【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第三話「ピカチュウ は なまける を わすれた!」

 二課に保護され、奏ちゃんのペットになって一週間経った。

 それだけ経てば俺も向こうもお互いに慣れる。

 ……まぁ色々あったからなぁ。

 今でも思い出す。翼ちゃんが持ってきた猫用のペットフード。一応ピカチュウはネズミなんですがっ。それを天敵とも言える猫の餌を持ってくるとか何考えてるんだ? 

 と最初は思っていたんだけどあの娘何も考えて無いんだよね……。

 奏ちゃんが聞いたら……。

 

「……? 何か不味いのか?」

 

 って言ってたからな……。

 奏ちゃんも、えー……って顔してた。

 翼ちゃんはペット飼わない方が良いな……汚部屋の主人だし。

 

「ん……起きたのか光彦」

 

 すぐ後ろから奏ちゃんの声が響く。どうやら起きたようだ。

 

 ポヨン。

 

 ……ふぅ。現実逃避も此処までか。

 グイッと俺の腹に回されていた腕に力が込められ、後頭部にやわっこい膨らみが押し付けられる。そしてそのまま奏ちゃんにグリグリとほっぺすりすり……ではなく頬擦りされる。

 

「いやー、やっぱり光彦を抱いて寝ると良く眠れるよ」

 

 ふっ、うら若き小娘を虜にするとは俺も罪な男よ。

 ……なんて言えたら良いんだけどな。

 

 俺氏、無事抱き枕に就職。

 中身、そこそこの年のおっさん。

 相手、未成年の美少女。

 事案、からの即逮捕確定。

 

 ……俺は無実だぁあああ!! 

 

「チュウ〜!」

「おっと、そう暴れるなよ──さてシャワー浴びような」

 

 困りますお客様! あー! お客様! 当店はそのようなサービスはなさってません! むしろサービスありがとうございます! あー! お待ち下さいお客様! お客様──!! 

 

「今日も綺麗にしてやるからな光彦〜」

 

 お客様──!! 

 

 

 第三話「ピカチュウ は なまける を わすれた!」

 

 

 奏ちゃんに辱められた俺は、めちゃくちゃニコニコしている彼女と共に食堂へと赴いた。

 初めの頃は犬猫よろしく地面に置かれた皿をモソモソ食べていた俺だったが、それを見た了子さんが絶叫し。

 

「こ、この子は知能が高くこちらの言葉も分かっているのだから、私たちと同じように食べさせたらどうかしら?」

 

 と提案し、以来食事も同じものを机で食べている。

 肉うまー。米うまー。ケチャップサイコおおおおおおお!! 

 

「あ、こら光彦! お前またケチャップを!」

 

 光彦用と書かれているケチャップをペロペロ舐めていると、それを見つけた奏ちゃんが俺の手からケチャップを取り上げた。

 ああ、まだ三割しか食べてないのに……。

 

「食べ物にかけるならともかく、直で舐めるのはダメだって言っただろ!?」

 

 いやー。この体だと、どうしてもケチャップに食い付いてしまって……。

 ピカチュウはケチャラーだということは分かっていたけど、まさかここまでとはな……。

 ケチャップうめえ! 

 

「ダメだ! 朝はここまで。残りは昼と夜にしろ」

 

 しかし飼い主である奏ちゃんにストップを言い渡されしまった。

 チェー。

 仕方なくケチャップ追加なしで朝食を取る。

 ふむ、これはこれで美味しい。

 パクパク食べていると、俺たちに近づく影があった。

 

「おはよう姐さん。光彦」

「おーう。おはよう翼」

「ピッ!」

 

 挨拶を交わす俺たち。

 そして翼ちゃんはヒョイっと俺のミートボールを……って。

 

「ピカチュウ!!」

(このやろう! また俺の飯摘み食いしやがった!)

「んー、んまい!」

 

 くそ、美味しそうにしやがって……。

 

「翼ー、行儀悪いぞー。てか、お前光彦に意地悪しすぎだ」

「ムグムグ、ん……何言っているんだ姐さん。これも光彦のことを考えての事だ」

 

 奏ちゃんの注意を聞いても何のその。

 指についたタレまで美味しく頂いた翼ちゃんは妙なことを言い出した。

 俺のため……? どういう事だ。

 

「光彦はただでさえケチャップを舐めているのに、食っている量も多い──このままだと太るぞ!!」

「──!?」

 

 いや、何言ってんの翼ちゃん。

 奏ちゃんも衝撃受けた顔しないで。

 

「これじゃあ光彦じゃなくてデブ彦だ」

「それは……」

 

 いやならんよ? 

 

「鳴き声もデブチュウになってしまう」

「それは嫌だ!」

 

 ならんって。

 

「だからさ姐さん。オレの行動は光彦のことを思ってなんだ」

「そうか……」

 

 そうかじゃないが。

 

「──よし、光彦。お前も訓練に付き合いな。ダイエットだ」

 

 ──ナンテコッタ!! 

 

 何気に奏ちゃんに飼われて自堕落……甘えやかされて過ごしていた俺にとって、突然の運動宣言は厳しい。肉体的には問題ないけど精神的にきつい。

 あれよあれよと俺の必死の抵抗も虚しく、食後行われる訓練に強制参加。

 シミュレータールームだろうか……? 景色が街に変わり、ノイズ達が現れてこちらに襲い掛かる。

 それを奏ちゃんと翼ちゃんがシンフォギアを纏って歌いながら武器を振るい、俺はその後ろで応援する。

 がんばれ! がんばれ! 

 あともう少し! イける! イける! 

 

「コラ光彦! お前も動け!」

 

 しかし翼ちゃん的にアウトらしく、歌うのをやめて俺に向かって抗議してきた。

 えー。正直戦いたくないんだけどなー。

 ほら、食べた後に急に動くと横腹痛いじゃん? それと同じ理論でもうしばらく休んだ方が……。

 そこまでグダグダ考えていたところ、蒼い斬撃が俺の横の床に爪痕を残しつつ、背後のノイズを切り裂いた。

 ひえ……こわ……。

 ノイズみたいに真っ二つになりたくないので、俺も動く事にする。

 えっと、身体の中にある不思議なパワーを集めてー。

 それをふわふわと辺りに解き放ってー。

 上空に集まりバチバチと電気纏った暗雲を広げさせて──。

 

「ピカッー!!!」

(かみなり発射ぁ!)

 

 溜めた分だけの雷を落としまくり、ノイズ達を一網打尽。

 轟音と閃光が辺りを埋め尽くし、収まった頃には全てを消し炭にしていた。

 俺の活躍に驚いているのか、奏ちゃん達も呆然としている。

 どんなもんだい。ぶいっ。

 とドヤ顔していると二人がズンズンこちらに近寄ってきた。

 お? 褒めてくれるのかな? 

 

「光彦〜、お前あたし達ごと消し飛ばすつもりか?」

「ミートボールの仕返しか? ん? ん?」

 

 どうやらかみなりブッパはお気に召さないらしい。

 

「……まぁノイズを一気に殲滅出来ることは分かった。課題はそれを制御できるかどうかだな」

「という訳で、今度はオレ達が相手だ。行くぞ」

 

 え? こんな可愛らしいポケモン虐めるの? 

 いや、まっ、奏ちゃんその槍しまって。

 翼ちゃんもその刃物納めて……なんだそのライブボード!? 

 ちょ、おま……。

 

 

 あ──。

 

 

 訓練(という名の虐め)が終わった後、俺は一人とぼとぼ二課施設の廊下を歩いていた。奏ちゃんと翼ちゃんは緒川さんに連れられて何処かに行った。

 何か大事な話があるのだろうか。

 普段なら俺は奏ちゃんと一緒に居るのが常なのだが、俺に人と意思疎通が出来る事を確信した二課の人達は、施設内なら自由に動いて良いと言ってくれている。

 ……この首輪を付けてあれば、ね。

 現在俺は了子さんが作った首輪を付けている。発信器が内蔵されているらしく、万が一脱走してもすぐにバレるらしい。そんなことしないけど。

 ちなみにこの首輪気に入っていたりする。特に装飾のガラス玉がポイント高い。まるでキーストーンみたいだ。模様は無いけどね。

 それにピカチュウだからメガシンカできないし。ライチュウだったら? できないんじゃないんですかね……(諦め)。

 そして俺は現在その首輪の制作者である了子さんの所に来ている。

 自動ドアが開き中に入ると、そこには作業している了子さんが。

 了子さんは俺が入って来たのに気付くとニッコリと笑みを浮かべる。

 

「あら〜来たのね〜。あら? 奏ちゃんは居ないのね?」

 

 しかし入って来たのが俺だけ……いや、正確には奏ちゃんが居ない事を確認すると、了子さんの雰囲気が変わる。

 被っていた猫を脱ぎ捨てて、本当の自分を、本能を曝け出す獣へと。

 瞳の色が金色に変わった了子さんは椅子から立ち上がると、こちらに近付き手を伸ばし──ギュッと抱き締めてきた。

 

「……ハァ。道のりは険しく長いわ──⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎様」

 

 ──⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

 了子さんは俺の事を何故かそう呼ぶ。

 奏ちゃんが付けた【光彦】という名を頑なに呼ばず、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎と、そして何故か敬意を持って俺に接する。

 ポケモンでしかない……奏ちゃんのペットでしかない俺に対して。

 そしてこの事を彼女は隠していて、俺は不思議に思っていつも首を傾げる。

 

「チャァ〜?」

「……今は良いのです。ただ来るその時まで身を委ねてください」

 

 ──悲願は必ず。

 

 そう言って了子さんは俺を抱き締めて、涙無く泣き続ける。

 俺はそれが理解できず、ただ悲しかった。

 

 

 ◆

 

 

「本気なのか先生?」

「ああ……オレも納得していないんだがな」

 

 発令室にて弦十郎は厳しい表情で、翼と奏にある事を伝えていた。

 

 実は先ほどの訓練。アレは、弦十郎が翼に出した命令であり、光彦の力を測るためのものだった。

 奏も妙だと思っていた。確かに翼は光彦に対して意地悪だ。奏を盗られたと嫉妬しているし、光彦が翼の胸をまな板と見て鼻で笑って施設内で鬼ごっこが開催されたりと何気に衝突がある。

 ただそれは喧嘩するほど仲が良いを体現したものである。

 だから翼も弦十郎の言葉に反感を覚えた。

 

 光彦を対ノイズ戦における戦力として数える事を。

 

「どういう事だよ旦那……! 場合によっちゃあ……!」

「落ち着け、オレも納得していない。だが、これは光彦君のことを守る為でもある」

「どういう事だ……?」

 

 話はこうだ。

 日本政府は光彦を監視するように二課に指示を出した。

 だが光彦が意志を持ち二課に対して従順だという事を知ると、ノイズを倒す力に目を付けて戦力として扱う様にと趣旨を変えた。

 初めは弦十郎はその指示に難色を示した。

 しかし……。

 

「もしそれができない場合は光彦くんを引き渡せと言ってきた……鎌倉にな」

「──な!?」

 

 それを聞いた二人は驚いた。

 特に翼の動揺は一際大きく、しかし次の瞬間怒り──いや、憎悪とも言うべき感情を抱き、言葉にした。

 

「アイツら……! また下らない【サキモリ】の為に……!」

「翼……」

 

 奏は翼の過去を思い、言葉に詰まる。

 それは弦十郎も同じだが、話を……彼の意志を彼女達に伝えねばならない。

 

「正直日本政府は光彦くんの事を実験動物程度にしか見ていない。その状態で彼を渡す事は……オレはしたくない。

 だったらここで我々の仲間として戦って貰い……いつか光彦君のことを分かって貰いたいと思っている」

 

 弦十郎の言葉に、二人は彼の決定に賛成の意を示す。

 

「旦那……ありがとう」

「そういう事ならオレは先生に従うよ。なんなら光彦の事も守ってやるぜ?」

「ははは。違うだろ翼。そこは私達が、だろ?」

「あ、そうだな」

 

 軽快に笑い合う二人を見て弦十郎もほっと胸を撫で下ろした。

 

 

 ──こうして光彦のニート生活は終わった。

 光彦は労働の義務が発生した事に泣いた。

 

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