【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第四話「離れてもなおその想いは」

 

「──私の推測通り、響ちゃんはガングニールと融合しているわ」

 

 気を失った響を二課の本部にて保護しメディカルチェックと共に彼女の身体を調べた結果──立花響は融合症例、と呼称される存在だと判明した。

 翼や奏といった装者と少し違うシンフォギアの適合者。

 彼女の爆発的な力の強さは、融合によって得られた埒外のもの。

 他にも謎は多く時間を掛ければ、さらに詳しい事が分かるだろうが……。

 

「そんな事はどうでも良い」

 

 しかし、それ以上に──奏はショックを受けていた。

 

「結局……あたしの不手際じゃねーか……!」

 

 響の胸の傷は、奏のガングニールの破片でできたもの。

 響の心の傷は、ライブ後にできたもの。

 ……響は、この二つの傷により、戦場に立つ事となった。

 

 それを聞かされた奏の心中は、荒れに荒れていた。

 

「ちくしょう……ちくしょう!!」

「奏……」

 

 奏の慟哭を聞いた翼もまた、胸に痛みを感じていた

 あのライブ事件で失ったもの、傷付いたものがあまりにも多過ぎると改めて自覚した。しかしそれを取り戻すには──あまりにも無力だと思い知る。

 

「……!」

 

 弦十郎もまた、己の拳を強く強く握り締めていた。

 大人である自分の不甲斐なさで、子どもが傷付いている──彼の信条からすれば、それは決して看過できない事。

 彼は、己自身に強い怒りを覚えていた。

 

 そんな彼らを見ながら、了子はあくまで冷静に報告を続ける。

 

「今のところ肉体に不調や変化は見られないわ。ただ、精神の方は……」

「……やはり」

「ええ。あの子を奪われた事……いえ、守れなかった事が余程ショックだったようね……」

「現在、彼女は──」

「医務室で眠って貰っているわ──目覚めた後どうなるかは分からないけど」

 

 了子の脳裏には悪夢に魘されている響と、そんな彼女の手を握る未来の姿があった。

 

 

 第四話「離れてもなおその想いは」

 

 

 どうも。友達に誘拐されてしまったイーブイことコマチです。

 正直さっさと帰って響ちゃんを安心させたい。今頃泣いてそうだ。

 響ちゃんの故郷でずっと傍に居ると誓ってから、門限を過ぎると情緒不安定になる事があるんですよね……今日は絶対に不安定な日だ。

 

 だからさークリスちゃん? 家に帰してくれない? 

 

「っ……」

 

 そう問いかけると物凄く辛そうな顔をして目を伏せる。

 ……いやいや。誘拐されたのコッチ! 

 それなのに何で誘拐した方のクリスちゃんが辛そうにしているの!? 

 

「……ごめん」

 

 いや、別に責めた訳じゃ……。

 いやでも誘拐自体はイケない事だし……。

 でもクリスちゃんだから何か考えがあったのかもしれないって信じたいし……。

 だからと言って響ちゃんを傷つけるような事をして欲しくないし……

 ぬーん。頭がこんがらがってきた……。

 

「みょうちくりんな毛玉デスね」

 

 ……カッチーン。

 この可愛いイーブイボディに対してみょうちくりんだと!? 

 何者だ!? 名を名乗れ! 

 

「お? 名前ですか? あたしの名前はキリカデスよ!」

 

 キリカデス? 鎌持ってそうだな。もしくは死神。

 

「キ・リ・カ! 見た目通りの獣レベルの頭してるデスか?」

 

 こ、こいつ……! 

 

「キリちゃん。言い過ぎ」

「なははは! そうなのデスね! インプットしておくデスよ!」

 

 さて、とひとしきり笑った白髪の女の子は、ニカっと人懐っこい笑顔で改めて自己紹介をした。

 

「改めて。あたしの名前はキリカ! フィーネの協力者デスよ!」

 

 ほーん。協力者ねー。

 何に対する協力者なのかは……どうやら聞いても答えてくれなさそうだ。

 

「当然デース!」

 

 じゃあ次の質問。二人は友達。

 

「友達デース!」

「違う」

 

 ……? 

 

「ちょ、それは酷くないデスかクリス!?」

「……わたしとあなたは協力関係を築いただけ。友達になった覚えはない」

「そ、そんな〜」

 

 およよ、と泣き崩れる姿勢を取るキリカちゃん。

 まぁ明らかに嘘泣きで、クリスちゃんも相手にしていない。

 

「ブー。そんなんだと一生ボッチですよ? こんな所に居たら友達なんてできっこないデスよ」

「わたしはそれで構わない。戦争を無くす為には不要──ただ」

 

 チラリとこちらを見てクリスちゃんが何かを言い掛けて、口を閉じた。

 なんだろう? 

 疑問に思うもクリスちゃんはそれ以上言わなかったので、その話は終わった。

 それで、俺は帰っても良いの? あ、ダメですかそうですか……。

 

 暇になったのかキリカが「モフらせろー!」と俺を抱えてワシャワシャし始める。

 こら、テメエ! そんなに乱暴にしたら……何だよ、結構上手いじゃないか……。

 ここか? ここが良いのデスかー? とNTRれそうになる。

 ごめん響ちゃん……でも、く、くやしい……感じちゃう……(健全)。

 てかよく考えたら響ちゃん俺の事撫で回した事ねーや。

 

 と、こちらをジーっと見つめてくるクリスちゃんの視線を感じながらキリカちゃんに乱暴(優し目)されていると、と突然機械音が鳴った。

 何の音? 

 

「あ、博士からです」

 

 博士? 

 俺がコテンッと首を傾げているなか、キリカちゃんは俺を片手で抱き上げたまま、もう片方の腕に付けられた腕輪を前に出す。すると腕輪から光が照射され、空中にモニターが現れる……けど【SOUND OLNY】と書かれて誰も映っていない。

 

『キリカさん。定期連絡がありませんでしたけど、何かありましたか?』

「いえ、大丈夫デス! 心配かけてごめんなさいデス!」

『まったく、無事なら良いのですがね』

「……し……あの子は心配してくれてましたか?」

『さあ、どうでしょう? ただ、イラついて僕のお尻を蹴ってくる事が増えてきましたね』

「そうですか……」

 

 キリカちゃんが何故か嬉しそうな顔をする。

 通信の声の人のお尻が蹴られて嬉しいのだろうか? 

 意外とドS? 

 

「ブーイ……」

『──おや? その声は……』

「コマチって言うです! みょうちくりんですが可愛いですよ!」

 

 みょうちくりんは余計だ! 

 

『──ああ、なるほど。計画は順調な様ですね』

 

 何で今ので納得したんだ? 

 なんだ。俺はみょうちくりん界隈で有名なのか? それなら脱退してやるが。

 

『それにしても──あの魔女、フィーネは相変わらず君にご執心なようだね』

 

 ……フィーネが俺に? なんで? 

 俺の疑問の声が聞こえたのか、通信越しの誰かは言う。

 

『そう待たなくても分かりますよ。全てが終わる時、君の存在が……ね』

 

 結局何の事か分からず通信は終わり──クリスちゃんの視線がより一層強くなった。

 

 

 ◆

 

 

 響が目を覚ました。

 が、誰とも口を聞かず部屋に閉じ籠ってしまった。

 と言っても二課のシステムを使えばロックは外されるし、響も体力を回復させる為という理由もあり今の所は無理矢理外に出るような動きは見せていない。

 

 つまり、二課に残された時間は、その僅かな時間。

 その僅かな時間を使って、彼らは──彼女と協力を結ぼうと考えていた。

 

「……できますかね、そんな事」

 

 オペレーターの藤堯が疑問の言葉を溢す。

 響は明らかに他者を拒絶している。

 奏や翼、弦十郎の言葉に意を返さず、ひたすらにノイズを倒す為に動いていた。

 例外であるコマチは今は居ない。

 

「そこが重要だ」

「というと?」

「これから我々二課は、あの二人の少女、そしてその裏に居る者と戦う事になる。響くんもコマチくんを助ける為……そして復讐の為に戦場に赴くだろう」

 

 つまり、響と彼らの相対する相手は同じであり──。

 

「それに完全聖遺物のネフシュタン、イチイバルのシンフォギア。それが連携して襲ってくる。……奏と翼を手玉に取る響くんが負けた以上、我々に勝ち目は薄い」

「それでアイツの協力を取り付けるって訳か」

「で、でもよ旦那……」

 

 皆が弦十郎の考えに理解を示すなか、奏だけは難色を示していた。

 

「わざわざをあの子を戦わせる事しなくても……」

「奏、言いたい事はわかる──だが、彼女が黙って大人しくしていられると思うか?」

「……っ」

「放っておけば戦場に駆け出して……よくて前回の二の舞、最悪……」

 

 最悪の事態を防ぐ為に、弦十郎はあえて彼女を戦力として迎え入れる算段であった。……このような手段しか取れない自分に怒りを覚えながら。

 そして。

 

「……けど」

「奏、はっきりと言う──今は光彦くんの事は忘れろ」

「っ──」

「先生!」

 

 弦十郎の言葉に息を呑む奏。 そして非難の声を上げる翼。

 しかし彼はジロリと力強い眼力で翼を黙らせると、奏に真摯に向き合い、己の意思を伝える。

 

「彼女たちに自分を重ねるなとは言わん。だが、それでどうなる? 同情し、響くんの想いを蔑ろにするのは違うんじゃないのか?」

「……」

「心に燻りがあるのなら、まずは話すべきだ。……お互い落ち着いてから、な」

 

 奏は暗い顔をしながら、しかし最後にはコクリと頷いて彼の考えに賛同を示す。

 話が纏まった所で、次の段階へと移る。

 

 どうやって響を説得する、か? 

 

『……』

 

 全員が黙り込んだ。

 まったく妙案が思い浮かばなかったからだ。

 しかしそれで諦める二課ではない。

 男は度胸。ついでに女も度胸。何事も試してみるべきだと、それぞれが計画を立ててアタックする事になった。

 

 題して、立花響攻略作戦が実施された。

 

 

 ──弦十郎の場合。

 

「具合はどうだ、響くん」

「……」

 

 一応了承を得て、現在響に充てがわれている部屋へとやって来た弦十郎。

 しかし響はベッドの上で膝を抱えてチラリと見ると、すぐに視線を外した。

 

「今日は色々と持ってきた」

 

 弦十郎が取り出したのは多種多様なレンタル映画のDVDだった。

 カンフー映画、アクション映画、SF映画から始まり、他にもアニメや特撮、ドキュメンタリーとまさに数撃ちゃ当たる理論。

 これで彼女の好みを把握して、距離を縮めようという魂胆だった。

 しかしそれは響も察しており、興味を示さず視線を外そうとして……一つの映画を手に取る。

 

「……」

「お、それは人と犬の感動物映画だな。響くんはこういうのが好きなのか?」

 

 別に興味はなかった。ただ、この映画の主人公とその犬の構図が、何故か既視感があり、そしてそれは自分とコマチだと気づいて──。

 

 

『司令! 響さんのバイタル物凄く乱れているんですが!?』

『いったい何をしたんですか!?』

「いや、ちが!? す、すまない響くん!? 大丈夫か!?」

「ひく、えぐ……」

 

 ──弦十郎、失敗。

 

 

 ──翼の場合。

 

「なあ、大丈夫なのか翼……?」

「大丈夫だって。オレに任せておけって」

 

 奏は心配だった。目の前の自信満々な片翼に対して。 

 なんせ、翼の作戦は……。

 

「響はオレ達のライブに来ていた──つまりファンだ。そこにオレが優しく声を掛ければ……子猫ちゃんはイチコロさ」

「…………」

 

 つまり魅力でメロメロにさせて攻略するって戦法らしい。

 しかし、翼の人気を考慮すると理に適ってはいる。

 ツヴァイウィングとして活動している翼は当然ながら人気で、特に若い女の子たちにに人気だ。ライブでサービスパフォーマンスをした際には気絶した者もいる始末。

 さらに学校でも彼女を慕い、心奪われている者は多く、「翼王子」という呼称で呼ばれたり呼ばれなかったりしたとかしていないとか。

 ちなみに刺されそうになった事はある。痴情のもつれは怖いね! (百合カップルの喧嘩の原因になって嫉妬にかられた為)(その後百合カップルはどっちも翼にゾッコン)(百合の間に挟まる王子)

 

「……とりあえず、怒らせるなよ」

「分かっているって。それじゃあ、行ってくる」

 

 そして意気揚々と部屋に入り──5分後。

 

「……」

「……どうだったんだ?」

 

 答えは分かり切っているが、一応尋ねる奏。

 それに対して翼は──。

 

「オレに靡かないなんて──へっ、おもしれー女」

「やかましいわ!」

 

 何処からか取り出したのか、翼の頭を叩く奏。

 

「待ってくれ奏。オレ、ここまで燃えたの初めてかもしれない」

「もういいわ! それに無茶すんな……お前だってあの時の事引き摺っているんだろ」

「……」

「それを隠して接した所で答えてくれねーよ」

「……ごめん」

 

 落ち込む翼を抱き寄せて、奏は彼女の背中をポンポンと叩いた。

 

 

 ──翼、失敗。

 

 ──藤堯の場合。

 

「やっぱりここは大人の魅力でしょ」

「藤堯さん疲れてる?」

「そういえば最近徹夜気味だって」

 

 なんか目が血走っている藤堯。

 多分寝てないぞ藤堯

 本当に大丈夫か藤堯。

 出番が欲しいだけか藤堯。

 

「じゃ──子猫ちゃんを慰めて来ますか」

 

 翼と被っているぞ藤堯。

 奏も翼も特に止める事なく、彼は部屋に入った。

 一分も経たずに出て来た。

 肩を揺らして呼吸を乱し、冷や汗を滝の様に流していた。

 

「……こ、殺されるかと思った」

 

 どうやら弦十郎に泣かされ、翼に苛立たさせられて機嫌が最高潮に悪いらしい。

 彼は結局同僚の友里に連れられて、仮眠室に投げ込まれた。

 奏たちは見なかった事にした。

 

 

 ──藤堯、出番終了。

 

 

「奏は行かないのか?」

「……あたしが行っても逆効果さ」

 

 奏は今回の作戦に参加しなかった。

 いや、できなかったというべきだろうか。

 憂いを帯びた表情でそう呟き、翼は何も言えなかった。

 

「──だったら、わたしに任せて貰いませんか?」

 

 そんな彼女達に、自ら立候補する者がいた。

 奏達は振り返り、その人物に驚きの表情を浮かべた。

 それは──。

 

 

 ◆

 

 

「わたしをイライラさせないでよ……」

 

 響の胸中は荒れに荒れていた。

 コマチを助ける為に体力の回復に努めていたが、それも限界かもしれない。

 弦十郎から説明も、説得も受けている。

 しかし、彼女は受け入れる事はできなかった。

 

 自分の隣に居るのはコマチだけだ。

 それを取り戻すのは、自分だけだ。

 

 そう、半ば意固地になって考えている。

 コマチ以外と手を繋ぐ事ができない。だから、その唯一を自分の手で──。

 

「──失礼します」

 

 そこに再び誰かが入って来た。

 今度は誰だ。

 苛立ち混じりに視線を向け──響の表情が変わる。

 

「──お前は」

「──響、わたしとちょっとデートしない?」

 

 

 ──小日向未来の場合。

 




投稿後、タグに“アナザークリス”“◯◯◯◯◯◯切歌”を追加します
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