【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
ガングニールを纏い宣戦布告をしたマリア。
彼女の言葉に全世界が混乱した。
特にフィーネの存在を知る者はそれが顕著だ。米国政府はこの映像を見て慌ただしく動いている。
二課もそうだ。ガングニールもだが、彼女が己をフィーネと名乗るその意味を図りかねている。
そんななか、マリアは堂々とした姿で続ける。
「このようにわたし達にはノイズを操る力を持つ──この意味が分からない国はあるまい」
脅している。彼女は、本気で世界と戦うつもりだ。
「ノイズを使って国を滅ぼす事は容易い──が、それはしない。わたしの要求を飲むのなら」
「要求だと……!」
奏が睨み付けながら言葉を繰り返すと、マリアはチラリと彼女を見て再び前を見る。
「要求は──今後我が組織フィーネに対する無干渉」
「無干渉!?」
「ええ、そうよ──わたし達のする事に口出しするな、手を出すなと言った方が早いかしら?」
ニヤリと悪どい笑みを浮かべる彼女に──遂に奏が切れた。
「──ふざけるな!」
「……!」
「ライブ会場でノイズを出して、関係ない人を危険な目に合わせて──何様のつもりだテメエ!!」
「──貴女がそれを言うの?」
しかし、奏の激昂を強制的に沈めるプレッシャー……波導が迸った。
思わず奏が息を飲み──次の瞬間、マリアが奏の直ぐ近くに居た。
「……!」
「奏!」
咄嗟に駆け寄ろうとした翼を、掌を向けて静止するマリア。
そしてそのままソッと奏の耳元に口を寄せて──。
「──臆するなら、また大切な家族を失うぞ──天羽奏」
「っ──その、声は……!?」
信じられないと驚きを顕にする奏。
何故なら、今聞こえた声は──。
しかしマリアは直ぐに離れると
マイクを手に再び叫んだ。
「呑めないならその時は構わない! が、その時は己の国が煤だらけになる事を覚悟するが良い!」
目的の為なら手段を選ばない──彼女はやる時はやる。その気概を翼は近くで感じ取っていた。
故に、信じたくなかった。
「どうしてだマリア! お前は先ほど──」
「そういえば、シロクロ決着付けようと言ったわね」
でもごめんなさい、と彼女は一言謝る。
「思ったよりも貴女達が強くて──こっちで付けたくなっちゃったの」
そう拳を突き付けてマリアが不敵な笑みを浮かべた瞬間──音が消えた。
第二話「再会──されど望まれず」
ガングニールの反応を感じ、そしてノイズを見た瞬間──響は飛び出そうとした。
それを寸での所でクリスが止める。
「何を!?」
「冷静になって……今行っても状況は変わらない」
しかしそれで止まらないのが響だ。
言葉で止まるのなら、彼女は此処に居ない。
クリスの静止の言葉を無視して尚行こうとする。
「わたしがノイズもマリアも全部ぶっ飛ばす! そうすれば──」
「──だからっ。そうする為に考えようって言っているんだ!」
クリスの滅多に聞かない叫び声に、響だけではなく未来たちも驚いて彼女を見た。
しかしクリスはそれに構わず、あくまで冷静に言葉を紡ぐ。
──自分が起動させた聖遺物が原因かもしれないという罪悪感を押し殺しながら。
「まず問題は此処に観客が居る事と生放送されている事。このせいで奏も翼も下手な行動が出来ない」
此処でシンフォギアを纏えば各国の政府に、彼女たちが装者だという事がバレてしまう。
加えて、人質がいる状態で武器を構えれば──死人が出る。
「だったら、わたしの電気でカメラ全部壊して、そしてそのまま」
「ノイズを出している敵が何処にいるか分からない。目に見える範囲のノイズを倒しても意味がない」
現在緒川がライブ中継されているカメラの対処に回っている。
つまり彼女たちはノイズをどうにかする方法を考えなくてはならず──。
「ブイブーイ!」
しかしそこで、救いの手が上がった。
コマチは言った──どうにかできるかもしれない、と。
◆
とーーーーーーう!!
パリンッとガラスを突き破って、俺はライブ会場の空に飛び出した。
いきなりの大きな音に、観客も舞台のマリアさんもこちらを見る──二課の装者と未来達は目を閉じていた。
「ブ────イ!!」
俺の体が
それこそが俺の目的だ。
ザッと周囲を見渡して、皆混乱しているのを確認した俺は──
その音色は心地良く──聴いた者を瞬く間に夢の世界へと誘う。
俺の歌を聴いた者達はバタリバタリと次々に倒れていく。
それと同時に、裏で紫電が走り次々とカメラが壊されていく。……請求されないよね。
最後の仕上げとして──俺はあるエスパー技を使う。それは……。
「──まさか!」
波導で防いだのか、混乱せず起きたままのマリアがこちらを見て驚きの表情を浮かべていた。
しかしもう遅い。既に発動した──テレポートはな!
俺の力でライブ会場に居た観客達は外へと転移される。同時に、この場を中継する機器は無くなった。
後は二課の人達が観客の皆を保護してくれるだろう。
「Balwisyall nescell gungnir tron」
さて、響ちゃん──思いっきりぶつかって来い!
「おおおおおおおおおお!!」
「っ──」
「だりゃああああああああ!!」
ドゴンッと大きな音と衝撃が走り、響ちゃんとマリアさんが激突する。
響ちゃんは融合症例で紫電の力もあり、その突破力は二課でトップクラス。弦十郎さんの半分の力の拳と相殺できるパワーがある。その一撃を受けたノイズは跡形も残らない。
「翼、この隙に!」
「ああ!」
「Croitzal ronzell gungnir zizzl」
「Imyuteus amenohabakiri tron」
翼さんと奏さんがノイズの殲滅に移る。外に出て被害が出ないようにする為だろう。
しかし杞憂というべきか、ノイズは外には行かず目の前の奏さん達に襲い掛かって居た。これもマリアさんの指示だろうか?
そして、何でだろう。
響ちゃんのあの一撃を受けて──マリアさん平然としてませんか?
「愚直な程に真っ直ぐね」
「っ、なめるな!」
紫電を纏った響ちゃんの高速ラッシュ。
翼さんとクリスちゃんの二人の手数を圧倒するスペック頼りのインファイト。
どうやら響ちゃんは数で勝負に出たみたいだが──マリアさん、余裕な表情で避けてません?
「喧しい波導ね。アナタの次の動きが手に取るように分かるわ」
──圧倒されている。あの響ちゃんが。
その光景を見て戦況の不利を悟ったのだろう。
カメラが壊れて心置きなく変身できた奏さんと翼さんが加勢する。
「響、一回下がれ!」
「! ──っ」
奏さんの合図を聞き、その場から跳躍して下がる響ちゃん。
それと入れ替わるようにツヴァイウィングが前に出て、槍と剣による連携攻撃をマリアに叩き込むが──。
「両翼揃ってその程度か!?」
「ぐっ!?」
「がっ!?」
背中のマントを強引に振り払って武器の上から二人を叩きのめした!?
この人、技だけじゃなくてパワーもあるのか……!?
しかしツヴァイウィング二人も黙っていおらず、さらに仕掛ける。
「はっ!」
空中に飛び上がった翼ちゃんが小太刀を無数に投げつける。それをマリアさんはマントを傘のようにして防ぎ──その懐に入るようにして奏さんが突撃。
奏さんが槍を大振りに振り……さらに背後に回っていた響ちゃんが拳をバチバチ言わせながら、槍の如き一撃を振り絞る。
「貫け……!」
「土手っ腹に……!」
三方向からの時間差攻撃。
気づいても対処が難しく、何れかには当たるはず──しかし、それは俺たちが見た夢だった。
マリアさんは、奏さんの槍を片手で掴むとそのまま流れるようにもう片方の手をかざし──波導を球状に形成して……いや、波導弾を放った。
「な──ガハッ」
直撃した響ちゃんは吹き飛ばされて観客席に激突。
「ひび──ガッ!?」
さらに奏さんにも同じように波導弾を放ち、吹き飛ばした。
俺は咄嗟に受け止めようとして──勢いを殺せず一緒に壁に激突した。
「奏! 響! くそっ!!」
それを見た翼さんが激昂して、空からマリアさんに突っ込む。
「うおおおおおおお!!」
滅茶苦茶な軌道を描いて、囚われないようにして動いている。
技巧派な翼さんの良くやる動きだ。
でも。
それじゃあ──ダメだ!
「──ふっ」
「な、消え──」
俺の危惧した通り、マリアさんはゆらりと動いて──翼さんの視野の死角を見切ってそこを通り。
煙のように彼女の横へと入り込むと、そのままソッと掌を体に添えて──衝撃を与えた。
「──こ、れは……!」
「発勁──アナタ達の師の得意技よ」
しかし、おそらくマリアさんの言葉は彼女に届かず、翼さんは白目を向いてそのまま──堕ちた。
不味い。奏さんも意識を失っている。響ちゃんも沈黙して無事かどうか分からない。
クリスちゃんが撃っていないという事は、その隙が無いという事。
──強い。
俺は、奏さんの前に立ち、いつでも技を出せるようにする。
しかし、俺を見たマリアさんは──。
「──リッくん……先輩」
何故か、悲しそうな目をしていた。
◆
コマチの力でどうにか戦う状況を作り出す事に成功したクリスたち。
響はコマチと共に前線に出て、マリアを抑えに行った。奏と翼も合流し、四対一で始まった戦闘は──クリスが狙撃位置に着く前に、終わった。
途中何度か射とうとし、その度にスコープ越しに睨まれて牽制されていた。彼女は見えているのか……?
背筋をゾッとさせながらも、クリスは狙撃位置に付きコマチの援護の為に構える。
しかし相手の様子がおかしい。コマチを前にして動きを止めた。視線もこちらに向けていない。
撃つのなら、今。
トリガーに指を掛けた、その時──。
「癖は変わっていないようデスね、クリス。見つけるのが簡単だったデスよ」
「──っ!!」
声が聞こえたと同時に、前へ飛ぶようにして転げ、そのまま後ろに向かってライフルを構える。
銃口の先に相手の心臓が突き付けられ──同時に、クリスの首元に魂を刈り取りそうな程鋭い鎌が添えられた。
クリスは、月の光で白く輝く相手を見ながら──呟いた。
「久しぶり──キリちゃん」
それに対して──キリカは普段と変わらないように明るく再会の言葉を紡いだ。
「お久しぶりデース! 元気そうで何よりデスよ、クリス」
かつての友との再会。
変わらぬ言葉と変わった心。
戦場で彼女たちは交わす──言葉ではなく力で。