイドル活動をしており、ファンからはアイドル大統領と呼ばれている。

 ナスターシャさんとセレナに支えられて、彼女は幸せそうだ。

 

 キャロル達も忙しそうだ。SONGが介入できない仕事にコッソリと協力して解決している、歴史の裏から人類を見守る守護者みたいになっている。

 サンジェルマンさんは三代目統制局長としての仕事にやりがいを感じながらも疲れているらしい。とりあえずまた過労で倒れない様にして欲しい。

 

 SONGのみんなは相変わらずだ。エルフナインはキャロルとよく会っているらしい。

 緒川さんも弦十郎さんも現役でバリバリ仕事をこなしている。

 藤堯夫妻はお子さんの教育にヒーヒー言っているとか。送られた写真を見る限り、楽しそうだ。

 

「ねぇ、お姉ちゃん」

「なに?」

「もし歴史が変わっても、わたしはわたしだったと思う」

 

 小町の言葉は、わたしを気遣ってのものだった。

 多分、コマチがあのまま生きていたらこの世界はどうなっているのか、と考えているのだろう。

 消えるのかもしれない。もしくは分岐した並行世界として残るのかもしれない。または融合して未来が変わるのかもしれない。

 

 それは今となっては分からない。

 

「小町、気にしないで。わたしはもうこの未来を否定しない──前を向いて歩くって、忘れないって約束したから。だから」

 

 へいきへっちゃらとわたしは笑って──。

 

 

「──また、か」

 

 ──予知夢を見終えた。

 

 あれからわたしは未来の光景を夢として見るようになった。

 コマチの力か、もしくはディアルガの力かは分からない。

 前のわたしだったらコマチの居ない未来に絶望したのだろう。

 でも今は違う。夢の中で妹に語った様に──忘れないから。

 

「さて、行きますか」

 

 わたしは着替えて学校に行こうとし。

 

『──緊急事態だ! 響くん!』

 

 SONGからの緊急通信に意識が切り替わる。

 

 ──仕事の時間だ。

 

 

 ◆

 

 

 世界は完全に平和になった訳ではない。

 悪い人間も居り、何かしら良からぬ考えを持つ者が暗躍し、一般人に危害を加える事もある。

 野良錬金術師はアルカ・ノイズを使うし、並行世界から逃げて来た犯罪者がこの世界を自分の世界にする、という事もあった。

 その度に響達は戦った。

 アカシアに、コマチに託されたこの世界を守る為に。

 

「──ウェルさん!」

「おや、来ましたね響さん」

 

 弦十郎に言われた場所に向かうとそこには既にウェルが居た。他の装者達はまだ急行中で、響が一番乗りな様だ。

 ウェルは誰かと話していたのか、響が駆け寄って来ると通信を切って彼女に向き直る。

 

 ウェルが蘇った時、誰もが喜んだ。

 彼の命のおかげで今の彼女達がある。ウェル自身は「キリカくんに蹴り返されてしまいました」とお茶らけていたが──調と切歌に泣きつかれた際に申し訳なさそうにしていた事から、彼自身も思うところはあるらしい。

 

「さて、少し時間がありますね」

 

 ウェルは何か知っているのだろうか。SONGが感知した高質量のエネルギー体。それがこの世界に真っ直ぐ来ている。故に全装者に連絡が行き、侵入地点だと思われる此処──ユグドラシル跡地に集結しつつあった。

 そんな中、ウェルはのんびりと響に話し掛ける。

 

「響さん。僕の信条は知っていますか?」

「……?」

 

 いきなり何だろうか? 響は首を傾げ、怪訝な表情で彼を見た。

 しかしウェルはいつもの調子で胡散臭く「ククク」と笑うと、バッと両腕を広げてまるで演者の様に叫んだ。

 

「クソッタレなバッドエンドよりも! ほろ苦いビターエンドよりも! ご都合主義満載のハッピーエンド! それが僕の心情です!」

「……それは」

 

 よく知っている。だから彼はキリカを救おうと必死だった。呪いに犯され死んでいくノエルを救えなかった事を凄く後悔した。響の心を守る為に自ら悪役となり命を賭けた。シェム・ハとの戦いでは片腕を犠牲にした。そして最後には世界を、響達を救う為に一度死んだ。

 よく……知っていた。

 

「響さん。僕はね、納得していないんですよ……本当は」

「……」

「夢の世界ではアカシアが居なくなってもみんな立ち直ると信じていました──あなた達の強さに甘えて。そして今まさにあなた達は立ち上がり、辛くても、悲しくても、苦しくても……彼との約束を守る続けている」

 

 歴史が修正されたのに──彼女達はアカシアの事を忘れなかった。約束の通りに。

 それはとても美しい光景であり、しかしウェルからすればビターエンドの残酷な光景だった。

 

「よく我慢できますね。尊敬します」

「……」

「──でもごめんなさい。僕だけは我慢できなかった」

 

 ──ビキリッと空間に亀裂が走る。

 

「──ウェルさん?」

「やっぱり僕はどうしてもハッピーエンドが良いみたいだ。なので」

 

 パキンッ! と甲高い音が響き、そこから出てきたのは。

 

「──ちょっと頑張ってみました」

 

 あり得ない光景だった。

 もう会えないと思っていた。

 だからこの想い出を、記憶を──彼との日々を胸に未来に向かって歩いて行こうと決めていた。

 しかし──それはもうできない。できる筈がない。

 

「──感謝しますよ」

「別にアンタの為じゃない」

 

 ウェルの言葉にその少女はツンとした態度を取りつつも、その声は何処までも優しいものだった。

 その少女は響と同じ顔をしていた。以前戦ったもう一人の自分よりも、より響に似ていた。性格も目つきも、瓜二つと言っても良い。

 黄色と紫の装甲を解いたその少女は、オレンジ色の服に黒のハーフパンツ、そして紫色の靴へと変わる。

 

「アンタが諦めなくて、もう一人のわたしが手を伸ばしたから──わたしの歌が、手がこの子に届いた」

 

 ──かつてウェルは過去のコマチの行動から打開する術を探していた。

 そしてそれは響が絶望してからも模索し続けて、ついに見つけた。

 エンキは未来は変えられないと言った。もし変えたとしても歴史の修正力で元々そういう時間軸になると響に教えた。

 残酷な真実だった。

 しかしその残酷な真実を覆した者が居る。

 

 アカシア……いや、光彦だ。

 

 光彦は奏が死に、翼が泣き叫び、自分が呆然とその光景を見ている事しかできない未来を予知夢として見ていた。

 しかし彼はそれを変えた。自分の命で。奇跡の力で。

 

 つまり本当は──未来を変える事はできるのだ。

 響一人ではダメだった。

 響二人では届かなかった。

 しかし響三人の繋がりが──運命を、未来を変えた! 

 

「死ぬ前にもう一人のマシな方の僕に頼んでおきました。ユリウスさんにそちらの響さんを見つけて貰って、助力して貰う様にと」

 

 全てが終わった後にアカシアを迎えに行ってほしい、と。

 しかし話は簡単ではなく、こちらの世界とアルセウス達が居る世界はとても遠かった。かつて世界蛇が手を出そうとし諦める程の距離。

 それをこの響は人の力で──エレクライトとシンフォギアの力で覆した。

 

『──本当に驚いた』

 

 空間の裂け目から別世界の響を追いかけて来たアルセウスがようやく追い付く。

 神の力を全力で使っても間に合わなかった。追いつけなかった。それはつまり人の力が神の力を超えた証明であり──神からの独立を意味する。

 

「奪い返しに来たの?」

『そうではない──お礼と別れの言葉を言いに来た』

 

 そう言ってアルセウスは頭を下げた。

 

『ありがとう。その子を救ってくれて』

 

 彼ではアカシアを完全に救う事はできなかった。

 魂を分けて人としてあの世界で幸せに暮らせる事しかできなかった。こちらのアカシアは平和な世界で暮らせるも、あの時の温もりはもう戻せないと諦めていた。

 

「良いよ。礼なんて。わたしがやりたかったから。もう辛い涙を流して欲しくなかった」

 

 だから。

 

「──わたしはその為にこの世界に来たんだ」

『──ありがとう』

 

 アルセウスはそれ以上は言わなかった。

 そして次に彼女の胸の中に居るアカシアに視線を送る。

 

『アカシアよ。よく頑張った』

「……」

『もうお前は自由だ。その身に咎は無い──十分過ぎるほどに苦しんだ。償った。だから』

 

 どうか、自分を許してやってくれ。

 どうか、幸せになる事を許してやってくれ。

 どうか──。

 

『──居るべき場所に、居たい場所に帰るんだ……! ──コマチ!』

「──」

 

 アカシアは──コマチは、別世界の響の腕の中から恐る恐る抜け出し、この世界の大地に降り立つ。

 そしてゆっくりとゆっくりと歩き出し、少女の足の前で止まり、空を、お日様を──大好きな響の顔を見上げる。

 

 ──ある日、気がつくと人の身を捨て、獣へと落ちたコマチ。

 神の仕業か、もしくは呪いか──その時の彼は知らなかった。忘れていた。

 嘆けども怒れどもその身変わらず、滅びの歌を唄い、大切な人を絶望へと落とした。

 

 

 だとしても、と必ず自分の家に……響ちゃんの居る家に、未来に帰ると胸に誓った。

 

 その道中、何度も寄り道しようとも──道を閉ざされようとも、絶たれようとも。

 

 ついに彼は──帰って来た。

 

「──ブイ」

 

 ただいま、とコマチが涙を流しながら響に言うと。

 

「──バカ!」

 

 響は膝を着き、コマチを抱き締めて。

 

「──ずっと一緒に居るって言ったのに! 独りにしないって言ったのに!」

 

 それでも彼女はもう独りではなかった。

 

「辛かったら一緒に居るって言ったのに!」

 

 しかしその声は届けども、どうしようもなくて。

 だからこの温もりが嬉しかった。

 

「──もう離さない」

 

 ギュッと強く優しくコマチを抱き締め。

 

「──おかえり……コマチ……!」

 

 響もまた涙を流しながら、ずっと言えなかった言葉を言う事ができた。

 

 二人は涙を流し続けた。これからずっと居られる事に嬉しくて、未来を一緒に歩く事ができて。

 その光景はウェルがずっと見たかった──まさにご都合主義満載のハッピーエンドだった。

 

 

 その後、他の装者達も到着し、コマチが帰って来た事に涙を流して──喜びを分かち合った。

 

 

 最終話「紡ぎ -Rhapsody-」

 

 

「コラァ! 待たんかい光彦!」

「ブイブイ!」

 

 SONG本部の食堂でコーヒーを飲んでのんびりしていた奏は、二人の声に呆れた表情で顔を上げる。

 

「テメェいい加減絶壁言うのやめろ! 最近成長しているんだぞ!」

「──ブ」

「よし三枚おろし決定!」

 

「相変わらずだなーあの二人」

 

 ──天羽奏。

 ツヴァイウィングとして翼と共に世界中で歌い続けながら、装者としても戦い続ける。

 また、戦争で家族を失った子どもを積極的に保護する様になり、最近は周りからママ呼ばわりされて困ってるとかなんとか。

 

 

「今日という日は許さんからなー!」

 

 ──風鳴翼。

 ツヴァイウィングとして奏と共に世界中で歌い続けながら、装者として戦い続ける。

 奏が保護する子ども達の世話を自分も見ていた所、何故かパパ呼ばわりされてしまう。それをコマチが胸のせいかな? と煽られてキレて追いかけ回し、弦十郎や奏に説教させるのがテンプレと化している。

 最近告白してフられた。

 

 

 ◆

 

 

「それで此処に避難して来たと」

「まったくお騒がせ野郎な奴デス」

「ククク。最近は暇ですからね。それくらいが良いですよ」

 

「まぁ、その通りデスね! 楽しいのが一番!」

 

 ──暁切歌。

 調とウェルの助手として活躍中。最近は学校の成績も上がり、学年では調とツートップ。

 街中でナンパをよくされるが、過保護な二人によって蹴散らされており「アタシ行き遅れ確定デス」と肩を落としている。

 その時はウェルに責任を取って貰おうと画策している。

 

「本当に興味深い。解剖して良い?」

「ブイ!?」

 

 ──月読調。

 学会に様々な発表をし、注目され始めている。

 最近はクローン技術で完全な肉体の欠損部分の再生を目指している。特に腕。

 ウェルが最近モテ始めて唾を吐くことが多くなった。コイツ絶対に結婚できないだろうと思っている。

 

「勘弁してくださいよ。怒られるのは僕なんですから」

 

 ── ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス。

 暇だからと裏で色々とした結果牛耳ってしまい、管理が面倒だと錬金術師協会に丸投げしたらブラックリストに載せられた。

 新技術を人類に小出ししつつ、どうすれば娘達に理想の彼氏ができるかと難関問題に日夜頭を悩ませている。

 

 

 ◆

 

 

「では行って参ります」

「くれぐれも怪我の無いように、三人とも」

「は〜い」

「当たり前なワケダ」

 

 ──錬金術師協会。

 裏社会から人類を見守りつつ、ウェルがぶん投げて来た案件に追われている。

 それでも充実した日々を過ごしており、彼女達は戦い続ける。

 そして。

 

「行くぞ──イグニス」

「カゲ!」

「早く終わらせようねカメちゃん!」

「ゼニ!」

「無理はしたらダメなワケダ、ジル」

「ダネ!」

 

 その傍らには掛け替えの無い相棒が居た。

 

 

 ◆

 

 

「──ふ。世界を識るにはまだまだ時間が掛かりそうだよ、パパ」

 

 ──キャロル・マールス・ディーンハイム。

 錬金術師協会に所属しながらも、家族と共に旅を続けている。時折エルフナインと連絡を取り合っているとか。

 そして。

 

「ぎゃー! また鬼畜コンボ決めやがったこのコンビ! この氷溶かせ!」

「シャワ」

「シア」

「この性悪!」

 

「リー」

「ええ、風が気持ち良いですねリーお姉様」

「リー」

「え? 風が泣いている? よくわかりませんが……」

 

「アハハ! こっちだゾ! ブー太郎!」

「ブー、スタァ!」

「大丈夫だゾ。転んでもそうそう壊れ──ぬあー!?」

「ブースタァッ!?!?」

 

「ガリィの奴、派手に転けたな」

「ダース……」

「……」

「フィア♪」

 

「ブラ……」

「フィー……」

 

「相変わらず騒がしい奴だ」

 

 思い思いに過ごす家族達を何処か呆れた目で見て。

 

「ヴイ!」

「ん……そうだな。これがオレとお前が見たかった世界だな」

 

 再会する事ができた最愛の家族と笑い合った。

 

 

 ◆

 

 

「そっか! みんな元気そうなんだね!」

「うん。あの世界はもう大丈夫」

 

 ──並行世界にて。

 アカシアに力を貸した装者達は、別世界の響の言葉にホッとし喜んだ。

 

「守るべき者が居るのなら、あのわたしももう道を間違えないだろう」

「まぁ、また何かやらかしたらぶん殴りに行くぜ」

 

「自分にしょーじきになれてるかねぇ、あの世界のあたし」

「大丈夫だよ。響もわたしも居るから」

 

「なにはともあれ!」

「良かったね」

 

「……」

「どうしたのセレナ?」

「いや、あの世界のわたし大きかったなって」

「……そうね」

 

「それじゃあ行くね」

「もう行くの?」

「うん──まだやりたい事あるから」

 

 それだけ言って別世界の響は世界を渡り、響達も日常に戻って行く。

 

『──』

 

 その光景を見届けた一体の神は、自分の世界へと戻って行った。

 

 

 ◆

 

 

 ──SONGメンバー。

 

「ふむ……」

「どうかなさいましたか司令」

「いや、親父の言葉を思い出してな」

 

 あの戦いの後、訃堂は自ら牢屋に入った。

 その後はおとなしくしており、何か企んでいるのでは? と各国機関は警戒している。

 

 

 

「──ふん。戻ったかモノノケめ」

 

 そして当の本人訃堂は、コマチがこの世界に戻って来た事を知ると。

 

「──ふっ」

 

 誰も見た事の無い、子どもの様な……友愛に満ちた顔を浮かべて微笑み。

 

「果敢無き哉──もう手放すでないぞ」

 

 一人コッソリと祝福の言葉を送り──友を守ろうとしていた防人から、冷徹な護国の鬼に戻り目を閉じる。

 

 

「……」

 

 実際に戦った弦十郎は他の皆と異なった考えを持ち、ずっと考え込んでいる。

 

「──オレもまだまだだな」

「……僕も同じです」

 

「そういえば兄貴が翼に見合いの話を」

「また拗れますよあの親子」

 

 

 

「ぬぁー疲れたー!」

「何徹目?」

「五」

「寝ろ」

「嫌だ」

 

 藤堯と友里はいつも通りの会話をし。

 

「ダメですよ藤堯さん! 睡眠はしっかり取らないと!」

「エーフィさんが復活して随分としっかりするようになりましたねエルフナインさん」

 

 そこにエルフナインとナスターシャが加わり、いつものようにワイワイと楽しく日常を過ごす。

 

 

 

 

「わたしがアイドル!?」

「ええ、そうです。もう応募してしまいました」

「アナタまた勝手なことを……!」

 

──セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。

姉がアイドルに憧れているも、それを隠しているのを敏感に察知。素直になれない彼女の為に、そして自分の為にマリアをトップアイドルにする為に暗躍を始める。

ゆくゆくはコマチと共演させて可愛いオブ可愛いを全国に流したいと思っている。

 

「わたしはやらないわよ!……なんで笑ってるの!?セレナ!」

 

──マリア・カデンツァヴナ・イヴ。

最近学校の同級生から告白されて困り、さらにセレナの奇行にも頭を悩ませている。

最近気合と波導でLinker無しでギアを纏える様になり、弦十郎との模擬戦でも白星が増えてきた。各国機関がマリアの行動に注視し、任務で国を渡れば緊急警戒態勢を敷く国がある。そういう国は大抵後ろ暗い事をしており彼女に潰される。

最近アイドル大統領と呼ばれる様になり赤面する。

 

「リッくん先輩助けて……」

 

 

 ◆

 

 

「アブー」

「きゃああああああ!! 可愛いー!」

「未来、それ毎回する気?」

 

 ──小日向未来。

 立花家に生まれた次女小町に最近メロメロになっている。小町も彼女によく懐いており、初めての言葉が「みくねーちゃ」で立花家を撃沈させた。

 

『まったく……我が依代ながら嘆かわしい』

『良いじゃないですか可愛くて! シェム・ハさんのアカシアさんに向けた偏屈な愛に比べれば』

『こやつ、言うようになったな……』

 

 ちなみにシェム・ハとは精神を共にしており、主に戦闘時には協力して貰っている。

 

「まったく……このままだとお子さん取られますよ?」

「ははは。案外その方が立派になるかもね」

「情けない事言わないでよアナタ」

 

 ──雪音クリス。

 最近は未来に付き合って小町の所に顔を出している。未来の暴走で抑えているが、彼女も小町を溺愛している。

 最近大学でナンパされて響に相談するも「付き合ってみたら?」と言われて喧嘩の真っ只中。でもすぐに仲直りする。

 

「そういえば響は?」

「響なら確かコマチと──」

 

 

 ◆

 

 

「……良い空だ」

 

 青空を見て、響は笑顔を浮かべる。

 

 ──立花響。

 

「ブイブーイ!」

「あ、ようやく来た」

 

 彼女は取り戻した日陰を離さない。

 

「さて、今日は何処に行こうか。久しぶりのデートだし。水族館? 動物園?」

「ブイ!」

「でもなんか食べられそう」

「ブイ!?」

「映画館……はペット禁止だろうし」

「ブイブイ!!」

 

 お日様が青空の中輝く限り、日陰はできるように。

 

「まぁ、のんびり歩いて行こう──ね、コマチ」

「ブイ!」

 

 彼女達は共に未来に向かって歩き続ける。

 花咲く勇気で、愛で、奇跡で──温もりある手で繋いで。

 

 

 八千八声、泣いて血を吐く不如帰。

 人が人でいる以上、これからも争いは無くならず、誰かが涙を流すだろう。

 

 だとしても、彼女達が居る限り胸の歌は無くならない。

 希望は潰えない。奇跡だって起こしてみせる。

 そしてそんな彼女達の側には、一匹の獣がいる。

 

「ブイ、ブイ、ブーイ♪」

「〜〜♪」

 

 ふと響はガングニールを(そら)に翳す。コマチと一緒に居た胸の歌を。

 それを見たコマチは楽しそうにクルリと体を回し、響に寄り添った。

 二人は歌を唄いながら、幸せそうに歩き続ける──何処までも。

 お日様が輝く青空の下を。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 戦姫絶唱シンフォギア 〜キミに決めた! 〜

 

 THE END

 




最後のドット絵はあおい安室さんより頂きました!ありがとうございます!

そしてこれにて完結!皆様ここまでお付き合いしていただきありがとう!
後日活動報告の方にて後書きめいた事を書かせて頂きます。

一番好きなお話は?

  • LET'S GO ピカチュウ編
  • 翳り歩む日陰編
  • 月穿つ恋文編
  • 波導・ガングニール編
  • 獣の奏者キャロル編
  • 神殺英雄戦姫ヴァルキュリア編
  • 想出のフリューゲル編
  • LOST SONG編
  • LAST SONG編
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ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。(作者:サーッ・タドコロ)(原作:Fate/)

大変や!▼ワイが、アーサー王伝説の元になった時代と国に転生してもうたで!▼っていうか、運良くマーリンと会えたからそうだとわかっただけで、ワイはアーサー王伝説のことなんてほとんど知らんで。▼なんか、色んなゲームの元ネタとして使われるくらい有名だったり、有名な騎士の名前とかちょこちょこ知っとるくらいやわ。▼あと、一応前世の知識みたいなのはあるのに、前世の自分につ…


総合評価:10403/評価:8.12/連載:20話/更新日時:2026年03月08日(日) 16:47 小説情報


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