【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第六話「水面に写る太陽掬い上げて」

 

「はぁ……」

 

 ため息を吐くクリスちゃん。

 元々元気が無かったけど、フィーネさんが帰って来てから日に日に元気が無くなっている。

 どうしたのー? モフるかー? 

 

「……うん」

 

 コクリと頷くクリスちゃん。

 随分と素直だね。キリカちゃんの前だとツンツンしているのに。

 そう思いつつも、ベッドに座っているクリスちゃんの膝に乗り体を丸める。

 さあ、来い! 

 

「相変わらずテンションがおかしい……」

 

 ツッコミつつもクリスちゃんは優しい手付きで俺の背中を撫で始める。

 いいですね、これは。心地良くて寝てしまいそうだ。

 でもお客さん──あなた、悩みがありますね? 

 

「どういうテンション……?」

 

 いや、気が紛れればと思って。

 

「……はぁ」

 

 ……まぁ、正直俺に解決できるか分からないけど話してみ? 

 そうすれば気が楽になるかもしれないし、場合によっては俺も一緒に考えるから。

 

「……それ」

 

 ん? 

 

「なんで、わたしたちに優しくできるの? わたしたちは、貴方の家族を傷付けたんだよ……!?」

 

 あー……やっぱりというか何というか、その事で悩んでいたんだねクリスちゃん──それも最初から。

 

「……っ」

 

 迷っていたんだね。俺と響ちゃんを引き離す事を。

 よく話したしね。あの子の事。

 素直じゃなくていつもムスッとしてて俺の事滅多にモフらないし、ムフらせようとしたら毛玉扱い。

 でも本当は優しくて俺を助けてくれて──伸ばした手を繋いでくれた普通の女の子。

 

 だから、この誘拐の事は、許せない。どんな理由があろうとも。

 

「……」

 

 でもそれとこれとは話が別。

 

「え……?」

 

 確かに許せないけど、だからって友達を見捨てる理由にはならない。

 あの事を後悔しているなら、響ちゃんと会って謝って欲しい。

 そしてできたら友達になってあげて欲しい。

 そのソロモンの杖も捨てて、ネフシュタンも二課の人に返して。

 

「それは……」

 

 言い淀むって事は、クリスちゃんには譲れないものがあるんだね。

 

「──わたしは、この世から争いを無くしたい」

 

 うん。

 

「その為には力が必要。わたしが絶対的な力を持てば、争いを起こす気すら失くさせてみせる。

 ……その為に、わたしはフィーネに協力する」

 

 ──だから、あの子とは友達にはなれない。

 悲しそうに、しかし断言するクリスちゃん。

 信念を曲げてはならないという強迫観念と──そこに悩みの根幹がある事を俺は悟った。

 

 だから俺は彼女に言った。

 フィーネさんのやり方に疑問を持っているんだね、と。

 

「──そんな事」

 

 だってクリスちゃんずっと難しい顔してるよ? 

 昨日のキリカちゃんの体からネフシュタンの鎧の浸食を取り除く為の雷撃も嫌そうにしていたし。

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()も最後まで反対していた。結局聞き入れて貰えなかったけど。

 

 だからクリスちゃんが何を考えているのかなんて、分かるよ。

 

「……」

 

 俺は忘れちゃうだろうけど、これだけは言っておくね。

 ──親子は喧嘩してなんぼ。

 

「え……?」

 

 クリスちゃんが本当の両親の事を大事にしているのは知っている。

 それでも、今まで公園で君の愚痴を聞いた俺は言うよ。

 恐れないで。怖がらないで。

 きっと君の思いは伝わる。

 ……その時、君の本当の夢が分かると思う。

 

 だから、頑張って。

 

「──うん」

 

 その会話を最後に、俺は()()()()()()()()()()、フィーネさんにより新たな力を──いや、力を思い出した。

 それを自覚して使えるかはともかく……。

 

 第六話「水面に写る太陽掬い上げて」

 

 

 完全聖遺物の護送作戦開始までの時間の間、響は食堂にて一人食事を摂っていた。

 今回の作戦で敵が襲ってくる可能性は十分高いと見ている。

 ここ最近のノイズの発生が、二課本部に安置されているデュランダルを狙ってのものだと日本政府が判断し、別の場所に移し替える、というのが筋書き。

 

 しかし、響にとってはそんな事はどうでも良い。

 ようやく、彼女たちと再会できる。

 ネフシュタンの鎧。イチイバル。そしてフィーネ。

 

「絶対──取り戻す」

 

 敵を思い、コマチを想って自然と響の体に力が入る。

 

「──そんなに肩に力入れてると、いざという時転けちまうぞ?」

 

 そんな彼女の肩にポンと手を置く者がいた。

 

「……奏さん」

「前、座っても良いか?」

 

 彼女の問いに響は何も答えず、自分の食事の続きを始めた。

 それに奏は苦笑いしつつ、響の返答を聞かずに前に座った。

 何か言いたげな響だったが、奏は努めて気にせずに食事を始めた。

 ……ちなみに、響は奏の皿の上を見ないようにしている。口の中が酸っぱくなりそうだからだ。

 コマチには絶対真似させる訳にはいかない、と思った。

 

「ここでの生活には慣れたか?」

「全然」

「即答かよ……」

 

 ははは、と苦笑いを浮かべる奏。

 彼女のこの反応は日常だけではなく、戦場でも現れている。二課に従うと決めたその日に彼女は──。

 

『連携は無理なんで、担当を分けて戦いましょう』

 

 と、宣い、翼が若干切れた。

 しかし実際に戦場に出ると響の物言いは正しく、結果三人でノイズと戦うというよりは、二人と一人でノイズを殲滅している、が正しい。

 ……ただ、彼女が紫電の力を使う度に懐かしい気持ちになる。

 

「……そんなにあたし達二課の事が信用できないか?」

「……」

「確かにお前からしたら、あたし達は助けてくれなかった相手だ。だが──」

「──勘違いしないでください」

 

 奏の言葉を遮る響。

 

「確かに今は、アイツを取り戻す為に……あの子の言う事を聞いていますが、それが終わったらそれまでです。だから馴れ合う必要はない。それだけです」

「馴れ合いとかなくて、あたし達は──」

「──それに、わたしにはこの二課を信用できない理由がある」

「──理由?」

 

 取り付く暇も無い響が、いつもと違う事を言った。

 それに奏が反応すると、響はハッと己の失言に気づき首を横に振る。

 

「すみません、忘れてください」

「そうは言っても……」

「──そんなに気になりますか。わたしが戦場に出るのが」

「っ……」

 

 なおも食い下がる奏に、響がピシャリと核心を突く。

 

「話は伺っています──光彦さん、でしたか。彼がわたしの命を救ってくれた、と」

「……ああ。何もできなかったあたしと違ってな」

「言わば、わたしはその光彦さんの忘れ形見」

 

 

 二課の設備を使い過去のデータを見させて貰った響。

 協力をする代わりの対価として求めたのだが……色々と知る事ができた。

 

「──似ています。アイツと」

「アイツ……コマチ、か?」

「はい。自分を顧みず誰かを助ける為に命を賭ける。人が悲しんでいたら、必ず慰めてくれる」

「……」

「──会ってみたかった、と思いました」

「響……」

 

 意外な言葉に奏が驚きの表情を浮かべた。

 響自身も驚いていた。コマチと未来以外に関心をみせる自分に。

 だから、柄にもなく聞いてしまった。

 

「……辛くないんですか? 家族を失って」

「──辛いに決まっているさ。正直、今も引き摺っているし、叶うならあの日に戻りたい」

「……それなのに、何故前に向かって歩けるんですか?」

「そっか、お前にはそう見えるのか」

 

 ふーっと息を吐く。

 奏は食堂の天井を見ながら力なく言った。

 

「あたし自身歩けているかなんて分からないよ」

「……」

「いつも後ろ見て、過去を引き摺って、フラフラしている。だからコマチを見た時驚いた。ああ、光彦みたいな奴が居たんだって──それこそ、アイツがまだ生きているって錯覚してしまうくらいに」

「……」

「だからな、響」

 

 視線を響へと戻す。

 

「お前は、絶対にアイツを取り戻せ。そして今度こそ手放すな──それができなかった先輩からのアドバイスだ」

 

 そう悲しそうに言う奏に──。

 

「──言われるまでもなく」

 

 響は真っ直ぐに見つめ返して答えた。

 

 ──数時間後、作戦が開始される。

 

 

 ◆

 

 

「響!」

「……!」

 

 出発する直前に、突如響は呼び止められた。

 振り向くとそこには未来が。

 本来なら外部協力者である未来には今回の作戦を伝える事は無いのだが、響を二課の協力者へと招き入れた功労として、今回限りこの場に居る事を認められている。

 

「……もしかしたら、またしばらく会えなくなるかもって思ったら、居ても居られなくて」

 

 彼女は何となく察していた。

 今回の作戦を機に、また響が離れる、と。

 響もまた、何かを感じ取っており、目の前の未来と同じ考えだった。

 

 未来がギュッと響を抱き締める。

 その温かさを忘れないように、自分の温もりを相手に伝えるように。

 

「また、会おうね」

 

 会えるかな、ではなく。

 会おう、と彼女は言う。

 それは願望ではなく、決意であり覚悟。

 どれだけ離れようと、どれだけ拒絶されようと、あなたの側に立ち、思い出させるという強い想い。

 その想いに響は──。

 

「うん」

 

 コクリと頷いた。

 

 

 

 

 奏と翼、響は既にシンフォギアを纏ってそれぞれの配置に付いていた。

 奏はデュランダルが入ったケースを所有している了子の車の上に、響は護送車の軍団の前方を紫電を纏いながら走り、翼はサーフボード状の剣に乗って上空を駆けていた。

 弦十郎もヘリに乗り、上から指示を出していた。

 防衛大臣殺人犯の検挙という名目で検閲し、一般人は居ない。

 

 ──つまり、人影があれば、それは敵という事。

 

「──来た」

 

 響が拳を目の前に突き出すと同時に、弾丸が飛来し衝突。

 狙撃だ。

 

「──イチイバル! 翼!」

『分かってる!』

 

 飛行速度を上げ、翼は狙撃地点に向かって突っ込む。

 同時に橋の一部が崩れ、そこから車が一つ落ちる。

 本格的に敵の妨害が始まった。

 響たちはそのまま速度を維持し、目的まで走るが、下水道からの攻撃により護送車が次々と、正確に脱落させられていく。

 

 そこで弦十郎は薬品工場エリアにあえて入り、敵の攻め手を封じる算段を取る。

 結果、弦十郎の狙い通りに行くが、了子の車含めて大破し──響と奏の前にキリカが現れる。ソロモンの杖を携え、ノイズを引き連れて。

 

 それを見た響の頭が怒りで染め上がる。

 

「──奏さん。櫻井さんを守ってて」

 

 こいつは、わたしがやる。

 

 それだけを伝えると、拳を握り締めて──突貫。

 

(っ──前より、速いデス!)

 

 回避行動を取る前に、響の拳がネフシュタンの鎧を穿つ。

 衝撃が体に響き渡り、キリカは思わず苦悶の表情を浮かべる。

 

「この──」

 

 鞭を振るうが、それをパシリと受け止めて引き寄せると──掌底。

 

「かは──!?」

「前と同じだと思った? ──そんな訳、ないだろ……!」

 

 さらに拳を握り締めて、追撃。

 

「この時の為に、身を焦がすこの激情を燃やし続けてきた!!」

 

 ガツンと衝撃と電撃がキリカの頬を打ち抜く。

 グラグラと視界が揺れ、ビリビリと脳が痺れる。

 そしてネフシュタンが再生を試み、彼女の命を蝕む。

 

(このままじゃ不味いですよ──クリス!)

 

 キリカが仲間に助けを求め、それにクリスが応える為に動く。

 狙い定め、猛攻を続ける響に向かって弾丸を放ち──。

 

「うらあああああ!!」

「っ!?」

 

 しかし奏が割り込んで、彼女の槍がクリスの狙撃を弾き飛ばした。

 クリスは弾道を読まれた事に驚き、それを為した奏はニヤリと笑う。

 何故? 位置取りは完璧だった筈だと眉を顰めるクリス。

 取り敢えず移動しようとして──影。

 

「狙撃手も、可愛い女の子も、寄られたら何もできないのは同じだ!」

 

 空から索敵していた翼が、クリスへと強襲。

 弦十郎仕込みの近接戦闘を叩き込み……。

 

「──むっ!」

「訳の分からない、事を!」

 

 しかしクリスはそれを捌き、空中で踏ん張りが効かない翼を蹴り飛ばした。

 翼は驚いていた。ゴリゴリの後方支援タイプかと思っていたら意外にも近距離戦もできる事──ではなく、その動きが自分と似ている事に。

 

「その構え、一体何処で!」

「飯食って、映画見て、寝る──それで強くなれるらしい」

 

 そう言いつつも何処か納得していない様子のクリス。

 フィーネに指示された時はそんなバカなと疑っていたが、今ではそのバカな事が有効で未だに現実を疑っている。

 だが、それで力を付けることができた。

 争いを無くす力を。

 

 そして、そんな彼女と相対する翼は笑みを浮かべていた。

 

「──面白い」

 

 スッと構えるその姿は、クリスと似ていた。

 

「攻略しがいがある──強敵も、可愛い女の子も!」

「──できるものなら……!」

 

 

 翼がクリスを抑えている間に、響はキリカへと攻め立てる。

 キリカはそれに焦り、ソロモンの杖を使用しノイズを召喚。響と自分の間にノイズを置こうとし──。

 

「ノイズに恨みがあるのは、あたしだって同じだぁ!」

 

 槍を振るい、響の露払いをする。

 

「こんだけ居りゃあ、少しは気が晴れそうだ! ──だから響!」

「……!」

「取り戻してこい! 家族を!」

「──!」

 

 激励を受け、響は言葉無く応え、キリカへと拳を叩き付ける。

 キリカは鞭を操り受け止めるが、それを響が払い退け、次々と拳を彼女に当てていく。

 破壊と再生が繰り返され、キリカに痛みが蓄積されていく。

 

 戦況は二課側に有利であった。

 このまま行けばネフシュタン、イチイバルを撃破し二人の少女を捕獲する事ができるだろう。

 

 このままいけば。

 

「──覚醒……起動!?」

 

 ケースから飛び出したデュランダルに、了子が驚きの表情を浮かべる。

 この場には四人の装者が居り、歌い、フォニックゲインを高めている。それでも本来なら完全聖遺物を起動させるだけの力はないはずだ。

 それでも起きたという事は──それを為した要因が居る。

 

「あれがデュランダル! ターゲットデス!」

 

 キリカは、響との戦闘を放棄しデュランダルへと飛び付いた。

 これ以上長続きすればこちらが負けると判断し、さっさと目的を果たそうと動き──後ろからの強襲で地面に叩き付けられた。

 

「ぐあ!?」

「──まだ、終わってないぞ……わたしの怒りは!」

 

 殴り落としてそう叫んだ響は、次に目の前に浮くデュランダルを見た。

 これが敵の狙い。欲しかったもの。

 なら、これを使ってやれば──。

 躊躇なく手を伸ばし掴んだ響は──闇を纏い、全てを壊す獣へと堕ちた。

 

【グウウ……グオオオオオオオオオオ!!】

 

 空気が揺れる。地面が揺蕩う。世界が軋む。

 暴走した少女が、破壊の力を手に、敵を消さんと振り被る。

 それを見て飛び出す者が──二人。

 

「待て、響」

 

 その力の危うさに、そして何より行ってはいけない方へ行こうとしている彼女を助ける為に奏が。

 

「そんな力を振りかざすから、世界は──!」

 

 自分の夢を叶える為、自分のような者を生み出さない為、そして認めてはならない力を否定する為にクリスが。

 

 二人が響の前に立つ。

 それを響は──躊躇なくデュランダルを振り下ろした。

 

「奏!!」

「クリス!?」

 

 極光が世界を照らし──。

 

 

 

「──ブイ!」

 

 それを日陰が優しく受け止める。

 

【──!!】

 

 極光の先に現れた家族の姿に、響の意識が戻る。

 そして──叫んだ。

 

【ダメダ──ニゲテ!】

 

 よりにもよって大切なものに破壊の力を振りかざしている。

 このままでは、自分の手で日陰を壊してしまう。

 

 あの時のように。

 響の脳裏にトラウマが蘇り、胸にあの時の絶望が湧き上がる。

 その負の感情がどんどんデュランダルの出力を引き上げていく。

 

【ヤメロ──やめろおおおお!!】

 

 懇願するように叫び。

 

「ブイ」

 

 パクリと口を開いて食いつく。

 するとシュルシュルと破壊の光がイーブイの体へと入っていき、その次には響の闇が、そして最後にはデュランダル本体が粒子化して飲み込まれる。

 

「イーップイ……」

 

 それにイーブイが満足そうに寝転んで前足で自分の腹を撫で付ける。

 まるでご飯をたくさん食べたかのようだ。

 そんなイーブイに響が駆け寄り──。

 

「ブイ!?」

「この、バカ……! 心配、させないでよ……!」

 

 涙を流しながら強く強く抱き締めていた。

 イーブイは突然の事に驚き、目をシロクロさせていたが、響が泣いている事に気がつくとペロペロと舐めて、まるで慰めているかのようだ。

 

「…………」

 

 それをクリスが悲しそうな目で見て──離脱した。

 

「あ、待て!」

 

 それを翼が追おうとして。

 

「どっこいっしょ!」

「!?」

 

 キリカがエネルギー弾で牽制し、その後鞭で弾き飛ばして自分も離脱。

 すぐに追おうとする翼だが。

 

『深追いをするな翼!』

「だけど!」

『これ以上は、危険だ……』

「……く」

 

 弦十郎の判断により、それも一時取り止めとなる。

 一方地上では、敵が居なくなり、響も大切なものを奪還し、戦場特有のピリピリした空気が無くなりつつあった。

 

「……ふう。良かったな、ひび──」

 

 だから奏は気が付かなかった──響の反応に。

 近づこうとした奏の足元に紫電が走り、強制的に足を止められる。

 

「え……?」

 

 何が起きたのか分からない。

 そう愕然とする奏に、響は冷たく──拒絶した。

 

「それ以上近づけば──敵対とみなして攻撃します」

 

 訳が分からなかった。

 通じ合えないまでも、少しは仲良くなったと思っていた。

 だが、なんだあの目は。何故彼女は、響は──二課を敵視する? 

 

「何を言って──」

「鎌倉の風鳴」

 

 一つの言葉が、奏を遮った。

 事態に気づいた翼が降り立ち、感情を顕にする。

 

「なんでお前の口からその名前が……!?」

「そっちに居る間に色々見せて貰ったから。──この力を使えば、機械なんてわたしにとって赤ん坊当然。丸裸」

 

 響は知っている。

 かつて、コマチと似た存在である光彦がどのような扱いをされていたのか。

 鎌倉がどのように考えているのか。日本政府がコマチをどう使おうとしているのか。

 

 ──二課は信じる事ができる。

 だが、その後ろがダメだ。

 

「──アイツらのせいかよ……!」

 

 翼が怒りで拳を強く握り締める。

 自分から全てを奪う風鳴が──憎かった。

 だが、奏は諦める事はできなかった。

 

「あたし達がそんな事させない! だから──」

「……知らないって事は、時に罪ですね」

「……何を、言って」

「後で弦十郎さんに聞いてみてください──ライブ後の日本政府が立てていた光彦さんの扱いを」

「──」

 

 予想外の名前が出て、奏の言葉が止まる。

 その隙を突いて、いつの間にか眠っているイーブイを優しく抱き留めながら紫電を体に纏い。

 

「あと」

「……」

「──わたしの復讐相手が居る組織に、そう易々と身を預けられないから」

「え……?」

 

 その言葉を最後に、響はある人物を強く睨み付けて──その場から離脱した。

 

 かくして、デュランダルは失われ、協力者であった立花響は離散し、不穏な言葉を残して事態は終結した。

 

 その場に誰もが、何も言わず佇んでいた。

 

「──◾️◾️◾️◾️様、申し訳ありません」

 

 風が鳴り、その言葉は──誰にも届かなかった。

 

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