【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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前日談的なの

 

「──情報が少ないな」

「そうですね……ここまで少ないと、やはり何かしらの組織が動いていると見て間違いないでしょう」

 

 現在、発令室にて弦十郎と緒川は唸っていた。

 彼らは現在ある事を調べていた。

 それは、先日起きた【デルタショック事件】と関わりのある事柄であり──二課の情報網を使っても尚、捕らえられない情報。

 それは──。

 

「響くんに復讐を煽った協力者。了子くんにキリカなる戦力を提供した人間……」

「どちらも実態を掴めません……相当な隠蔽能力があるかと」

 

 今回の事件で未解決な部分はあった。

 しかし調べても調べても掴めずに居る。

 特に響の背後にいた者はタチが悪い。

 

「この端末、回収されて調べられる事を前提にして響さんに渡してありますね」

 

 二課が入手できる情報を取捨選択し、あえて流している印象があった。

 認めたくないが、相手は二課よりも情報戦では優位に立っている事が確定している。

 

 そして得た情報は……。

 

「米国政府への情報の横流し。日本各地に隠れアジトの存在の有無。二課への妨害工作──」

「その他にも色々とありますが……」

 

 肝心な所は分かっていない。

 何者なのか、何が目的なのか──それが分からずじまいだ。

 正体不明の敵。それが今後も何かしらの形で、二課の前に立ち塞がるのは──明らかだった。

 

「今後も情報を探ってみます」

「そうしてくれ──子どもを利用する奴は許せんからな」

 

 響の故郷での出来事を思い、弦十郎は強く拳を握っていた。

 コマチが居なければ、今頃彼女はかつてのクラスメイトを手にかけ闇に落ち……。

 

「必ず見つけ出しましょう」

「だな──と言っても、問題は山積みだ」

 

 先日、永田町の記憶の遺跡にネフシュタンの鎧、デュランダルが移送、そして隔離封印された。

 二年前、そして今回の騒動の中心になった二つの完全聖遺物は慎重に扱うべきと判断された故の処置である。

 

 だからこそ、コマチについて日本政府が引き渡しの指示を出すのは必然だった──が。

 

「結果的には我々二課の扱いになり、今後日本政府の干渉は無くなりました……が」

「理由が理由だけに気になるな──何故、鎌倉が擁護して来たか……謎だな」

 

 二年前の時点では日本政府同様引き渡しを命じて来た鎌倉こと風鳴本家。

 しかし今回は二課に全て任して余計な干渉をするべきではないと言い出した。

 二課にとって都合が良いが──素直に喜べないのが事実だった。

 

「悩んでも仕方ない──そろそろ時間だ、向かうぞ」

「向かうって……ああ、彼らの元ですか」

「ああ──米国のエージェントの聞き取り調査がまだある」

 

 現在日本政府は、捕らえた米国のエージェントを使って米国に抗議を行っている。二課のデータベースへのハッキングや広木防衛大臣への暗殺等、揺さぶるネタは揃っている。

 しかしエージェントたちは何も言わず、米国も知らぬ存ぜぬと頑なな態度を取っており難航している。

 そしてこれから弦十郎は緒川と共に、そのエージェント達の所へ向かう予定だ。

 ──仲間を殺されたのだ。絶対に彼らから情報を得る。

 

「行くぞ」

「はい」

 

 そして二人はエージェント達の元に向かい──。

 

 

 

「──どういう、事だ……!?」

「これは……!」

 

 そこに居たのは、首から上の無いエージェント達の変わり果てた姿であった。

 緒川が近づき傷痕を見る。

 綺麗に両断されていた。刀による一太刀。

 それを為したのは相当の手練れ。

 

「──ふん。今更来たか」

 

 ふと二人の背後から気配がし──同時に濃厚な血の匂いが漂う。

 彼らが振り返るとそこには──風鳴訃堂がそこに居た。

 そして手には彼の刀があり──エージェントの首を誰が跳ねたのか雄弁に語っていた。

 

「まさか、貴方がこれを!?」

「それがどうした?」

「彼らには情報を吐いて貰う予定でした。それに殺してしまったら米国から何を言われるか」

 

 弦十郎と緒川の追及に、訃堂は鼻で笑い飛ばし、阿呆と彼らを罵る。

 

「これ以上生き永らえさせようとも、此奴らは役に立たんよ。死に間際に吐かれた情報も益の無いもの。それに、向こうが言っていたではないか──駒など居らぬとな」

 

 だから殺した。

 国を脅かす不届き者が、自分の国で同じ空気を吸っている事が我慢できない。

 だから殺した。

 日本に対して舐めた態度を取っている敵国の狗をそのままにする理由がなかった。

 だから殺した。

 

 もはや米国のエージェント達に人権はない。他ならぬ米国がそう言ったのだから。殺されても──嘆く者も怒る者も居ない。

 

「時間を無為にするくらいなら、護国に専念せよ」

「……は」

 

 胸の内にある思いを必死に押し留めて、弦十郎は頭を下げて言葉を吐いた。

 それを見た訃堂は踵を返してその場を去ろうとし。

 

「──手に入れた刃、精々錆させぬようにな」

 

 その言葉を最後に残して、彼は立ち去った。

 気配が遠退き消えた。

 それを確認し、二人は揃って深くため息を吐いた。

 これからこの死体の処理もしなくてはならない。恐らく日本政府もこの事を知っているが……やるせなかった。

 それはそれとして。

 

「司令。先ほどの……」

「ああ……」

 

 手に入れた刃──翼の事ではないだろう。

 そして二年前の主張を180度変えた鎌倉。

 つまり訃堂の言葉は──。

 

「アカシア君。君は一体──」

 

 弦十郎の言葉に答える者は誰も居なかった。

 

 

 ◆

 

 

 こんにちは、コマチです。

 今日は二課本部から出て外に出ている。

 何をしに来ているかって? それは──。

 

「やって来ましたデートの日!」

 

 テンション上げて叫んだ翼ちゃんが言う通り今日はデートの日である。

 

「5人と1匹っていう訳のわからない人数だけどね……」

 

 せやな。響ちゃんの言う通り、デートというには大人数だ。

 でも未来ちゃんは気にするどころか嬉しそうに受け入れてくれたりする。天使かな? 

 

「ありがとうな未来」

「いえいえ! この前ライブに誘ってくれましたし、それに──」

 

 そう言って未来ちゃんは、クリスと談笑している響を見る。

 

「響と仲良くしてくれている人を、わたしは拒絶しません」

 

 女神かな? 

 

「コマチも来てくれてありがとう」

「ブイブイ」

 

 頭を撫でてくれる未来ちゃん。

 んー……やっぱりこの子の手は日向みたいに温かくて気持ち良いな……。

 目を細めてポヤポヤしていると、未来ちゃんが笑った。

 

「ふっ、今日は良い日だな……!」

 

 心地良い感覚に身を委ねていると、翼さんがこっちに来た。さっきの上がったままのテンションのまま。

 

「こんなにも可愛らしい子猫ちゃんとデートできるなんて──まるでハーレムだな」

 

 何言ってんだこの人。

 

「今日は誘ってくれてありがとう──未来」

「は、ははは……どういたしまして」

 

 未来ちゃんの顎をクイッてさせてキメ顔をする翼さん。でも未来ちゃん苦笑いしかしていないし、そのキャラやめた方が良いと思うよ? 

 それにほら……。

 

『フンッ!!』

「あいたっ!?」

 

 背後から来た響ちゃんとクリスちゃんが、すんごい痛そうなチョップを炸裂させた。

 そして響ちゃんが翼さんと未来ちゃんの間に体を割り込ませて、クリスちゃんが翼さんをグイッと引っ張って離れさせた。

 

「本当いい加減にしないと怒りますよ翼さん」

「翼……パンドラの箱を開けるような真似しないで」

 

 おー……響ちゃんこわー。

 クリスちゃんは戦々恐々としている。でも翼さんはフッと笑っている。

 

「悪い──癖になっているんだ、綺麗な花に触るの」

「造花でも買って家で愛でてください」

 

 響ちゃん、辛辣だなぁ……それにしても未来ちゃんのこと大事にしてるな。無意識みたいだけど……。

 そして大切にされている事に、未来ちゃん凄い嬉しそうにしている。

 それにしても……翼さん、なんでいつもあんな調子なんだろ……? 

 

「まぁ、混乱しているからだな」

 

 俺の疑問に奏さんが答えた。

 混乱? どういうこと? 

 

「いや、翼意外と人見知りでな? 二課以外で居る時はああやって変な感じになって……」

 

 コ、コミュニケーション能力の欠如……! 

 

「実はここだけの話、リディアンで王子って呼ばれているの恥ずかしいらしい」

 

 何してんだあのアメノハバキリ??? 

 思っていたよりも愉快な事になっている翼さんに思わず笑ってしまった。

 という事は、仲間である響ちゃん達に対しては、時間が解決してくれる? 

 

「だなぁ……ただ、クリスに関しては」

 

 クリス? 奏さんの言葉に、俺は二人を見る。

 

「ホント、節操なし」

「ふふふ。綺麗な花畑に来ると身を投げ出したくなるだろ? それと一緒さ」

「意味がわからない」

「嫉妬かい? 可愛いなクリスは」

「……撃っていい? ねえ撃っていい?」

 

 俺にはいつものように見えるけど。

 

「翼なりの気遣いさ」

 

 ……なるほどね。

 翼さん、本当に不器用だね。

 

「だなー」

 

 

 

 暫くして、俺たちはデートを開始した。

 服を見に行った時は、未来ちゃんとクリスちゃんがはしゃいでいた。二人とも女子力高くて、後半は奏さん、翼さん、響ちゃんを着せ替え人形にさせていた。

 俺? 俺はなんか犬猫用の服着せられました……。

 

 次はゲームセンター。

 クリスちゃんは初めて来るのか終始目をシロクロさせて面白かった。

 響ちゃんがパンチングマシンを壊した時はどうしようかと思った……。

 ツヴァイウィングの二人がUFOキャッチャーに貯金しまくったのには笑った。でも壊そうとはしないでね? 

 レースゲームで独走していた未来ちゃんは流石の一言。バイク持っている翼さんが「バイクなら……」って負け惜しみを言っていたのは、いとあわれって感じ。

 でも納得できないのは、俺が音ゲーでフルコンボ叩き込んだら皆がドン引きしていた事。ええやん上手でも。街に一人で行った時にJKの子達と練習したんや。

 って言ったら何故か響ちゃんにグリグリされた何故??? 

 

 最後に撮ったプリクラは、大人数でしっちゃかめっちゃかで、でもそれが味が出て面白かった。

 色んな組み合わせで撮ってて、てえてえって拝むほど。

 

 何より形として残るのが良かった。

 

 他にも色々回って──最後に来たのはカラオケ。

 

「な、なんだか申し訳ない気持ちになるな……ツヴァイウィングとカラオケなんて」

「そう畏るなって。今日はあくまで友達とデートしに来ただけだ」

「そうだぞ未来。これは友達の特権だ。思う存分に楽しもう」

 

 未来ちゃんが緊張していたけど、二人の言葉でそれも次第に無くなっていき──楽しく歌った。

 流石というかツヴァイウィングの歌は凄く上手で聴いていてライブの事を思い出した。それを伝えると、二人とも嬉しそうに、優しい顔で、頭を撫でて来た。

 クリスちゃんも上手だった。両親が音楽家だとの事で、才能ならツヴァイウィングにも負けていない。そして、歌が好きだという想いが凄く伝わって来た。……フィーネさんが好きって言う訳だ。

 響ちゃんはあまり歌おうとしなかったけど、未来ちゃんが引っ張ってデュエットして、恥ずかしがりながらも楽しく歌ってた。

 やっぱり俺、響ちゃんの歌が好きだな……。

 

 その後も組み合わせを変えてデュエットしたり、合唱したり。聞いていて凄く楽しい。

 

「ほら、光彦」

「ブイ?」

「お前も何か歌ってみろよ。歌詞は歌えなくても、ハミングでいけるんじゃないか?」

 

 そう言ってデンモクを渡してくる奏さん。

 え? 俺が歌うの? 

「イ」「ブ」しか言えないんですけど? 

 しかし、他のみんなも期待した目でこちらを見ている。

 特にツヴァイウィングの二人はめっちゃ目をキラキラさせている。

 う〜〜〜〜ん……仕方ない。

 俺はテーブルに置かれたデンモクを操作して曲を送信。そしてマイクを未来ちゃんに支えて貰い、歌い出す。

 

 

 最近ハマっている歌手、マリア・カデンツァヴナ・イヴのDark Oblivionを。

 

『ちょっと待てえええええ!!』

 

 しかし曲を止められて、ツヴァイウィングの二人に詰め寄られた。

 

「あたしらの前で別の歌手選ぶとはいい度胸してんじゃねえか……!」

「何が不満だ言ってみろ。改めてやるから。お前の認識を……!」

 

 結局その後、響ちゃんが切れて滅茶苦茶に騒ぎ出し、店員さんに追い出されるまでカオスは続いた。

 

 

 

 そして最後は、街並みが見れる高台へとやって来た。

 夕焼けが街を照らし──この街を皆で守ったのだと思うと、胸にくる物がある。

 しかし、それ以上に……。

 

「──約束、守ってくれてありがとう」

「──別に……いや、そうじゃないね」

 

 一度はそっぽを向こうとした響ちゃんだったが、首を横に振って未来ちゃんに向き合う。

 そして彼女の瞳をしっかりと見て。

 

「約束を破りたくなかったから──わたしも、ありがとう」

「──響!」

 

 感極まった未来ちゃんが響ちゃんに抱きつく。

 響ちゃんはそれを拒絶する事なく、それを受け入れた。

 以前の彼女だったら考えられない光景だ。でも、今は──。

 

 

「──強くなったな」

「ブイブイ」

「……あたしさ、響の事は、あたしが何とかしなくちゃいけないと思ってた。でも何時の間にかああやって立ち直って──なんて言えば良いのかな」

 

 そう言って笑う奏ちゃんの目元には光雫があった。

 

 ……そんな事ないよ奏さん。奏さんの言葉で、今の響ちゃんがあるんだ。

 

「……言葉?」

 

 ──生きるのを諦めるな。

 

「──っ」

 

 確かにその言葉で苦しんだのかもしれない。

 でも、生きるのを諦めなかったからこそ、響ちゃんは生きて、こうして此処に居る。

 だからさ、奏ちゃんは確かに響ちゃんを救っていたんだ。

 

「──そっか、ありがとうな」

 

 どういたしまして。

 

 

 こうして、俺たちのデートは終わり──新たな戦いが始まろうとしていた。

 

 

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